Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
相場反転の先行指標
2016年12月2日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・11月ISM製造業景況指数は53.2と市場予想(52.5)を上回り、10月から1.3pt改善。地区連銀サーベイや
PMI(Markit)の改善と整合的で製造業セクターの改善を裏づける結果となった。内訳は生産(54.6→
56.0)、新規受注(52.1→53.0)が強く改善した一方、雇用(52.9→52.3)が軟化。その他では入荷遅延
(52.2→55.7)、在庫(47.5→49.0)が共に指数押し上げに寄与した。ただし、12月データではドル高の
影響が表面化する可能性がある。
・新規失業保険申請件数は26.8万件と前週から1.7万件増加。大幅な増加だが、感謝祭に伴う季節調整の歪み
が影響した可能性があり実勢を把握するのは困難。4週移動平均は25.2万件と今次サイクルの最低を維持
している。
60
ISM・ Markit・地区連銀
新規失業保険申請件数
(千件)
420
Markit
390
55
360
50
330
ISM
45
地区連銀平均
300
270
40
240
35
07
08
09
10
11
12
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
14
15
12
16
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株はNYダウが続伸。米指標堅調で景気回復期待がサポートされたほか、原油価格上昇がエネ
ルギー株の追い風に。米金利上昇も金融株上昇に寄与した。一方、米金利上昇が高配当株を中心に重荷と
なりS&P500は続落。WTI原油は51.06㌦(+1.62㌦)で引け。OPEC総会の減産合意が引き続き好感された。
・前日のG10 通貨はUSDが全面安。原油を筆頭にコモディティ価格が上昇するなか、NOK、CAD、AUDといった
資源国通貨が堅調。欧州通貨も全般的に強く、EUR/USDは1.06を回復、GBP/USDも1.26近傍へと水準を切り
上げた。USD/JPYは114を挟んで一進一退の展開となったが、一時は115に迫る場面もあった。そうしたなか、
新興国通貨は売られ、JPMエマージング通貨インデックスは2日続落。
・前日の米10年金利は2.448%(+6.7bp)で引け。米指標堅調、原油価格急上昇で実質金利、予想インフレ
率に上昇圧力。欧州債市場(10年)は総じて軟調。ドイツ(0.369%、+9.4bp)、イタリア(2.050%、+
6.2bp)、スペイン(1.615%、+6.4bp)、ポルトガル(3.765%、+5.5bp)が揃って大幅に金利上昇。
ECB理事会を8日に控えてTaperingが意識されている模様。観測報道では資産購入額が現行の800億ユーロ
から600億ユーロへと減額する案がでている。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、USD/JPY上昇が頭打ちとなるなか小幅安で寄り付いた後、もみ合い。
<#米金利上昇 #米銀行株
#相場反転の兆候>
・米年10金利は節目の2.5%が視野に入ってきた。足もとの米金利上昇は①米国経済の回復期待を反映した実
質金利上昇、②原油価格上昇を通じた予想インフレ率の上昇、③それらを総合的に判断するFEDの利上
げパスが上向くとの観測が背景にある。米債市場では大型減税による需給懸念が意識されているにせよ、
一義的には米国の景気回復期待が根源にあると判断される。
・そうした下、市場では米金利上昇・原油高が併存。本来、米金利上昇は金利の付かない原油に打撃となる
ため、基本的にWTI(或いはCRB)と逆相関(米金利上昇・原油安)の関係になるが、トランプ共和
党によるインフラ投資拡大、OPECの減産合意による需給引き締まり観測を背景に、このところは順相関
(米金利上昇・原油高)の関係にある。これはUSDとコモディティにもほとんど同じ関係が成立する。
・一方、選挙後の米金利上昇はそのペースが極めて急速であるほか、水準も節目の2.5%に近づいており、一
段の長期金利上昇がリスクオフを誘発する可能性が高まっているように感じられる。選挙後のUSD高・米金
利上昇は既に相応の引き締め効果を生み出していると考えられ、その影響は1-3月期に発表される12-2
月データで表面化する可能性が高い。製造業、住宅関連指標では打撃が比較的早期に確認されるだろう。
・こうした引き締め効果に市場参加者の目線が向かう局面では、これまで期待先行で駆け上がってきた反動
が危惧される。そこで筆者は相場反転の先行指標として米金融株の動向に注目。米金融株は金利上昇を追
い風に著しい上昇を遂げてきたが、金利上昇が銀行株高に結び付かなくなった場合は要注意だろう。市場
参加者が、銀行の収益改善よりも米国経済の引き締め効果を強く意識し始めている可能性がある。市場参
加者が米金利上昇を嫌い始めたと換言でき、そうした下ではリスクオフを通じて日米金利差拡大がUSD/JPY
上昇に直結しなくなる可能性が高まる。日本株にも逆風となるだろう。同様の観点から、米金利上昇がコ
モディティ価格の急落を招く展開にも注意が必要。
WTI原油・米10年金利
(%)
(WTI)
2.6
ドルインデックス(DXY)・米10年金利
30
105
100
35
2.2
180
95
長期金利
2.0
40
DXY
90
1.8
45
1.6
1.4
50
16/08
16/09
16/10
16/11
220
260
85
80
原油(右)
1.2
1.0
16/07
140
CRB指数(右)
2.4
300
75
55
16/12
13
14
(備考)Bloombergにより作成
15
16
米金融株・米10年金利
(%)
2.6
125
2.4
120
2.2
115
2.0
10年金利
1.8
110
1.6
105
1.4
金融株(右)
100
1.2
1.0
16/07
16/08
16/09
16/10
16/11
95
16/12
(備考)Bloombergにより作成。金融株は2016/7/1=100
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2