免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関する Recommendation(2016年5月18日) 一般社団法人日本糖尿病学会 理事長 門脇 孝 免疫チェックポイント阻害薬として承認されているヒト型抗ヒトPD-1モノク ローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ®)を2014年7月4日から2016年3月31日 までに使用した推定4888名中12名(0.25%)が、1型糖尿病を発症したことが 報告されました。劇症1型糖尿病も急性発症1型糖尿病も発症しています。劇 症1型糖尿病は、発症後直ちに治療を開始しなければ致死的な疾患であるため、 疾患の存在を想定し、早期に発見して適切な対処を行うことが必要です。 そこで日本糖尿病学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における 1型糖尿病発症に対応するため、以下の方法を推奨します。 1.投与開始前、及び投与開始後来院日毎に、高血糖症状の有無を確認し、血 糖値を測定する。 2.測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか検査に異常値(空腹 時126 mg/dl以上、あるいは随時200 mg/dl以上)を認めた場合は、可及的速 やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、 糖尿病の確定診断、病型診断を行う。 3.1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖 尿病の治療を開始する。 4.患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症 状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自 覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよ う指導しておく。 5.該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる 場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免 疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエ ビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症 化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のために ステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性が あるため、最大限の注意を払う。
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