免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ(二ボルマブ)の 効果と実力

免疫チェックポイント阻害剤
オプジーボ(二ボルマブ)の
効果と実力
千葉ポートメディカルクリニック
今村 貴樹
<一変したがん治療>
もはや標準療法、ガイドラインには何の意味もなくなりました。
オプジーボを使うか使わないか、あるいは効果あるかないかで、
がん患者の運命は全く異なってしまうからです。
がん患者の目の前に広がる風景は、この薬の為に一変してしまい
ました。
<オプジーボの効果と抗がん剤治療>
もはや比較になりません。オプジーボの圧勝です。
但し、一部のがんに有効な分子標的薬はその優れた効果からオプ
ジーボに勝ります。
分子標的薬が有効ながんは、オプジーボよりこちらを優先させる
べきです。
<オプジーボはなぜ抗がん剤に圧勝するのか?>
①副作用
オプジーボには吐き気も脱毛も白血球減少、しびれ
がありません。
②持続効果
抗がん剤は投与を中止したら、がんは早期に悪化し
ます。しかしオプジーボは効果が長時間続きます。⇒オプジーボ
は始めたら死ぬまで続ける薬ではないのです。
③薬剤耐性
抗がん剤は投与していると、いつか効果がなくなり
ます。しかしオプジーボは耐性がありません。
<なぜ、オプジーボに切り替わらないのは?>
理由はコストです。
後で詳しく述べますがオプジーボの治療は高額です。
その為、国や厚生労働省、がん拠点病院の医師は、なるべく使わ
せないようにしています。
<しかしオプジーボは万能薬ではありません>
全てのがん、肉腫、血液がんに効く可能性があり万能薬に近いで
すが、効きやすいがんと効きにくいがんがあります。
又、全ての人に有効な訳ではありません。
特に10%程度でSupper respander
縮小効果あり
1/4
1/2
効果なし
現状維持
1/4
<現在まで抗PD-1抗体を投与した疾患>
7月末現在で90名以上
勿論、国内最多となります。
非小細胞性肺がん
13名
腎臓がん
4名
卵巣がん
10名
軟部肉腫
4名
乳がん
8名
胆管がん
4名
胃がん
7名
子宮がん
3名
食道・咽頭がん
7名
小細胞性肺がん
3名
膵臓がん
6名
肝臓がん
3名
神経内分泌がん
5名
悪性リンパ腫
3名
大腸がん
5名
その他
4名
殆ど全てのがん、肉腫、血液がんに投与している。居住地域も北
海道~福岡まで広範囲にわたる。
<抗PD-1抗体の特徴>
固形がんにも急性白血病や悪性リンパ腫のような血液がんまで幅
広く効く抗がん剤はない。
また、効果がある程度あったら再び増悪するまで薬の投与を休ま
せることができる。
この点は抗がん剤は無論、分子標準薬すらない特徴。
<オプジーボに対する誤解>
①オプジーボは一度投与したら効果がなくなるまで投与しなくて
はならない。⇒いいえ、通常半年程度の投与期間です。
②オプジーボは良い薬だけど高い。1年間で数千万かかる
⇒いいえ、体重50㎏の方なら半年間の投与で薬450万円です。
オプジーボは確かに高い薬ですが、ずっとその費用がかかる訳で
はありません。
<オプジーボの実際の投与パターン>
①まず4回投与する。⇒ 効果ない人は終了
②現状維持~縮小の効果が出た場合はもう4回追加
③その後様々な選択肢がある。
1)再び増悪するまで治療は休み
2)保険内で行える維持療法を行う。
3)その他
オプジーボで大きく改善したら今後、化学療法が不要な可能性が
ある。
<オプジーボががん拠点病院で使われにく
い本当の理由>
オプジーボは最新の薬がゆえに、がん拠点病院なら、どんどん使
われている、あるいは今後も使われていくと思うでしょう。
⇩
しかし現実はそうではありません。
<使われない理由①>
オプジーボの効果判定ができない。
抗がん剤治療に慣れたがん拠点病院の医師はその効果判定を画像
診断でしかできません。
しかしオプジーボは投与後3~4ヶ月だと画像上一時的に増悪し
たように見えその後縮小していく例がしばしばあります。
本当は有効な例を増悪と判断してしまうのです。
<使われない理由②>
オプジーボは免疫チェックポイント阻害剤であって抗がん剤では
ありません。進行がんにおける免疫低下を元に戻す作用を持ちま
す。
つまり効果があるかどうかは、まず免疫低下が改善したか免疫力
