事 例 2 私たちが見本になることで 明るく元気な現場をつくりたい ジーエスエレテック 生産推進室 係長 製造部 豊田工場 生産グループ2 係長 帖地 禎江氏 助供 礼子氏 自動車用ワイヤーハーネスの製造を手がけるジ ーエスエレテック (愛知県豊田市) 。直接製造部門 における全社員女性比率は 80%を超える。女性目 現場作業者からチームリーダーを経て 係長に昇格 線の経営を主眼に置き、近年は女性係長も続々と 同社の主力製品は自動車や二輪車などに搭載さ 誕生している。その第1号が生産推進室係長の帖 れるワイヤーハーネス。人間の神経のように命令 地禎江氏。生産部門でチームリーダー、現場係長 系統として用いられる重要部品である。本社豊田 を歴任し、現在は後進の人材育成に力を注ぐ。一 工場をはじめ国内に4つの製造拠点をもつ。その 方、製造部豊田工場生産グループ2係長の助供礼 生産部門の戦力となるのが女性従業員だ。 子氏は生産現場の最先端で舵を取る。 「自分たちが 帖地禎江氏は子育てが一段落した後、2005 年同 見本となることで後進を育てたい」という信念の 社に入社した。初めは組付作業を担当し、チーム 下、それぞれの現場で奮闘する。 リーダーをサポートするサブリーダーを経て、チ ■会社概要■ 会 社 名:㈱ジーエスエレテック 所 在 地:〒 473-0916 愛知県豊田市吉原町平子 58 番地 1 設 立:1969 年 従業員数:882 名 事業内容:ワイヤーハーネスをはじめとする自動車用電装 部品の製造・販売 26 ームリーダーに。作業管理から人員配置、シフト、 残業などの管理業務、安全・品質・生産性に関わ る業務まで担当した。そして 2008 年、改善の専門 部署が発足したことにより、立上げメンバーに選 ばれた。一からトヨタ生産方式や改善知識を学び、 各現場で改善を実践し、社内に広める役目を担っ た。その後、再び生産ラインのチームリーダーに 戻り、生産現場の係長に昇格。現在は現場の一線 Vol.62 No.9 工場管理 特集 改善の気づきを発信する「夢工場マップ」は全拠点で展開 製造業女性キャリアアップの秘策 品質チェックの有無をひと目でわかるように点検項目 を「レ点チェック」を導入。女性のアイデアが光る から離れ、生産推進室係長として全社の人材教育 強くなっていた最中での昇格の話だった。 に携わっている。 「そうした思いにいち早く上層部が気づいていた 助供礼子氏は 2002 年に入社し、ワイヤーハーネ からこそ、彼女に白羽の矢がたったのでしょう」 ス製造の切断圧着で現場作業者としてスタート。 と生産推進室室長の角谷裕克氏は話す。チームと その後、チームリーダーを約4年間務め、15 人の いう限られた世界ではなく、もっと広い視点でそ 部下をまとめた。3年後、生産グループ2の係長 うした思いを実現してほしいと当時の上司は粘り に昇格。現在は総勢 62 人のグループを率いている。 強く説得した。 ラインの構成など調整業務から、チームリーダー 助供氏もグループ2でのチームリーダーの実績 からの報告のとりまとめ、会議用資料の作成、上 が2年しかなかったため、「初めは『私は無理で 層部への発表・報告、部下・後輩への指導・育成 す』と断りました」と振り返る。そこには、係長 など現場係長が担う役割は幅広い。日々刻々と状 になれば成果を求められるようになり、それに自 況が変わる生産現場の最前線で指揮を執る。現場 分のスキルで応えることができるのかという大き の係長は、あらゆることを一手に引き受ける「現 な不安があったからだ。しかし、 「できるだけがん 場のスーパーマン」とも言えよう。 ばってみよう」という前向きな気持ちに切り替えた。 監督職の打診に初めは固辞 しかし強い責任感が奮起させる 現在の職務はそれぞれ異なるが、2人とも生産 現場でチームリーダーを経て、監督職に就いた。 チームリーダーは、いわば監督職への登竜門。そ 監督職という重要任務を命じられ、初めは不安 や心配などの気持ちに駆られながらも、与えられ た任務に応えたいという強い責任感が2人を後押 しした。 係長として求められること れを潜り抜けた2人だが、 「初めは抵抗感があっ た」と口をそろえる。 では、チームリーダーと係長との違いはどこに 帖地氏は係長昇格の打診を受けた時、初めは固 あるのだろうか。それは、現場業務以外の能力が 辞したという。 「改善を経験して再び生産ラインの 求められるようになるということだ。係長になる チームリーダーに就いて2年間、メンバー1人ひ と、会議で上層部に報告するという任務が新たに とりを育てたい、現場を明るく元気にしたい。不 加わる。ここで苦労したと語るのは助供氏。チー 安より現場でやりたいことがまだまだたくさんあ ムリーダーまでは生産現場中心の業務だったため、 ったことが、断る最大の理由だったのかもしれま パソコンとは無縁だった。ある時、社長に現場改 せん」と本音を明かす。少しでも作業をやりやす 善の報告をする機会があった。 くするという改善の面白さに目覚め、それを自分 「ある日会社に行くと、机の上に1台のパソコン の現場で実践し、 「現場を変えたい」という思いが が置いてあって、さて、どうしようと困りました。 工場管理 2016/08 27
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