SEM/EDXによる 大気エアロゾルの性状分析 交通電子機械工学課程 2000834 根津 拓史 2000844 吉田 健一郎 発表内容 1 2 3 4 5 6 7 研究の背景と動機 大気エアロゾルについて 電子顕微鏡用のエアロゾルサンプルの捕集 観察と元素分析について 結果と考察 まとめ 謝辞 1 研究の背景と動機 ・現在、都市化、工業化の地球規模への拡大に伴い、人工起 源の大気エアロゾル(浮遊微粒子)が大量に排出されている。 ・加えて、砂漠地帯の拡大などの自然環境の変化に伴い、黄 砂のような自然起源の大気エアロゾルにも強い関心が集め られている。 ・大気エアロゾルは、大気の放射収支や気象に影響を与えると いわれており、それらの変動を予測するには、大気エアロゾ ルの影響を知る必要があり、その化学的、光学的特性を知 る必要がある。 ・大気エアロゾルに含まれている元素の成分、形状、性質を分 析することは、エアロゾルの特性を知る基礎となる。 2 大気エアロゾルについて 質 量 濃 度 自然起源 人工起源 0.1 1.0 10 [ m ] 粒径 r ・エアロゾルの大きさは数nmから10μmとされている。 ・自然起源の粒子 ⇒ 土壌粒子、海塩粒子など 人工起源の粒子 ⇒ 排ガスに含まれている硫酸(塩)粒子 や硝酸塩粒子 ・自然起源の粒子 土壌粒子・・・・・・土壌から発生した鉱物性の粒子。 [アルミニウム、シリコン、鉄、カリウム、 カルシウム、マグネシウム]などで構成。 海塩粒子・・・・・・海面から発生した粒子。 [ナトリウム、塩素]などで構成 3 電子顕微鏡用の エアロゾルサンプルの捕集 メッシュについて 3㎜ コロジオン膜200メッシュ 電子顕微鏡像 0.127mm インパクター捕集装置について 空気の流れ ここで粒子は一気に加速する ここにメッシュを設置 捕集日時と大気の状況 捕集場所 東京海洋大学 新2号館屋上 2000年から2001年3月までの計4回、一回の捕集は、流量約 1.0L/minで手動で5分間行われた。 サンプル 捕集年月日 捕集時間 予測された粒子 1 2000年4月9日 09:24-09:29 黄砂時の粒子-Ⅰ 2 2000年7月24日 13:18-13:23 海風時の粒子-Ⅰ 3 2000年7月24日 13:35-13:40 海風時の粒子-Ⅱ 4 2001年3月6日 15:13-13:18 黄砂時の粒子-Ⅱ 捕集日時と大気状況 4 観察と元素分析につい 走査型電子顕微鏡(SEM)について 電子源 電子ビーム 電子レンズ (コンデンサ) 走査コイル 偏向走査コイル 試料 対物レンズ (走査) 2次電子検出器 試料 投射レンズ 蛍光スクリーン 像 透過型電子顕微鏡 Transmission Electron Microscope 像 ブラウン管 ブラウン管 CRTスクリーン 走査型電子顕微鏡 Scanning Electron Microscope 蒸着について 蒸着・・・・・カーボン棒を、溶解蒸発することに よって、薄い膜でメッシュを覆うこと。 理由・・・・・捕集された粒子を固定するため。 電子顕微鏡(SEM)で観察する際に電 子が試料に集まりすぎることによって 負の電荷を帯びてしまい、電子が反 発しないようにメッシュに導電性をも たせるため。 エネルギー分散型X線分光法(EDX)について X線分光法 ・エネルギー分散型X線分光法 EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy ・波長分散型X線分光法 WDX:Wavelength Dispersive X-ray spectroscopy 元素から放出されるX線は、それぞれ固有のエネル ギーをもっている。 試料から発生するX線を検出することによって、含有元 素を特定する。 入射電子 特性X線 2次電子 電子ビームを照射することによって生じる 2次電子と特性X線 (カウント数)/(測定時間) エネルギー(KeV) EDXによる定性分析例 実際の測定、分析の流れ 粒子を捕集 カーボン蒸着 SEMによる形状の観察、撮影 EDXによる元素成分の分析 ・各サンプルに対してフィルター上の粒子の中から無作為に20 から30個の粒子を選択した。 ・メッシュが銅製のため、元素分析で検出された元素のうち銅 は除外した。 5 結果と考察 ・EDXによって検出された、粒子の元素成分 ・黄砂粒子が大陸から輸送されてくる際に起こる変質や海 塩粒子との内部的な混合状態 ・海塩粒子の変質と土壌粒子との内部的な混合状態 ・観察された粒子の形状とライダー・データによって示され る非球形性との比較 SEM画像 例1 (2000年7月24日 海塩粒子) SEM画像 例2 (2000年4月9日 黄砂粒子) 2~3μm 50μm 黄砂時の粒子の元素構成 粒子 No. 