Market Flash 中国不安なき金融市場 2017年1月11日(水) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・11月米JOLTS求人統計によると求人件数は552.2万件と10月から小幅に増加したものの、この1年程度は頭 打ち状態となっている。他方、イエレン議長が労働市場の質的改善を分析する際に重視している自発的離 職率は2.067%へと上昇。この指標は2016年前半に停滞した後、ここ数ヶ月は再び上昇に転じており、この ことは労働者が待遇改善を求めて転職活動を活発化していることを映し出していると考えられる。賃金上 昇圧力として認識すべき数値だろう。やや地味なデータだが、3月FOMCにおける追加利上げを正当化する データである。 (百万件) 6 JOLTS求人件数 (%) 自発的離職率 2.4 5.5 2.2 5 4.5 2 4 1.8 3.5 1.6 3 1.4 2.5 1.2 2 1 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 ・12月NFIB中小企業楽観指数は105.8と、異常値とも言える大幅な改善を記録。さすがに出来過ぎの印象 が強いが、新政権に対する期待などから景況感が好転している可能性が高い。項目別では雇用計画(+15 →+16)、人件費計画(+15→+20)、設備投資計画(+24→+29)が揃って上向いた。 110 NFIB中小企業楽観指数(設備投資計画) NFIB中小企業楽観指数 29 27 105 25 100 23 21 95 19 90 17 15 85 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 17 14 15 16 太線:3ヶ月平均 17 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は続落。NYダウ20000㌦の壁が意識される下、この日も利益確定売りが優勢。原油価格下落 を受けたエネルギー株の下落が響いた。WTI原油は50.82㌦(▲1.14㌦)で引け。リビアの増産観測が懸 念されたほか、米稼働リグ数の増加も意識されたとみられ、需給懸念が生じた。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 ・前日のG10 通貨はAUD、JPYが強く、GBPとUSDがそれに続いた。GBPは9日にメイ首相のハードブレグジッ トを示唆する発言を背景に下落していたが、この日は反発に転じた。USD/JPYは新規の材料に乏しく116を 挟み一進一退。EUR/USDも動意に乏しい展開となり、1.05半ばでの推移が続いた。トランプ次期大統領の会 見を翌日に控え様子見姿勢の強い一日となった。 ・前日の米10年金利は2.376%(+1.1bp)で引け。当初の米債市場は堅調に推移したが、米国時間に入ると 調整し、結局は小幅な金利上昇で引け。欧州債市場(10年)は総じて軟調。ドイツ(0.285%、+0.7bp)、 イタリア(1.913%、+2.0bp)、スペイン(1.474%、+0.3bp)、ポルトガル(4.050%、+7.4bp)が揃 って金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはワイドニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は米国株下落の流れを断ち切り反発して寄り付いた(9:05)。 <#中国経済 #PPI上昇> ・かつて中国の過剰投資とそれを一因とするグローバルディスインフレの象徴だった中国PPIの反転急上 昇が注目される。10日に発表された12月PPIは前年比+5.5%と、54ヶ月連続の前年比マイナスを経て 2000年代半ばの水準に回帰。 ・こうしたディスインフレ圧力の緩和と相俟って企業景況感は明らかな上向き基調に転じている。注目度の 高い財新PMI(Markit)は製造業、サービス業で改善が顕著。特に製造業のそれは受注・在庫バランスの 上昇を伴い、目下6ヵ月連続の分岐点超えを達成。それを裏付けるように発電量、鉄道貨物輸送量、自動 車販売台数といったハードデータでも明らかな改善が示されており、PMIの正当性を担保している。 ・一連の経済指標の改善は15年半ばから16年半ばにかけて投資家の懸念事項であった「中国不安」が封じ込 められていることを如実に物語っている。中国の金融市場では人民元安とそれに付随する外貨準備の減少、 更には債券安など、複数のストレスを抱えているが、それがグローバルリスクオフを招く事態には発展し ていない。中国当局の経済政策が奏功する下、暫くは中国経済に対する楽観がグローバル金融市場の安定 に寄与する展開が続くものと判断される。 (前年比、%) 中国 企業物価 中国 60 製造業PMI(Markit) 10 55 6 2 50 -2 45 -6 40 -10 00 02 04 06 08 (備考)Thomson Reutersにより作成 10 12 14 05 16 07 09 11 13 15 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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