証券市場論後期(15) 講師 参照 福光 寛 福光証券市場論前期(8) Hybrid Finance ; Debt Restructuring ; Basel Ⅲ Framework To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 1 Great Rotation 2013年に入るところ で話題になる リスクオフからリスクオ ンへ • • • 2013年10月~11月下旬 • • • 債券相場の落ち着き 2013年11月7日 金融緩和の長期化 欧州中央銀行が利下げ決定 過去最低0.25%に 2014年2月にFRB議長の就任するイエレン議長が景気回復 を優先する姿勢 買いに安心感 9月上旬の3%前後から2.5%台に低下 株式(2003年以来の上昇年初から23% 11月末) 投資マネー 債券から株式へ(債券相場↓ 国際商品↓ 株式相場 ↑) 11月21日ダウ1万6000ドル台(10月初旬の1万 5000ドル割れから回復 1月初には1万3500㌦未満だった)。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 2 株式市場の活況 • • • • • • 2013年4月から5月 • 2013年11月22日 準 • 2013年11月28日 一時1万5660円まで上昇 終値1万5727円今年の高値を更新 先進 国相場を日本がけん引。 1日あたり4兆超を超す日が目立つ活況 2013年5月22日日経平均1万5627円の高値 5月23日急落1143円安 2013年9月8日 東京五輪決定 2013年10月1日 消費税率引き上げ決定 2013年11月15日 米イエレン次期FRB議長が長期緩和を示唆→日中1万 5000円台回復(午後1時1万5155円) 東証1部 1日で2兆9000億円 4ケ月ぶりの高水 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 3 新興国投資の退潮 • 高成長の終えん ブラジル ロシア インド 中国 Brics • 中国の成長鈍化 農村から都市への人口移動が一巡 成長率は屈折点迎えた • 資源国通貨の下げ(2013年5月から8月) 南 アフリカランド オーストラリアドル ブラジルレ アル → 米量的緩和の縮小でドルへ資金移動 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 4 先物主導の相場 • 日経平均先物の売買が高水準(裁定取引とは現物株と先物の価 格差を利用した取引 裁定取引により値がさ株が値を上げる株 高局面ではすでに上がった先物を売ってまだ安い現物株を買う その後先物が下がるとつまり先物売りの局面で現物に利益確定 の売り あるいは裁定取引の持ち高解消売りとも表現される) • • 現物株売買は盛り上がっていない • 米量的緩和縮小 投資マネーが新興国から流出 現物株に対する先物の売買代金の比率は4割切れから8割超え あたりまで変動している。先物の比率が増えると現物の値動き が荒くなるとされる。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 5 予想変動率(VIX) ベータ値 • VIX指数の動き このような先物主導の相場で市場の値動きが あらくなるとされるなかで 注目されているものにVIX指数と ベータ値がある。 • VIX指数には 米国株のものと日本株についてのもののほか各 地の株価指数について計算されている。株式市場の不安定性がふ えているか。注目はその数値が上昇しているか下降しているか。 日経VIXについては30が目安。米国のVIXはその半分位が目安 だろうか。それぞれの投資家の不安心理を映している。 • 相場が不安定なときは、ベータ値が低い銘柄に注目することが推 奨されている。ベータ値は株価指数との連動性に注目した数値。 完全に一致するものが1。1を基準に数値は大小に分かれる。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 6 海外株 • 日本株が低迷していたとき海外株取引きが注目され たこともある • 外国証券取引口座を開設し米ドルなど外貨を入金し て始める • ネットでできるのは米国、中国などに限られる • 為替手数料+現地の手数料+現地に頼むための手数 料 • 手数料は割高 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 7 TwitterのNYSE上場 2006年サービ ス開始 利用者世界で2.3億人上場で20億ドル規 模入手 • 2013年11月7日 初値45.1$が公開価格26$を70%上回る こ れはITバブルの1999年なみの上昇率 • しかし2013年のIPO146社の平均上昇率は21%(11月2 4日まで) • • • • • • 99年のIPO企業の平均経過年数は4年 13年は11年 ハイテク企業の比率 99年は77% 13年は22% 99年のIPO企業のうち年間5000万ドル以上の売上28% 13年は64% フロリダ大学のジェイリッター教授の調査 日経2013年11月28日による Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 8 地方取引所 • 地方取引所 札幌 名古屋 福岡 → 企業による 重複上場廃止の動きの加速で存続はますます厳しい。 • 地域経済の象徴の側面はあるが。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 9 野村証券 • • 2008年4月 渡部社長(CEO)―柴田副社長(COO) • 買収後 高額報酬の海外スタッフ維持で業績は圧迫され経営の重荷にな る→2009年2回の公募増資7000億円の資本増強でしのぐも社内外で批判続 く • • • • 2008年9月 リーマン買収は戦略ミスか英断か(海外業務の比率が一気に ほぼ半分に上昇)投資銀行での地位上昇狙うが 経営上の無策続く 欧州債務危機後もリストラで出遅れ 2011年新日鉄住金の合併で野村のみ助言業務からとれず 2012年増資インサーダー事件で摘発受ける 2012年7月経営陣刷新(永井CEOー吉川COO体制へ) 経営陣若返り 欧州事 業縮小 国内ーアジアに回帰を決断 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 10 大和証券 • • • • • • 2009 三井住友ファイナンシャルとの提携解消 1999旧住友銀行と法人証券分野で業務提携 2009三井住友と合弁解消(大和証券SMBC正式解消) 独立系総合証券を指向 大和ネクスト銀行 2011年5月設立 2012年4月 大和証券と大和キャピタルマーケッツ合併 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 11 三菱UFJモルガンスタンレー 証券 発足直後につまづく • 2008 三菱UFJは米モルガンに90億ドル出資。三菱UFI証券とモルガ ンスタンレー証券合併で2009年3月に合意(出資比率60-40) • 2010/05 三菱UFJモルガンスタンレー証券(三菱UFJ証券とモルガン日 本法人のM&A助言などインベストバンク業務を統合)とモルガンスンタ レーMUFJ証券(49-59)の発足 • 2011/03 2010/02以降スワプション取引き拡大想定元本130兆円 モル ガンスタンレー引き取りで合意だが損失約800億円 300億円の三菱UFJ HDに割当増資 三菱UFJHDは資産売却するも500億円の赤字 • • 2011/02希望退職の実施 2011不採算店舗の廃止 など 2014/01 米モルガンと国内富裕層向けビジネスを開始へ 三菱UFJモルガ ンスタンレーPB証券設立(2013年10月報道) Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 12 SMBC日興証券 • • • • • • • • • • 2009.4 三井住友FG貸倒引当金計上で2009.3期3千億円規模の赤字計上へ 友FG 最大8000億円の増資方針 三井住 2009.5 日興コーデなどの買収決定 2009.6 増資総額8629億円 追加含め最大9200億円 資本組み入れ予定8850億円 2009 大和SMBCとの統合で大和証券G本社との交渉決裂 2009.10 日興コーデ 三井住友FG子会社として営業開始 2010.1 再度8000億円規模の大型増資 2010/01 三井住友が 日興コーデの法人向け代理店 2011.4 商号変更 SMBC日興証券 2011春 住友信託銀行と中央三井トラストHDの経営統合 2013/04 三井住友B SMBC日興証券と個人業務で一体営業へ Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 13 みずほ 反社会的勢力に間接融 資 • 2010年9月 主に) • • • • 2010年12月 • • • 2013年7月 みずほ銀とみずほコーポ銀が合併 2013年9月 金融庁が業務改善命令 みずほFG オリコをグループ会社化(出資比率5%→27% 伊藤忠に代わり筆頭株 問題融資228件2億円を把握 2011年3月 大規模システム障害 2011年6月 西堀頭取引責辞任 障害対策で問題が放置 オリコに買戻し請求せず放置 後任の塚本頭取に引き継がれず 2013年3月 金融庁検査で問題が発覚 た 147件1.6億円 13年4月以降 みずほは代位弁済をオリコに求め みずほ オリコを介して反社会的勢力に融資 8000億円のうち2億円 個人との接点がない 銀行が安定した利ザヤをかせげるため拡大 3年前(2010年12月)に把握しながら放置 (11年から12年にかけての取締役会資料にも断片的記述)。2013年10月28日社内処 分発表。