証券市場論後期(11)

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証券市場論 第11回
激化する取引システム:プラットホーム間の争い
HFT PTS 不正の類型
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取引所
 東証と大証(日本取引所G発足は2013年1月) 現物株市場の統
合 2013年7月16日
 現物株売買代金ではNYSEユーロネクスト ナスダックOMXに次
ぎ世界第3位の市場(売買代金) 上場社数は3423社でも世界3
位(1位はインド 2位がカナダ)
 2014年3月には先物オプション市場の大阪への統合
 取引所統合が引き起こしたこと
 大証1部501→東証1部1717(重複465)
 大証2部192→東証2部411(重複27)
大証ジャスダック913→東証ジャスダック(新設)
 東証マザーズ185
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世界の取引所ランキング
金額は億ドル 2013.6末時点
株式時価総額
上場会社数
1
NYSEユーロネクスト(米国)
69,195
2,339
2
ナスダックOMX
47,478
2,581
3
日本取引所G
34,294
3,423
4
上海
17,200
954
5
深圳
16,837
1,537
6
ロンドン
11,417
2,733
7
NYSEユーロネクスト(欧州)
8,328
1,065
8
TMX
7,450
3,962
9
香港
6,773
1,567
10
韓国
6,757
1,760
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統合時点の東証上場社数
(外国株含む)2013.7.16時点
全体 カッコ内は大証からの移行分
3423(1,400)
1部
1760(37)
2部
571(162)
マザーズ
188(0)
ジャスダック
901(901)
プロマーケット
3(0)
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HFT high frequency trading
 現物市場と先物市場との裁定取引(公正な取引を担保できるか)
 HFTと人間との取引とは公正か
 HFTは市場価格形成の合理性に貢献しているか
 HFTのもとで多様な意見を市場は集約できているか
 マイケル・ルイス「フラッシュボーイズ」 11の証券取引所と40以
上もの代替証券取引所 証券市場の分裂を指摘
 東証 海外投資家の比率6割 そのうち6-7割がHFT 日本で
は株式取引の流動性が東証に集中 市場の分裂問題が深刻化
していない。代替市場の力が弱く 低コスト取引が広がらない
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登録制を検討中 2014年6月
 米国 SEC がHFT専門業者(ヘッジファンド 証券会社の自己
売買部門 プロップファームと呼ばれる専用業者)の登録義務付
けを検討中。
 私設取引所についても透明性を欠いているとの批判。
ダークプール 手数料低く 匿名取引可能 HFTを使った不正
の主戦場との見方あり
 メアリーホワイト委員長の就任(2013年SEC委員長に)
超高速取引への対応が急務
私設取引所は透明性を欠いている
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Flash crash 2010/05/06
 2010年5月6日 ダウ工業株平均が一気に1000ドル近く暴落(リス
ク回避を目的にS&P500に連動する先物にアルゴリズムで大量の
売り注文 これが引き金で暴落)
 高速取引がマーケットメーカーであれば流動性供給義務。しかし市
場外ネットワークで売買する未登録業者は市場安定の義務がなく、
市場安定の意識も乏しい。
 株価急落時に損失拡大を恐れて売買をとめたことで混乱が広がった。
注文を取り消す自動プログラム(注文の9割に達する取り消しの多
さ)。大量注文にはコンピューターへの負荷という問題。成立させる意
思のない大量注文は価格操縦とも取れる問題もある。2009年末で
業者は400社ほど 65%(欧州で3-4割 日本で15%) 2003年
末の20%程度から上昇)。
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Black Monday 1987/10/19
 ダウ工業株平均が1日で23%値下がりした。背景 米国は貿易
赤字と財政赤字に苦しみ経済の先行き不透明。そこにペルシャ
湾で米軍がイランの海上油田を攻撃がきっかけ。
 機関投資家のプログラム取引が下げを加速したとされる。
 相場が乱高下したとき取引を中止するサーキットブレーカー制度
が翌1988年導入される契機になった(日本では1994年導入)
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東阪重複上場で大証での取引が中心の銘柄(任天堂、
村田製作所、 日本電産など大証優先銘柄)の売買増
加が起きた
(ジャスダックと東証で重複上場 重複8社)→ 東証単独へ
 ヤフー(JASDAQ指数の2割を占めていた 影響大きい)
2013.07.02時点時価総額29,102億円
 日本取引所
同上5,957億円
 JIN(ジェイアイエヌ) 同上1,222億円
大証1部→東証1部
 アプラスフィナンシャル
 近鉄百貨店
 王将フードサービス
 Jトラスト 日理化 錢高組 などで売買増加するなど大証優先銘柄
と大証単独銘柄計254銘柄の売買は1日平均で6割増加(1ケ月)。
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大証優先銘柄(例)の1部上場銘柄
時価総額(2013.7.13時点 億円)
社名
時価総額
村田製作所
17,570
任天堂
17,071
日本電産
10,256
小野薬品工業
8,446
オムロン
8,001
ローム
6,813
参天製薬
4,660
ベネッセホールディングス
3,688
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新規公開株
野村
13
