財務管理論後期(6)

財務管理論
第6回 証券化とは何か
講師 福光 寛(成城大学経済学部教授)
証券化の技術
• 証券化
•
優良債権の選別 債権形成時
•
集合債権化 投資先の小口分散
• 信用補完credit enhancement
• 内部 spread account; over-collateraization
• 外部 保険など CDS
• 優先劣後構造
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証券化
• 従来の資産流動化 lease and sales-backとの違い
古くからある lease and sales-back
資金繰りのため資産を見かけ上売却
• 高格付け 投資対象として人気広がる
• 価格 市場価格 だが 売買なければ理論価格
• 投資資金の外部化(外部のあるいは第3者の投資家による投資・購
入)
• オフバランスの徹底 → オフバランス化と無責任との関係
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事業証券化WBS
Whole Business Securitization
• 2006年11月 ソフトバンクの出資子会社BBモバイルは、旧ボーダフォ
ン買収資金として1兆2800億円を2006年4月 金融機関から短期借
入。この返済のため携帯事業から生じる将来のCFを裏付けに1兆
4500億円に及ぶ事業証券化を行った。
• 2002年から2006年にかけて、有料道路、ゴルフ場、パチンコなどの事業
証券化の事例が現れた。とくにパチンコは上場という資金ルートが、国内で
は閉ざされた中で、事業証券化により調達した資金で大規模化を図ると
いう戦略性が興味深い(ダイナムが2012年にホンコンで上場した)。
• 2005年12月 ジャスダックがピーアーク(パチンコ準大手)の上場申請
を不受理(背景にサラ金の武富士でのトラウマ。武富士は1996年6月
Jasdaq1998年12月東証一部。上場を手伝った野村を街宣右翼が批
判。なお武富士は2010年9月末会社更生法申請。現在は再建)
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2007年金融危機
• 本体企業からの資産のオフバランス化の手段
•
企業の資産流動化を促す 保有資産の圧縮
•
資金調達
• サブプライム破綻率の増加
• 証券化商品への疑心広がる
• 格下げ 価格の暴落
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損失の表面化 オフバランス
•
時価の表面化 捨て値による売却広がる 流動性低下で損失額も膨
らむ経験
• (日本)出資5%未満なら連結対象外 5%ルール 2000年
多くの企業は出資比率引き下げへ
•
しかし実質的に支配しているSPCを連結対象に 『実質的』認定にア
イマイさ残る 発行者として責任とわれる
•
•
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格付け会社の責任
証券化を高い格付けで推進
もともと新しい分野でデータの蓄積が不足
問題が起きると格下げを行い事態を悪化させた。格下げが遅かったという批判も
ある(最高ノトリプルAから短期間に投機的に変更。リーマンの破たんは見抜けず
直前まで投資適格としていた)。→投資家から訴訟 各国政府は規制の動き示
す
問題が起きると自身の責任を否定した(格付けは意見に過ぎない など)
規制案(2008年6月) データ 計算方法の開示 営業部門との利益相反
行為の禁止 過去の格付け見直し過程のデータ開示 証券化商品と他の金融
商品の格付け表記の区別
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収縮した證券化市場 CDS市場
• ABS 無責任ローンを売却した作り手 リスク回避が無責任につながった・・・発行者に
5%保有義務付ける(目論見書提出から発行まで最低5日間かけることを求める な
ど)規制案 2010年4月 SEC
• 米のピーク 2006年9200億ドル 2009年3200億ドルに激減
• CDS 保険契約のようなものだが 店頭デリバテヴ市場 取引所のそとにあるものをどうす
るか(CDSの空売り 投機的な取引が問題にされた CDSの高止まりがギリシャの財政
悪化につながったとの批判) AIGが巨額の売り手になっていた(AIGへの)公的資金
投入につながる) 2007年末の世界市場の規模60兆ドル(62.2兆ドル) 2007
年下期ヲピークに市場は縮小(10年上に26.3兆ドル)
• 日本では 金融機関などはわずかに売り建て(地銀は100%売り建て メガは反半分
ほど) クレジットリンク債の購入 ファンドなどがわずかに買い建てが多い
• 保険として購入 投資として購入 リスク局面で値上がり
• CDS取引きを束ねたCDO(合成CDO)も登場。
