グローバル・マーケット・ トピックス 2016/ 8/30 投資情報部 半杭 亮一郎 政府の重点施策として注目されるスマート農業 政府の成長戦略でスマート農業の推進が重点施策の1つに掲げられた。さらに、8/2発表の 経済対策では農産物の輸出促進が打ち出されたが、その達成にもスマート農業は不可欠 日本の農業の高齢化、担い手の減少は深刻。スマート農業による農作業の軽労化等で若者 や女性の就農を促すこと、データの蓄積でノウハウ伝承に役立てることは喫緊の課題 企業の動きでは、農機メーカーが自動運転農機の開発を加速。ICT関連各社もクラウドサー ビスやIoT関連等の技術を組み合わせ、農業分野の開拓を進める 政府は成長戦略でス マート農業の強化を 明記 日本の農業の生産性向上につながるスマート農業への取り組みが広がっている。ス マート農業は、情報通信技術(ICT)やロボット技術といった先端技術を活用し、超 省力化や高品質生産等を可能にする次世代の農業を指す。政府が6/2に示した 「日本再興戦略2016」(成長戦略)でも、スマート農業の推進が重点施策の1つに掲 げられ、農機の遠隔監視による無人自動走行を2020年までに実現する目標が設定 された。さらに、8/2に政府が決定した「未来への投資を実現する経済対策」では農 産物の輸出促進および農業の競争力強化が改めて打ち出されたが、その達成にも スマート農業の普及化は重要だろう。 日本の 農業の 高齢 化、担い手の減少は 深刻な状況 スマート農業が注目される背景としては、日本の農業が高齢化や新規就農者不足 により、担い手の減少が深刻な状況になっていることが挙げられる。農林水産省に よると、1985年に約543万人だった農業就業人口は2015年に約210万人まで減少 し、同平均年齢も1995年の59.1歳から2015年に66.4歳に上昇。一方、新規就農者 数は2010年以降、年5万人台の推移が続いているが、39歳以下は年1万5千人前後 に過ぎず、経済上の理由等から数年で離農するケースも多い。こうした農業の高齢 化・担い手不足は近年の農業衰退の大きな要因になっており、例えば、日本の耕 作放棄地は15年時点で富山県の面積に近い約42万ヘクタールにまで膨れ上がっ ている。さらに、多様な気候や土壌を持つ日本では、その特性に応じた農業が行わ れてきたが、担い手不足は各地の熟練農業者の経験と勘に基づく栽培技術が喪失 することにもつながろう。スマート農業の導入で、農作業の軽労化を推進するととも に、農業を魅力ある産業に育成し、若者や女性等の就農を促すこと、およびデータ の蓄積により関連ノウハウの伝承に役立てることは、喫緊の課題であるといえる。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/8/30 グローバル・マーケット・トピックス また、他業種においてロボット技術や人工衛星を使ったリモートセンシング技術、 ICTの活用等が競争力強化につながるなか、農業分野でもそれらの利用が成長産 業化に向けた強力な推進力となるとの期待が高い点も、スマート農業が注目される 理由だろう。かつて農業従事者は高齢者を中心に情報技術のスキルが弱いことが 課題とされていたが、今ではスマートフォンやタブレット端末等は日常生活で当たり 前のツールとなっている。2018年度からは日本の「準天頂衛星システム」(日本版 GPS)が4機体制で運用される計画で、より安定した衛星測位サービスが実現され る。こうした動きは農機の自動走行運転の実用化に向けての追い風となろう。 農業就業人口と同平均年齢の推移 (万人) 600 (歳) (5年ごと:1985~2005、年次:2010~2015) 543 70 平均年齢(右目盛) 482 500 414 400 389 65.8 65.9 65.8 335 63.2 61.1 200 59.1 100 農業就業人口 ( 左目盛) 300 261 260 251 66.7 66.4 66.2 239 227 65 210 60 55 0 85 90 95 00 05 10 11 12 13 14 15 (年) 出所:農林水産省「農林業センサス」「農業構造動態調査」よりみずほ証券作成 新規就農者数の推移 (万人) 8 耕作放棄地面積の推移 (万ヘクタール) (年次:2007~2014) (5年ごと:1975~2015) 45 7 40 6 35 30 5 25 4 20 39 歳 以 下 3 2 1 15 10 