大和
11
SMBC日興
3
みずほ
3
三菱UFJモルガ
ンスタンレー
2
 左表主幹事証券ランキング
(2011年度)
 引受証券に口座開設に開き
 提示された仮条件に対し希望
価格 株数を出して応募
(book buildingに参加)
 応募者多数の場合は抽選
 配分は2-3割が機関向け 78割が個人向け
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新規上場の復調











2013年11月13日現在 年明け以降の新規上場は32社。
調達資金は1-9月で3300億円 楽天上場の2000年以来の高水準
初値>公募価格続く
2013.07.03にはサントリー食品インター(BF)が上場
13年内 足利HDが上場予定
ジャパンデスプレイが13年度内上場予定
2014年の予測は70-80社に回復見込み(米国でツイッターが上場申
請)
2006年の188社が直近のpeak
2006.01 ライブドアショック(証取法違反容疑でライブドア本社などが
強制捜査)
2009年には19社まで減少
2010.04 ジャスダックが大証に吸収合併 新生ジャスダック始まる
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新興市場
マザーズ ジャスダック等
 新興市場 上場企業にふさわしくない企業も多い
 → 機関投資家や大企業がまともに相手にしない企業も多い
 → 個人投資家相手 売買の6-7割が個人
 企業にとり 市場規模 資金調達に制約
 ジャスダック=高コスト体質は経営不振に陥る 場口銭も高い
 → 大証に合併
 → 東証に統合(2013年7月)
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新興市場は不正の温床 → 審査が甘い
2006 ライブドア(M)
偽計取引
2008 プロデュース(J)
粉飾決算
2008 アスキーソリューション(H)
粉飾決算 虚偽記載
オーベン(M)
金融商品取引法違反
トランスデジタル(J)
増資資金流出 破綻
富士バイオメデイックス(名セ)
未中入金疑惑
2009 エフオーアイ(M)
ジャパンデジタルコンテンツ信託(M)
不正会計 破産
資金不正流用
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ベンチャーキャピタル(VC)
 VC ベンチャーに投融資 経営支援も行う 上場を支援
 エンジェル 同様の役割を果たす個人投資家をいう
 ベンチャーエンタープライズセンターが統計
 ジャパンベンチャーリサーチも
 2011年度投融資額1240億円 前年度比10%増
 JAFCO
 SBIインベストメント
 SMBCベンチャーキャピタル
 みずほキャピタル
 大和企業投資
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クラウドファンデイングと交錯
 ネット関連(クラウド スマホの普及)で起業資金の小規模化
 起業の初期コストは大幅に低下している
 少額出資 短期育成へ
 デジタルガレージ ネット広告決済をてがけながら SNSなどに
早い段階から出資
 サイバーエージェント 子会社にサイバーエージェントベンチャー
ズ
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統合の要因
 市場分散の不効率(取引所は投資の重複 規模の過小 会員証
券はコストの重複)
 デリバテブ市場強化の必要性(統合しても世界で17位)
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下落にかける(株式)
 空売り(信用取引の売り)
 先物取引での売り(株価指数取引)
 オプシション取引(株価指数取引) プットオプションの買い
レバレッジleverageの大きさ
 信用取引3-4倍
 先物 10-15倍
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新しい指標と株式相場
 CDS(credit default swap)指数(アイトラックスジャパン 主要50
社) 上昇は信用不安の表れ → 株価下落
 Volatility Index (別名 恐怖指数 シカゴ取引所のもののほか日
経平均VIもある) 40以上は危険ゾーン 20未満は安全。 数字
が増えことは不安の表れ → 株価下落
 場の変化 ショートカバー 売ったものの買戻し
 リターンリバーサル 値があがるとこまめに売る=利益確定
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デリバティブ取引(株式)
 1988年9月 日経平均先物(大証) TOPIX先物(東証) 取引開
始
 1989年6月 日経平均オプション(大証)取引開始
 1989年10月 TOPIXオプション(東証)取引開始
 2006年7月 日経平均先物ミニ(大証)取引開始
 2008年6月 TOPIX先物ミニ(東証)取引開始
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上昇にかける(株式)
 信用買い
 先物買い
 オプション取引(コールオプションの買い)
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市場間競争と提携(株式)
PTS
 取引所間(東証ー大証 東証ー海外の取引所)
 ETS(PTS)の台頭
 Chi-X Japan
 値付けできているか
 システムの優劣
 取引コスト
 取引時間 取引商品の優劣
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個人向けPTSは限界 取引量少なく
流動性低いことが障害に
 マネックスナイター 2001/01-2011/12 サービス終了 その日の
終値で取引するもの(丸三が参加)
 カブコム(三菱UFJ系 主として外資系証券が参加) 2006/092011/10 サービス終了 国内初のオークション方式PTS(取引所と
正面から競合) 8:20-23:59 システムには評価あるも単体の
限界 システム維持に月間6000万ほど必要 採算合わず。
