Title 医師が看護記録を読む現状と背景 Author(s)

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Citation
Issue Date
医師が看護記録を読む現状と背景
間宮, 良江
大阪大学看護学雑誌. 10(1) P.51-P.56
2004-03
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/56690
DOI
Rights
Osaka University
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vbl.10No.1(2004)
一研 究 報 告 一
医師 が看護 記録 を読 む現状 と背景
馳間 宮
良
江
一The
pre8entoonditionandtheba6kgro皿dtha佩
㏄ 施rsreadnur血greoord
MamiyaY.
要
阪大 病 院 で働 い てい る医 師148名
旨
を対 象 に 医 師 の基 本 的属 性 、看 護 記 録(熱 型 ・重 症 記 録 ・経 過 記録)を 読 ん で い るか
否 か 、ど の よ うな 場 合 に 読 ん で い る か 、読 ん だ 後 の 医 師 の行 動 な どにつ い て ア ン ケー トを調 査 しx乗
検 定 を行 った 。結
果 、 医 師 の9割 以 上 は看 護 記 録 を 毎 日ま た は 時 々読 ん でい た 。重 症 記 録 にお い て は 、臨床 経 験 年 数 の多 い 方 が 、'また は病
棟 で責 任 が あ る方 が よ く見 て い た。そ して 医 師 は看 護 記 録 か ら看 護 師 の 視 点 か ら見た 患 者 の 治 療 に 対 す る受 け止 め方 な ど
の惰 報 を得 てお り、看 護 師 は 医 師 の治 療 方 針 を理 解 した 上 で患 者 の 状 況 を看 護 の視 点 か らア セ ス メ ン トす る こ とが 必 要 だ
とわ か っ た。ま た 医師 は 看護 診 断 が わ か りに くい と感 じて お り、医師 が 看 護 記録 を読 む の は 見 た 目の 読 みや す さや 誰 が記
録 して い る か で はな く、 必 要 に 迫 られ た 時 や 更 な る情 報 が欲 しい 時 で あ った 。 そ して経 過 記 録 を読 ん で疑 問 が 生 じた 際 、
7割 の 医 師 力宝
病 棟 にお け る役 割 に 関係 な く、そ れ を解 決 す るた め に何 らか の方 法 を とっ てい る こ とが 分 か っ た。
キー ワー ド:医 師 、 看 護 師 、 看 護 記録
Keywords:doctc)r,nurse,nursi皿grecord.
大 阪大 学 医 学 部 附属 病 院 循環 器 ・腎臓 内科
一51一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.10No.1(2004)
を 用 い た 。な お 、自 由 回 答 に つ い て は 内 容 ご と に 分 類 し た
1.は
阪 大 病 院 で は 、医師 ・看 護 師 の カ ル テ は 共 有 され て お り、
看 護 師 はNANDAに
。
じめ に
基 づ い た 看 護 診 断 を用 い て一 連 の看 護
実 践 を 記録 して い る。
皿.結
12の 診 療 科 よ り148部
1医
看 護 師 は 医 師 の 記 録 を見 る事 で 治療 方針 、予 定 、病 状 把
看 護 者 間 お よ び 看 護 の 立 揚 か ら他 の 医 療 ス タ ッフ に 情 報
齢:平
2)性
別:男
3)所
属:内
4)臨
女 性25人(16
科 系 が104人(70.3%)、
.9%)
床 経 験 年 数:平
5)病
外 科 系 が44人
あ っ た。
均7 .31年(SD±6.642)、
年 、 最 大 が25年
提 供 に結 び 付 け た い と考 え た。この 研 究 で は 、医師 が看 護
で あ っ た。
研 修 医 指 導 医 師 が50人(33.8%)、
(35.1%)で
※
最 少 が1