5 0 0 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) 80 85 90 95 00 05 10 15 (年) 出所:農林水産省「農林業センサス」よりみずほ証券作成 出所:農林水産省「新規就農者調査」よりみずほ証券作成 農林水産省の 研究 会が導入に必要な方 策等を検討 75 スマート農業を推進する国の動きでは、農林水産省が農機メーカーやロボット技術 で先行する企業、ICT関連企業等の協力を得て、2013年に「スマート農業の実現に 向けた研究会」を立ち上げ、農業現場への導入に必要な方策等について検討を 行っている。同研究会は14年に中間とりまとめを公表し、ロボット技術やICTによりも この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/8/30 グローバル・マーケット・トピックス たらされる新たな農業の姿を次の5つの方向性に整理した。 農林水産省の研究会が示したスマート農業でもたらされる将来像 1.超省力・大規模生産を 実現 2.作物の能力を最大限に 発揮 GPS自動走行システム等の導 入による農機の夜間走行・複数 走行・自動走行等で、作業能力 の限界を打破 センシング技術や過去のデータ に基づくきめ細やかな栽培によ り(精密農業)、作物のポテン シャルを最大限に引き出し、多 収・高品質を実現 ス マート農業 3.きつい作業、危険な作業 から の解放 収穫物の積み下ろし等の重労 働をアシストスーツで軽労化す るほか、除草ロボット等により、 作業を自動化 5.消費者・実需者に安心と 信頼を提供 クラウドシステムにより、生産の 詳しい情報を実需者や消費者 にダイレクトにつなげ、安心と信 頼を届ける 4.誰もが取り組みやすい農 業を実現 農機のアシスト装置により経験 の浅いオペレーターでも高精度 の作業が可能となるほか、ノウ ハウをデータ化することで若者 等が農業に続々とトライ 出所:農林水産省「スマート農業の実現に向けた研究会」の資料よりみずほ証券作成 直近における同研究会の取り組みでは、今年3月に農機の自動走行運転について 安全性確保の基本的な考え方等を示す「ロボット農機に関する安全性確保ガイドラ イン」の最終案を公表。来年3月末までにガイドラインを策定する予定である。 農林水産省の研究会への参画企業 農機メーカー 井関農機 クボタ 三菱農機 ヤンマー ロボット先行企業 トヨタ自動車 三菱電機 情報通信関連企業 NEC 日本電信電話 日立ソリューションズ 富士通 出所:農林水産省「スマート農業の実現に向けた研究会」の資料よりみずほ証券作成 農業の競争力強化・ 輸出増にスマート農 業は不可欠 政府の成長戦略では、これまでも農業を日本の新たな成長産業とするべく、さまざ まな施策を打ち出してきた。具体的には、小規模な農地を集約して大規模生産者 に貸し出す「農地集積バンク(農地中間管理機構)」の創設等である。また、昨年10 月に交渉妥結となった環太平洋経済連携協定(TPP)により、将来的に安い輸入農 産物が増える可能性があるが、一方で政府は農林水産物・食品の輸出額を1兆円 (15年:7,451億円)にする目標の達成時期を従来の2020年から2019年に1年前倒し させる等、輸出力強化も進めている。ただ、今後の担い手として期待される企業の 農業参入は思うように進んでいないうえ、農業人口の高齢化を短期間に立て直すこ この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/8/30 グローバル・マーケット・トピックス とも難しい。農業を大規模化し、日本の農業の競争力強化・輸出増を図るために、 スマート農業は不可欠になっていると考えられる。 農林水産物・食品の輸出額の推移 (億円) (年次:2004~2015) 8,000 7,451 7,000 6,117 6,000 5,160 5,078 5,000 4,000 5,505 3,609 4,008 4,490 4,454 4,920 4,511 4,497 3,000 2,000 1,000 0 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) 出所:農林水産省「農林水産物・食品の輸出実績」よりみずほ証券作成 農機メーカーが自動 運転農機の開発を推 進、ICT各社が農業 クラウド事業を展開 スマート農業の定義は明確でないが、農林水産省の「スマート農業の実現に向けた 研究会」が描く将来像によると、農機の自動走行システム導入による超省力・大規 模生産化、アシスト(ロボット)スーツの活用による農作業の軽労化、ノウハウがなくて も効率的に農作業が行えるための栽培技術のデータ化・形式知化、データに基づ く精密な管理による農作物の多収化や品質向上の実現、等がその取り組みとして 挙げられる。