検出された元素 1 Si Al Fe Ca K V 2 Si Al Fe Ca K Mg 3 Si Al Fe Ca K S 4 Si Al Fe Ca K Mg 5 Si Al Fe Ca K Mg S Cl 6 Si Al Fe Ca K S 7 * Al Fe Ca K P 8 Si Al Fe Ca K Mg 9 Si Al Fe Ca K Mg 10 Si 11 K Na Cl 12 Si Al Fe Ca K Ti 黄砂時ーⅠ(2000年4月9 日) 粒子 No. 検出された元素 1 Al Si Fe Mg Ca K 2 Al Si Fe Mg Ca S Cl 3 Na Cl Mg Ca Si S 4 Al Si Fe Mg * K 5 Na Cl Mg Ca Si K 6 Al Si Fe Mg Ca S Cl K 7 Na Cl Mg Ca Si S 8 Na Cl Mg Ca S K 9 Na * * * Si S Zn 10 Al Si Fe Mg Ca S Cl K Ti Mn 11 Al Si * * * Cl 12 Na Cl Mg Ca Si S K 13 Na Cl Mg Ca Si S K 14 Mg S Cl Ca 15 Na Cl Mg Ca Si S 16 Na Cl Mg Ca Si S 17 * Si Fe Mg Ca 18 Al Si Fe Mg Ca 19 * Si * Mg Ca S Cl 20 Na Cl Mg Ca Si S 21 Na Cl Mg Ca Si S K 22 Al Si Fe * Ca K 黄砂粒子ーⅡ(2001年3月6日) 23 Al Si Fe Mg Ca S Cl 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日) % 黄砂時ーⅠと黄砂時ーⅡの元素の検出頻度 100% 10個/12 個 黄砂時ーⅠ(2000年4月9日) 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日) 83% 80% 60% 40% 20% 0% Si Al Fe Ca K Mg Cl Na S P V Ti Mn Zn 元素 海風時ーⅠの元素構成 粒子 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 検出された元素 Na Cl Ca Na Cl S K Ca Ti Na Cl Al Si S Ca Na Cl Na Cl S K Ca Na Cl Si S Ca Na Cl Mg K Ca Na Cl Mg S K Ca Na Cl K Ca Na Cl Ca S K Al Si Cl K Ti Fe Na Cl K Ca Na Cl Si K Na Cl Mg Si S Ca Na Cl S Ca Na Cl Ca Na Cl Si Cr Na Cl K Na Cl Si K Na Cl Si S K Ca 粒子 No. 21 22 23 24 25 26 27 28 29 検出された元素 Na Cl Si S K Ca Na Cl Si S Ca Na Cl Si S K Na Cl Mg Si S K Ca Na Cl Al Si K Ca Ti Fe Na Cl Mg K Na Cl Mg Si K Ca Mg Al Si K Ca Ti Fe Na Cl S Ca Mn 2000年7月24日 (13:18~13:23) 海風時ーⅡの元素構成 粒子 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 検出された元素 Mg Si Si Si K Si Ca P Si Si Si Na Cl Mg Si S K Ca Na Cl Mg Si Ca Na Cl Si S Na * Al Si Ca Na Cl Na Cl K Ca Na Cl Si S Na Cl Mg Si S K Ca Na Cl Si Ca 粒子 No. 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 検出された元素 Mg Al Si Cl Ca Mg Al Si Ca Ti Fe Si S Mg Si S Cl K Ca Na * Mg Si S Ca Na Cl Mg Si Ca Mg Si Ca Na Cl Mg S Ca Na Cl Mg Si S Ca Mg Si Cl K Ca Fe Na Cl S Ca Si K 2000年7月24日 (13:35~13:40) % 海風時ーⅠと海風時ーⅡの元素の検出頻度 100% 海風時-Ⅰ(2000年7月24日) 海風時-Ⅱ(2000年7月24日) 80% 60% 40% 20% 0% Si Al Fe Ca