棟 に お け る 役 割:診 療 責 任 医 師 が43人(29
記 録 を 実 際 読 ん で い るの か否 か そ の現 状 と背 景 を 明 らか
にす る。
で あ った 。
性122人(82.4%)、
(29.7%)で
た。そ こ で 、医 師 が看 護 記録 を どれ だ け読 ん で い る の か を
調 査 し、そ の 実態 を把 握 、考 察す る こ とで よ りよ い 医療 の
.119)、 最 少 年 齢 は
で あ っ た 。
は 、医 師 に と って どの よ うな 存 在 な の か 、医師 は どの よ う
な 思 い を持 っ て看 護 記 録 を み て い る の か 、知 りた い と思 っ
均 年 齢32。6歳(SD±7
24歳 、 最 高 年 齢 は52歳
を提 供 工∫した り、 書 き 言 葉 に よ る集 団 の通 じ合 い 一1対
多 数 の コ ミ ュニ ケー シ ョ ン2)を はか っ た りす る看 護 記 録
が 回 収 で き た 。
師 の 基 本 的 属 性
1)年
握 を行 い看 護 に 役 立 て て い る。一方 、チ ー ム 医 療 の な か で
果
.1%)、
研 修 医 が52人
あ っ た。
「
診 療 責任 医師 」 とは病 棟 に お け る診 療 の 責 任 者 、 「
研
修 医 指 導 医 師 」と は 数 年 の 医 師 経 験 を積 み 直 接 研 修 医 の 指
II.研
1調
査対象
究方法
導 に あ た る 医師 、 「
研 修 医 」 と は 卒 後1~2年
阪 大 病 院 で働 い て い る 医 師 で ア ン ケ ー
目の医 師 で
あ る。
トの協 力 の得 られ た148名 。一
く所 属 診 療科 〉内 科 系8つ の 診 療科(呼 吸 器 内 科 、老 年 高
血圧 内科 、,循環 器 内 科 、 腎臓 内 科 、血 液 腫 瘍 内科 、消化 器
2看
護 記 録 活 用 状況
毎 日 見 て い る 、ま た は 時 々 見 て い る とい う 「
利 用群 」が
内科 、内分 泌 代 謝 内科 、免 疫 ア レル ギー 内 科)と 外 科 系4
熱 型 に っ い て は 、142人(95.9%)、
つ の診 療 科(乳 腺 内 分 泌 外 科 、形 成 外科 、 心臓 血 管 外科 、
人(91.2%)、
呼 吸器 外 科)で
た 。 ま た 、 ほ と ん ど見 て い な い 、 ま た は 見 た こ と が な い と
あ る。
重 症 記 録 た つ い て は135
経 過 記 録 に つ い て は146人(98.6%)で
い う 「非 利 用 群 」 が 熱 型 に つ い て は2入(1
2調
査方法
各 診 療 科 長 に 同意 を得 て 、病棟 医 長 の 協
力 に よ り独 自で 作 成 した ア ン ケー トを配 布 、一 定 期 間 留 め
置 き後 回収 した。調 査 期 間 は 平 成14年11月8日
11月22日
録 に つ い て は13人(8.8%)、
あっ
。4%)、 重 症 記
経 過 記 録 に つ い て は2人(1.4%)
で あ っ た。
か ら同年
で あ る。
3医
師 の 基 本 的 属 性 と熱 型 。重 症 記 録 ・経 過 記 録 の ク
ロ ス 集 計 結 果
3調
査 内容
医師 の基 本 的 属 性 、看 護 記録 の 中の 熱
1)医 師 の 「
熱 型 」・「
経 過 記 録 」利 用 状 況
年 齢 や 嬲1亅、
型 、 重 症 記 録 、 経 過 記 録 に つ い て 読 ん で い る か否 か 、 読
所 属 、 臨 床 経 験 年 数 、病 棟 に お け る 役 割 に 関 係 な く利 用 群
ん だ 感 想 、 ど の よ うな 揚 合 に読 ん で い る か、 読 ん だ後 の
は ほ ぼ100%で
医 師 の行 動 な ど で あ る。
2)医
※ 経過 記録 に お い て は 、NANDA
師の
あ っ た。
「
重症記録」利用状況
の看 護 診 断 ラベ ル と一 部 阪大 独 自 の ラベ ル を用 いTSOAP
・年 齢 別
展 開 して い る。
31歳 以 上 で は75人(94.9%)で
は 、24歳
!