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 14 みずほ • • • • • 2000.9 みずほHD発足 • 2011.3.14 懲りずに2回目の大規模システム障害 1口座への義捐金の大量振込原因(処理量の限界 超える 直ちに口座の処理容量増やさず) 116万件滞りATMが全面停止19-21 みずほ銀行とコ ーポレート銀行の合併を決断2011.5 発表2011/09 • 2012春 国内最大級2500億円規模のシステム投資(15年度末にシステム1本化 みずほコーポ みずほ信託) • • 2002.4 興銀 第一勧銀 富士 みずほ銀とみずほコーポ銀に再編統合 大規模システム障害 2003.1 みずほFG発足 2003 増資 2006.7 3兆円の公的資金返済 2006.11米国に上場 米国で証券化に業務に参入 失は1兆円を超える 2008年の4000億円超の赤字につながる 2013.1 グループの損 みずほ みずほ証券とみずほインベスターズ証券とが合併 2013.7 みずほ銀行とコーポレート銀行を合併 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 15 新「みずほ証券」 • • 旧みずほ証券 • 2012年4~6月 首都圏や中部地方で10店舗閉鎖8 6店体制に • • • 2013年1月4日営業開始 従業員9500人弱 預かり資産27兆円(2012年9月末) 2011年希望退職 募集300人程度 応募500人 2011年末までに退職 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 16 • 証券業協会 ファクトブック • トムソンロイターズ プレスルーム リーグテーブ ル Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 17 証券犯罪 相場を狂わせる多くの要因 もある • 詐欺(金を預かり逃げる いのに営業する など) • 不適切な金融商品の販売(高リスク商品を不適切な顧客に売り込 む) • • • 地位の乱用 • • 風説の流布 ウソの投資話で金を集める 免許がな 証券業の無登録営業 相場操縦(他者と通じる「なれ合い売買」 う「仮装売買」) 一人で売買の繁忙装 インサイダー取引 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 18 証券犯罪 類型化 発行者に関するもの • 虚偽記載 虚偽増資 内部情報の悪用 • インサイダー事件 仲介者に関するもの • 無免許営業 不適切な商品の販売・・・・ 証券取引に関するもの • 相場操縦(仮装 馴れ合い・・・) 風説の流布 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 19 相場操縦 • • • • • • • 仮装売買 特定銘柄を大量売買 活発な取引を装う なれ合い売買 あらかじめ時間・価格を相談して売買を成立さ せる 見せ玉 他の投資家の売買を誘う狙い 変動操作 相場とは異なる価格を指定して大量売買 終値操作 取引間際に断続的売買 終値の下げ・上げ・維持狙 う 買い上がり 断続的に購入 引き上げ狙う 買い下がり 断続的に売却 引き下げ狙う Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 20 風説の流布 自分の取引を有利にするために • 根拠のない情報を知人に伝える • 根拠のない情報をネットで流す Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 21 増資インサイダー事件 • • • 大手証券会社(野村)で指摘される 営業部の情報提供の過熱(営業部の体質に問題)から、機関投 資家に投資情報がわたり、小口株主は損失を被った。 今回たまたま2010年のケースで摘発されたが、こうした投資情 報提供は長年にわたり行われていた。モラルがない証券会社の 姿を示す。 • 増資のたびに株価はさがり、儲けていたのは大手証券の顧客で ある機関投資家。 • 大手証券がすでに小口株主を完全に無視している現状をよく示 す事件。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 22 増資インサイダー事件 • 増資インサイダー事件 • 証券業協会では永久追放に向けてルールを整備中。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 23 海外ファンドに初めてメスが入る(2012年6月) • 現在でも海外ファンドが自己資金での場合は不公正取引取締り の対象。 • • 他人の資金の場合は対象外。→対象に含める方向(後述)。 • ジャパン社は公募増資など未公表情報の提供を求め、情報の価 値に応じて株式売買手数料の配分を決めていた。 米系ヘッジファンドGノジャパンアドバイザリー 増資インサ イダーの中心的存在 日本板硝子の公募増資でインサイダー取 引(情報を漏らしたのは大和証券) 証券取引等監視委員会が 2012年6月に金融庁に対して処分勧告。金融庁は悪質なファン ドとしてジャパン社の登録取り消す。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 24 • 何が取り締まられているか 発行者は正しい情報を公開する義務がある。公開義務違反や虚偽情報に対 して罰則。 • • 業者は登録制 非登録での営業には罰則 • • • 情報の操作は違法 • 証券会社は利益相反 conflicts of interestsを犯しやすい業態。 相場の操作は違法 株価操作(架空取引 高値に吊り上げて売り抜ける 増資と絡んでいるケースもある) 架空あるいは虚偽の情報の流布など 顧客に対する信任義務 fiduciary duty 違反する行為は違法 例 説明義務違反(例 解約時に巨額の解約手数料が発生することを充分 説明しなかった) 顧客のリスク対応力に比して不適切な商品を販売した。