演習問題10

微分方程式Ⅰ 演習問題 10
2016 年度前期
工学部・未来科学部 2 年
担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教)
∗ がついた問題はやや難しめの問題、∗∗ がついた問題は発展的な問題です。
演習問題 10. (定数係数非斉次 2 階線形微分方程式Ⅰ: 未定係数法)
以下の微分方程式の一般解を求めなさい。
※ 参考資料 6 内 未定係数法に於ける解のおき方 も参照のこと。
(1)
y ′′ + 3y ′ + 2y = 2x2 + 4x − 3
(2)
y ′′ − 2y ′ + 2y = sin x + 2 cos x
(3)
y ′′ − 4y ′ + 3y = −e2x
(4)
y ′′ − y ′ = −2x − 1
(5)∗
y ′′ + 6y ′ + 9y = xe−3x
(6)∗
y ′′ + 2y ′ + 5y = e−x cos(2x)
[(6) のヒント: y = xe−x (A cos(2x) + B sin(2x)) とおいてみよう]
チャレンジ問題 10.∗ (RLC 直列回路)
[やや難, 電気系 (特に EJ 科) の必須教養]
R
L
電気抵抗 R の抵抗器、自己インダクタンス L のコ
イル、静電容量 C のコンデンサーを直列に繋いで、
C
起電力 V (t) の外部交流電力に接続した回路を考える
I(t)
(このような回路を RLC 直列回路 と呼ぶ)。抵抗器
R に (時刻に依存する) 電流 I(t) が流れるとき、オー
ムの法則 により RI(t) だけ電圧が降下することが知
V (t)
られている。またコイル L に電流 I(t) が流れると、ファラデー-レンツの電磁誘導の法則 により電
dI
dI
に比例する誘導起電力 L
が、電流の流れを妨げる方向に発生する。最後に、コ
dt
dt
ンデンサ C に蓄えられている電荷を Q(t) とすると、静電容量の定義からコンデンサ C の両端の電
Q(t)
圧差は
となる。
C
以上の事実と キルヒホッフの電圧降下則 (キルヒホッフの第 2 法則) を併せると
Q
dI
1
L
+ RI +
= V (t)
······ ⃝
dt
C
1 の両辺を t で微分して、電流が単位時間当たりに流れる電荷であること を表す等式
が従う。式 ⃝
dQ
= I(t) を用いることで
dt
d2 I
dI
1
2
L 2 +R
+ I = V ′ (t)
······ ⃝
dt
dt
C
√
R C
1
2 の両辺を L で割り算して ζ =
が得られる。微分方程式 ⃝
(> 0) とおく
(> 0), ω0 = √
2 L
LC
と、電流 I(t) と時刻 t に関する (定数係数) 非斉次 2 階線形微分方程式
dI
V ′ (t)
d2 I
2
3
+ 2ζω0
+ ω0 I =
······ ⃝
dt2
dt
L 流の時間変化
が得られる (ζ を RLC 直列回路の 減衰係数 damping coefficient と呼ぶ)。
以下、外部起電力の大きさを V (t) = V0 sin(βt) (V0 は定数) とするときに設問に答えなさい。
2 から微分方程式 ⃝
3 を導きなさい。
(1) 微分方程式 ⃝
d2 I
dI
3 の同伴方程式
(2) 微分方程式 ⃝
+ 2ζω0
+ ω02 I = 0 の一般解を求めなさい。特性方程式
2
dt
dt
の解の種類に応じて場合分けすること。
(3) (2) のいずれの場合でも、(自己インダクタンス L および) 抵抗 R が 0 でないならば、時刻
3 の同伴方程式の解が パラメーター (任意の実数) A1 , A2 によ
t を大きくするにしたがって ⃝
らず 常に 0 に収束することを確かめなさい。
3 の特殊解 I∞ (t) に収束すること
(4) (3) より、R > 0 ならば I(t) は十分時間が経った後には ⃝
∗
が分かる (I∞ (t) を
)。未定係数法を用いて I∞ (t) を求
定常電流 steady-state current と呼ぶ
めなさい。また、 R =
√
3, L = 2, C =
1
, V0 = 2, β = 2 のときに V (t) と I∞ (t) のグラフ
2
の概形を描き、その様子を比較しなさい。
(5)∗∗ 特殊解 (定常解) I∞ (t) の振幅が最も大きくなるときの外部起電力
V (t) の角振動数 βr を求
めなさい (この状態のとき RLC 直列回路は 共振 resonance しているという)。また、その
とき I∞ (t) と V (t) はどのような関係になっているかを調べなさい。
【解答】
演習問題の詳解は、ウェブページ掲載版を参照すること!!