を計るマーカーを測定します。
このマーカーが改善していれば画像上増悪しても効果が高いです。
これが、がん拠点病院はできません。
<使われない理由③>
がん拠点病院の医師はオプジーボの持つ副作用が理解できず対処
できていません。
オプジーボは免疫低下状態を回復させる一方で免疫機構が暴走す
る可能性もあります。
つまりアレルギー、膠原病などが生じる事になります。
しかし彼らはこうしたアレルギー、膠原病などの免疫疾患を診療
した事がまずありません。素人ですから対処できません。
<オプジーボの副作用>
免疫抑制の状態を解除する訳なので当然免疫に対してアクセル
(=暴走)する可能性がある。
Ⅰ型糖尿病
間質性肺炎
潰瘍性大腸炎
この3つは重要で注意すべき副作用だが
生じる可能性は高くなく初期にはまず出現
しない。
甲状腺機能低下、アトピー性湿疹、関節痛、シェーグレン症候群、
全身倦怠感、白斑、サルコイドーシス、自己免疫性肝炎など
アレルギー、膠原病、自己免疫疾患が生じやすい。
しかしいずれにしても初期には出現しにくく、いたずらに生じる
か判らない。副作用におびえるより奏功するかどうかを心配した
方が良い。
<オプジーボの副作用対策>
がん拠点病院では免疫・アレルギー疾患の知識に乏しい医師が使
用しているため副作用が明らかに出るまで何もできずに予防、早
期発見が不可能。
また、対策もステロイドしか使えない。
しかし本来はレミケードやアクテムラ、シンポニーなどの薬を使
い分けて対応するのがベスト。
<免疫チェックポイント阻害剤は何と併用
すべきか?>
オプジーボは優れた薬ですが欠点もあります。
奏功率は約半分で残り半分のがんには効果がありません。
もう1つの免疫療法の薬、抗CTLA-4抗体ヤーボイ(イピリ
マブ)の存在があります。現時点で最強の免疫療法はオプジーボ
+ヤーボイの併用療法です。これによって奏功率は7割を超えます。
しかしこの2つを併用すると副作用が強く出てせいぜい3~4ヶ
月程度しか治療はできません。つまりは免疫療法だけでは全ての
がんを抑制できる訳ではないのです。
<免疫チェックポイント阻害剤と併用する
と良い薬>
①血管新生阻害剤 アバスチン、ラムシルマブ
②分子標的薬
③抗がん剤
レンビマが最有力、その他の分子標的薬も可
がん幹細胞に作用するエリブリン、5-FU系経口
内服剤、白血球が減少するような副作用の強い抗がん剤はオプ
ジーボとの併用はあまり向いていない。
特に血管新生阻害剤は維持療法に分子標的薬は反応が早くオプ
ジーボの立ち上がりの遅さをカバーする。
<オプジーボはどれだけの費用がかかるのか?>
かなり高額な費用がかかるようにマスコミなどで報道され自費使
用をためらう、がん患者さんも多いと聞きます。
(報道例)
体重60kgの人が1回使用すると133万円
これを1年間使用すると1年間で3000万円以上かかる!
しかしこれは嘘です。
<当院でのオプジーボの費用>
体重60kgの人が1回使用すると約55万円
これを半年間使用すると約450万円かかる!
これも高額ですがマスコミで報道されている費用の1/8で
済み1桁違います。
<何でそんなに費用が違うの?>
①そもそもオプジーボは大半の人が投与期間は半年です。
抗がん剤のように投与を中止したら増大・悪化する訳では
ないので、だらだら使い続ける必要がありません。
②そもそも当院では薬代を原価ギリギリで使用しているので
利益がありません。だから余分な費用がかかりません。
抗がん剤治療に限界を感じている人
抗がん剤治療に拒否反応がある人
もう治療法がないと言われた人
まずはオプジーボを4回行う事をお勧めします。
体重50kgの方で4回200万円
体重60kgの方で4回225万円かかりますが、これで運命が
変わる可能性があります。(少なくても半数の方が変わります)
有効な方は更に4回追加投与によって延命だけでなく1年以上が
んの進行が止まる可能性が出てきます。
今までのがん治療の常識を覆すこの薬を一度は使わないのは、
もったいないと思います。
<最後に>
今回の講演はオプジーボ一色ですが、この薬が今までのがん治療
を大きく変えてしまう画期的な薬ですので、あえてそうしました。
しかし、勿論それ以外の治療も引き続き行っているので、ご質問
があれば承ります。