Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス Market Insight 平成28年3月22日(火) 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] 期末円高の持続とピークアウトにらむ 需給、米指標、FRB幹部発言、中国動向など焦点 今週の為替相場は、日本の期末要因に伴う円高持続と一旦のピークアウトをにら ん だ 展 開 と な る。週 間 予 想 は ド ル / 円 が 110.50 - 114.20 円、ユ ー ロ / 円 が 125.10-127.60円。引き続き日本企業による3月決算に向けた海外収益の本国送金 が円転圧力として残るほか、米FRBの利上げペース鈍化がドル安・円高要因として 警戒されやすい。一方で米国の指標やFRB幹部の発言次第では、FRBの6月利上げ思 惑がドルの下支え要因となる。中国の景気・株価対策も、リスク回避の円高を緩和 させる材料として注視されよう。 原油高・ドル安・株高が米インフレ刺激、ドル安制御 前週は米FRBによる16日のFOMCで、年内の利上げ見通しが4回から2回に下方修正 された。その流れからドル全面安が加速されている。日本では3月の決算期末に向 けた海外収益の円転(ドル売りなど)の圧力も根強く、ドル/円は一時110.66円前後 と2014年10月以来のドル安・円高を更新する場面があった。 一方で18日以降には、米セントルイス連銀のブラード総裁(FOMCの投票権有り、 タカ派)が「原油安のショックがなくなれば、米国のインフレ率は目標にかなり近 い水準となる」、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁(投票権無し、中立 派)が「FRBが4月か6月に利上げを実施することは可能」、ロックハート・アトラ ンタ連銀総裁(投票権無し、中立派)が「FRBが4月に利上げを実施することは妥 当」といった発言を行っている。4月の利上げは微妙ながら、6月利上げの可能性は 残ることで、ドルが下支えされ始めた。今週もFRB幹部の発言が注目されやすい。 こうした発言以前に、16日のFOMCを受けた利上げ警戒の後退自体が、米国では原 油高・ドル安・株高に作用し、米国内での期待インフレ率を押し上げている。米国 債市場で期待インフレ率を示す「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は、5 年物ベースで21日に1.54%方向に急上昇し、2015年7月以来の高水準を回復した。 最近では1月4日の1.29%を直近最高として、2月11日には0.85%にまで急低下。連 動する形で、ドル/円はドル安・円高が加速された経緯がある。その中での米国で の期待インフレ率の修復は、実際の利上げ実施の可能性はともかく、6月にかけて の米利上げ思惑を支援するもので、現状からのドル安を制御する材料となり得る。 米国では18日に最新3月分のミシガン大学消費者信頼感指数が公表された。内訳 では「1年後のインフレ期待」が2.7%となり、1月と2月の2.5%という低迷から上 昇に転じている。同じく3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数では、「販売 価格」が+3.5となり(前月は-4.5、直近最低は12月の-8.5)、2014年12月以来の プラス幅を回復してきた。原油高・ドル安・株高は米国でのインフレ低下に歯止め を掛けており、米国債市場では16日FOMC直後の金利急低下が一服となっている。 例えば政策金利のFFと相関性の高い米2年債金利は、16日の0.99%から17日の 0.81%への急低下のあと、0.86%から0.87%で下げ止まりとなっている。週足テク ニカルでは、26週移動平均線0.82%、一目均衡表の基準線0.81%といった重要節目 ラインで下げ止まりに転じてきた。まだ2013年以降の緩やかな金利上昇トレンドは 1 Market Insight 崩れておらず、為替相場でもドル/円を含めたドル安の抑制要因となりやすい。そ の他の注目ポイントは以下の通り。 <米国の経済指標> 米国ではFRBの利上げスタンスに注目が集まるなか、今週も経済指標に一喜一憂 が続く。23日の新築住宅販売は、長期金利の低下や前月低迷の反動がサポート要因 となる。24日の週間・新規失業保険申請件数も、春季入りによる内需サービス業の 支援効果や、原油安・ドル高の一服による企業業績の悪化鈍化などが、緩やかな改 善傾向(申請は減少)の持続を支援しよう。一方、24日の耐久財受注は、前月改善の 反動悪化や自動車販売の急増一服などが重石となりやすい。 <欧米の週末連休とポジション調整> 欧米市場では25日が「グッドフライデー」の祝日となり、実質的な休場が集中す る。25日の前段階では、海外の1-3月期末や月末要因もあり、ポジション調整や利 益・損失の確定などが波乱要因として注視されよう。為替相場では、投機的な円ロ ング・ポジション(買い持ち)が拡大傾向にある。そのため25日の前には、日本企業 の期末対策による円転ピークアウトとあいまって、一旦の円ロング整理がドル / 円、クロス円で円安を促す可能性を秘めている。 <日本企業の3月期末「円転」残存とピークアウト> 今週も為替需給面では、日本企業の3月決算対策に伴う海外収益の円転(リパト リエーション)が円高要因となる。