※ 紙面の関係でコラム『回路理論に現れる微分方程式: 共振回路とラジオの選局の
原理』が入りきりませんでした。すみません。ウェブページ掲載版をご覧下さい。
演習問題 10. 以下 C1 , C2 は任意の実数とする。
(1) y = x2 − x − 1 + C1 e−x + C2 e−2x
(2) y =
4
3
cos(x) − sin(x) + C1 ex cos(x) + C2 ex sin(x)
5
5
(3) y = e2x + C1 ex + C2 e3x
(4) y = x2 + 3x + C1 ex + C2
1 3 −3x
x e
+ C1 e−3x + C2 xe−3x
6
1
(6) y = xe−x sin(2x) + C1 e−x cos(2x) + C2 e−x sin(2x)
4
(5) y =
チャレンジ問題 10. 静電容量の C と紛らわしいので、本問ではパラメータとして A1 , A2 を用いる。
2 の両辺を L で割り算すると
(1) ⃝
d2 I
R dI
1
V ′ (t)
+
+
I
=
dt2
L dt
LC
L
∴
R
dI 2
+2
2
dt
2
√
C 1 dI
√
+
L LC dt
(
1
√
LC
)2
I=
V ′ (t)
L
3 が得られる。
であるから、⃝
3 の同伴方程式の特性方程式は λ2 + 2ζω0 λ + ω02 = 0 であるから、その根は判別
(2) 微分方程式 ⃝
式 D/4 = (ζω0 )2 − ω02 = ω02 (ζ 2 − 1) で分類される。
L
のとき
(ケース 1) D/4 > 0 ⇔ ζ > 1 のとき*1 , 即ち R > 2
C √
特性方程式は 2 つの相異なる実数根 λ = −ζω0 ± ω0 ζ 2 − 1 を持つので、同伴方程式の
√ 2
√ 2
一般解は I(t) = A1 e−ω0 (ζ− ζ −1)t + A2 e−ω0 (ζ+ ζ −1)t (A1 , A2 は任意の実数)。
√ L
(ケース 2) D/4 = 0 ⇔ ζ = 0, 即ち R = 2
のとき
C (
)
R
特性方程式は重根 λ = −ζω0 = −
を持つので、一般解は I(t) = (A1 + A2 t)e−ζω0 t
2L
(A1 , A2 は任意の実数) となる。
√ L
(ケース 3) D < 0 ⇔ (0 <)ζ < 1, 即ち R < 2
のとき
C √
特性方程式は 2 つの互いに共役な複素数解 λ = −ζω0 ± iω0 1 − ζ 2 を持つので、一般解
( √
( √
)
)
は I(t) = A1 e−ζω0 t cos (ω0 1 − ζ 2 )t + A2 e−ζω0 t sin (ω0 1 − ζ 2 )t (A1 , A2 は任
√
意の実数) となる。
(3) 条件 L, R > 0 より ζ > 0, ω0 > 0 が成り立つ。
√
√
√
√
(ケース 1) ζ 2 − 1 < ζ 2 = ζ より ζ ± ζ 2 − 1 > 0 である。つまり −ω0 (ζ − ζ 2 − 1)
√ 2
→+∞
は 負の実数 となるため、e−ω0 (ζ± ζ −1)t −−−−→ 0 が成り立つ。
→+∞
(ケース 2), (ケース 3) −ζω0 が 負の実数 となるため、e−ζω0 t −−−−→ 0 となる。したがっ
て (2) の計算結果から、(ケース 2), (ケース 3) のときの解も 0 に収束する。
2 に代入すると (未定係数法)
(4) 特殊解が I∞ (t) = A cos(βt) + B sin(βt) の形であるとして ⃝
′′
{A cos(βt) + B sin(βt)} + 2ζω0 {A cos(βt) + B sin(βt)}
+
∴
ω02 (A cos(βt)
′
{
+ B sin(βt)) =
V0
sin(βt)
L
}′
}
}
{
{
(−β 2 + ω02 )A + 2βζω0 B cos(βt) + −2βζω0 A + (−β 2 + ω02 )B sin(βt)
=
βV0
cos(βt)
L
であるから、係数を比較して
(−β 2 + ω02 )A + 2βζω0 B =
となる。したがって A =
βV0
,
L
ω02 − β 2
B であるから、第 1 式に代入して整理して
2βζω0
βV0
(ω02 − β 2 )2
B + 2βζω0 B =
2βζω0
L
∴
B=
V0
(
L ω02
β
*1
ζ > 0 に注意しよう。
−2βζω0 A + (−β 2 + ω02 )B = 0
2ζω0
,
)2
− β + (2ζω0 )2