 SBI ジャパンネクストPTS(SBI 楽天08/04 CMOクリックなど)
2007/08-2011/3/14業務休止 CMOクリック2011/10末脱退
2012/01業務再開 顧客注文対当方式 指値注文のみ 呼び値
が取引所より細分されるなどの特徴 8:20-16:00 19:00-23:59
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背景にある取引所システムの高度化
PTSとの競合
 ミリセカンド(1/1000秒)からマイクロセカンド(1/100万秒)のス
ピードを争う世界に変質 世界に比べて劣後 東証や大証もようやく
海外の取引システムを採用に踏み切る。
 2006-02
大証 新売買システム(日立)の稼動
 2007-08
SBI ジャパンネクスト証券(OMX Tech.AB) 開業
 2010-01
東証アローヘッド(富士通)の稼動
注文応答速度5ミリ秒
情報配信速度3ミリ秒 に改善
 Chi X Japan 2010/07 参入で新たな局面に
 2011-02
大証J-Gate (NASDAQ OMXのClick XT)の稼動
 2011-11
東証新T-dex(NYSE liffe)の稼動
注文応答速度5ミリ秒 に改善
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Chi X Japanの参入で PTSは目に
見える市場シェア獲得へ
 大和PTS マーケットメイク方式で参入したもの
 2008/08-2011/12サービス終了
 Chi X Japan 2010/07 参入で新たな局面に
 PTSについて Chi X参入の意義
 8:00-16:00
 (取引所立会は9:00-11:30 12:30-15:00 大証は15:10)
 呼び値は取引所より小さく設定
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取引所外取引
 証券会社が注文を付け合せるもの 海外でいうダークプール
 2010年3月から 取引所の立会外取引に持ち込んで約定する
ように義務化
 事後的に取引が開示されるが、顧客の注文は出された時点では
見えない。
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対抗する取引所





2006-02
大証 新売買システム(日立)の稼動
2010-01
東証アローヘッド(富士通)の稼動
2011-11
東証新T-dex(NYSE liffe)の稼動
2012-07 東証 サーバーバージョン更新
大証・東証 東証に株式をシステム統合(2013年7月)
刻み値の縮小(2014年1月 3000円超の約40銘柄で刻み値縮
小)
 2014年3月には先物オプション市場の大阪へシステム統合
 刻み値の縮小(2014年7月 500円以下の銘柄で10銭から50銭
単位に引き下げ) 実効スプレッドの縮小 売買成立頻度の改善 P
TSから東証に戻る効果 売買に伴う利益が小さくなる副作用も
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注目されるinter dealer broker
 複数の取引所の情報を表示するシステムを提供 比較したうえの
取引の執行も可能にしている
 Inter Trade 社 (Tiger trading system)
 Interactive Broker 社(Trader Workstation)
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市場間競争(債券)
 店頭売買とはいえシステム(プラットホーム)間の争い
 取引所は 先物 指数先物 などデリバ取引を担う
 一般の債券取引は店頭売買(相対で)
 日本相互証券
 エンサイドットコム証券(大手3社により2001/01設立
2002/04PTS開始) 価格情報 取引システム
 ジェイボンド(2000/04設立 2002/11PTS開始 2009/10レポ開
始 2010/04 エンサイとの窓口統合で合意 2010/07 エンサイと
の統合でジェイボンドシステム終了 現在はレポシステムのみ提
供)
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デリバティブ取引(債券)
 1985年10月 長期国債先物取引(東証) 取引開始
 1988年4月 システム売買に移行
 1990年5月 長期国債オプション取引(東証) 取引開始
 2009年3月 長期国債先物ミニ(東証) 取引開始
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市場における不正
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不正の類型
 インサイダー取引
 虚偽記載
 相場操縦 仮装売買 馴れ合い売買 取引の誘因
 不公正ファイナンス 架空増資 水増し増資
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インサイダー取引
 インサイダー取引の禁止
 金融機関絡みのインサイダー取引(M&Aと増資 情報の扱い)
 増資インサイダー事件(引受証券におけるモラルの崩壊)
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虚偽記載
 有価証券報告書
 虚偽記載で影響が大きい場合 上場廃止理由に該当
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相場操縦 風説の流布
相場操縦
見せ玉
仮装売買wash trading
馴れ合い相場ghosting
風説の流布
大きな注文を出してすぐに取り消す
同一人物が頻繁な売買を仮装
複数人が共謀して頻繁な売買を仮装
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不公正ファイナンス
 見せ金増資 架空増資
 不動産過大評価など現物出資
 株主価値の希薄化
 開示目的外への利用 資金流出
 特定者への利益供与
 第三者割り当て増資
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 日本電子計算