トルコ、クーデターは鎮圧したものの

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欧州
2016年7月21日
トルコ、クーデターは鎮圧したものの
トルコのクーデターは発生翌日には鎮圧されたため、市場への影響は限定的との期待もありましたが、足元リラ安が
進行しています。エルドアン政権のクーデター後の対応の行き過ぎへの懸念と、格下げが理由として考えられます。
トルコリラ:過去最安値を更新-S&Pが格下
げ、見通しネガティブ
格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)は2016年7月20日、
トルコの外貨建て長期債格付けをBB+からBBへ、自国通貨
建て長期債格付けをBBB-からBB+へそれぞれ1段階格下げ
しました。見通しは弱含み(ネガティブ)としています。
トルコでは7月15日に軍の一部勢力によるクーデター未遂が
発生、翌日には鎮圧されたものの、トルコ政府は20日に非常
事態宣言を発令するなど情勢は依然混沌としており、通貨リ
ラ安が進行しています(図表1参照)。
ピクテ投信投資顧問株式会社
3.1 リラ/ドル
※1bp=0.01%
bp
350
3.0
300
2.9
2.8
250
2.7
2.6
15年7月
トルコリラ(対ドル、左軸)
トルコCDSスプレッド(右軸)
15年10月
16年1月
16年4月
低 信用力 高
トルコのクーデターは発生翌日には鎮圧されたため、市場
への影響は限定的との期待(?)もありましたが、足元リラ
安が進行しています。エルドアン政権によるクーデター後の
対応の行き過ぎへの懸念と、格下げが主な理由として考え
られます。
トルコのクーデターは週末(7月15日)に発生しましたが、民
間の支持が無く、早急に鎮圧されたため、週明けの市場(リ
ラ)は落ち着いた動きとなるとの期待もありました。しかし、エ
ルドアン政権はクーデター未遂後、警官、公務員、教員、大
学学部長など政敵であるギュレン師関連勢力を一斉に排除
する動きが報道されています。市場は一斉排除の行き過ぎ
を懸念、報道に連れリラ安が進行する格好となっています。
また格付け会社はクーデター後のトルコの信用力を懸念、
S&Pの格下げ以外にも、ムーディーズ・インベスターズ・サー
ビスは18日にトルコにネガティブウォッチ(格下げ方向で検
討)を付与しています(格付けはBaa3で据え置き)。
トルコの信用力が懸念される要因をあげると、対外債務水
準の大きさ(図表2参照)と返済能力への不安があります。例
えばトルコの今後1年の対外債務返済額はGDP(国内総生
産)の約25%程度と推定されています。トルコ当局は対外負
債依存度の高さに改革を試みてきましたが、クーデター後に
図表1: トルコリラ(対ドル)とCDSスプレッドの推移
(日次、期間:2015年7月21日~2016年7月21日(日本時間午前))
安 リラ 高
どこに注目すべきか:
非常事態宣言、格下げ、対外負債、観光客
改革の機運が後退することも懸念されています。
格付け会社はトルコ経済の悪化も懸念しています。トルコ経済
は過去テロなどへの抵抗力を示してきましたが、投資は減少
傾向で、また観光客は既に急減(図表2参照)しており、同国
GDPの数%とはいえ、政情不安が続いた場合には重要な外貨
獲得手段であった観光産業への更なる影響が懸念されます。
クーデター後の安定した社会を取り戻すため、ある程度の強権
は必要かもしれませんが、市場などの反応を見る限り、トルコ
の政策が理解されているとは言いがたいと思われます。
200
16年7月
※CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):信用リスクを対象としたデリバ
ティブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安
図表2: トルコの外国人観光客と対外債務の推移
(月次、期間:2011年7月~2016年5月、対外債務は四半期)
40
%
トルコ外国人観光客(前年同月比、左軸) 億ドル 4,500
対外債務残高(右軸)
20
4,000
0
-20
-40
11年7月
テロ活動の増加などを
受け外国人観光客は
急減
13年7月
3,500
3,000
15年7月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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