4デ
ー タの解 析
医 師 の基 本 的 属 性 、看 護 記 録 を読 ん
人(5.1%)で
「利 用 群 」は
か ら30歳
、24歳 か ら30歳
で は 、9人(13.0%)、31歳
で 有 意 差 は 認 め られ な か っ た が 、31歳
か 、読 ん だ後 の 医 師 の行 動 を集 計 し、各 変 数 間 をx2乗
記 録 を み て い る傾 向 に あ っ た 。
定 を用 い て 分 析 した 。統 計 分 析 に は 、SPSSlO.OforWindows
・臨 床 経 験 年 数 別
一52一
「
非利用群」
以 上 で は4
あ っ た 。年 齢 の 違 い よ る利 用 群 と 非 利 用 群 の 閲
で い る か否 か、読 ん だ感 想 、どの よ うな 場 合 に 読 ん で い る
検
で は 、60人(87.0%〉 、
あ っ た。 ま た
「
利 用 群 亅は
以 上 の ほ うが 重 症
、1年
目 か ら5年
目で
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1.10No.1(2004)
は58人(85.3%)、6年
また
6年
目 以 上 で は77人(96.3%)で
「非 利 用 群 」 は1年
目 か ら5年
目 以 上 で は 、3人(3.8%)で
あ っ た。
有 意 差 が認 め られ た 。(表2)
目 で は10人(14.7%)、
あ っだ 。臨 床 経 験 年 数 の 違
4経
い に よ っ て 利 用 群 と非 利 用 群 に 有 意 差 が 認 め られ た 。
・所 属 別
「
利 用 群Jは
内科 系 で は
科 系 で は43人(97.7%)で
で は12人(11.5%)、
、92人(88。5%〉
数 回 答)
経 過 記 録 を 毎 目ま た は 時 々 読 ん で い る と回 答 した 医師
、外
あ っ た 。 「非 利 用 群 」 は 、 内 科 系
外 科 系 で は 、1人(2.3%)で
過 記 録 を読 ん だ 感 想(複
あった。内
146名 の うち 、経 過 記録 の感 想 を質 問 した と こ ろ、A「 看
護 師 の視 点 で発 見 が あ る」が113入(77.4%)と
最 も多 く、
次 い でB「 患 者 の治 療 の受 け と め方 が わ か る 」、C「 患 者 と
科 系 外 科 系 の 違 い よ る 利 用 群 と非 利 用 群 の 間 で 有 意 差 は
の コ ミュニ ケー シ ョン を 円滑 にす る こ とが で き る∫ が68
認 め ら れ な か っ た が 、外 科 系 の ほ うが 重 症 記 録 を み て い る
人(46.4%)の 順 で肯 定 的 感 想 が 多 か っ た。 また 、D「看 護 診
傾 向 に あ っ た 。(表1)
断 がわ か りに くい」が46人(31.5%)と4番
・病 棟 に お け る 役 割 別
41人(95.3%)、
「利 用 群 」 は 診 療 責 任 医 師 で は
概 修 医 指 導 医 師 で は48人(96
で は48人(82。7%)で
.0%)、 研 修 医
あ っ た。 「
非 利 用 群 」 は 診療 責任 医 師
(表3)そ
目 に多 か った 。
の他 の意 見 と して 、 「
人 に よっ て 内容 が ま ち ま
ち であ る」 「アセ ス メ ン ト ・プ ラ ンが 充 実 して い な い。、デ
ー タ分 析 は 多 い が プ ラ ン が で き て い な い ナ ー ス が 多 い と
で は2人(4.7%)、
研 修 医 指 導 医 肺 で2人(4.0%)、
研修 医で
思 う。」「本人 の 主観 ・感 想 が書 かれ てお りそ の 点 は 考 え る
は9人(17.3%)で
あ った 。 診 療 責 任 医 師 、研 修 医指 導 医 師
余 地 が あ る」 「客 観 的 情 報 は 把握 で き る の で 主観 的情 報 が
の方 が 、研 修 医 に比 べ て重 症 記 録 を見 て い る割 合 が 高 く、
表1
多 い と助 か る」 な どの 意 見 が 見 られ た。
内科 系 外 科 系 別 重 症 記 録 利 用 状 況 の 比 較(n=148)
内科系
利用群
1
総数
92(88.5)
12{11.5
外科系
43(97.7)
1(2.3