また、栽培ハウスの照明や気温をICTでコントロールし、効率生産を行 う「野菜工場」、農産物の生産から流通、販売管理等、農場経営にかかわる業務を 支援する「農業クラウド」もスマート農業の一例といえる。利用した分だけ支払う料金 体系のクラウドサービスであれば、小規模農業法人等であってもコスト負担を抑えて 導入することが可能であると考えられる。 スマート農業でビジネス拡大を目指す企業の動きでは、各農機メーカーが自動走 行するトラクターや田植え機等の研究・開発を進めている。欧米企業は小麦畑等で 使う自動運転農機を開発しているが、日本の各社は水田での自動運転技術をいち 早く確立。国内だけでなく、将来的には稲作が多いアジアでの需要も期待される。 最大手のクボタ(6326)は、GPSを活用して直進時に自動運転できる田植え機を今 年9月に業界に先駆けて発売予定。6月には無線技術や高精度の地図情報等を持 つ日本電信電話(9432)グループと次世代農機の開発で提携した。また、ICT関連 各社等もクラウドサービスや、センサーネットワークといったIoT関連等の技術を組み 合わせ て、 農業 分野を 開拓 するこ と を目指 し ている。 農 業クラウ ド では、NEC (6701)、富士通(6702)、トヨタ自動車(7203)等がすでに事業を展開。ソフト開発の この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2016/8/30 グローバル・マーケット・トピックス オプティム(3694)は、昨年8月に佐賀県、佐賀大学と小型無人航空機(ドローン)や ウェアラブル端末等を使った農業振興で連携協定を結んでいる。 スマート農業の主な関連銘柄 オプティム(3694) … 佐賀県、佐賀大学とドローン等活用の農業振興で連携。農薬を使わず害虫駆除するドローンを開発 井関農機(6310) … 自動運転農機を研究・開発。施肥量を自動でコントロールするセンサー搭載田植え機を3月に発売。 14年に「アグリシステム」と呼ぶ、作業や機械の稼働を管理するシステムを富士通と共同開発 クボタ(6326) … 6月にNTTグループと提携し、GPSや無線通信を活用した農機を共同開発する方針。14年に農業支 援のクラウドサービスとして「クボタスマートアグリシステム」を開発 NEC(6701) … ICTの活用で農作物の収穫量増加や栽培効率化等を実現する農業ICTソリューションを展開 富士通(6702) … 農業経営を支援するクラウドサービス「Akisai(秋彩)」を展開。露地栽培、施設栽培、畜産をカバー トヨタ自動車(7203) … コメ生産法人向けクラウドサービス「豊作計画」を開発。田植えや収穫等の計画を自動で割り出す トプコン(7732) … 衛星測位技術を活用した精密農業システムを展開。農機用オートステアリングシステム等 CYBERDYNE(7779) … 重量物を持ったときの負担を軽減する作業支援用のロボットスーツを実用化 (注)上記銘柄はみずほ証券が任意で選定したもの 出所:各種資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5 2016/8/30 グローバル・マーケット・トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。詳 細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金に 対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券取 引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160830-03 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 6
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