2016年6月23日 - アリアンツ・グローバル・インベスターズ

Project M #22 MACRO
どの国も望まないタイトル
世界で最も速く高齢化が進む国はどこでしょうか?
どの国も望まないタイトル
世界で最も速く高齢化が進む国はどこでしょうか?
高齢化のスピードで韓国がウサイン・ボルト選手だとすれ
ば、フランスは間違いなく『エディー・ジ・イーグル』という
ニックネームでお馴染の残念なスキージャンプ選手、マイ
ケル・エドワーズ選手でしょう。超高齢社会を迎えるのに
フランスが170年以上かかる一方で、韓国はそれを30年と
瞬く間に達成してしまうのです。
しかし高齢化においては史上最速のスプリンターである
ボルトよりも、1988年のカルガリー五輪で次点に大きく差
を付けて堂々の最下位となったエディーのようなスピード
の方が社会にとっては楽なのです。これは、高齢人口が
経済成長にとって重荷となるためです。
フランスが1850年に高齢化社会の国となった時(次ペー
ジのグラフ参照)、米国ではまだ奴隷制が存続しており、
電球も発明されておらず、ドイツも統一されていませんで
した。それから約130年後、フランスが高齢社会を迎えた
頃には、2回の世界大戦を経験し、原子爆弾が開発・使用
され世界中で馬を使わない輸送形態が一般化していまし
た。フランスは2023年に超高齢社会となる見込みです。
それに比べ、1999年に高齢化社会となったばかりの韓国
は、2018年に高齢社会に進み、その10年後の2028年に
は超高齢社会となります(グラフ参照)。しかし、韓国は高
齢化のスピードで先頭を走っているものの、すぐ後ろにバ
ングラデシュ、シンガポール、タイ、ベトナムの後続国が
迫っています。これは「世界で最も高齢化のスピードが速
い国」をかけた競争です。
社会の高齢化は、20世紀最大のサクセスストーリーの一
つです。20世紀は世界の多くの地域で30歳以上寿命が
伸びました。これは喜ぶべきである一方、社会の高齢化
は経済に長期的な影響を及ぼすため、世界最速の高齢
化社会というタイトルはどこの国にとってもあまり歓迎で
きるものではありません。
(次ページに続く)
人口動態の変化(若年→高齢化→高齢→超高齢)
研究者の間では、一般的に総人口に対して65歳以上の人口が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」
とみなします。この点において、65歳以上の人口比率が5.7%のマレーシアは若い国となり一方、トルコは7%の基準値をわずかですが超えています。フ
ランスと英国(いずれも18%)は次の基準値14%を超えているため「高齢社会」に属します。ドイツ(21%)、イタリア(22%)、日本(26%)は、その次の基準
値21%を上回っており、既に「超高齢社会」と呼ばれています。
超高齢社会
(21%)
高齢社会
(14%)
高齢化社会
(7%)
フランス
ドイツ
日本
韓国
中国
イラン
出所:国連人口部、米国国勢調査局、ドイツ帝国統計局、Kisella and Gist、Mirkin and Weinberger、アリアンツ国際年金部門
パリに本部があり、別名「金持ちクラブ」とも呼ばれる経済
協力開発機構(OECD)は、持続可能な成長を推進しており
昨年、高齢化の長期的進行と過去に例をみない高齢人口
率の上昇により、世界の年平均経済成長率は2010年代の
3.6%から2050年代には2.4%へと鈍化すると警告しました。
報 告 書 『 今 後 50 年 間 の 政 策 課 題 (Shifting Gear:Policy
Challenges for the next 50 years)』で歯に衣着せず述べら
れている通り、特にOECD諸国は二重の人口ショックに見舞
われるでしょう。先進国と新興国の多くでもみられる高齢化
の進行に加え、低所得国からの移民流入が鈍化するので
す。世界経済のバランスが非OECD圏に移行し、先進国と
新興国間の格差が調整されるにつれ、移動する意欲が低
下し、OECD圏への労働移民の流入は鈍化します。OECD
は、その結果ユーロ圏の労働力が20%、米国の労働力が
15%減少すると予測しています。
予想よりも早い高齢化
現在、65歳以上が人口の5人に1人を上回る超高齢社会と
されているのはドイツとイタリア、日本のみです。2020年ま
でに、ブルガリア、フィンランド、ギリシャ、ポルトガルがそれ
に加わるでしょう。欧州ではオーストリア、スウェーデン、フ
ランス、英国など17カ国も高齢化が進み、カナダやキュー
バ、香港、韓国とともに2030年までに超高齢社会に仲間入
りすると予測されています。
2040年までは、急速な高齢化は主に先進国の問題である
と考えられていますが、その頃には55カ国の様々な国が超
高齢化社会となります。中国、シンガポール、タイ、プエルト
リコは米国とともに超高齢化社会へと進むでしょう。しかし、
高齢化のスピードでみれば、イランはまだ若いものの将来
的は韓国を抜いて、最も速く高齢化が進む国となる可能性
があります。アリアンツの予測によると、同国は2050年まで
に30年未満で超高齢社会に達します(グラフ参照)。
これは著しい進行スピードです。これまで世界で最も高齢
化が速く進行したのは日本とされてきました。日の昇る国
は1960年代にはG7諸国の中で最も人口の若い国だったの
が、2008年には世界で最も高齢の国となり、この間たった
の38年でした。予測が正しければ、イランの高齢化はこれ
よりも10年早く進行するでしょう。
高齢化は平均寿命の延びに加え、出生率が低下すること
により起こります。出生率は世界中で急激に低下しました
が、イランの場合は1人の女性が産む子どもの数が1984年
の7人から2006年には1.9人まで減少しました。これは社会
変化が生じるスピードとしては最も速く、現役人口の減少に
対して高齢人口が急増することから長期的な影響を及ぼ
すでしょう。
統計に現れない国々が、決して年を取らない国々です。こ
うした国々は社会としては、人口の高齢化や減少による問
題には直面していませんが、想像するような幸福な国では
決してありません。シエラレオネ、レソト、中央アフリカ共和
国、ジンバブエが、世界で最も平均寿命の低い国に含まれ
ます。これらの国々では飢饉や腐敗、紛争、きれいな水や
教育へのアクセス不足、そしてエイズにより、男女ともに平
均年齢が48歳以下となっています。これらの国々にとって
高齢化社会は贅沢であり、叶わぬ夢なのです。
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