第1章:貧困と不平等 2004年4月27日(火) TOPIX • • • • • • • • 1.貧困と不平等の定義について 2.貧困の現状について 3.貧困指標について 4.貧困指標と政策について 5.貧困の諸相について 6.不平等の計測(ローレンツ曲線・ジニ曲線) 7.経済発展・グローバリゼーションと貧困 8. ジェンダーについて 1.貧困と不平等の定義について 貧困・・・ある絶対的な最低限の生活水準を達 成できない状況を示す概念 絶対的貧困とは 飢餓や栄養不良などで他者との比較に頼らず とも明らかに貧困と認められる状況 相対的貧困とは 社会的状況を考慮した上で認められる貧困 1.貧困と不平等の定義について 不平等・・・他の人々との格差の程度を示す概 念 絶対的不平等とは 絶対的な違いの大きさに着目したもの 相対的不平等とは 平均値からの乖離や比率(変化率)に着目した もの 2.貧困の現状について • 貧困のラインを購買力平価調整済み為替レートで、 換算した、1日1人辺り1(1.08)ドルとする。 • 貧困者比率は全体的に減少。 • サブサハラ・アフリカ、南アジアについて -経済成長による違い • ラテンアメリカ、カリブ海地域について -所得分配による違い 東欧、中央アジアでの貧困層の拡大 -市場経済化による社会保障制度の崩壊など 3.貧困指標について (1)貧困と見なす人々の特定(生活水準の指標) 経済学的に、生活水準の指標を効用の大きさで考え る。 実際に消費された財やサービスの量、消費支出の制 約となる所得水準と消費財の価格 実質所得額、実質消費額(食料支出額・非食料支出 額などでは恣意的なものになってしまう) 便宜的に定められたものとして考える。 3.貧困指標について 貧困者比率(H=P0) (集団全体をn、貧困者数をqとする。) q H n 3.貧困指標について 各個人の消費支出をyi、貧困ラインをzとする。 n 1 H P0 1( yi z ) n i 1 n (q 1( yi z )) i 1 3.貧困指標について • 貧困ギャップ比率 (poverty gap ratio,P1) -貧困層の生活水準を指標に組み込む 1 z yi P1 1( yi z ) n i 1 z n 3.貧困指標について • 貧困解消の一人当たりの最低コスト n 1 P1 z z yi 1( yi z ) n i 1 3.貧困指標について • 二乗貧困ギャップ比率(squared poverty gap ratio P2) ー貧困層内部での消費水準の格差を指 標に反映させる。 1 z yi P2 1( yi z ) n i 1 z n 2 4.貧困指標と政策について 貧困者比率・貧困ギャップ比率を用いた場合 ー貧困層の比較的豊かな人々から優先して 所得補助をする。 二乗貧困ギャップ比率を用いた場合 ー貧困層のより厳しい状況にある人々から優 先して所得補助をする。 5.貧困の諸相について 生活水準からだけではなく、健康や教育の面、 動学的分析からも見る必要がある。 アマルティア・セン 所得や消費ではなく、実際にどのような生活を 送っているのか、どのような生活が実現可能な のかを測ることで、人々の生活水準を測るべき と主張。 5.貧困の諸相について • • • • 平均寿命 乳児死亡率 乳幼児死亡率 初等教育粗就学率 粗就学率 純就学率(就学年齢のみ) 政府による機会費用の負担 5.貧困の諸相について 動学的分析 • 一時的貧困 インフレ、急激な経済変動を避ける経済の安定 化 セイフティネットの整備(自然災害など) • 慢性的貧困 労働集約財に有利な政策を行なう。 小規模金融(マイクロ・クレジット)などの融資制度の 整備 小作人の保護、農地改革・教育、保険衛生サービス の充実 6.不平等の計測(ローレンツ曲線・ジニ曲線) J・Fosterによる相対的不平等指標が持つべき基本原 則 1.相対性の原則(symmetry) 2.同時性の原則(homogencity) 3.人口原則(population principle) 4.ピグー=ドールトンの移転原則 ローレンツ曲線・ジニ曲線 7.経済発展・グローバリゼーションと貧困 S・Kuznets(1955)による逆U字仮説(inverted-U hypothsis) 実証研究 クロスセクションデータによる支持(1973,1976) アーナンド、カンブール(1993) 異なった関数を当てはめると逆U字仮説とは正反対の 結論が出た。 デイニンガー、スクワイア(1996,1999) 所得配分比率の時系列変化は乏しく、むしろ国ごとの 不平等度の違いが著しい 7.経済発展・グローバリゼーションと貧困 経済発展は不平等化(地域間・産業間格差)・ 平等化(技術移転)をもたらす要因の双方が 作用し影響しあうプロセスといえる。 経済成長のメカニズムによって異なる結果とな る。 参考文献 ・アジア経済研究所(朽木,野上,山形) 『テキストブック開発経済学-[新版]』 有斐閣、2003年 ・山崎幸治[December 19 2003]貧困と不平等
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