104(100.0)
44(100.0}
総数
135(91.2)
13(8.8
148(100.0}
単位:人()%
表2
利用群
非利用群
総数
*有
病 棟 に お け る役 割 別 重症 記録 利用 状 況 の 比 較(n躍145)
診療責任 医師
41(95.3)
2(4.7}
43(100.0)
意 差(pく0.05)あ
研修 医指導 医師
48(96.0)
Z(4.0)
50(100.0)
り。
研修 医
総数
43(82.7)
9(17.3)
52(100.0)
132(91.0)
13(9.0}
i45(ioo,o>
、
単位:人()%
σ
表3
経 過 記 録 を読 んだ 感 想(n=146)
ア ンケ ー ト内容
A看
B患
C患
D看
E看
F記
G先
H自
1ま
回答(人 数%)
護 師 の視 点 で患 者 の 発 見 が あ る(違 った 視 点 か ら患者 を 捉 え る こ とが で き る)
者 が どの よ うに治 療 を受 け止 め て い るか が わ か る
者 との コ ミュニ ケ ー シ ョンを 円滑 にす る こ とが で きる
護 診 断 がわ か りに くい
護 師 が何 を 問題 に あ げて い る の かわ か り辛 い
載 量 の わ りに内容 は あま り充 実 して い な い
生 方 が求 めて い る内容 の記 録 が な い
分 自身 が既 に把握 して い る内容 の記 載 が 多 く、新 た な 発 見 は少 な い
とま りが な く読 み に くい
J誤 っ た記 述 が 多 い
Kそ の他
一53一
113(77.4)
100(68.5)
68(46.6)
46(31.5)
22(15.1)
19(13.0)
17(11.6)
5(3.4)
5(3.4)
5(3.4)
17(11.6)
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vbl.10No.1(2004)
5経
過 記録 を 「時 々 読 ん でい る」 の 「
時 々 」 と は?
7経
(複数 回答)
経 過記 録 を時 々読 ん で い る と回答 した68名
過 記 録 を読 ん で疑 問 を持 った 時 の医 師 の 対 処 行 動
経 過 記 録 を読 ん で 疑 問 を痔 っ た り内容 が わ か らな か っ
に 「
時 々」
た こ との あ る医 師119名
の うち、39人(32.7%)は
、そ の ま
とは どの よ うな 時 か質 問 した と ころ 、A「何 か イ ベ ン ト(治
ま に してい る こ とが 多 い 、ま た はい つ もそ の ま ま に して い
療 ・検 査 ・手術 な ど)が あ っ た 時 」が56人(82.4%)で
る と回答 してい た。残 りの80人(67.3%)は
最も
、看 護 師 、患者 、
多 く、次 い でB「 時 間 に余 裕 が あ る 時」が35人(51.5%)、
研 修 医 を通 して そ れ を解 洙 す るた め に何 らか の 方 法 を と
C「 患者 の把 握 が難 しい 時 」30人(44.1%)が
って い た 。(表5)
続 い た。 しか
し、プ ライ マ リー ナ ー ス が 書 い て い る時 、ベ テ ラ ンナ ー ス
が 書 い て い る 時 、簡 潔 に 書 か れ て い る 時 、綺 麗 な字 で書 か
れ て い る時 な どの 回 答 は少 なか った 。(表4)そ
8ど
の よ うな 場 合 、 看 護 師 に 詳細 を 尋ね てい る か
の他 の意
見 と して 、 「
毎 日病 棟 に は行 か な い の で行 っ た時 は見 る と
(複数 回 答)
看 護 師 に詳 細 を聞 く こ とが 多い 、必 ず 看 護 師 に詳 細 を聞
い う意 味 」 「
必 要 と感 じた 時 は 常 に み て い る 」 な どの意 見
く と回 答 した59名
に対 して 、 それ は どの よ うな時 か とい
が 見 られ た。
う質 問 をす る と 、A「 記 録 内容 の よ り詳 しい情 報 が 欲 しい
場 合 」 が53人(89.8%)と
6経
書 かれ て い る事 以 外 に、得 られ た 情 報 が な い か知 りたい 場
過 記 録 の 内 容 で 疑 問 を 持 っ た こ とが あ る か