∴
1
2ζω0
(
ω02
−β
β
)2
B + 2ζω0 B =
ω02
−β
V0
β
A=
(
)2
L ω02
− β + (2ζω0 )2
β
V0
L
を得る。これを代入して、特殊解 I∞ (t) は
{( 2
)
}
V0
ω0
1
·(
− β cos(βt) + 2ζω0 sin(βt)
となる。
I∞ (t) =
)2
L
β
ω02
− β + (2ζω0 )2
β
√
√
1
3
また R = 3, L = 2, C = , V0 = 2, β = 2 のときは ζ =
, ω0 = 1 と計算される。この
2 (
) 4
√
(
1
1
3
3
π)
とき V (t) = 2 sin 2t, I∞ (t) =
− cos 2t +
sin 2t = √ sin 2t −
となり、それ
3
2
2
3
3
ぞれのグラフは以下のようになる。波の「開始地点」(位相) がずれていることに注意。
I, V
V (t) = 2 sin(2t)
I∞ (t)
t
O
I(t)
√
5 3
3 の下での解
= 4.33012 . . . . . . , I(0) = 0 で の ⃝
2
√
√
√
√
√
3
1
13
5 39 − 3 t
13
I(t) = I∞ (t) + e− 4 t cos
t−
e 4 sin
t のグラフもオレンジ色で示した; スイッチ
2
4
6
4
を入れた瞬間 (時刻 t = 0) には、コンデンサに蓄えられた電荷が一気に流れるため I(t) は I∞ (t) から
※ 参 考 ま で に 初 期 条 件 Q(0) = Q0 =
大きく逸脱する (このような瞬間的に流れる電流を 過渡電流 transient current と呼ぶ) が、時間が経つ
につれて定常電流 I∞ (t) に収束してゆく様が観察出来る。
(5) 右下図の角度 ϕ を用いると
2ζω0
cos(ϕ) = √(
,
)2
2
ω0
− β + (2ζω0 )2
β
ω02
−β
β
sin(ϕ) = − √(
)2
ω02
− β + (2ζω0 )2
β
より 三角関数の合成 を用いて I(t) は
I∞ (t) =
V0
√(
sin(βt − ϕ)
)2
ω02
L
− β + (2ζω0 )2
β
β−
ω02
β
ϕ
O
v
2
u
u ω2
u 0
t
− β  + (2ζω0 )2
β
2ζω0
と表すことが出来る。外部起電力の角振動数 β を動かしたときに I∞ (t) の振幅が一番大きく
なるのは、分母がなるべく小さくなるとき、即ち
は正の値なので、この式は βr = ω0 = √
ω02
− βr = 0 が成り経つときである。βr , ω0
βr
1
のときにのみ成立する。この値を代入して計
LC
1
1
V0 sin(βr t) = V (t) となるため、外部起電力が電流の R 倍という オー
R
R
) は恰も
ムの法則そのものの関係 が成り立っており、この RLC 直列回路 (RLC 共振回路 算すると I∞ (t) =
「抵抗器 R しか存在しない回路」と同じ様に振舞うことが観察出来る。
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【コラム】 回路理論に現れる微分方程式: 共振回路とラジオの選局の原理
ゲオルグ・オーム
グスタフ・ロバート・キルヒホッフ
マイケル・ファラデー
ハインリッヒ・レンツ
回路理論 (+ 電磁気学 ) の礎を築いた人々*2
チャレンジ問題 10. では、定数係数 2 階線形微分方程式の工学への応用ということで、
RLC 直列回路の問題を扱いました。
中でもチャレンジ問題 10. (5) で
は RLC 直列回路の共振現象につい
スピーカー、イヤホン
て扱いましたが、皆さんが使ってい
る ラジオの選局 は実はこの共振現象
R
を応用したものです。最も単純なラ
ジオは右図の様な回路から成り立ち
ます。ここでコンデンサーは静電容
C
検波器
(バリコン)
量が可変な、所謂 バリコン variable
capacitor としておきます。コイルの
自己インダクタンス L を固定して
おくと、この回路の共振角振動数は
L
アンテナ
アース
(チャレンジ問題 10. (5) で見たよう
ラジオの選局の原理
1
に) √
なので、バリコンの静電容
LC
量 C を変えることで共振角振動数を動かすことが出来ます (ラジコンの選局スイッチは、
バリコンの静電容量を切り換えるスイッチとなっています)。このとき、アンテナから受信
された様々な周波数の電波の中で、(バリコンで設定された静電容量 C に応じた) 共振角振
