Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
伏兵あらわる(9月FOMC)
3次元追加緩和は困難(9月会合)
2016年9月7日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・8月ISM非製造業景況指数は51.4とネガティブサプライズ。市場予想(55.0)を大幅に下回り、7月か
ら4.1pt悪化、2010年2月以来の低水準に落ち込み、サービス業PMI(Markit)とのギャップは解消した。
内訳は事業活動(59.3→51.8)、新規受注(60.3→51.4)が急落したほか、雇用(51.4→50.7)が軟化。
指数押し上げに寄与したのは入荷遅延(51.0→51.5)のみ。ヘッドライン構成項目以外では新規輸出受注
(55.5→46.5)が極めて大幅な落ち込みとなり、受注残(51.0→49.5)も分岐点を割り込んだ。発表元の
ISMは今回の結果に特殊要因は含まれていないとしている。ISM製造業も50を割れており、米経済に
減速の兆候が観察されている。
ISM指数
ISM非製造業・サービスPMI(Markit)
60
60
55
55
非製造業
50
50
サービスPMI
(Markit)
45
45
ISM非製造業
40
製造業
40
35
35
07
08
09
10
11
12
13
14
15
07
16
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09
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11
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13
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15
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(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は続伸。ISM非製造業はコンサンサスを大幅に下回ったものの、原油価格安定のほか、USD安
も追い風となった。WTI原油は44.83㌦(+0.39㌦)で引け。
・前日のG10通貨はUSDが全面安。USD/JPYは浜田内閣官房参与の「FOMC前の追加緩和は控えるべき」との発
言を受けて下落した後、ISM非製造業を受けて急落。その後、日本時間では産経新聞の記事が一因となって
か更に水準を切り下げている。
・前日の米10年金利は1.534%(▲6.8bp)で引け。ISM非製造業の受けて大幅に金利低下。欧州債市場(10年)
は総じて堅調。米債市場に追随してドイツ(▲0.111%、▲6.3bp)、イタリア(1.088%、▲7.1bp)、ス
ペイン(0.929%、▲8.0bp)、ポルトガル(2.993%、▲5.9bp)が大幅に金利低下。3ヶ国加重平均の対
独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY下落を嫌気して安く寄り付いた後、日銀のETF買い入れが意識されてか下落幅縮小
(10:00)。
・昨日、RBA理事会は大方の予想どおり政策金利の据え置きを決定(OCR1.5%)。注目の声明文は、将
来の政策スタンスが示されず中立的な印象。次回の利下げ判断は3Qの消費者物価指数が発表される10月
26日以降、すなわち11月4日のRBA理事会まで持ち越されよう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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・昨日発表のISM非製造業景況指数の予想比下振れは、追加利上げが12月FOMCに持ち越されるとの筆者個
人の見解をサポート。市場が織り込むFEDの利上げ確率は大幅に後退し、9月FOMCにおけるそれは
24.0%へと8.0%pt低下、12月も51.8%へと7.2%pt低下した。米国債金利に目を向けると、2年金利は
0.73%へと5.5bp低下し、ジャクソンホール・シンポジウム後の上昇を完全に帳消しにした。9月FOMCでの
利上げを「可能」としていたFED高官が、このデータをもって考え方を変えるかは不明だが、本日以降
に予定されている講演では、その発言が慎重化するか注目される。特に本日(日本時間10:15)のウィリ
アムズ・サンフランシスコ連銀総裁の講演は市場参加者の注目を浴びるだろう。同総裁は将来の金融政策
手段について小論文を発表するなどして脚光を浴びているが、目先の金融政策についてもFEDの広報的
存在となりつつあり、イエレン議長の意向を代弁する可能性がある。
・9月7日の産経新聞朝刊は「日銀『総括検証』難航」と題する記事で、政策委員の見解が3つに分裂して
いるとして、総括検証における「統一見解」の取りまとめが困難であるとの見方を報じた。記事によると、
(量の拡大より)マイナス金利深掘りを主張する黒田総裁と、(マイナス金利の深掘りより)マネタリー
ベース拡大を重視する岩田副総裁と、追加緩和に否定的な木内委員、佐藤委員といった具合に意見が3分
裂しているという。
・日銀は既に政策の主軸を「量」から「金利・質」に移していると考えられるが、この記事の内容どおり黒
田総裁と岩田副総裁で意見の相違がみられた場合、「総括的検証」の内容そのものが不明瞭になる可能性
があるだろう。それは最近になって黒田総裁が重視している「予見可能性」を低下させるリスクを内包し
ている。
・筆者は9月会合が実質的なゼロ回答となり、単にイールド・カーブのスティープ化を促すための技術的調整
に終わると予想。今回の記事は、改めて3次元の追加緩和が困難であるとの見方をサポートしたと言える。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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