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社債投資家
• 投資先に絡むM&A クレジットリスクに影響 CDS投資増やすことにつな
がる。CDS自体が相場が動いてゆく。
• 欧州ではCDS取引き規制案(2010年3月~10月)
• 債券市場にヘッジ効果
• CDSの売り手が破たんすることによる買い手ノリスク カウンターパーティリス
ク
• シンセテックCDO(CDSを組み込んだ証券化商品)
• CDSの指数 アイトラックスジャパン(国内主要50社)
•
マークイットが算出する欧州金融CDS指数
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証券化の失敗
• 日本の証券化 1994年の自動車ローン証券化が最初。2007年に8.5兆円。
米国の発行額8600億ドルの10分の1にとどまるまま縮小
• 特別目的会社形式多い。融資 不動産を担保に有価証券発行。
•
統計にはドイツ証券によるものと 日本証券業協会(-全国銀行協会)によ
るものとがある。
•
投資家である金融機関 ヘッジファンドが撤退 買い手がいない状態。作り手
の外資系証券も業務撤退。
• 2009年3月末 国内預金取り扱い金融機関の証券化商品関連損失3兆
3020億円(実現損2兆5350億円 含み損7670億円 2008年12月比
1.9%増)2009年9月に評価損(含み損)は3350億円まで縮小
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金融機関への規制強化
• 2011年12月期 金融機関に対して証券化商品ノリスク開示義務化
単なる証券化商品か 再証券化商品か 後者のノリスクウェイトを現在の
2倍に強化 安易な高リスク投資をけん制
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続く責任追及
• JPモルガンチェース(08年ベアスターンズ ワシントンミューチュアルを救
済合併) MBSの不正販売 総額130億ドルで和解の方向
(2013・10・21)和解金は90億ドル 最終的には130億ドルにまで膨
れる恐れ(2013・10・25)
• JPモルガンチェースほか同社救済の2社 → 米連邦住宅抵当公社
ファニーメイ 例連邦住宅貸付抵当公社フレデイマック にMBSの中身
を偽って販売 → 2008年9月 両公社は経営破綻に
• 同様の責任追及は他の金融機関に対しても行われているがモルガンの分
は特に金額が大きいので注目されている
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• 住宅ローン リース債権 などの現金収入をベースにできるはずだが
• 住宅金融支援機構 発行分MBS 低リスク 商品も複雑でない
• 複雑な商品はリーマンショック以降敬遠されている。
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ソフトバンク
• 割賦債権流動化を継続 09年3月期で 2000-2200億円
• 2010年3月期も22%増し2550億円計画(09年3月)
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証券化とは何かさまざまな手法の存在
• 間接金融の直接金融への移行 相対型から市場型へ
シンジケートローンなど市場型間接金融
含意:相対型条件から市場型条件への移行
• 資産の証券化 ABS、MBSなど
含意:すでに存在する不動産や貸付債権などの流動化
• 事業の証券化 LBO、MBO、PFIなどで応用
含意:今後発生するCFをどう見込むか
• 不動産投資の証券化 REITなど投資信託投資法人の導入
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証券化
• メリット これまでとは別ルートの形成となる
• メリット 大量の資金を市場レートで投資家から調達できる
• デメリット 組成にはそれなりにコストがかかる。高い格付け企業は自身で
発行すれば安上がりのはず。
• 通常の資金調達に困難を抱える企業が利用するのでは。
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証券には2つのタイプがある
• 収益が確定的なもの 例示 固定利付債券
解釈 他人資本にとどまり自己資本としてのリスクを負担していない。
• 収益が不確定なもの 例示 株式
証券化商品
解釈 自己資本としてのリスクを負担している 証券化で出される証券の収益は
実は不確定という点ではこちらに似ている。
• 証券の特徴:同一権利内容のものに細分できる(分割可能性)また譲渡できる(譲
渡可能性、売買可能性)。発行側からは資金調達。購入側からは資金運用。
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募集にも2つのタイプがある
