第86号】『高額薬剤の実態

― 今回は特に最近注目を集める「高額薬剤」に焦点をあて、薬剤費と患者数の推移を切り口にした分析事例をご紹介致します ―
2016/6/23 vol.86
高額薬剤の実態
保険者支援事業部
カスタマーリレーション推進G 工藤 大
近年、製薬業界の躍進には目覚しいものがあり、毎年のように新薬が発売されています。特に2014年度以
降これまでにないインパクトを与える新薬が発売されました。C型肝炎の治療薬「ハーボニー」「ソバル
ディ」、悪性黒色腫(皮膚がん)の治療薬「オプジーボ」、胃がん治療薬「サイラムザ」です。
これらは患者さんにとっては朗報である反面、非常に高額であり、健保財政に大きな影響を与える事とな
りました。今回は、その実態についてご紹介していきます。
※JMDCが保有する330万人のレセプトデータより抽出
①「オプジーボ:薬価(100mg729,849円)」「サイラムザ:薬価(100mg75,265円)」の処方実態
(千円)
薬剤費
(人)
患者数
皮膚がんの抗体医薬品である「オプジーボ」は、体重60kgの方であれば1回あたりおよそ180mgが処方
されるため薬剤費が約130万円と高額になります(投与期間により更に高額に) 。発売後、切除不能な進
行・再発の非小細胞肺がんにも効能追加になったため、今後も医療費・患者数は増大の見込みです。苦しん
できた患者さんにとっては喜ばしい事ですが、健保財政にとっては大きな影響となりそうです。
②「ハーボニー:薬価54,797円」「ソバルディ:42,240円」の処方実態 ※2016年4月に薬価改定
(千円)
薬剤費
(人)
患者数
特にハーボニーの医療費・患者数は増大傾向にあります。ハーボニーの処方は基本的に1クール12週間で、
約470万円となり、1人発生すれば人工透析レベルの医療費インパクトを与えます。仮に前期高齢者で顕在
化しているC型肝炎患者の半分に処方されれば、医療費へのインパクト計り知れません。但し、ハーボニー・
ソバルディなどはほぼ100%近い著効率とも言われており、その浸透によって2016年度以降は患者数が減少
していくと見られています。今後も新薬の登場により、一喜一憂されそうな日々が続きそうです。
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