「は い 」が119人(80.4%)、
「
い い え 」が28人(19.6%)、
「
無 回 答 」 が1人(0.06%)で
合 」 が29人(49.2%)、C「
あ っ た 。
表4
最 も多 く、次 い でB「 記 録 内容 に
う時 」 が21人(35.6%)で
誤 った 内 容 が書 かれ てい る と思
あ っ た。(表6)
経 過 記 録 を読 ん で い る場 合 の 時 々 と は?(n=68)
ア ンケ ー ト内容
回答人数(%)
A何 か イベ ン トが あ っ た時
56(82.4)
B時 間 に 余 裕 が あ る 時
35(51.5)
C患 者 の 把 握 が 難 しい 時
30(44.1)
D簡 潔 に 書 か れ て い る時
7(10.3)
Eプ ライ マ リー ナ ー ス(受 け持 ち看 護 師)が 書 い てい る 時
7(10.3)
F綺 麗 な 字 で 書 か れ て い る時
5(7.4)
Gベ テ ラン看 護 師 が 書 い て い る時
4(5.9)
Hそ の他
5(7.4)
表5経
過 記 録 を読 ん で 疑 問 を持 った時 の 医 師 の 対 処 行 動(n=119)
回答人数(%)
58(48.7)
44(37.0)
33(27.7)
6(5.0)
6(5.0)
10(8.4)
ア ンケー ト内容
A看 護 師 に 詳 細 を聞 くこ とが 多い
B患 者 に 直 接 聞 きに 言 っ た り診 察 に い っ た りす る
Cそ の ま ま に して い る こ とが 多 い
Dい つ もそ の ま まに して い る
E必 ず 看 護 師 に 詳 細 を 聞 くよ うに して い る
Fそ の他
表6
どの よ うな場 合看 護 師 に詳 細 を 尋ね て い る か(n=59)
回答人数(%)
ア ンケ ー ト内容
A記 録 内 容 の よ り詳 しい 情報 が 欲 しい 時
53(89.8)
B記 録 に 書 か れ て い る事 以外 に 、得 られ た情 報 が な い か 知 りたい 場 合
29(49.2)
C誤 った 内 容 が 書 か れ て い る と思 う場 合
D文 章 の 意 味 が わ か り辛 い場 合
21(35.6)
12(20.3)
E誤 った 数 値 の 記 載 や誤 字 な どが あ る場 合
ii(is.s)
Fわ か り辛 い 専 門 用語 を 使用 してい る場 合
8(13.6)
G記 録 して い た 看 護行 為 の 目的 がわ か らな い 場 合
8(13.6)
一54一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.10No.1(2004)
9自
由回 答:看 護記 録 につ い て の意 見 、要 望
め て い る よ うな気 がす る記 載 を時 折 み か け ます 。」「
研修医
(全 回 答;複 数 意 見 な し)
1)看
に も常 に 指導 して い る が、俗 名 や カ タカ ナ 英 語 を文 中 にな
護 記 録 が有 用 で あ る とい う意 見
るべ く用 い な い よ うに して 欲 しい。とて も素 人 く さ く感 じ
「ドク タ ー に 患 者 が 話 して い な い 内 容 や 本 音 が 含 ま れ て
られ る。」
お り、患 者 さん の気 持 ちや 捉 え方 が わ か るの で非 常 に 役
立 って い る。」 「
病 態や 経 過 に関 して は フ ロー シー トな ど
1V.考
に簡 略 で き るか も しれ な い が、 医 師 の記 録 だ け で は 間 の
熱 型 、重 症記 録 、経 過 記 録 のい ず れ に お い て も利 用 群 が
部 分 が わ か りに く く看 護 記 録 は そ の 点 で 非 常 に有 用 。」
「自分 が不 在 で あ っ た 時 の 患 者 の 様 子 を把 握 で き る。」
「pinpointで
み る ドク ター よ り24時
察
間観 察 して い る
9割 以 上 と高 値 で あ り、医師 の 看護 記録 へ の 意識 の高 さを
示 してい る と考 え られ る。
熱 型 ・経過 記 録 にお い て は、年 齢 ・性 別 ・所 属 ・臨床 経
ナ ー ス の方 が 細 か い 変 化 を と ら え て い る こ とが 多 い 。」
