28 岩手経済研究 2016 年 8 月号 わて経済フォーカス ていることを裏付けている。 ﹁統計指標からみる震災後の本県経済﹂ 設業だけでなく多くの業種で増加し同4・9% しかし、直近の平成 年度は僅かではあるが 震災後はじめて減少に転じている。今年度は県 増と高い成長率となったが、これは前年度の落 ち込みからの反動で増加したことも要因であ 県 内 総 生 産 は 復 興 需 要で 堅 調 県内総生産は1年間に県内の経済活動によっ の当初一般会計予算案で、普通建設事業費が前 するも、建設業以外は微増にとどまっている。 -4.0 つまり、震災以降の本県経済を牽引した復興 需要は、土木・建設関連を中心とした需要に多 次に、県内総生産は確報の発表まで2年以上 模等が異なるため、平成 年度を基準の100 まず、公共工事請負額︵前払金保証対象︶を -2.0 年度比 ・0%減、うち震災分は同 ・5% る。平成 年度も同3・3%増と高水準を維持 年度岩手県県民経済計算年報による くを依存した偏った状況にあったといえる。 プラス成長と、東日本大震災以降の本県経済は の期間を要するため、足許の復興需要及び本県 足 許で は ピー クア ウ ト す る 復 興 需要 いわゆる復興需要により堅調に回復している。 経済の状況について、その他の主要な統計指標 質県内総生産における経済活動別増加寄与度 として指数化したもので比較する︵図表2︶ 。 %のほか農林水産業とサービス業が僅かにプラ みると、復興需要を如実に反映して震災以降急 0.0 使用される重要な統計指標の一つである。 平成 と、本県の県内総生産は名目が4兆5162億 円で前年比3・4%増と3年連続のプラス成長 と な っ た。 物 価 の 変 動 を 除 い た 実 質 で も それではどのような産業が震災後の本県経済 から確認する。統計指標はそれぞれの単位、規 4兆8275億円で同3・3%増と4年連続の に寄与したのであろうか。平成 年度からの実 の推移をみると、平成 年度は建設業の7・7 スとなったが、それ以外はすべてマイナスであ 年度には震災前の3 激な増加が続き、平成 年度 25 24 23 H22 その他 サービス業 卸売・小売業 建設業 3.3 4.9 6.0 前年増加率 11 8.0 25 倍超に達するなど、県内総生産の牽引役となっ 15 -6.0 0.6 2.0 2.7 4.0 22 26 製造業 農林水産業 22 り、経済成長のほとんどが建設業の増加による 年度は建 24 % 10.0 23 ものとなっている︵図表1︶ 。平成 図表1 県内総生産(実質)の主要経済活動別増加寄与度 府県の経済規模や成長率などを把握する際に て生み出された付加価値の総和であり、各都道 27 い 25 資料:県調査統計課「岩手県県民経済計算年報」 い わて経済フォーカス 年度をもって終了したことなどを鑑みる 減となっていることや、国の集中復興期間が平 成 求 められる 出口 戦 略 の消費拡大や県外需要︵外貨︶を獲得するため の地場産業の育成・強化、世界遺産の活用など 県経済は土木・建設関連を中心とした復興需要 っているが、6次産業化により本県の高品質 外貨獲得は地方創生でも大きなテーマとな による観光振興を図る必要がある。 に牽引され順調に回復していたものの、足許で な農林水産物をさらに高付加価値化し競争力 以上のことを考え合わせると、震災以降の本 住宅着工戸数も被災者の住宅再建や災害公 はそうした復興需要が既にピークアウトしてお を高めることや、他県と比べ遅れているイン と、今年度以降も公共工事は減少基調で推移す 営住宅の建設などの復興需要がみられる。震災 り、その他の経済活動も弱含みにあることから、 バウンド市場の取り込みなどが、復興需要が るものと考えられる。 直後の平成 年度こそ前年並みだったものの、 これまでの偏った復興需要依存からの脱却とそ 平成 年度には震災前の1・5倍、平成 年度 ︵研究員 澤田 恭範︶ な手段として期待できるであろう。 終息した後でも本県経済を活性化させる有効 側からみると、本県では純移出額が約6700 平成 年度の県内総生産 ︵名目︶ を支出 ︵需要︶ のための出口戦略の構築が喫緊の課題である。 には1・8倍まで増加した。しかし、平成 年 度は依然高水準にはあるものの減少に転じ、直 近の平成 年度も2年連続の減少となった。 億円の赤字である。つまり、それだけの需要が 200 この要因として、消費税率引き上げの駆け込 100 県外に流出していることを意味している。 280 み需要とその反動減の動きに加え、災害公営住 乗用車販売台数(軽乗用車含む) このコーナーでは、県内を中心とした 様々な経済動向に焦点を当て、解説し ていきます︵3ヶ月ごとに掲載︶ 。 120 %に当たる流出を抑 140 この県内総生産の約 160 15 百貨店・スーパー販売額(全店舗) 年度末までに計画の約8割まで着 住宅着工戸数(持家+貸家) 宅が平成 180 25 制するためには、地産地消の推進による県産品 公共工事請負額(前払金保証対象) 工済みとなるなど、比較的復興が進んでいる地 域や避難先の内陸部などで一定の住宅再建が進 んだことが考えられる。今後、陸前高田市や大 町などではかさ上げ工事完了後に住宅再建が 本格化すると思われるが、これにはまだ相当の 期間を要することから、住宅着工戸数について も緩やかな減少傾向を辿るとみられる。 その他の主要な経済指標をみると、企業の建 年度をピークに 設投資を表す非居住用の民間建築物着工床面 積や乗用車販売台数は平成 それぞれ減少傾向にあり、百貨店・スーパー販 岩手経済研究 2016 年 8 月号 29 27年度 26 25 24 23 H22 80 民間建築物着工床面積(非居住用) 300 鉱工業生産指数 320 25 売額と製造業の生産動向を示す鉱工業生産指 図表2 震災以降の各種統計指標の推移 (平成22年度=100) 26 25 23 27 27 数も振るわない状況にある。 資料:各種統計資料から当研究所作成 27 24
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