全方向移動機構に関する新提案 と簡易電動車いすへの応用 東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門 准教授 和田 正義 1 研究の背景 全方向移動機構 その場での旋回・真横へのスライド など、平面上の動作に制限のない 機構 狭い空間での移動や、複数ロボット の協調動作などに有用 2 従来の全方向移動機構(全方向車輪) 従来型全方向車輪 駆動力を発生 接地点が切り替わることから、振動や騒音が発生する 段差乗り上げ能力(特に車輪の横方向)が低い 3 独自の全方向移動システム (アクティブキャスタ:ACRO) オフセット アクティブキャスタ 受動的に全方向へ移動できるキャスタを、能動的に駆動 2軸が生成する速度ベクトルの組み合わせで全方向に駆動力発生 4 アクティブキャスタの原理 r cos V r sin s sin s cos w s XRYR : ロボット座標 θ: キャスタ姿勢角 s: 車輪オフセット距離 r: 車輪半径 ωw : 車輪角速度 ωs :旋回軸角速度 旋回軸 車輪軸 5 アクティブキャスタ式全方向移動ロボット モータの高精度な制御 車輪姿勢角フィードバックによる 複雑な演算 平面3自由度に対する冗長駆動 6 球状動力伝達機構:ACROBAT ACROBAT: Active-Caster omnidirectional RObotic drive with a BAll Transmission 2つの球:動力の伝達体 上側機構 (ロボットに固定) Rollers 下側機構( 鉛直軸周りに旋回) 車輪操舵軸 車輪駆動軸 7 ACROBATの運動学 r s 2 cos sin2 Vx rc Gw rd Gs V y r s cos sin rc Gw rd Gs K 0 r G w rc r s cos sin rc Gw rd Gs r s sin2 cos2 rc Gw rd Gs 0 -K sin sin sin( ) sin( ) ra 0 a cos 0 rb b cos sin( ) sin( ) s G s rd r s K G w rc G s rd 90° 変数を含まない伝達式 上側機構ローラ配置 車輪姿勢角Φを計測する必要がない 8 球状動力伝達機構:ACROBATの試作 単輪の試作機 動作測定実験装置 9 単輪による動作実験 10 簡易電動車いす 研究の背景 近年の社会問題:高齢化社会 大車輪駆動型 (従来の代表例) • 比較的軽量 • 折りたたみ可能 • 手動操作可能 移動支援機構の普及 例:自動車での搬送 専用の装置により 自動で積載、荷下 が可能 長距離の移動が可能 車載装置 しかし 後方転倒の危険性 11 アクティブキャスタ駆動による簡易電動車いす Gear boxes Steering shaft アクティブキャスタ Abs. encoder • 200WのACサーボモータ • 車輪半径…65mm • オフセット…40mm Gear trains Motors Wheel Wheel shaft Caster-offset 5輪簡易電動車いす 背面図 Manual wheelchair 側面図 Battery Attachment point Active-caster 12 5輪車いすの運動学モデル Velocity V 運動学モデルを用い、通常の電動車いすと同一の操作性を実現 V x 1 V y 0 1 w r cos 1 s sin s y V x Ω Rotation Ω 1 ( y cos x sin ) V r 1 ( y sin x cos ) Ω s ( x0 ) 13 5輪車いす独自機能の開発(動作モードの切り替え) 後輪駆動モード 旋回中心 左右の大車輪の中央 前輪駆動モード 旋回中心 前輪のキャスタの中央 14 14 従来技術とその問題点 既に実用化されている簡易電動車いすには、 モータを装着した大車輪により駆動するタイプの ものがあるが、 構造上、後方に転倒する危険性があることか ら動作の俊敏性に限界がある。 大トルク、低回転数のモータが必要になり、大 型、重量大の傾向になる。 などの問題があった。 15 新技術の特徴・従来技術との比較 • アクティブキャスタ新機構(ACROBAT)の考案 従来は角度センサ情報に基づき、操舵と車輪の2つ のモータの高精度な協調制御が必要であったが、 センサレス、協調制御不要でシステムの簡素化が 可能となった。 • アクティブキャスタを用いた5輪車いすの提案 独自の全方向移動機構を採用した5輪構造により、 転倒の危険性を低減し、さらに従来の車いすには ない、動作モード変更という新機能を付加した。 16 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすためには、個人の ユーザはもちろんであるが、車いすに搭乗し た状態でも装置の着脱が可能であることから、 介護施設や病院における利用も考えられる。 (多数の手動車いす+少数の駆動システム) • また、車いす以外、ベッドや台車、あるいは小 型自動車などの搬送への展開も可能と思わ れる。 17 実用化に向けた課題 • 現在、ACROBATの球伝達について理論的な 動作を確認済み。しかし実用に際して、球の 材質に依存した伝達可能動力の限界値や騒 音などの検討が必要。 • 今後、車いすの駆動車輪として適用していく 場合の車輪径やモータ容量など設計条件の 検討を行っていく。 • さらに、5輪構造の特徴を生かした新しい動作 について考案を行う。 18 企業への期待 • 基本的に手動車いすを中心とした開発技術を 持つ、企業との共同研究を希望。(試作段階 から、ユーザの意見を取り入れたい。) • その他、既存の車輪構造物の搬送方法を模 索、検討している企業等には、本技術を検討 いただくことを希望。 19 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :全方向移動車両 :特願2012-156522(特開2014-020388) :国立大学法人東京農工大学 :和田正義、井上雄介、平間貴大 • 発明の名称 :手動車両の電動化ユニット及び手動車両の 電動化ユニットの制御方法並びに電動車いす 及び電動車いすの制御方法 出願番号 出願人 発明者 :特願2013-099906(特開2014-073354) :国立大学法人東京農工大学 :和田正義、宗方宥、田中彬 20 お問い合わせ先 東京農工大学 先端産学連携研究推進センター TEL 042-388-7550 FAX 042-388-7553 e-mail [email protected] 21
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