2016年06月24日 臨時レポート 英国 EU離脱が残留を上回る(途中経過)

2016年6月24日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB70)
臨時レポート
英国 EU離脱が残留を上回る(途中経過)
6月23日国民投票結果 EU(欧州連合)離脱が濃厚に
6月23日に実施された英国のEU離脱の是非を問う国民投票(残留か離脱かの二者択一)の開票状況が徐々に
明らかになりつつあります。英国BBCが途中経過(93%の開票状況)として伝えるところによると、離脱賛成が
52%、残留が48%と、離脱賛成票が上回っています。
英国はEUと深いつながりがあります。域内貿易には関税がかからず、英国にとってEUは最大の貿易相手です
(図表1)。英国のEU予算への拠出金は28ヵ国中4位です(図表2)。英国への移民の純増数の約55%はEUから
です(図表3)。こうした深い関係等を踏まえ、IMF(国際通貨基金)は6月17日に英国がEUを離脱した場合の試算
結果を公表しました。EUに残留した場合には実質GDP(国内総生産)は2%強の成長が続くものの、離脱し、かつ
他国との通商交渉等が停滞する場合には、2017年にマイナス成長に陥り、2019年の同国の成長率は残留に比
べて5.6%減少するとの見通しを示しました。外国の進出企業が英国を離れることで失業者数も増えるとしていま
す(図表4)。日本企業との関わりも深く、外務省(平成25年海外在留邦人数調査統計)によると、英国に進出して
いる日本企業数は約1,000社で、ドイツに次いで欧州第2位です。英国が離脱を選択した場合、ヨーロッパの独立
志向派を勢いづかせることも考えられます。
以上のことを踏まえると、英国のEU離脱は少なからず世界経済や金融市場に影響を与えるものと思われます。
図表1:英国の貿易相手先(輸入額+輸出額)
図表2:英国のEU予算への拠出金割合
(2015年)
(2015年)
その他,
25%
その他,
26%
日本, 2%
スイス, 2%
EU, 51%
中国,
7%
米国, 12%
図表3:英国への移民の純増数
400
(千人)
300
200
(2012年~2015年 年次)
英国への移民の純増数
(内)EU
オランダ,
5%
スペイン,
8%
ドイツ, 22%
フランス,
17%
英国,
11%
イタリア,
12%
図表4:IMF 英国EU離脱の場合の試算
実質GDP成長率(前年比)
ケース区分
2016年
2017年
2018年
2019年
残留の場合(%)
1.9
2.2
2.2
2.1
離脱の場合(%)
1.1
-0.8
0.6
1.7
-0.8
-3.7
-5.2
-5.6
残留に比べた場合の
実質GDP減少率(%)
失業率
2016年
100
0
2017年
2018年
2019年
残留の場合(%)
5.0
5.0
5.1
5.3
離脱の場合(%)
5.2
6.0
6.5
6.1
2012年
2013年
2014年
2015年
(出所)図表1:Bloombergデータ、図表2:EUデータ、図表3:英国統計局データ、図表4:IMFデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とする
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
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相場動向
最近の世論調査では残留派が勢いを盛り返し、離脱は回避されるとの見通しが強まっていたこともあり、離脱可
決の可能性が強まったことで相場は混乱に陥っています。
株価やJ-REITは下落し、円は対ドル、対ユーロで急伸しています。相対的に安全な資産とされる債券が買われ、
10年国債金利は低下しています。
図表5:相場動向(6月24日は15時時点)
6月24日
(15時時点)
6月23日
日経平均
16,238.35 円
変化率
(債券は幅)
14,952.02 円
-7.9 %
TOPIX
1,298.71 ポイント
1,204.48 ポイント
-7.3 %
東証REIT指数
1,818.57 ポイント
1,732.29 ポイント
-4.7 %
10年国債金利
-0.140 %
-0.191 %
-0.051 %(低下幅)
為替(円/ドル)
106.16 円
102.42 円
-3.5 %(円高)
為替(円/ユーロ)
120.86 円
112.81 円
(出所)Bloombergデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
-6.7 %(円高)
今後の見通し
離脱決定となることにより、EU法適用猶予期間(EU離脱通告の2年後)が終了するまでに、EUとの新協定締結や、
各国との自由貿易協定(FTA)等の交渉を行うことになると思われます。これら交渉は難航することも予想され、世
界的に経済・政治面で大きな影響が生じる懸念があります。
金融市場では急速にリスク回避の動きが高まり、円高・ドル安、株価大幅下落となりました。
英国のEU離脱の影響が明らかになるにはかなりの時間を要するものと考えられ、当面の市場環境は、投機的な
動きが先行する値動きの大きなものになると予想されます。一方、ドル資金不足などの事態に備え、日銀、欧州
中央銀行(ECB)、米連邦準備制度理事会(FRB)等6中銀が資金供給で協調することを検討するなど、世界的に
混乱に備えた対策の発動が期待されます。
現在の株価、為替水準は世界的な混乱を過度に織り込んだ水準にあるものと考えられます。英国のEU離脱に向
けた交渉日程など、具体的な検討が進むにつれて市場は落ち着きを取り戻し、反発に転じるものと予想されます。
図表6:英国のEU離脱の手続き
国
民
投
票
離
脱
派
「
急
ぐ
必
要
な
い
」
キ
ャ
メ
ロ
ン
首
相
→
→
離
脱
派
が
勝
利
①
欧
州
理
事
会
に
離
脱
の
意
思
を
通
告
「
す
ぐ
に
通
告
」
②
英
国
と
欧
州
理
事
離会
脱が
に
向
け
た
交
渉
図表7:想定される英国と他国との貿易協定締結方式
協定成立
自由な市場へのアクセス
財
サービス
金融サービス
離脱
1
ノルウェー方式
〇
〇
〇
〇
2
スイス方式
〇
△
(限定的)
×
〇
3
カナダ方式
〇
△
(部分的)
×
×
4
EUとの経済協定
なし(WTO方式)
×
×
×
×
協定成立せず
通告から2年
で離脱
人
EU加盟国の同意が
あれば期限延長が可能
(出所)各種報道等を基にニッセイアセットマネジメントが作成
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