Brexit を巡る市場の反応につ いて、留意すべき 5 つのポイント 2016 年 06 月 21 日 Brexit(英国の EU 離脱)の国⺠投票が間近に迫り、市場は神経質な展開となっています。 ここ数週間で、Brexit(英国の EU 離脱)に対する関⼼が急速に⾼まっており、Google 検索における関⼼度(下図参照)も 急増しています。そして Brexit を巡る不確実性が、⾦融市場の“リスクオフ”の動きを活発化させており、ここ 2 週間のボラティリ ティを⾼めています。 欧州債券市場では、ヨーロッパ中央銀⾏(ECB)が量的緩和政策の⼀環として積極的に債券を購⼊していることから、欧州中 核国の債券利回りはここしばらくは 0%を下回る状況が続いています。これまで独国債の利回り曲線の⼤部分がマイナスでしたが、 Brexit を巡る国⺠投票に対する不確実性が増してきたことを反映して、先週、独 10 年債券利回りも初めてマイナスとなりまし た。先週のこの独 10 年債の動きは⼀時的なもので、現在は 0%近辺まで戻っています。 英国の欧州連合(EU)離脱に向けた「離脱派」によるキャンペーンは、移⺠問題に対する国⺠感情にフォーカスしており、⼀週 間ほど前までの世論調査では離脱派が残留派を上回っていました。 国⺠投票についてカギとなるポイントと想定される事象としては、次の 5 つのことが考えられます: 第⼀に、たとえ英国の EU 離脱派が勝利を収めたとしても、離脱条件が合意されるまでは少なくとも 2 年以上はかかると⾒込まれ ることです。 第⼆に、離脱派が勝利すると、EU 市場とその⾦融セクターへのアクセスや労働市場の柔軟性が制限される恐れがあり、英国に とっては不利な条件となる可能性がでてきます。どの程度の影響になるかは、EU とどういった離脱条件になるかなどの交渉次第とな りますが、英国の GDP は 2%程度減少すると⾒られています。これは英ポンドも含めて英国資産全体に悪影響を与えるでしょう。 英国は(ノルウェーと同様に)ゆくゆくは EU と貿易協定を結ぶと考えられますが、英国は発⾔権を持つことができず EU のルールに 従わざるを得なくなることから、国際的な地位の低下につながることが⾒込まれます。なお英国の EU 離脱による豪州への影響につ いては、豪州の英国への輸出シェアがわずか 2.7%に過ぎないことから、それほど⼤きくはないと考えられます。 第三に、離脱派の勝利がグローバルの投資家に及ぼす現実的な問題としては、この勝利が通貨ユーロの存続に対する懸念を再 燃させ、ユーロ圏の崩壊を⽰唆するものと受け⽌められる可能性があることです。離脱派のキャンペーンは、ユーロ圏諸国の中で EU およびユーロ圏離脱派を活気づける可能性があります。それにより欧州周縁国が発⾏する債券への信⽤不安が再発し、ユー ロから⽶ドルへといった安全資産への逃避が起こり、ひいては⼈⺠元などの新興国通貨やコモディティ価格への下押し圧⼒を⾼める 可能性があります。突き詰めて⾏くと、ユーロ圏諸国が EU とユーロ圏を離脱するハードルは、英国の EU 離脱よりもずっと⾼く、現 実的には Brexit がユーロ圏諸国に対してより⼤きな統合に対する圧⼒のきっかけをつくることになるかもしれません。⼀⽅で、市場 は当初、このようなことは織り込まないでしょう。 第四に、離脱派の勝利は、すでに世界的規模で⾒られているような反グローバリゼーションの波を促すことになりかねません。このこ とは⻑期的な潜在成⻑⼒や、ひいては⻑期的な投資リターンにとってマイナス材料となります。 1/2 最後のポイントとしては、ここ数週間で、英ポンドだけでなく、欧州株式市場をはじめグローバル株式市場全般が下落するなど、市 場が離脱派の勝利を部分的に織り込んでいることです。⼀⽅で、安全への逃避から⽶ドル、⽇本円、主要国の債券、⾦などに資 ⾦が流れています。独国債の利回りが 0%を下回ったのも、この動きの⼀部です。もちろん、もし離脱派が勝利を収めたなら、市場 はもう⼀段の下落を経験する可能性があります。⼀⽅で、欧州は欧州⾦融危機を乗り切った経験があり今回も切り抜けると⾒ら れることや、離脱の条件が合意されるまで少なくとも 2 年はかかることを想定すると英国に対するマイナスの影響も顕在化するまで は時間がかかることから、欧州及びグローバル市場における買いポジションのチャンスとなるでしょう。もちろん、もし残留派が勝利を 収めた場合は、最近の⾦融市場の動きが反転し、英国ポンドと欧州株式市場が⼤きく反発、債券利回りも上昇する可能性があ ります。 英国は EU を離脱するのでしょうか、それとも残留するのでしょうか? Brexit を巡る議論においては、残留派も離脱派もそうなった場合の影響をやや⼤げさに誇張しているものと思われます。とはいえ EU から の離脱は、EU 残留派が多数を占めるスコットランド独⽴の機運を再燃させる可能性が⾼いことや、沈静化していた北アイルランド問題に ついても不確実性が⾼まることが予想されることから、⻑期的には英国経済の規模縮⼩と弱体化が進み、英国の世界に対する影響⼒ が⼀段と低下する可能性を孕んでいます。 前述のとおり⼀週間ほど前までの世論調査では、離脱派が残留派を上回っていましたが、先週の調査では離脱派がじりじりと後退し、 残留派と離脱派が再び拮抗している状況になった模様です(下図参照)。これは残留派を⽀持していた労働党の下院議員のコックス ⽒の殺害事件が影響しているものと思われます。私はまだ残留派が勝利を収めると⾒ています。それは、まだどちらかを決めかねている有 権者が現状維持を⽀持すると⾒られ、また昨年の英国選挙の際、⾮常に正確な予想をした電話による世論調査では残留が優勢と なっているからです。ただし、相当な僅差の争いになると⾒られます。 ここで留意しておきたい点は、世界経済の状況はまったく変化しておらず、今⽉初めは Brexit のリスクはそれほど意識されていなかったこと です。したがって、⾜元の市場はやや過剰反応であると思われます。ただ、国⺠投票までは市場の神経質な展開が続くことになるで しょう。 ※上記は当資料作成時点における AMP キャピタルの⾒解であり、将来の動向や結果を保証するものではありません。また将来予告なく変更される場合があります。 当資料は、投資の参考となる情報の提供を⽬的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:ABN AMP キャピタル・インベスターズ株式会社 59 001 777 591; AFSL 232 497)から提供された情報をもとに AMP キャピタル・インベスターズ株式会社が作成したものであり、特定の有価証 登録番号: 関東財務局⻑(⾦商)第 85 号 券への投資を勧誘する⽬的で作成したものではございません。当資料は、各種の信頼できると考えられる情報に基づいて作成されておりますが、 加⼊協会: ⽇本証券業協会、⼀般社団法⼈⽇本投資顧問業協会 情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。当資料中のいかなる内容も将来の投資成果及び将来の市況環境の変動等を保証す るものではありません。当資料の記述内容、数値、グラフ等は作成時点のものであり、予告なく変更される場合があります。 2/2
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