Market Flash 増える受注・減る在庫・上がる株価 2017年1月6日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【欧米経済指標他】 ・12月ISM非製造業景況指数は57.2と市場予想(56.8)を上回り、11月と同水準を維持。内訳は新規受注 (57.0→61.6)が高水準から一段と上昇した反面、雇用(58.2→53.8)が軟化。事業活動(61.7→61.4)、 入荷遅延(52.0→52.0)はそれぞれ横ばい圏の推移となった。同日発表されたサービス業PMI(Markit) は53.9、総合PMIは54.1と底堅さを維持。実質GDPの前期比年率+2.0%に整合する値となった。 ISM非製造業 60 (PMI) 65 米 総合PMI・GDP (前期比年率、%) 7.5 総合PMI 55 60 5 55 2.5 40 50 0 35 45 50 45 実質GDP(右) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 -2.5 10 11 12 13 (備考)Markit,Thomson Reuters (備考)Thomson Reutersにより作成 14 15 16 GDPは移動平均でスムージング ・新規失業保険申請件数は23.5万件とポジティブサプライズ。4週移動平均は25.7万件と再び低下基調に回 帰した。もっとも、この時期は季節調整の難しさによって統計が撹乱される傾向があるため、単週のデー タを過度に注目することは避けたい。 ・12月ADP雇用統計によると民間NFPは+15.3万人と市場予想(+17.5万人)を下回った。BLS雇用 統計の下振れリスクとして認識されるが、この指標の速報段階における予測精度はこのところ低下気味で ある。 新規失業保険申請件数 (千件) 420 (千人) 350 390 300 360 250 330 200 300 150 270 100 240 12 13 14 15 16 ADP・ BLS雇用統計 ADP BLS 50 17 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 16 17 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は小幅反落。米指標は概ね好調だったが、足もとでは割安感に乏しく買いの勢いは限られた。 WTI原油は53.76㌦(+0.50㌦)で引け。USD安・米金利低下が追い風となった。 ・前日のG10 通貨は連日でUSDが最弱となり、反対にJPYが最強となった。米金利低下に歩調を合わせる形で 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 USDが主要通貨全般に対して売られる下、USD/JPYは一時115前半まで水準を切り下げ、EUR/USDは1.06を回 復。新興国通貨も総じて堅調でJPMエマージング通貨インデックスは2日続伸。 ・前日の米10年金利は2.344%(▲9.5bp)で引け。米指標が概ね堅調で原油価格も上昇したが、水準バイヤ ーの買いが入ったとみられ、米国時間午後にかけて金利低下。欧州債市場(10年)はまちまち。ドイツ (0.243%、▲3.3bp)が米債に追随して金利低下となった反面、イタリア(1.931%、+6.2bp)、スペイ ン(1.480%、+4.7)、ポルトガル(4.031%、+13.6bp)が金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレ ドットは大幅にワイドニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株はUSD/JPY下落、トランプ次期大統領の本邦自動車メーカー批判を受けて下落して寄り付いた後、下 げ幅縮小(10:15)。 ・11月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比+0.2%と市場予想に一致して10月から0.1%pt加速。所 定外給与(▲0.9%)、特別給与(▲3.4%)が大きく減少した一方、最重要項目の所定内給与が+0.4%と 底堅さを保った。消費の源泉となるマクロ賃金(一人あたり賃金×常用雇用者数)は前年比+2.4%、3ヶ 月平均で+2.3%とやや減速基調にあるが、それでも順調な回復経路を歩んでいる。 (%) 名目賃金(所定内給与) (%) 1 マクロ賃金(常用雇用者数×一人当たり賃金) 5 0.5 2.5 0 0 -0.5 -1 -2.5 -1.5 -5 -2 05 06 07 08 09 10 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 12 13 14 15 16 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均 17 14 15 16 17 <#在庫循環 #日本株 #グローバルPMI> ・日本の11月生産統計では「明確な増産・在庫率の著しい低下」という在庫循環の好転が確認されたばかり だが、この傾向は暫く続く可能性が高く、日本株の上昇を正当化するものと思われる。製造業PMIと日 本株に明確な相関が認められていることからすれば、目下の株高は実体経済の裏づけを伴っていると判断 される。そうした下、速報性に優れた日経製造業PMIは12月に製造業(51.3→52.4)、サービス業 (51.8→52.3)、総合(52.0→52.8)がそれぞれ回復し、日本株の好調持続を示唆した。 ・こうした在庫循環の好転は世界的なものだ。12月グローバル総合PMIは53.4と15年8月以来の水準を回 復。製造業(52.1→52.7)、サービス業(53.3→53.3)がそれぞれ改善基調を維持した。国別にみても、 日米欧のPMIが揃って改善基調にあるほか、資金流出が懸念されている新興国でも中国を筆頭に改善傾 向が続いており、まさにグローバルな景気回復を象徴している。ここで先行指標として注目される新規受 注・在庫バランスに目を転じると「増える受注・減る在庫」という構図がより明確化、循環的な回復のサ インが認められている。実体経済の動向のみに着目すれば、暫くは金融市場の楽観的なムードが続く可能 性が高いと判断される。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 製造業PMI・日本株 60 (前年比、%) 80 60 60 58 40 50 45 54 20 52 0 50 -20 48 46 TOPIX(右) -40 44 -60 40 サービス業PMI 42 -80 40 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 3ヶ月平均 65 製造業PMI 56 製造業PMI 55 日本 日経PMI(Markit) 10 11 12 (備考)Markitにより作成 グローバル総合PMI (%) 20 60 15 55 10 50 5 45 0 40 -5 35 -10 13 14 15 16 グローバルPMI新規受注・在庫バランス 11 12 13 14 15 16 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 新規受注÷最終財在庫 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (備考)Markitにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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