1
1
に近い角振動数以外の電波はカットされ、特定の (角振動数が √
に近い)
LC
LC
動数 √
電波のみが回路に影響します。このようにして選出された特定の周波数の電波を、検波器
(ダイオード) を通して整流して、音声信号に変換してスピーカー乃至イヤホンから出力す
るようにしたものが、原始的なラジオの原理なのです。
次回のチャレンジ問題でも触れる予定ですが、共振現象は基本的には機器の損壊を招き
かねない警戒すべき現象です。しかし、ここで取り上げたラジオの選局の原理のように、巧
く使いこなすことで我々の生活に役立てることが出来る場合もあるのです。
*2
左から Georg Simon Ohm (1789–1854), Gustav Robert Kirchhoff (1824–1887), Michael Faraday (1791–
1867), Heinrich Friedrich Emil Lenz (1804–1865)
【演習問題詳解】
演習問題 10.
今回は 未定係数法 method of undetermined coefficients を用いた解答を紹介する。未定係数法
を身につけるためには 問題数をこなして感覚を身につける のが一番の近道であるので、この演
習問題で満足せずたくさんの問題を解くよう心掛けること!
(1) y ′′ + 3y ′ + 2y = 2x2 + 4x − 3
非斉次項 (右辺) が x の 2 次式 なので、特殊解も y = Ax2 + Bx + C (x の 2 次式) という
形であると推測しよう。このとき
y ′ = 2Ax + B,
y ′′ = 2A
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ +3y ′ +2y = (2A)+3(2Ax+B)+2(Ax2 +Bx+C) = 2Ax2 +(6A+2B)x+(2A+3B+2C)
となる。これが右辺の 2x2 + 4x − 3 と一致すれば良いのだから、係数を比較して

= 2
 2A
6A + 2B
= 4

2A + 3B + 2C = −3
∴
(A, B, C) = (1, −1, −1)
となる。したがって y = x2 − x − 1 は特殊解である。
babababababababababababababababababab
- 未定係数法では 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定するのがセ
オリー。
- 推定後は、基本的には左辺に代入して 係数比較 により未定係数を決定すれば良い。
次に 同伴方程式 y ′′ + 3y ′ + 2y = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 + 3λ + 2 = 0
∴
(λ + 1)(λ + 2) = 0
∴
λ = −1, −2
であることから y = C1 e−x + C2 e−2x と求まる。
以上より、与えられた微分方程式の 一般解 は y = x2 − x − 1 + C1 e−x + C2 e−2x (C1 , C2 は
任意の実数) となる。
babababababababababababababababababab
- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
(2) y ′′ − 2y ′ + 2y = sin x + 2 cos x
非 斉 次 項 (右 辺) が (定 数) × (三 角 関 数) と い う 形 を し て い る の で 、特 殊 解 も
y = A cos x + B sin x
((定 数) × (三 角 関 数)) と い う 形 を し て い る と 推 測 し よ う 。こ
のとき
y ′ = −A sin x + B cos x,
y ′′ = −A cos x − B sin x
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ − 2y ′ + 2y = (−A cos x − B sin x) − 2(−A sin x + B cos x) + 2(A cos x + B sin x)
= (A − 2B) cos x + (2A + B) sin x
となる。これが右辺の sin x + 2 cos x と一致すれば良いのだから、係数を比較して
{
(
A − 2B = 2
2A + B = 1
となる。したがって y =
∴
(A, B) =
4
3