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 25 証券会社が犯罪にかかわった事 例 • 社債の資金使途の虚偽表示:某証券会社。海外の発電プ ロジェクトへの投資を名目。実際は商品先物会社に融資。 • 架空の投資話による勧誘:某証券会社社員。詐欺。国債 投資と称して勧誘。勤務先の書類を偽造して顧客に渡し て信用させる。 • 書類を偽造して顧客の投信を解約:某証券会社支社員。 詐欺。顧客の損失の穴埋め。生活費。デリバでも資金運 用。 • 某投資助言会社:無登録販売、誇大広告(運用実績を偽 装)、中立性違反(顧客と運用会社双方から収入) Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 26 ドイツ証券贈収賄事件(2013年12月) • 厚生年金基金に対する金融商品販売に絡んで贈収賄の疑いでドイ ツ証券営業担当社員と収賄側が逮捕(2013年12月) 10億円購入し てもらうのに三井物産厚生年金基金(資産総額500億円)運用担当 者に対して海外旅行飲食代など90万円相当の接待を繰り返した。 • このほかドイツ証券では3つの厚生年金基金に約100回627万円分の 接待を繰り返していた。→ほかの証券会社もやっているのでは。 問題はそうした接待で決定される年金の運用とは何かいうこと。 決算の飲み食いで本来の運用収益は消えているかもしれない。 • • • 年金担当者の人間として公益性意識の欠如。 年金の役職員による収賄も倫理問題は深刻。 問題社員は懲戒解雇へ。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 27 AIJ投資顧問事件(2012年2月表面化) • AIJ投資顧問事件 AIJ投資顧問 2000億円近い資 金を厚生年金などから受託 その多くを毀損させた事件 • 米国では2011年10月末にMFグローバル(12億ドル) ま た2008年12月にもマドフ事件(650億ドル) など巨額の 顧客資産消失事件が続いている。 • 日本ではその後米MRI社を巡る資金消失事件が起きて いる(2013年4月発覚 12年度末の預り金は1365億円)。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 28 防止策 • 報酬のあり方 • 防火壁 fire wall (業務隔壁) • Chinese wall Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 29 Jアイリス • 上場会社役員は日本証券業協会のシステムJ-IRISSに氏名、 住所、勤務先などが登録されている。2009年5月運用開始。 2010年末に1789社(5割弱)。2011年10月に2000社超える (56%)。2012年2月末で2154社(全上場企業の6割超 え)。 • 口座の開設や発注があったときに、本人がインサイダー 情報をもっていないか確認することで、インサイダー取 引を防ぐもの。日本独自で海外にはないシステム。 • 抑止力になると期待されている。証券業協会ではシステ ムへの登録を上場規則で義務つけることを取引所に要請 している。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 30 取締り • 自己管理(証券取引所 証券業協会 各証券会社) 不正な売買(インサイダー取引や相場操縦)など の監視 不正行為者に対する処分 など • 外部(証券取引等監視委員会 警察) • • • 厳罰化 罰金 懲役刑 など刑事罰 金融庁による課徴金命令 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 31 強化されるインサイダー取引規 制 • • 刑事罰制度 • • • 納付命令 • 今回の改正 裁判で有罪の立証責任・・・時間がかかる 長期戦 2005年4月 違反者に対する課徴金制度(行政処分)導入・・・立 証責任の軽減 機動的な調査可能になる 2006年7月 不服申し立てなければ処分確定 金融商品取引法一部施行 2008年6月 金融商品取引法改正 倍超に:利益相当額) げ) 刑事罰の強化 課徴金の引き上げなど(実質2 情報提供者に罰則 他人の資金預かる者への課徴金(報酬→引き上 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 32 インサイダー取引の取り締まり • 業績発表(修正発表)不適切な会計処理 増資 自 社株買い 配当修正 株式分割 M&A(TOB 合 併) 上場廃止含む上場区分の変更 などの経営 上の重要事実を企業が発表した前後の取引を重点的 に調べる。 • 疑わしいとの判断で詳細な審査。証券会社からデー タ取り寄せ(現在は専用回線コンプライアンスWAN で)。関係者の売買の有無調べる。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 33 プレヒアリングの禁止 • プレヒアリングの禁止(2007年日本証券業協会は業 界ルールで禁止 しかしルールの効力は国内だけの ため海外でのプレヒアリングがインサイダー取引の 温床とされる) Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 34 インサイダー取引の事例 • 某大手証券(D証券) 主幹事でありながら未公表の増資情報を海外のヘ ッジファンドに伝達 このヘッジファンドは空売りで利益出す • 某大手証券役員(N証券) 未公表のMBO情報などを利用。