2015/ グローバル・マーケット・ トピックス 3/30 投資情報部 シニアストラテジスト 半杭 亮一郎 医療ツーリズムの強化は次の成長戦略の重要施策 成長戦略の再改訂版では、医療ツーリズムに関する一連のサービスを提供する企業を政府 が認定する仕組みづくりや、日本の医療機関の情報を一元的に提供できるシステムの構築 等が盛り込まれる見通し。 外国人患者の受け入れ先としてアジア諸国が存在感を高める。一方、日本もここ数年で医療 ツーリズムを成長分野として育成する動きが加速。 国内外で高度な医療インフラの構築が進むとみられるなか、医療機器メーカーに注目。訪日 外国人患者が増えれば、運輸や旅行サービスをはじめとする観光関連企業にも追い風。 医療で日本に渡航す る魅力を高め、訪日 客数のさらなる拡大 を目指す 安倍政権が6月をめどにまとめる成長戦略の再改訂版では、「医療ツーリズム」の 強化が重要施策に1つに掲げられる見通しである。医療ツーリズムとは、居住国以 外の国で医療サービスを受ける目的で、患者が海外に渡航すること。安倍政権は、 日本の新たな成長エンジンとして観光の活性化を推進しており、ビザ発給要件の緩 和や消費税免税の対象品目拡大をはじめとする外国人旅行者の誘致策を実施。 円安等の追い風もあるが、2014年の訪日外国人客数は過去最高の1,300万人超に 達する等、大きな成果を上げている。ただ、現状では買い物やレジャー等が来訪目 的の大半を占めているとみられ、今後、訪日客数のさらなる拡大を図るためには、 国際会議の誘致、ビジネス客の取り込み等に加え、医療で日本を訪れる魅力を高 めていくことが不可欠と認識されているのである。 訪日外国人客数の推移 (万人) (年次:2000~2014) 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 出所:日本政府観光局(JNTO)の資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 12 13 14 (年) 2015/3/30 グローバル・マーケット・トピックス 1/29に政府の産業競争力会議は、新たな成長戦略の検討方針を決定。このなか で、同戦略に盛り込まれる医療ツーリズムの強化策についてのたたき台が示されて いる。それによると、まず来日や帰国の手続き、医療機関の紹介といった治療を受 けるための一連のサービスを提供する旅行会社等を「医療渡航支援企業(仮称)」と して認定するしくみづくりを検討。海外の患者が安心して治療目的で訪日できるよう にする。また、外国人が日本の医療機関を探しやすくする環境も整備。具体的に は、がん治療や再生医療等、世界最高水準の医療を提供する国内医療機関を1つ の仮想「日本国際病院(仮称)」とし、治療内容や患者の受け入れ体制等の情報を インターネットで一元的に提供するシステムの構築が目指されるもようである。 アジア諸国が医療 ツーリズム受け入れ の一大拠点に 医療ツーリズムにより国境を越える患者として富裕層がイメージされがちだが、海 外では低い技術水準や高いコスト等、自国内の医療の問題から国外での診療を求 めている人が多いのが実情で、必ずしも裕福でなくとも海外渡航する患者が増加し ているといわれる。以前の医療ツーリズムは、新興国から先進国への渡航が主流で あったが、近年は先進国から新興国へ向かう新たな流れが加わり、受け入れ先とし て特にアジア地域の存在感が高まっている。これは、欧米に比べて安い診療コスト や最先端で高度な医療技術等を売り物に、タイや韓国、シンガポール、マレーシ ア、インド等の国々が、国策として外国人患者の受け入れを積極化させていることが 背景にある。各国政府は、外貨獲得および内需拡大を目的に、海外に向けたプロ モーション活動や制度改革といった医療ツーリズム推進のための施策を実施。加え て、アジアでは営利企業として経営を行っている民間病院が多いことから、医療機 関側にも新たな収益源として医療ツーリズムに積極的に取り組むインセンティブが 強くあるものと思われる。アジアの医療機関は、国際的な病院品質の評価機関JCI (Joint Commission International)による認証を積極的に取得。世界レベルでの高い 安全基準を有しているとの評価を高めている。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2015/3/30 グローバル・マーケット・トピックス 海外における医療の問題 コストの問題 無保険や低所得のために、国内での高価な医療を受けら れない人が海外で受診 医療技術水準の問題 自国の医療水準が低く、受けられない治療があるために 海外で受診 アクセスの問題 高度医療機関への受診が限定されている、また、必要な 治療を受けるための待ち時間が長いことから海外で受診 出所:医療観光プロモーション推進連絡会のホームページよりみずほ証券作成 JCI認証医療機関数 (機関) 50 40 30 20 10 日本 マレーシア シンガポール インド 韓国 タイ 0 (注)2015年3月時点 出所:JCIのホームページよりみずほ証券作成 日本も将来を見据 え、外国人患者の獲 得に向けた取り組み を加速 一方、日本については、他のアジア諸国と比べて外国人患者の受け入れに大きく 遅れをとってきた。これは、日本では従来、国、地方自治体、医療機関、旅行会社 等の多様な主体が、それぞれの立場で取り組みを進め、戦略に一体感がなかった こと等が背景にあると考えられる。しかし、海外からの患者の受け入れ拡大は、国内 経済にプラスの影響をもたらすばかりか、医療機関の経営改善等も期待されるだけ に、国を挙げて医療ツーリズムを成長分野として育成する動きがここ数年で鮮明化 している。