発表概要 28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」

発表概要 28 年度
熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」
氏名(学籍番号)
李清言(131-t2751)
論文題目
Superplastic deformation of AZ61 magnesium alloy having fine grains
著者
Yu Yoshida, Keita Arai, Shota Itoh, Shigeharu Kamado, Yo Kojima
論文出典
Materials Transactions, Vol. 45, No. 8 (2004) pp. 2537 to 2541
【緒言】
マグネシウム合金は低温における延性が乏しいため、複雑形状部品の加工は難しい。これに対し
超塑性は加工性の低いマグネシウム合金などの加工に有効である[1-3]。超塑性は一般的に高温かつ低
歪速度で起こるので、産業の生産率向上のために高歪速度で低温超塑性が発現することが望まれて
いる。しかし、マグネシウム合金において高歪速度、低温で超塑性が発現したという報告はない。
そのため本研究では、高歪速度で低温超塑性を達成するために、Mg 合金の超塑性特性と変形機構
を調査した。
【実験方法】
本研究では Mg-6mass%Al-1mass%Zn 押出材を用いた。この押出材に 2 つのチャンネル間の交差角
度が 90°、交差点の外弧の角度が 60°となるように ECAE 加工を施した。473 K にて ECAE を 2 パス
行い、448 K にて ECAE を 4 パス行った。試料の組織は OM と SEM、レーザ顕微鏡を用いて観察し、
機械的特性は引張試験にて調査した。
【結果と考察】
図 1 に Mg-6mass%Al-1mass%Zn 押出材および ECAE 材の組織を示す。SEM 像から、448 K にお
ける ECAE 材で平均粒径が 1 μm の微細かつ均一な組織が得られたことが分かった。作製した試験
片にはいくつかの Al-Mn 化合物が確認され、ECAE 材には均一な β 相粒子の析出が確認された。
図 2 に ECAE 材の破壊伸びとひずみ速度の関係を示す。ひずみ速度の減少及び試験温度の上昇に
伴い破断伸びは増加した。試験温度 473 K 及び 523 K、ひずみ速度 1 x 10-2 s-1 で試験した試料では、
破断伸びはそれぞれ 242%、398%を示した。これらの値は同様のひずみ速度で試験温度 523 K にて
試験した場合よりも大きい。この原因は結晶粒粗大化の影響であると考えられ、結果的により低温
かつ高ひずみ速度において優れた超塑性特性が得られることが分かった。
図 3 に 423 K における試験前後のレーザ顕微鏡画像と断面のプロル線を示す。試験前の試料の表
面は非常に滑らかであったが、試験後の試料の表面は 0.2~0.7μm 高低差のあるステップが確認され
た。ステップの位置は結晶粒界に対応しており、このことから結晶粒界滑りが発生していることが
わかる。このように粒界滑りが活発に活動することで、比較的低い温度でも超塑性変形がみられた
と考えられる。図 3(b)に示される β (Mg17Al12) 相は粒界滑りの邪魔をしない。
図 1 OM 像および SEM 画像
図 2 機械的特性
<参考文献>
図 3 レーザ顕微鏡画像
像
[1] H. Nakamura, H. Kayanuma, S. Kimura and M. Kosugi: J. Mater.Process. Technol. 15 (1997) 196–205.
[2] J. C. Huang and T. H. Chuang: Mater. Chem. Phys. 25 (1999) 195–206.
[3] K. Osada: J. JILM 49 (1999) 326–331.