友人と共謀。 買い付けを行い高騰したところで売り抜け巨額の利益を得る • 某社子会社社長 某社の企業買収情報を知り、某社の株を購入。巨額利益 を得た。 • 某社役員 某社の3者割当情報を入手。公表前に某社株を購入。発表によ る高値で売り抜けた。 • 某社役員 自社の業績下方修正(不祥事やトラブルなど)を知り 自社株 を売り抜け損失を回避した(→このタイプは多い)。 • 某社社員 自社の利益変動の情報を知り知人の助けを借りて他人名義で売 買して利益を得た。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 35 事例:会計士 直接担当する企 業の株を売買するモラル感覚 • • • • 会計士(S監査法人所属) 監査業務を行っている企業の重要事 実を入手。公表前に売却して利益を得た。→第三者委員会が調査 したところ 監査法人と契約を結ぶ企業の株式を売買している事 例がみつかる。 ↓ 再発防止に本当に必要なことは株式取引の全面禁止 (社内での提言は顧客株式の売買の全面禁止 司への報告義務 など) 株式売買内容の上 ↓ 企業活動の変化 監査対象の変化を考えるとこの提言は不十分 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 36 事例:経済産業省幹部 直接担当する案 件の株を購入する倫理意識の欠如 • • • • • 情報の宝庫といえる経済産業省審議官(休職中)がエルピーダ などの再建策 資本増強策を入手したうえで同社株を購入。 エルピーダ 資本増強の検討を発表(2009年2月4日) 同審議官ガエルピーダ株購入(5月15日と18日) エルピーダが増資の発表(6月30日) 2013年6月28日 東京地裁判決は「検討」を重要事実公 表と認めず有罪判決になる このほかNECエレ(ルネサスと 合併)の株も合併計画を知り4月に購入するなど担当案件で売 買繰り返す Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 37 増資とインサイダー取引 市場の信頼性 確保がなにより重要 • 公募増資 大量発行で株価が下がることが多い 情報を入手して売り抜けるタイプが多い・ • 第三者割当増資 資金繰りに窮していた状態からの脱却 を意味することが多い。株価は上がることが多い。した がって事前に情報を入手したものは買い付けて利益を出 すことが多い。 2013年6月改正法(1年以内に施行)で情報伝達も処罰対 象に • • 事前に N証券役員については情報伝達では処罰できないものの、 犯罪の教唆で有罪判決(東京地裁 2013年9月) Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 38 インサイダー規制は市場を委縮させる 市場活 性化に逆行するという意見もある • 厳しすぎるという意見もある。市場の活性化に逆行するとして 緩和を求める意見もある。 • というのは内部情報を受け取る可能性のある人はおおいからで ある。 • しかし基本は株式取引を社会的にしかるべき立場の人、つまり 内部情報を受け取る立場の人はするべきではないということで ある。そもそも証券会社に勤めている人間 その家族もするべ きではない。上場会社の役職員も同様である。 • 市場の透明性がもっとも重要で、社会的に立場のある人の株式 取引は制限されてよいと考える。取引に励む時間に人生にとり 有意義なことは他にあるようにも感じている。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 39 代表的な逃げ方 • • • 重要情報を聞いていないと主張する。 • • • • 刑事罰 妻に買わせる。自分は知らない妻の意思だと言い張る。 知人あるいは友人(つまり第三者)の口座を利用する。 5年以下の懲役 又は罰金 あるいは両方 ほかに課徴金 ほかに勤めている勤務先の解雇 露出による社会的制裁 など Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 40 インサイダー取引に関与したも ののその後 • • • • • • • 刑事告発を受け刑事罰を受ける。 課徴金支払い命令により得た利益を吐き出すことになる。 勤務先の信用を失墜させた罪は大きく取り戻すことはできない。 市場の公正さを乱した行為は許されない。 多くの場合、懲戒解雇(退職金はない)など社内処分を受ける。 社会的に復帰はできない。 上司も監督責任を追及され処分される。 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 41 現在議論されている方向 • 情報提供者が取引で利益を得ず、単に情報を伝えただけ でも処罰対象とする。情報提供者の氏名を公表する。現 在は情報漏えいだけでは処分対象にならない。 • 他人の資金を使って不公正な取引をするものの扱い。