具体的には、2010年に政府が「国際医療交流」という名称で医療ツーリズ ムの推進を国家プロジェクトとして採用。11年には治療等を目的に最長6ヵ月間滞在 できる「医療滞在ビザ」を導入したほか、日本を訪れる外国人患者を支援する官民 組織「メディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)」を設立した。足元でも、上述の通 り、安倍政権が訪日外国人客のさらなる拡大を図るため、医療ツーリズムに力点を 置く方針を示している。この3月には、国家戦略特区の第2弾として、外国人医師が 地方の診療所でも研修医として働ける規制緩和をテコに、温泉を使った医療ツーリ ズムの拡大を目指す秋田県仙北市を指定することも決めた。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2015/3/30 グローバル・マーケット・トピックス 医療滞在ビザの概要 対象者 対象医療機関 一定の経済力を有する者 すべての病院および診療所 受入分野 滞在期間 数次ビザ 有効期間 身元保証機関 対象医療機関の指示によるすべての行為(注1) 必要に応じ6ヵ月まで(注2) 必要に応じ数次ビザを発給 必要に応じ3年まで 登録されている旅行会社および医療コーディネーター等 同伴者 必要に応じ家族や付添の同伴可能(注3) (注1)人間ドック、健康診断、検診、歯科治療、療養等を含む (注2)入院して医療を受けるため滞在期間が90日を超える場合は「在留資格認定証明書」を 取得する (注3)患者との親戚関係は問わない 出所:外務省の資料よりみずほ証券作成 国が医療ツーリズムを強化する理由として、将来的に国内の医療産業は海外から の患者獲得に活路を求めなければならないという事情もあろう。日本は高齢化が急 速に進展しており、当面は医療産業の需要が拡大する見通し。しかし、国立社会保 障・人口問題研究所の人口推計によると、2040年代前半には65歳以上の人口さえ も減少に転じるとみられており、それまでの高齢人口増加で膨らんだ医療インフラを どう維持・活用するかが課題になると予想されているのである。 日本の65歳以上人口の推計 (年次:2010~2060) (2010=100) 140 130 120 110 100 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 (年) (注)各年10/1現在人口、出生中位・死亡中位推計、2010年の人口を100として指数化 出所:国立社会保障・人口問題研究所の資料よりみずほ証券作成 医療ツーリズムの主 な関連企業 医療ツーリズムの広がりで注目される日本企業としては、今後もアジアをはじめ世 界で高度な医療インフラを構築する病院が増えるとみられるなか、海外展開も強化 する医療機器メーカーがまず挙げられる。オリンパス(7733)は消化器内視鏡で世 界シェア7割を保有。心臓血管領域分野で強みを有するテルモ(4543)や、検体検 査機器・試薬のシスメックス(6869)も海外の売り上げ比率が高い。また、外国人患 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2015/3/30 グローバル・マーケット・トピックス 者と日本の医療機関とのマッチングや医療通訳派遣等の一連の受入手配事業を 手掛ける企業として、日本エマージェンシーアシスタンス(6063)等がある。さらに、 日本に渡航する外国人患者が増加すれば、日本航空(9201)やANAホールディン グス(9202)の航空会社、エイチ・アイ・エス(9603)やKNT-CTホールディングス (9726)といった旅行会社等、観光関連企業のビジネス機会拡大も期待される。リ ゾートホテル事業を手掛けるリゾートトラスト(4681)は会員制の検診サービスに注力 しており、今後の医療ツーリズム拡大を視野に入れる。 医療ツーリズムの広がりで注目される主な日本企業 < 医療機器メ ー カー > 4543 6502 6960 7747 テルモ、4901 富士フイルムホールディングス、6501 日立製作所、 東芝、6849 日本光電、6856 堀場製作所、6869 シスメックス、 フクダ電子、6965 浜松ホトニクス、7733 オリンパス、 朝日インテック、7817 パラマウントベッドホールディングス < 医療コ ー デ ィ ネー ター > 6063 日本エマージェンシーアシスタンス < 航空会社、旅行会社 > 9201 日本航空、9202 ANAホールディングス、9603 エイチ・アイ・エス、 9726 KNT-CTホールディングス < 会員制検診サー ビス > 4681 リゾートトラスト (注)関連企業はみずほ証券が任意に選定したもの 出所:各種資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5 2015/3/30 グローバル・マーケット・トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。詳 細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金に 対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券取 引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-150330-07 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 6
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