• 私募private placement 証券化の多くはこの私募によるものだったと
考えられる。
• 公募public offering
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これらの定義に共通していた要素とは何か
• 証券化するCFを特定していること(担保資産を特定したノンリコース型
であること)
• リスクに見合ったリターンの追及(背景にある政策的低金利問題)
• 特定することで生まれるメリット 権利義務関係の透明化
• 格付け機関の関与
• オフバランスシート化の追及
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見直される証券化
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格付け機関への 批判
• 投資家の判断で大きかった存在(格付け機関への依存)
• 異なる投資対象を同じ表記で示す矛盾
• 繰り返された突然の格下げ
• スキームの遠隔化、複雑化
• 収入源となる証券化を意図して拡大したという批判を浴びる
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オフバランスシート化の挫折
• 証券化はオフバランスシートのため。あるいはオフバランスシートが可能であ
るため、過大なリスク取り入れが行われたとの批判。
• オフバランスシート化は、企業活動の実態を過少に示すとの反省。
• 投資家にとっては、オフバランスシートでない方がより安全という考え方の拡
大。→カバードボンド。
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低金利下の運用対象としての見直し進む
• 不動産投資で復活の兆し(REIT 不動産ファンドなど 今後は国
外での展開が加速が見込まれる)。
• 公共事業における予算制約 大規模公共事業の必要性 → 多種多
様なPFIが急速に拡大する可能性。
• 事業会社の業務内容再編の動き あるいは株価下落そのものが企業再
編:M&Aをもたらし証券化手法による資金調達の拡大につながる。
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流動化から買戻しへの逆転
• 流動化そのものが困難に(不動産市場低迷)
• SPCへの融資金利上昇
• オペレーテイングリース案件 ⇒
資産計上化 有利子負債の増加につながる
• 機動的改装が困難
• 賃料負担減らす(損益改善効果大きい)
• 消費低迷 新規出店より既存店改装
• 資産に余裕のある会社は買戻し始める
• 買取価格低下(買取)
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買戻しの事例
• 高島屋 2013年12月 新宿店 立川店 信託受益権買戻しで賃料
負担軽減が決まった。CB発行で654億円調達とのことなど。取得に要
する金額はこのうち新宿店については約1050億円。立川店については約
120億円とされる。
• NEC 2002年に証券化した玉川ルネッサンスシティの買戻し。2013
年9月末で575億円で。
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地価
• (基準地価 都道府県賀調査7月1日時点 発表9月)
• 13年下期から14年上期
• 3大都市圏では地価上昇傾向(上昇は8都府県) 人口減進む地方圏では
下落続く
• (路線価 国税庁1月1日調査 発表7月)
• 全国平均は下落続くが8都府県で上昇(東京大阪神奈川のプラスは6年ぶ
り)
• オフィスビル空き室率2010-2012年のpeak 13年14年と減少
都心オフィス12年頭9%台 14年夏6%台
• 中古マンション価格 12年後半13年前半を底に上昇に転じる
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注意すべき 証券化の制約
• コベナンツファイナンス(CF使途の制約 財務上の条件の厳守 Co
C=Change of Control条項など)を事業展開上の制約とみる動き
もある
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不動産の証券化は証券化ではないのか?
• 証券化は証券化。しかし資産の証券化でも事業の証券化でもない。その公募増資は不
動産会社の公募増資と性格が似ている。
• 不動産投資は活発
• REIT 法人税の免除と引き換えに利益の90%以上を分配するというもの(上場企業
の利益分配率は平均で30%程度) オフィス・ホテル系…景気の影響うけやすい 住
宅・商業施設系・・・安定している
• 相場の上昇により利回りは低下
• 国債利回りとのスプレッドが3%以上必要とのこと
• 2014年4月を底に上昇続く
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