新製品立上げ時のトラブル対応と予防対策の進め方 事例4

事例 4 新製品立上げ時のトラブル対応と予防対策の進め方
[事例企業 D 社の概要]
・創業:1930 年 ・対象事業部の概要:樹脂製品事業部
・資本金:10 億円
社長
・従業員:200 名
・事業内容:合成樹脂加工・販売、
購買部
品質管理部
生産部
生産管理部
生産準備部
開発部
・開発リードタイムは、2〜5年
品質管理部
・事業部:樹脂製品事業、コンクリート事業
経営企画部
各種セメント二次製品加工・販売
・樹脂製品事業部の雨水貯留浸透品は、市場
ニーズが高まり、売上が急増している
・都市アメニティー向上のため、道路周りや地下など用途に合わせた開発が求められている
1.D 社の重点課題
D 社は、樹脂製品の製造、加工メーカーとして固有技術を保有し、開発力は高い。しかし営業、開
発・設計、製造のコミュニケーションが密にとれていないことから、新製品立上げ時の先方の仕様の
変更に対する対応が遅い。それに加えて、新しい材料・部品、金型や治工具に起因した予想される不
具合について分析などを行っておらず、事後対応が多く、問題が次々と発生。スケジュール通りにス
ムーズに製品が立ち上がらないことが多い。
2.D 社の問題点
・新製品テーマごとの概略仕様、スケジュールが全部門で共有できておらず、スケジュールのプロセ
ス管理ができていない。懸念事項の検討、対策がとられていない。
・初期流動管理で懸念事項を十分に顕在化できず、後でトラブルが発生することがある。
・設計変更による工程遅れが多く、工程遅れが発生し、スケジュール通りに新製品を立ち上げられな
いことが多い。
・変更に対しての作業標準が明確になっておらず、仕事の進め方が属人的になっている。
3.事例テーマにおける問題解決のステップ
①問題解決の進め方
・新製品立上げ時にトラブルが多く、品質、納期面で顧客に迷惑がかかっていることから、
「新製品
立上げトラブルをなくす」ことを経営トップから各部門長に厳命され、各部門のリーダーをメン
バーとするプロジェクトチームを立ち上げた。
・新製品立上げの業務フローを作成し、懸念事項や潜在的な問題が検証されないなど業務の進め方
に関しての問題点を書き込み、問題を顕在化させる。
・ステップごとに業務上の問題を出した後、特にトラブルの推定要因になりそうな重要な根本問題
を絞り込み、重要度順にランキングを付ける。おのおのの問題に対して、なぜなぜ分析で真因を
明確化した後、対策の方向性を導き出す。
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Vol.62 No.14 工場管理
特集 現場改善力を鍛える!極める!問題解決アプローチ術
・対策評価表で上記の内容を体系化し、生産性、品質、コスト、難易度、効果から総合的に対策の
順位を決め、順位の高いものから取り組む。
②活用する問題解決手法
製品立上げ業務フロー、問題点洗い出し表、なぜなぜ分析、対策評価表
4.問題の抽出および問題を層別する問題解決手法
①問題抽出の考え方と手法
新製品企画が承認後の新製品立上げの業務フローを作成。現状の業務の流れ、進め方では、懸念事
項や潜在的問題の検証がされない、先行きのリスク要因を潰し込めないなどの問題点をプロジェクト
メンバーで顕在化した。
②層別と問題の絞り込みの考え方
・ステップごとの問題、全体の問題を顕在化したうえで、
「重要度・緊急度・拡大度」の3つの視点
で問題を評価し、順位を付ける。
・開発設計ステップでは、デザインレビュー(DR)開催時の問題点として、「DR 開催が単なる報告
会になっていて、検討の場になっていない」が根本問題として見えてきた。また、
「担当者間でも
仕様変更が行われるなど承認を受けずに仕事が進む」ことも重要問題として顕在化された。
・全体に関する問題に対しては、
「開発∼量産までの全体の工程管理がされず、工程遅れが発生して
いる」のが根本問題として見えきた。
新製品立上げ業務フロー・問題点洗い出し表
主管部門
ステップ
開発
生産技術
製造
ステップごとの業務上の問題点
基本設計・詳細設計→開発結果の検図方法の不備・バラツ
キがあり、次工程でのロスが発生している
開発計画
1 デザインレビュー→ DR 開催時の問題点:単なる報告会に
なっていて、検討の場になっていない
DR 開催後の問題点:開発リードタイムが短いなどの理由で、
DR の結論が未実施。DR の検討と異なる方向で開発が進め
れている
構想設計
開発
・
設計
品質管理
基本設計
仕様変更の狙いや目的が明確にされないまま、仕様変更個
所のみが提示されるケースが多い
詳細設計
変更に対する設計基準、検査基準が作業標準として明確に
なっていない
デザインレビュー
4 担当者間で仕様変更が行われるなど、承認を受けずに仕事
が進むことがある
部品内外作決定
生産準備
生産準備基準が整備されておらず、効率的な工程設定・工
程設計作業ができない
設備・治工具設計、製作
2 品質を確実につくり込むための作業標準、検査基準になって
生産、量産試作・評価
おらず、必要なポイントが具体的な形で網羅されていない
3 過去の開発、製造、納入時に発生したトラブルを再度発生
量産
生産
共通の問題点
工場管理 2016/12
させないための根本対策、予防対策が十分でなく、初期流
初期流動管理 動管理にも過去の失敗が活かせず、再発不良が起きること
がある
開発∼量産までの全体の工程管理がされず、工程ごとに工
程遅れがが発生している
書類の流し方や伝達の手段の問題で業務停滞をすることが
ある
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