グローバル・マーケット・ トピックス

2015/
グローバル・マーケット・
トピックス
12/25
投資情報部
シニアストラテジスト
半杭 亮一郎
TPPは政府の成長戦略の重要な柱
 TPPが発効すれば、輸出企業のみならず恩恵は幅広い業種に。今後は日本が交渉中である
日欧EPAやRCEP等、他の経済連携の取り組みが前進するかにも注目。
 政府はTPP政策大綱を決定。工業品以外の海外展開も積極化する「新輸出大国」をめざすと
した。中小企業の海外進出支援の加速や農業の国際競争力強化等が盛り込まれる。
 TPPの経済効果について、政府はGDPを実質で約14兆円(2.6%)押し上げるとする試算を
公表。2016年もTPPが株式市場の注目材料の1つに。
世界のGDP4割弱の
巨大経済圏を構築へ
2015年10月に環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る日米等の12ヵ国間の交渉が決
着。これを受けて、政府はTPPへの対応策を成長戦略の重要な柱に据え、取り組み
を強めている。TPPはモノの関税の削減・撤廃だけでなく、サービスや投資の自由
化を進め、競争政策、知的財産、政府調達等、幅広い分野で21世紀型の共通ルー
ルを構築するもの。TPPが発効すれば、世界のGDPの4割弱、人口の1割強に達す
る巨大経済圏がアジア太平洋地域に誕生することになる。
TPP参加国の人口と経済
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
TPP12ヵ国
8.1
28,046
その他世界
40.2
5.1
17,325
EU
18,495
ASEAN
(非TPP参加国)
4.9
14.2
11,797
人口
(億人)
名目GDP
(10億ドル)
1,639
中国・韓国
(注)TPP12ヵ国は、日本、米国、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、オーストラリア、ペルー、
ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダ
出所:経済財政諮問会議資料よりみずほ証券作成
TPPが日本にもたら
すメリット
TPPが日本にもたらすメリットとしては、企業の輸出競争力の維持・向上や、アジア
太平洋地域の国々の経済成長を取り込みやすくなること等が挙げられよう。例え
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
1
2015/12/25
グローバル・マーケット・トピックス
ば、米国で全品目の8割超の関税が発効後に即時撤廃される自動車部品業界等
は、TPPの恩恵をすぐに享受できるとの期待が高い。さらに、関税の撤廃・削減によ
り安い農水産物が手に入るようになれば、消費者ばかりか加工食品メーカーや外食
チェーン等にも追い風となる。半面、農業へのマイナス影響が懸念されているが、
政府が国際競争力強化への取り組みを加速させるとみられること、日本の農水産物
が品質の高さ等から海外でも人気となっていることを考えれば、大きなダメージとな
るかは不透明な部分もあると思われる。
TPPは企業と消費者それぞれに恩恵
▸ 多くの日本企業が活躍しやすくなる
自動車
米国で全品目の8割超の自動車部品の関税がTPP発効後に即時撤廃。完成車も
ベトナムが大型車の高関税(最高70%弱)を10年間で撤廃、カナダも6.1%の関税を5
年間でなくす
コンビニ
ベトナムやマレーシアで出店規制や外資規制を緩和
金 融
ベトナムやマレーシアで外資規制や支店開設、ATM設置の条件緩和
医薬品
バイオ医薬品を独占的に販売できるデータ保護期間が延びて8年に
マンガ・アニメ等 著作権の保護期間が作者の死後50年から70年に。海賊版の取り締まりも強化
建設、鉄道等
アパレル
新興国での橋や鉄道整備等、インフラ整備受注のチャンスが広がる
原材料調達や生産工程の自由度が高まる
▸ 消費者や加工食品メーカー、外食チェーン等は安い農水産品が手に入るように
牛 肉
38.5%の関税を段階的に引き下げ16年目以降9%に
豚 肉
中・低価格品にかかる関税が1キログラム当たり482円から段階的に引き下げられ
10年目以降50円に
鶏 肉
8.5%~11.9%の関税が段階的に撤廃
コ メ
米国とオーストラリアに無関税の輸入枠新設。米国は5万トンから段階的に引き上
げ13年目以降は7万トン
小麦・乳製品
低関税・無関税で輸入する枠を拡大
水産物
アジ、サバは12~16年目までに関税を撤廃。主要なマグロ類、サケ・マス類等は
11年目までに撤廃
ワイン
輸入価格の15%か1リットル当たり125円の関税が8年目にゼロに
出所:内閣官房TPP政府対策本部資料よりみずほ証券作成
世界との経済連携が
さらに加速するかに
も注目
TPPが妥結したことで、今後は経済規模の大きい自由貿易協定(メガFTA)づくりが
世界で加速する可能性が指摘されていることも、経済連携の取り組みで出遅れてき
た日本にとって注目される点である。政府の成長戦略では、FTAを結んだ国・地域
との貿易額が全体に占める比率(以下、FTAカバー率)を2018年までに70%を目指
すとしているが、現状は22.3%にとどまる。しかし、TPP締結によりFTAカバー率は
37.2%に拡大する見通し。さらに、日本が交渉中のEUとの経済連携協定(EPA)、日
中韓FTA、日中印等の計16ヵ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の前