丁患 者 の メ ン タル 面 で の ケ ア に 対 す る記 述 が 多 い の は
験 年 数 ・病 棟 にお け る役 割 と関 係 な く ほ とん ど100%利 用
され て い る こ とが結 果 か ら読 み 取 る こ とが で き る。 一 方 、
よい と思 う。」
重 症 記 録 にお い て は 、経 験 や 年 齢 が 高 く病棟 で も責任 の 大
きい 医師 の ほ うが 、年 齢 が 若 く経験 の 浅 い医 師 よ りも見 て
2)看 護 記 録 に つ い て の 率 直 な感 想
い る割 合 が高 か っ た 。この 背 景 と して比 較 的 病 棟 にい るこ
「
人 に よっ て 内 容 が ま ち ま ちで あ る。」 「あ ま りに字 の汚
との多 い 若 い 医 師 は 、重 症 記録 を見 な くて も 自分 の 目で直
い 看 護 師 が い る」 「ドク タ ー と違 った 視 点 で の ア セ ス メ
接 患 者 の 状 態 を把 握 で きる と考 え て い るた めで は な い か
ン トプ ラ ンが欲 しい。」
と考 え る。また 、重 症 記 録 は重 症 患 者 の状 態 を一 目で把 握
で き る こ とか ら、常 に病棟 に い る こ とが 困難 で あ る診 療 責
3)看 護 診 断 に関 す る意 見
任 医 師 や 研 修 医 指導 医師 の ほ うが 、有 意 に読 ん で い る割 合
「
看 護 診 断 が 理解 し辛 い。」 「RFAも ア イ ク ロ波 もPEITも
.
が 高 か った と考 え られ る。また 、こ のア ンケ ー トを行 った
☆ 経 皮 的 エ タ ノー ル療 法 」 な ど とな っ て お り、 「
看護診断
時 期 は研修 医 の研 修 期 間 が約 半年 程 度 の もの が 多 く、一 部
上 統 一 す べ きな の か も しれ ない が 、事 実 と異 な る記 載 にな
の 研 修 医 で は 重 症 記 録 用紙 を使 うよ うな 重 症 患 者 を うけ
って しま って い る。法 廷 な どで混 乱 の元 にな らな い か 懸 念
もつ 機 会 が な か っ た こ とも有 意 差 が認 め られ た 理 由の 一
して い る。」「
看 護 診 断 の タイ トル は英語 直 訳 そ の もの を用
っ だ と考 え られ る。
い て い る の か し っ く り こな い 。 例 え ば ・非 効 果 的 治 療 計
画?身 体 損 傷 の リス ク?非 効 果 的気 道 浄化?な
内 科 系 外科 系 で は 、有 意 差 は認 め られ な か っ た が 、外 科
ど。い き な
系 の 方 が重 症 記録 をみ てい る割 合 が 高 か っ た こ とに つ い
りカ ル テ 開 示 で 目に した とき に 治 療 内容 そ の も の が誤 っ
て は 、外科 系 医師 は 内科 系 医 師 とは 違 い 、研 修 の経 験 目数
て い るか の よ うな 印象 を受 け る。」
が 少 な く とも手 術 後 患 者 を必 ず み る た め 、手 術 後 患 者 の 状
態 を重 症 記 録 か ら情 報 収 集 す る こ とが 多 い か らだ と考 え
4)カ
ルテ共有について
られ る。
「医 師 の 記録 だ け を見 た い 時 、看 護 記録 と医 師 の 記録 が 混
経 過 記録 を読 んだ 感想 で は 、看 護 師 の 視点 で患 者 の 発 見
在 してい る と非 常 に見 に くい。医 師 の記 録 と看 護 師 の 記録
が あ る 、患者 が どの よ うに治療 を受 け止 めて い るか が わ か
を人 目で 見分 け られ る よ うに して欲 しい。」「で き れ ば 以前
る 、患者 との コ ミュ ニ ケー シ ョンを 円 滑 にす る こ とが で き
の よ うに看 護 記 録 と医 師 の 記録 を別 々 に戻 して欲 しい 。」
る が 多 く選 択 され てい た 。 ま た看 護 記録 に つい て の意 見 、
要 望 の 自 由回 答 にお い て も、患者 が 医師 に話 して い な い 内
5)看 護 記録 へ の提 案
容 や 本 音 が 含 ま れ て い る 、患者 さん の気 持 ちや 捉 え方 が わ
「