現 在は金融庁に登録している国内のファンド、証券会社な ど金融機関。海外を拠点とするファンド、運用会社を対 象に入れる。→海外のファンドを規制対象 • 他人の資金を使って不公正な取引をしたものの課徴金を、 手数料や報酬相当額から利益相当額などを基準として数 値に変更 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 42 金融庁 証券取引等監視委員会 金融庁 検査局 • • • • • 不公正取引から財務健全度チェックまで • • • • 2007年9月の金融商品取引法施行後 届け出ファンド4000弱など 証券会社 のほか 証券取引所 投資顧問 特定目的会社 なども検査対象 証券会社の連結子会社も監督対象 2005年から課徴金納付の処分勧告 有価証券報告書の虚偽記載の有無 証券会社 金融先物取引会社 投資信託委託業者 投資顧問など5000社超が検査対 象 証券会社に対して自己資本比率規制 目安120% 目安100% 割り込むと業務停止命令 通常はその前に増資あるいは自主廃業 証券取引等監視機構IOSCO Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 43 自主規制 • 金融商品取引法 2007年9月全面施行)による自主規制機関の機 能強化促進 監査部門強化 • 取引所 違反行為に処分 不公正取引監視システムがリアルタ イムで稼働している • 金融商品取引法 2007年9月全面施行)による自主規制機関の機 能強化促進 監査部門強化 • 日本証券業協会 証券会社290社のほか銀行 生命保険など220 社が参加(2006/04) 証券会社さらに銀行に対しても監査もおこなっている 自己規律 • 自主的に高品質のルールを作る期待 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 44 証券投資者保護基金 • • 投資家の保護 • 分別管理の仕組みであるが・・・・ • 義務付けは証券会社のみ は補償対象ではない 証券取引に対する信頼性の維持 証券会社の経営破たん時 過失がない限り 投資家保護 顧客側に重大な 投信を販売する銀行 郵便局 Copyright: Hiroshi FUKUMITSU 45 review • • • • • • • • • Equity Financing 内部留保型の成長 Dilution 希薄化 Equity Story 成長期・成熟期 配当性向 配当 自社株買い 総配当性向 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 46 review • • • • • • • • • 持合い mutual holding 事業会社の株式保有・・・英米では原則しない Strategic investment 提携政策的な意味で保有 Portfolio investment 収益投資としての保有 長期継続的取引関係の合理性に疑い 投資としての収益性は低い 時価会計で損益に影響受ける 銀行については 自己資本規制 ファンド保有の増加 ⇒ 保有制限法 CGへの関心 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 47 補足 debt finance • Debtの有利性 • 節税意識 • 資本コスト • 加重平均資本コスト • ガバナンス機能 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 48 Hybrid Finance To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 49 ハイブリッドの意味 • equity とdebtの2つの性格をもつ 原理的(会計上)はいずれかに区分 両義性認めると都合がいい面がある • ハイブリッドファイナンスが行われる背景 背景: ① 経営困難 企業の再編 ② 自己資本規制 ③ 格付け機関 監督機関の対応 ⇒ マクロプルーデンス政策 ④ 証券化などの影響 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 50 転換社債(CB) 昔からある「ハイブリッド型証券」だが、近年話題の ハイブリッドファイナンスには入れない。 社債としては低い利回り(転換権が甘味剤となる)が 発行企業には魅力。 希薄化懸念 転換価格を上目設定で対処(株価が上昇しないと転換 進まない) To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 51 普通社債(SB) • • 国債金利(基準金利)+スプレッド金利(上乗せ金利) • 公募社債 低金利条件のもと 金利設定物も登場 低格付け債 • 外貨建てや株式絡みを用いて ゼロ トリプルB日本では下限 私募社債 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 52 • 優先債 • 普通債 • 劣後債 • 優先株 • 普通株 • 劣後株 負債性高い↑ 劣後ローン 曖昧な領域 優先出資証券 曖昧な領域 資本性高い↓ To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 53 優先株 • 優先配当が付いているので発行会社としてはコスト が高い。 • そこで償却(圧縮)が課題になる。 • 普通株に転換して(売却可能にして)市場で売却可 能にする(持ち主は市場で処分できる)。 • あるいは発行会社が買い取る。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 54 持ち手がDESに応じたケース • 資金支援の意味合いがある。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 55 劣後ローン • 優先株に比べて希薄化の可能性が低い。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 56 劣後債 • 金融機関などが資本対策で発行。 • 自己資本に算入できる。 • 株式に比べて機動的に発行できる。 • 株式の希薄化リスクをさけることができる。 • コストが高いので 早めの償還の必要が高い To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 57 • equity finance 問題の所在 普通株を用いたエクイティファイナンスには権利の希薄 化dilutionという問題がつきまとう。 株主へまず負担。しかしその先には債権者にも負担を求 める世界がある。 • 他方で過大な債務を背負った企業は、再建では債権者か らの債務減免を期待。再建手法の一つに債務の資本性を 高めるという方法がある。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 58 Bail-in Bail 0ut さまざまなstake holdersにも負担求める:金融機関の救済 では税金の投入 • • 劣後債 • • 普通社債 • 預金者(金融機関の場合) 劣後ローン 普通ローン 劣後債 劣後ローン保有者にまず損失を負担させる。額面を割り引いた新債券との交 換 新株式との交換 次に普通社債保有者に負担を求める To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 59 Contingent capital • 自己資本比率が低下すると資本(普通株式)に転換 される債券 contingent capital securities To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 60 問題の所在 • 企業が円滑に運営されている状態であれば、株主に 追加払込を求めるまでもないと考えられる。 • つまりequity finance自体が、株主を煩わせる問題で ある。 • 株主が負担してなお、不足する。あるいは株主以外 に負担を求めるということが考えられる。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 61 Debt Restructuring To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 62 debt restructuring • debt relief 支払の減額など • 後回しにする方法と減額を認める方 • 法とがある。 • debt for exchange swap • debt exchange(debt swap) To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 63 debt relief • 月々の利払い額の引き下げ • 償還期日の先延ばし • 貸し手がこれに応じるのは債務者が破たんする場合との 比較で、債務者が立ち直ることを選択するから To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 64 債務リストラをあらかじめ 織り込む債券もある • callable bond 発行者は満期前に償還できる。金利が下が ったとき、この債券なら低金利債に乗り換えやすい。 • extraodinary redemption条項 天災など一定条件で償還 を可能とする条項。 • call条項 こちらは逆に投資家側が償還を要求できる条項。 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 65 債務と株式の交換 • DES 債務と株式(優先株が多い)の交換 debt for equity swap • 債務が減り 自己資本が増える 優先株が多い理由 • 債権者は 普通株を保有するリスクを避けたい 株には高い配当がつく • 債務者は 優先 普通株を出したくない(希薄化避けたい) To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 66 債務を債務と交換 • これをDDS debt debt swapと呼ぶのは 和製英語 • debt restructuring • debt swap or debt exchange To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 67 DES or debt exchange • 債権放棄との比較で選択される