進も期待される。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
2
2015/12/25
グローバル・マーケット・トピックス
TPP締結によるFTAカバー率の拡大見通し
日本
14.9
22.3
米国
40.1
発効済FTA
7.3
署名済FTA
EU
29.6
1.1
TPP
中国
27.5
6.8
韓国
40.7
0
10
20
21.8
30
40
50
60
70
(%)
出所:内閣官房TPP政府対策本部資料よりみずほ証券作成
TPP 政 策 大 綱 が 決
定、中小企業や農業
の海外展開を支援
こうしたなか、政府は2015年11月下旬にTPPの国内対策となる「総合的なTPP関連
政策大綱」を決定した。TPPが発効すれば、参加国域内でヒト・モノ・カネの流れがよ
り活発化すると期待され、製造業やサービス業、マンガ・アニメといったコンテンツ産
業等、幅広い分野で輸出拡大を図る方針が掲げられた。一方、農業については、
体質強化の取り組みと、コメや牛・豚肉等の重要5品目の生産農家に対する支援策
という、「攻め」と「守り」の対策が盛り込まれている。
TPP政策大綱で掲げられた主な施策・数値目標
新輸出大国
▸
▸
▸
▸
(億円)
<TPPの活用促進>
10,000
中小企業等の海外進出の支援強化⇒新輸出大国コンソーシアムの創設
20年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標の前倒し達成
18年度までに約200億円の放送コンテンツ関連海外売上高(13年度:105.7億円)
20年に約30兆円のインフラシステム受注(13年:約16兆円)
グローバル・ ハブ
<TPPを通じた「強い経済」の実現>
▸ 対内直接投資の促進⇒18年度までに計470件のJETROによる外国企業誘致
▸ 訪日外国人客が2,000万人となる年に同旅行消費額を4兆円に拡大
農政新時代
農林水産物・食品の輸出額
<農林水産業>
8,000
目標を
前倒し
6,000
4,000
2,000
▸ 農地の大区画化の促進、次世代を担う経営感覚に優れた人材の育成
▸ 高性能な機械・施設の導入等による農家の収益力・生産基盤の強化
▸ コメや牛・豚肉等の重要5品目の生産農家に対する経営安定化策
出所:「総合的なTPP関連政策大綱」等よりみずほ証券作成
0
10 11 12 13 14
20
(年)
出所:農林水産省資料等よりみずほ証券作成
TPPを活用した輸出拡大では、特に中小企業の海外展開支援策を積極化する。具
体的には、国や商工会議所等が参加するコンソーシアム(官民連合)を創設し、製
品開発や販路獲得を後押し。支援対象企業の市場開拓・事業拡大成功率を6割以
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
3
2015/12/25
グローバル・マーケット・トピックス
上とする数値目標も掲げた。また、農林水産物・食品の輸出額を20年に1兆円(14
年:6,117億円)にする従来目標も前倒しする。さらに、TPP効果で海外から投資や
旅行客を呼び込むこと等で、日本をグローバル・ハブ(貿易・投資の国際中核拠点)
にする方針も明記。18年度までに計470件以上の海外企業の誘致や訪日客の消費
額を早期に4兆円(14年:2兆278億円)にすること等を目指す。農業の体質強化に
向けては、農地の大区画化や次世代を担う人材の育成、高性能な機械・施設の導
入等により、国際競争力の改善を図る。
2016 年 も TPP が 株
式市場の 注目材料
に
TPP政策大綱を巡っては、農業対策として農家の保護政策にも重点が置かれたこと
や従来の成長戦略を焼き直した数値目標も目立つこと等で踏み込み不足との指摘
もあるが、TPPの恩恵を実感しにくい中小企業に目を向けたこと等は前進。2015年
12月下旬には、TPP発効にともなう経済効果の政府試算も公表され、国内総生産
(GDP)を実質で約14兆円(2.6%)押し上げ、80万人の新規雇用を生み出すとした。
さらに、16年の通常国会ではTPPの批准が大きな焦点になるとみられるうえ、同年
秋をめどに政府は農林水産業の成長産業化を一層進めるための戦略や、日本の
産業の海外展開等をより加速させるのに必要な政策について、具体的な内容をまと
める予定。株式市場でも、TPPが日本経済に与える効果への期待が相場全体を下
支えるとともに、輸出増加や事業拡大、採算改善等の恩恵を受けるとみられる銘柄
群が注目される展開が続くと思われる。
TPP効果で輸出増加や事業拡大、採算改善等が期待される主な銘柄
▶ 関税の削減・撤廃で採算改善が期待される輸出企業
乗用車
商用車
自動車部品
トヨタ自動車(7203)、富士重工業(7270)
いすゞ自動車(7202)
デンソー(6902)、カルソニックカンセイ(7248)、ケーヒン(7251)、アイシン精機(7259)
▶ 政府が推進するコンテンツやサービス、技術等の輸出拡大戦略が追い風となる企業
コンテンツ
インフラシステム
バンダイナムコHD(7832)、スクウェア・エニックスHD(9684)
日揮(1963)、日立製作所(6501)、三菱重工業(7011)
▶ 安価な原材料が使いやすくなることが期待される加工食品メーカーや外食チェーン
食肉加工品
日本ハム(2282)、林兼産業(2286)
米菓、つまみ
亀田製菓(2220)、なとり(2922)
小麦加工品