看 護 記 録 は(関 連 病 院 にお い て も)い つ も参考 に してお
か るな どの 意 見 もみ られ てい る。これ らの こ とか ら、医師
り医 療 情 報 と して 大 き く意義 が あ る と考 え る。改 善 して頂
は看 護 記 録 に、看 護 師 だ か ら こそ得 られ る情 報 を 必要 と し
けれ ば と思 う点 は① 不 明 瞭 な(看 護 学 的?)専
て い る こ とが伺 え る。 看 護 記録 は 、 チ ー ム 医療 の な か で 、
門用 語 ② 観
察 記 録 の 日時 を必 ず 記 載 して くだ さい 。(発 熱 の 時 刻etc)
看 護 者 間で お よび看 護 の 立場 か ら他 の 医療 ス タ ッフ に、情
③ 医療 者 ・個 人 を非 難 す る よ うな 内容 。」「
患 者 の持 つ プ ロ
報 を提 供 す る もの1}と 言 わ れ て い る。 看 護 師 は 、 医師 の
ブ レム は1っ だ け で は な い はず なの に、無 理 に1つ に ま と
治 療 方 針 を十分 把 握 した うえ で、患 者 の 状 況 を看 護 師 の視
一55一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.10No。1(2004)
点 か らア セ ス メ ン トした こ とを 記 載 す る こ とが 必 要 で あ
疑 問 が 生 じた 際 、必ず 看 護 肺 に詳 細 を 聞 く 医師 の うち、約
る。また 患 者 が どの よ うに治 療 を受 け止 め てい るか が わ か
9割 が 記 録 の よ り詳 細 な情 報 が 欲 しい場 合 と回 答 して お
る、患 者 と の コ ミュニ ケー シ ョン を 円滑 にす る こ とが で き
り、看護 師 は 医 師 に看 護 記 録 の 内容 を確 実 に伝 え るた めの
る とい う回 答 が 多 か っ た こ とは 、看 護 記 録 が 治 療 に対 す る
表 現力 を身 にっ け る こ と が求 め られ る と考 え る。
患 者 の受 け 止 め方 や 日々 の 言動 を記 載 して い る か らで あ 馳
る。記 録 の 上 で情 報 を共 有 す る こ とは 、情 報 収 集 の 重 複 を
防 ぐ こ とが で き、患 者 の負 担 軽 減 、医療 従 事 者 の 時 間 や 労
力 の 無 駄 を省 く こ とが で き るi)と い う大 橋 らの文 献 に 結
び つ く。
V.結
1医
師 の9割 以 上 は熱 型 ・重 症 記 録 ・経 過 記 録 を毎 日
ま た は 時 々読 ん でい た。
2重
一 方 で 、否 定 的感 想 の 中 で は看 護 診 断 が わ か りに くい と
い う回 答 が 最 も多 か っ た こ とは 、看 護 診 断 ラベ ル の 翻 訳 上
論
症 記 録 は 、 臨床 経 験 年 数 の 多 い方 が 、 ま た は 病 棟
で の役 割 に責 任 が あ る方 が よ く見 て い た。
3医
師 は看 護 記 録 よ り看護 師 の 視 点 か ら見 た 愚者 の 治
の 問 題 、っ ま りは英 語 の 直 訳 で抽 象 的 で あ り、各 看 護診 断
療 に 対 す る受 け止 め 方 な どの 情 報 を得 てお り、蕕 護 師
の 定 義 が わ か らな い と 日本 語 と して理 解 し辛 い こ とに 関
は 医 師 の 治 療 方 針 を理 解 した 上 で 、 患 者 の 状況 を看 護
係 して い る と考 え られ る。松 木 は 、NANDAに つ い て 、開発
の視 点 か らアセ ス メ ン トす る こ とが 必 要 で あ る。
され た もの の まだ ま だ 妥 当性 ・信 頼 性 テ ス トを重 ね な け れ
4医
師 は看 護 診 断 が わ か りに くい と感 じて お り、 看 護
ばな らな い3>、 北米 文 化 の な か で 生 まれ た もの で あ り、ま
師 は 進 め て い き た い看 護 方 針 を医 師 に伝 え た り、 患 者
た い まだ 開 発 過 程 に あ るの で 、日本 文 化 にそ ぐわ ない 概 念
の 状 態 にそ の都 度 あ っ た プ ロ ブ レム を 立案 した りす る