2015年3月の期末相場でいえば、ドル/円は3月 26日で当時のドル安値を形成した。その前にさかのぼると、2014年3月が14日から 19日、2013年は3月25日にかけて期末のドル安・円高がピークを迎えている。 今年と同じように年明けから円高が激化した2010年の場合、3月23日にかけてド ル安圧力が続いたあと、期末円買いの剥落とともにドル高・円安へと反転。3月23 日の89.96円前後から4月5日の94.79円まで、+4.8円のドル高が進展したケースも ある。4月の新年度明けからは国内機関投資家による新規の外債投資も想定され、 2.3 BEI(左軸) 先行スパン1 先行スパン2 120 ドル/円(右軸) 117 米国債市場の5年物ブレーク・イーブン・インフレ率(B EI) 週足・一目均衡表、ドル/円 2.1 1.9 1.7 1.5 1.3 雲 1.1 ↑雲上抜け 0.9 Aug-16 Jul-16 May-16 Apr-16 Mar-16 Jan-16 Dec-15 Oct-15 Sep-15 Aug-15 Jun-15 May-15 Apr-15 Feb-15 Jan-15 Nov-14 Oct-14 Sep-14 Jul-14 Jun-14 May-14 Mar-14 % 114 111 108 105 102 99 円 フィラデルフィア連銀製造業景況指数の販売価格、 W TI原油の前年比(6カ月先行) ドル/円(6カ月遅行) 30 25 20 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 -30 Jan-16 Jan-15 Jan-14 Jan-13 Jan-12 Jan-11 Jan-10 Jan-09 販売価格(左軸) 原油(左軸) ドル/円(右軸) Jan-08 Jan-07 Jan-06 Jan-05 Jan-04 Jan-03 禁無断転載・転送 下げ止まり Jan-02 ㌦ ↑ 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 円 2 Market Insight 当座は需給面での円高圧力と新たな円売り(ドルなどの外貨押し目買い)需要の漸増 という、潮目の変わり目が焦点となる。 為替需給面でも、日本では原油反発と原発再稼働の暗礁が輸入の再増加要因と なっていく。3月期末に向けて国内輸出企業によるドル売り手当てがピークアウト すると、今度は輸入企業によるドル買い手当てが漸増する需給変化は無視できな い。 <中国の株価・景気対策と資源国通貨の支援効果> 中国では政府系の中国証券金融公司(中国の証券金融会社)が18日、「転融通 (貸借取引)」のうちの「転融資(証券会社に資金を貸し出す)」業務について、 21日付で再開すると発表した。昨年の株式ブームをもたらした信用取引融資をめぐ る規制が緩和されている。同時に中国では過剰供給改革に伴う失業者の急増に備え て、雇用対策などの景気対策も強化され始めた。為替相場では原油反発とあいまっ て、中国の景気動向や資源需要と相関性の高い、資源国通貨(豪ドル、NZドル、カ ナダ・ドル、南アフリカ・ランド、メキシコ・ペソ、ブラジル・レアル、北欧通貨 など)の自律反発を支援しやすい。 21日の米財務省の議会報告書によれば、豪州準備銀行(中央銀行)が豪ドル安の 誘導とも受け取れる表現を昨年用いたことをめぐり、米国とIMFが懸念を示してい たことも明らかになった。すでに週足テクニカルの一目均衡表で豪ドル/ドル、NZ ドル/ドルは、2014年9月以来となる「雲の下限」上抜け回復に移行している。豪ド ル/円やNZドル/円でも、一旦の反発地合いが支援されやすい。ただし、米FRBの6月 利上げ観測が本格的に高まってくると、ドルの持ち直しが対ドルで豪ドルやNZドル の上値を抑える可能性を秘めている。 <ユーロ下げ止まりの持続性にらむ> ユーロは10日のECB理事会で当面の利下げ打ち止めが示唆されたほか、16日の米 FOMCでFRBの利上げペース減速が示されたことで、ユーロ/ドルで下げ止まりが維持 されている。FRBの6月利上げ観測に警戒感が残るため、ユーロの上値余地は限られ るが、足元では週足・一目均衡表の雲の下限1.1200ドルや転換線1.1083ドル、基準 線1.1018ドルなどで底固めが焦点になりそうだ。ここに来て2014年7月以来とな る、12カ月移動平均線1.1012ドル前後の「上抜け回復」と「方向性の上向き化」と いうトレンド転換にも直面してきた。 1.08 1.04 1.00 0.96 0.92 0.88 0.84 0.80 0.76 0.72 0.68 ↑ ↑ 雲を回復 ↑ 雲 Jul-16 Apr-16 Jan-16 Oct-15 Jul-15 Apr-15 Jan-15 Oct-14 Jul-14 Apr-14 Jan-14 Oct-13 豪ドル/ドル(左軸) 先行スパン1 先行スパン2 豪ドル/円(右軸) Jul-13 Apr-13 Jan-13 Oct-12 Jul-12 Apr-12 Jan-12 Oct-11 Jul-11 Apr-11 ㌦ 豪ドル/ドルの週足 一目均衡表 豪ドル/円 豪ドル反発↑ 99 96 93 90 87 84 81 78 75 72 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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