, −
5
5
)
3
4
cos x − sin x は特殊解である。
5
5
babababababababababababababababababab
- 未定係数法では 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定するのがセ
オリー。
- 推定後は、基本的には左辺に代入して 係数比較 により未定係数を決定すれば良い。
次に 同伴方程式 y ′′ − 2y ′ + 2y = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 − 2λ + 2 = 0
∴
(λ − 1)2 + 1 = 0
∴
λ=1±i
であることから y = C1 ex cos x + C2 ex sin x と求まる。
以 上 よ り 、与 式 の 一 般 解 は y =
C2 は任意の実数) となる。
4
3
cos(x) − sin(x) + C1 ex cos(x) + C2 ex sin(x) (C1 ,
5
5
babababababababababababababababababab
- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
(3) y ′′ − 4y ′ + 3y = −e2x
非斉次項 (右辺) が (定数)×(指数関数) という形をしているので、特殊解も y = A e2x ((定
数)×(指数関数)) という形をしていると推測しよう。このとき
y ′′ = 4A e2x
y ′ = 2A e2x ,
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ − 4y ′ + 3y = 4A e2x − 4(2A e2x ) + 3(A e2x ) = −A e2x
となる。これが右辺の − e2x と一致すれば良いのだから、係数を比較して
−A = −1
∴
A=1
となる。したがって y = e2x は特殊解である。
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- 未定係数法では 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定するのがセ
オリー。
- 推定後は、基本的には左辺に代入して 係数比較 により未定係数を決定すれば良い。
次に 同伴方程式 y ′′ − 4y ′ + 3y = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 − 4λ + 3 = 0
∴
(λ − 1)(λ − 3) = 0
∴
λ = 1, 3
であることから y = C1 ex + C2 e3x と求まる。
以上より、与えられた微分方程式の 一般解 は y = e2x + C1 ex + C2 e3x (C1 , C2 は任意の実
数) となる。
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- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
(4) y ′′ − y ′ = −2x − 1
非斉次項 (右辺) が x の 1 次式 であることから、特殊解を y = x (Ax + B) = Ax2 + Bx
(x×(x の 1 次式)) という形であると推測しよう。このとき
y ′ = 2Ax + B,
y ′′ = 2A
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ − y ′ = (2A) − (2Ax + B) = −2Ax + (2A − B)
となる。これが右辺の −2x − 1 と一致すれば良いのだから、係数を比較して
{
−2A
= −2
2A − B = −1
∴
(A, B) = (1, 3)
となる。したがって y = x2 + 3x は特殊解である。
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- 未定係数法のセオリー通り 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定し
て y = Ax + B とおくと、
y ′′ − y ′ = (Ax + B)′′ − (Ax + B)′ = 0 − A = −A
と x の 0 次式となってしまい、x の 1 次式 −2x − 1 との係数比較が出来ない (!)