も あ る の は 必 定 で あ る4)と 指 摘 してい る。 自由 回答 に お
こ とが 望 まれ る。
いて 、「
看 護 診 断 が 事 実 と異 な る記 載 と な っ て しま っ て い
る時 が あ る 一RFAも マ イ ク ロ波 もPEITも
エ タ ノー ル 療 法 とな っ て い るJと
す べ て☆ 経 皮 的
い うこ とにつ い て はマ
スタ作 成 上 の問 題 だ と考 え られ る。 そ して 、 「患者 の プ ロブ
レム を無 理 に1つ の プ ロブ レム に ま とめ て 記 載 して い る」
5医
師 が経 過 記 録 を読 む の は 、 見 た 目の読 みや す さや
プ ラ イ マ リー ナ ー ス ・ベ テ ラ ン ナ ー ス が 記録 して い る
か 否 か で は な く、 必 要 に 迫 られ た 時 や 更 な る 情 報 が 欲
しい 時 で あ った 。
6経
過 記 録 を読 ん で疑 問 が 生 じた 際 、 約7割
の医師 が
とい う意 見 もみ られ て い る こ とか ら、看 護 師 は患 者 の 状 態
病 棟 に お け る役 割 に 関係 な く、それ を解 決 す るた め に何
にそ の都 度 あ わせ た プ ロブ レム を立 案 して 、解 決 して い く
らか の方 法 を とって い た 。
必 要 が あ る と考 え る。そ うす る こ とで、よ り医師 に も看 護
師 に も読 み や す い ま とま った記録 とな り、情報収集 もスムー
ズ にな るこ とが期待 される。
w.謝
辞
本 研 究 に ご 協 力 頂 き ま した 阪 大 病 院 の 医 師 の皆 様 に は
ま た 、 医師 が看 護 記 録 を読 む の は 、 「
何 か イ ベ ン ト ー治
心 よ り御 礼 申 し上 げ ます 。ま た 、本 研 究 に 際 して、ご指 導 ・
療 ・検 査 ・手術 ・急 変 な どが あ っ た 時 一」演 最 も多 く、次
ご助 言 を頂 き ま した 医学 部 保 健 学 科 の 阿 曽 洋 子 教 授 は じ
い で 「時 間 に 余裕 が あ る 時 」、 「
患 者 の把 握 が難 しい 時 」 と
め 多 くの方 々 に深 く感 謝 申 しあ げま す 。
続 い た 。 この こ とか ら医 師 は 、検 査 や 処 置 、手 術 後 の 患者
◎ 引 用文 献
の 状 態 が 捉 え に くい 時 に看 護 記 録 を情 報 源 に してい る と
1)大 橋 優 美 子:看 護記 録 、看 護 学 学 習 事 典 、学研 、p173、
考 え られ る。 一 方 、r簡 潔 に書 かれ て い る時 」、 「
綺麗 な字
で書 かれ て い る時 」、 「プ ラ イ マ リー ナ ー ス が 書 い て い る
時 」、 「
ベ テ ラ ンナ ー ス が書 い て い る 時」 の 回答 は少 な く、
1997
2)川 島 み ど り:看 護 記録 が め ざす もの 、看 護 実 践 の 科 学 、
Vo1.27,No3,p20,2002
看 護 記 録 の 見 た 目の 読 み や す さや どの看 護 師 が 書 い て い
3)松 木 光子:看 護 診 断の 現 在 、 医学 書 院 、p38
るか は 、医師 が看 護 記 録 を読 む か読 まな い か を決 定 付 け る
4)前 掲 書3)P218
重 要 な因 子 に なっ て い な い こ とが 考 え られ る。ま た 経過 記
◎参 考 文 献
録 を読 ん で 疑 問 を持 っ た こ との あ る 医 師 の うち 、約7割 の
波 多野 梗 子:系 統 看 護 学 講 座
専 門1基
礎 看護 学1、 医
医師 が 病 棟 に お け る役 割 に 関係 な く、疑 問 を解 決 す るた め
学 書院 、1997
の 行 動 を とっ て お り、看 護 記 録 が 医師 の 行 動 をお こす き っ
佐 藤 重 美:看 護 学 が わ か る(看 護 診 断 学)、 朝 日新 聞 社 、
か け にな っ で い る こ と溺 わ か る。そ して 看 護 記 録 を読 ん で
2000
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