K Mg Na Cl S P Ti Cr 元素 % 黄砂時と海風時の元素の検出頻度 100% 黄砂時ーⅠ(2000年4月9日) 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日) 80% 海風時ーⅠ(2000年7月24日) 海風時ーⅡ(2000年7月24日) 60% 40% 20% 0% Si Al Fe Ca K Mg Cl Na S P V Ti Mn Zn Cr 元素 元素の個数割合(土壌系成分と海塩系成分の混合) 黄砂時ーⅠ(2000年4月9日) 1 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日) 0 10 5 7 海風時ーⅠ(2000年7月24日) 0 1 1 0 2 海風時ーⅡ(2000年7月24日) 0% 0 11 11 1 20% 0 10 1 2 10 40% 0 1 13 9 1 60% 0 1 0 11 80% 1 0 100% ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ Si or Al or Fe Si+Al+Fe (no Cl, no Na) Si+Al+Fe (+Cl, no Na) Si+Al+Fe (no Cl, +Na) Si+Al+Fe (+Cl, +Na) Si or Al or Fe (+Cl, +Na) (Na+Cl) のみ (Na+Cl) +others only others 12 12 10 10 8 8 Altitude [km] Altitude [km] 2000年4月9日(黄砂時ーⅠ)のライダー観測データ(532nm) 6 6 4 4 2 2 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 JST(UTC+09) [h] 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10 12 14 JST(UTC+9) [h] 16 18 20 サンプリング 0 5 10 15 20 Attenuated Backscatter [a.u.] 25 0 10 20 30 Depolarization ratio [%] 40 50 顕著な黄砂時---非球形な鉱物粒子高い偏光解消度を生ずる 22 黄砂時ーⅠのSEM画像 黄砂時ーⅠのSEM画像(UP) 4 4 3 3 Height (km) Height (kkm) 2000年7月24日のライダー観測データ(532nm) (海風時ーⅠ&海風時 ーⅡ) 2 2 1 1 0 0 10 11 12 13 14 15 16 17 Loacl Time (h) 18 19 20 10 11 12 13 14 15 16 17 Local Time (h) 18 19 20 サンプリング 0 5 10 15 Attenuated Backscatter (a.u.) 20 0 5 10 Depolarization Ratio (%) 15 夏、海風の卓越するとき偏光解消度の高くなる原因は海塩or土壌粒子? 海風時ーⅠのSEM画像 海風時ーⅡのSEM画像 6 まとめ • 黄砂時の粒子 黄砂時ーⅠ・・・比較的、混じり気のない土 壌粒子ばかりだった。 黄砂時ーⅡ・・・海塩性成分との混合がよく 見られた。 • したがって、黄砂粒子は大陸からの輸送 環境によって、海塩粒子などとの混合条件 が左右されるのではないだろうか。 • 海風時の粒子・・・海塩粒子と混合している粒 子がほとんどだった。 • ただし、海風時-Ⅱでは・・・ • 海塩粒子と混合している粒子の他に、「海塩成分をまったく含 まない土壌成分だけの粒子」がいくらか見られたが、これら以 外の粒子は 「土壌成分と海塩成分が混合されていた粒子」 と 「土壌成分を含まなかった粒子」 大きく分かれ、その比は海風時-Ⅰ・海風時-Ⅱともにほぼ 1:1で、特に違いは見られなかった。 • 「海塩成分をまったく含まない土壌成分だけの粒子」とは、「別 の発生源から、一時的に飛来してきて捕集されてしまった土 壌粒子」だったのではないか。 • 実際に観察された粒子の形状は、ライダー・ データから考えられる非球形性について、よく 一致した形状であった。 7 謝辞 最後に本研究にあたり、海洋電子機械工学科 の村山利幸助教授に終始ご指導をいただき、深 く感謝しております。 また同学科の元田慎一助教授、海事交通共同 研究センターの酒井直道博士に実験装置を貸し ていただき、円滑に研究を進めることができ、深 く感謝しております。本当にありがとうございまし た。
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