そんなときは慌てずに、x 倍した y = x (Ax + B) を用いて計算 すれば良い。この
ような不測の事態に対して冷静に対処出来る能力が、未定係数法では求められる。
次に 同伴方程式 y ′′ − y ′ = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 − λ = 0
∴
λ(λ − 1) = 0
∴
λ = 1, 0
であることから y = C1 ex + C2 e0·x = C1 ex + C2 と求まる。
以上より、与えられた微分方程式の 一般解 は y = x2 + 3x + C1 ex + C2 (C1 , C2 は任意の
実数) となる。
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- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
(5) y ′′ + 6y ′ + 9y = xe−3x
非斉次項 (右辺) が (x の 1 次関数)×(指数関数) という形をしていることから、特殊解を
y = x2 (Ax + B)e−3x = (Ax3 + Bx2 )e−3x (x2 ×(x の 1 次関数) × (指数関数)) という形
であると推測しよう。このとき積の微分法により
y ′ = (3Ax2 + 2Bx)e−3x + (Ax3 + Bx2 )(−3 e−3x ) = {−3Ax3 + (3A − 3B)x2 + 2Bx}e−3x ,
y ′′ = {−9Ax2 + (6A − 6B)x + 2B}e−3x + {−3Ax3 + (3A − 3B)x2 + 2Bx}(−3 e−3x )
= {9Ax3 + (−18A + 9B)x2 + (6A − 12B)x + 2B}e−3x
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ + 6y ′ + 9y
={9Ax3 + (−18A + 9B)x2 + (6A − 12B)x + 2B}e−3x
+ 6{−3Ax3 + (3A − 3B)x2 + 2Bx}e−3x + 9(Ax3 + Bx2 )e−3x
= (6Ax + 2B)e−3x
となる。これが右辺の xe−3x と一致すれば良いのだから、係数を比較して
{
6A
となる。したがって y =
=1
2B = 0
(
∴
(A, B) =
)
1
, 0
6
1 −3x
xe
は特殊解である。
6
babababababababababababababababababab
- 未定係数法のセオリー通り 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定し
て y = (Ax + B)e−3x とおくと、
y ′′ + 6y ′ + 9y
= (9Ax − 6A + 9B)e−3x + 6(−3Ax + A − 3B)e−3x + 9(Ax + B)e−3x = 0
となってしまい、右辺 xe−3x との係数比較が出来ない。
(!)
babababababababababababababababababab
さらに y = x(Ax + B)e−3x = (Ax2 + Bx)e−3x と推定しても
y ′′ + 6y ′ + 9y
= {9Ax2 +(−12A + 9B)x + (2A − 6B)}e−3x
+ 6{−3Ax2 + (2A − 3B)x + B}e−3x + 9(Ax2 + Bx)e−3x
= 2A e−3x
と (定数) × (指数関数) の形になってしまい、右辺の x e−3x (x の 1 次式 × 指数
関数) と係数比較することが出来ない。そんなときにも慌てずに さらに x 倍した
y = x (Ax2 + Bx)e−3x を用いて計算 すれば良い。このような不測の事態に対して
冷静に対処出来る能力が、未定係数法では求められる。
次に 同伴方程式 y ′′ + 6y ′ + 9y = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 + 6λ + 9 = 0
∴
(λ + 3)2 = 0
∴
λ = −3
(重解)
であることから y = C1 e−3x + C2 xe−3x と求まる。
以上より、与えられた微分方程式の 一般解 は
1 3 −3x
x e
+ C1 e−3x + C2 xe−3x (C1 , C2 は任
6
意の実数) となる。
babababababababababababababababababab
- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
(6) y ′′ + 2y ′ + 5y = e−x cos 2x
非斉次項 (右辺) が (定数) × (指数関数) × (三角関数) という形をしていることから、特殊
解が y = xe−x (A cos 2x + B sin 2x) = Axe−x cos 2x + Bxe−x sin 2x (x×(定数)× (指数関