うまくゆけば再生する 債務者区分変更 キャピタルゲイン得られることも • 独占禁止法(5%規制) への配慮もあり 金融機関は 優先株(議決権なし) を求める To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 68 Basel規制 金融危機の再発防止 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 69 金融機関への自己資本規制 • 海外SPCの優先出資証券 がTier 1で • 劣後債 などをTier 2 で ↓ • 希薄化を避けたい金融機関の思惑と一致したことから 優先出資証券 や 劣後債 =Hybrid Financeの活用広がる To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 70 コア自己資本core capital • core capital ストレステストの議論の中で自己資本のバッ ファー機能=収益の変動を吸収する力 に関心 バッフ ァー機能があるものだけをコア自己資本として大きさを 問題にするように変化 • 二つのストレステスト(2009-2010) http://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/ To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 71 2009末 狭義の中核で7%以上で合意 2010/06 大手を対象に1-2.5%の上乗せ合意 • 2007年から実施のBasel 2(金融機関の自己資本規制)の 見直し議論の末に決着した内容(2013年3月期から適用)を Basel 3という。 • コア自己資本(普通株式等Tier1)概念による自己資本規制 の強化 規制のカウンターシクリカル性に対処するため の資本保全バッファー機能の導入など • バーゼル3 http://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/ To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 72 Basel 規制2019年完全導入時 Basel 2 Tier 1 Tier 2 Basel 3 Tier1を狭義の中核と その他中核に細分 2013年導入段階的に 適用 国際的 に活動 する銀 行 合計で8%以上 狭義の中核で 4.5%以上 合計で8%以上(2013 年から段階的に適 用) 地域金 融機関 合計で4%以上 4%という数値は変 えないものの劣後債 劣後ローン除く「コ ア自己資本で4%以 上」 To copy this presentation requires the prior consent of the author. (大手に対する上乗 せ1.2-2.5%は2016年 から段階的に適用 FSB201211個別上乗 せ幅公表) 狭義の中核で 7%以上 合計で10.5%以上 Copyright: Hiroshi Fukumitsu 73 バーゼル3 の自己資本比率規 制以外の内容 • レバレッジ比率規制=中核自己資本/簿外含む総資産 • 3%以上 • 流動性カバレッジ規制=現金や国債など流動性資産/ 1ケ月の必要流動性 • 100%以上 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 74 自己資本規制の論議 2009-2010 銀行の増資につながる • • • • • • • Basel 2 中核的自己資本4%以上(狭義中核的自己資本は2%以 上) 自己資本では8%以上 ↓ 狭義の中核的自己資本の基準を明確かつ厳格化(4.5% 最終的 には7%) 優先株 劣後債の扱い 繰延税金資産の扱い 金融機関間の持ち合い株式の扱い To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 75 繰延税金資産と他の金融機関への出 資分の扱い • それぞれ銀行の普通株の10%相当分まで 合計で 15%相当分まで • 他の金融機関への出資分は自己資本の10%まで自 己資本に算入できる。金融危機時は10%を超えるこ とを容認。 • この上限を超えるものは徐々に縮小すること • → 極端な貸し渋りは起こらないように配慮 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 76 Basel 3 (2) • 現在は2%以上の狭義の中核自己資本を2015年3月期まで に4.5%以上(その他合わせ中核で6%以上) • その他Tier 1とTier 2でハイブリッドファイナンスは残る ものの内容は資本性から厳格化 • Tier 2(2%) 5年以上の期限付き債務可 • 2019年3月期までに普通株式等Tier1 7%以上に引き上げそ の他合わせ中核で8.5%以上 To copy this presentation requires the prior consent of the author. Copyright: Hiroshi Fukumitsu 77
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