山崎製パン(2212)、東洋水産(2875)、日清食品HD(2897)
チーズ等の乳製品
六甲バター(2266)、明治HD(2269)
牛丼等の外食店
ゼンショーHD(7550)、吉野家HD(9861)
▶ 国内農業の成長産業化の推進で注目される企業
農業関連メーカー
農業資材の販売
サカタのタネ(1377)、日本農薬(4997)、井関農機(6310)、クボタ(6326)
コメリ(8218)
▶ 物品の取引や物流にかかわる企業
物流関連・商社
ニチレイ(2871)、丸紅(8002)、三菱倉庫(9301)、上組(9364)、近鉄エクスプレス(9375)
(注)上記銘柄はみずほ証券が任意に選定したもの
出所:各種資料よりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
4
2015/12/25
グローバル・マーケット・トピックス
金融商品取引法に係る重要事項
■国内株式のリスク
リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化
等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。
■国内株式の手数料等諸費用について
○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料
をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税
込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。
○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。
○保護預かり口座管理料は無料です。
■外国株式のリスク
○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含
む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込
むことがあり、損失を被ることがあります。
○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与
えることがあります。
○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が
当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。
○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売
却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市
場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し
ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。
○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商
品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。
■外国株式の手数料等諸費用について
○外国委託取引
国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および
諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。詳
細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金に
対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、
約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。
○国内店頭(仕切り)取引
お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別
途手数料および諸費用はかかりません。
○国内委託取引
当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託
手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に
97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。
○外国証券取引口座
外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券取
引口座管理料は無料です。
外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決
定した為替レートによるものとします。
商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または
お客さま向け資料等をよくお読みください。
商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-151225-07
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
5