数) × (三角関数)) という形をしていると推測しよう。このとき積の微分法により
y ′ = Ae−x cos 2x + Ax(−e−x )cos 2x + Axe−x (−2 sin 2x)
+ Be−x sin 2x + Bx(−e−x )sin 2x + Bxe−x (2 cos 2x)
= {(2B − A)x + A}e−x cos 2x + {(−B − 2A)x + B}e−x sin 2x
y ′′ = (2B − A)e−x cos 2x + {(2B − A)x + A}{−e−x cos 2x + e−x (−2 sin 2x)}
+ (−B − 2A)e−x sin 2x + {(−B − 2A)x + B}{−e−x sin 2x + e−x (2 cos 2x)}
= {(−3A − 4B)x − 2A + 4B}e−x cos 2x + {(4A − 3B)x − 4A − 2B}e−x sin 2x
であるから、左辺に代入して整理すると
y ′′ + 2y ′ + 5y
={(−3A − 4B)x − 2A + 4B}e−x cos 2x + {(4A − 3B)x − 4A − 2B}e−x sin 2x
[
]
+ 2 {(2B − A)x + A}e−x cos 2x + {(−B − 2A)x + B}e−x sin 2x
+ 5{Axe−x cos 2x + Bxe−x sin 2x}
= 4Be−x cos 2x − 4Ae−x sin 2x
となる。これが右辺の 1 · e−x cos 2x + 0 · e−x sin 2x と一致すれば良いのだから、係数を比較
して
{
4B = 1
−4A
=0
となる。したがって y =
∴
(
)
1
(A, B) = 0,
4
1 −x
e cos x は特殊解である。
4
babababababababababababababababababab
- 未定係数法のセオリー通り 特殊解が非斉次項 (右辺) と同じ形をしている と推定し
て y = Ae−x cos 2x + Be−x sin 2x とおくと、
y ′′ + 2y ′ + 5y
=(−3A − 4B)e−x cos 2x + (4A − 3B)e−x sin 2x
+ 2{(2B − A)e−x cos 2x + (−2A − B)e−x sin 2x} + 5(Ae−x cos 2x + Be−x sin 2x)
=0
(!)
となってしまい、右辺の e−x cos 2x との係数比較が出来ない (!) そんなときは慌て
ずに、x 倍した y = xe−x (Acos 2x + Bsin 2x) を用いて計算 すれば良い。このよう
な不測の事態に対して冷静に対処出来る能力が、未定係数法では求められる。
次に 同伴方程式 y ′′ + 2y ′ + 5y = 0 の一般解は、特性方程式の解が
λ2 + 2λ + 5 = 0
∴
(λ + 1)2 + 4 = 0
∴
λ = −1 ± 2i
であることから y = C1 e−x cos 2x + C2 e−x sin 2x と求まる。
以上より、与式の 一般解 は y =
C2 は任意の実数) となる。
1 −x
xe sin(2x) + C1 e−x cos(2x) + C2 e−x sin(2x) (C1 ,
4
babababababababababababababababababab
- 非斉次 2 階線形微分方程式の 一般解 を求めるには、未定係数法で求めた特殊解に
同伴方程式の一般解 を付け加えなければならないことに注意 (詳細は第 8 回の講義
内容を参照)。
- 同伴方程式 (斉次な 2 解線形微分方程式) の一般解の求め方 は、演習問題 9. 等を解
いて 早急にマスターしておくこと!!
チャレンジ問題 10.
参考
複素インピーダンスについて
βL −
1
βC
v
(
u
u
tR2 + βL −
右図の角度 ϕ を用いると、
−βL +
R = cos(ϕ),
ϕ
1
= − sin(ϕ)
βC
O
1
)2
βC
R
より 三角関数の合成 を用いて定常電流 I∞ (t) は
V0
I∞ (t) = √
(
)2 sin(βt − ϕ)
1
R2 + βL −
βC
と表される。この式は、RLC 直列回路に流れる電流が
/√
『大きさは外部電圧の大きさ V0 の 1
R2
(
)2
1
+ βL −
倍となり、さらに 位相 が外
βC
部電圧と比較して ϕ だけ遅れる』
ということを表している。このことを、微分方程式などを解くことなく簡便に記述するために導入さ
れた概念が 複素インピーダンス complex impedance に他ならない。
とは言え、一度は (未定係数法などを用いて) 回路方程式を 2 階線形微分方程式として数学的に
解く ということを体験しておくのは非常に意義のあることである。このような計算方法と複素イン
ピーダンスの理論の辻褄が絶妙に合っていることを実体験として体感することで、複素インピーダン
スについてもより深く理解することが出来るのに違いないのだから。