[17]急増するSTD-性器クラミジア感染症

けんさの豆知識
2003 年 6 月発行
[17]急増するSTD-性器クラミジア感染症
STD(性行為感染症:sexually transmitted diseases)の中で現在、世界諸国で最も
症例数が多いのが性器クラミジア感染症です。女性の場合は特に自覚症状が乏しく無症
状のため妊婦健診で偶然にみつかることもしばしばです。放置していると不妊の原因に
もなります。
病
原
体
クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)
眼感染症(トラコーマ)の起因菌として発見された偏性細胞内寄生性の微生物(細菌とウ
イルスの中間)です。細菌のように人工培地での培養は不可能でウイルスのように生細
胞の中でのみ増殖することができます。
感 染 経 路
無防備な性行為により感染。潜伏期(感染して症状がでるまでの期間)は、1~3週間
程度。
クラミジアは、喉、直腸、尿にもでるので口、肛門、尿を使った性行為も危険です。
主 な 症 状
[男性]尿道炎として発症。尿道からの漿液性の分泌物、軽度の排尿痛又は違和感。
[女性]子宮頸管炎として発症。通常症状は自覚されないため長く保菌状態が続き感染
源になるほか、卵管炎により不妊症、子宮外妊娠の危険も高くなります。クラミジア感
染した母親から産まれた新生児が産道内で感染した場合は、生後2~7日で新生児結膜
炎を発症し肺炎を合併することもあります。
検
査
●クラミジア抗原の検出⇒膣分泌物、尿道分泌物を検査材料とします。
「今感染しているかどうか」がわかります。確実にクラミジアの存在が証明されるた
め、必ず治療が必要となります。ただ、子宮の入り口付近までの検査なので卵管炎や骨
盤腹膜炎を起こしている時などは陰性になる場合があります。
●クラミジア抗体(IgA,IgG)の検出⇒血液検査です。
過去にクラミジアにかかったことがあるかどうか」の指標となります。抗体検査はク
ラミジアの存在をそのまま反映するものではありません。クラミジア感染が起きると、
抗クラミジア IgG 抗体が1~2週間後には陽性となり、1~2ヶ月後に IgA 抗体が陽
性となります。クラミジア抗原陰性でクラミジア抗体陽性の場合、腹痛などの症状があ
れば治療の対象となります。
治
療
マクロライド系(クラリスロマイシンなど)、テトラサイクリン系(ミノサイクリンな
ど)、ニューキノロン系(レボフロキサシンなど)の抗生物質を2週間程度飲みます。感染
によって抗体ができますが、ピンポン感染を含み何回でも感染するのでセックスパート
ナーと一緒に必ず医療機関(男性は泌尿器科、女性は産婦人科へ)を受診して完全に治す
ことが必須です。
最 後 に
クラミジア感染のこわいところは、自覚症状がほとんどないので感染や発病に気付か
ないまま進行し不妊症という重大な結果をもたらすことです。妊娠を望む女性はまめに
クラミジアの検査を受けることをおすすめします。
東京都健康局のホームページ(http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/kansen/index.html)
では「性感染症ってどんな病気?」という東京都が作成した性感染症についてのパンフ
レットを掲載しています。ご参考までに。