第1回レポート

代数学 XC(本郷)レポート問題 1
高木 俊輔(東大数理)
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問題 1, 2 の中から 1 問以上,問題 3, 4, 6 の中から 1 問以上,問題 5, 7 の中から 1 問
以上選び,解答をレポートにして提出せよ.
問題 1. (1) N を群 G の正規部分群とし,π : G → G/N を自然な全射とする.G の
部分群 H が存在して G = N ⋊ H となることと,群準同型 f : G/N → G が存在し
f
π
て G/N −
→G−
→ G/N が恒等写像になることは同値であることを示せ.
(2) 有限群 G の正規部分群 N の位数と指数 [G : N ] が互いに素であるとき,G
の部分群 H が存在して,G = N ⋊ H となることを示せ.
問題 2. 以下の手順で位数 6 の群を分類せよ.G を位数 6 の群とする.
(1) G がアーベル群ならば,G ∼
= Z/2Z × Z/3Z であることを示せ.
(2) A を e を単位元とする群とする.任意の x ∈ A に対し x2 = e が成り立つな
らば,A はアーベル群であることを示せ.
(3) (2) より,位数 3 の元 h ∈ G が存在することを示せ.
(4) H = ⟨h⟩ ⊂ G とおく.G/H を考えることにより,位数 2 の元 g ∈ G が存在
することを示せ.
(5) G が非可換群ならば,G は 3 次対称群 S3 と同型であることを示せ.
問題 3. 次のイデアル I が R の極大イデアルかどうか判定せよ.極大イデアルでな
い場合は,R/I をより簡単な環の直積で表せ.
√
(1) R = Z[ −2], I = (11).
(2) R = R[X], I = (X 4 + 1).
問題 4. 次のテンソル積をより簡単な環で表せ.
(1) Z/pZ ⊗Z/pqZ Z/qZ
(2) Q ⊗Z Q
(3) C ⊗R C.
√
√
問題 5. R = Z[ −1] とおく.ノルム N : R → Z を N (a + b −1) = a2 + b2 と定
義する.
(1) R は N に関してユークリッド整域であることを示せ.つまり,R の任意の
非零元 a, b ∈ R に対し,a = bq + r かつ N (r) < N (b) となるような q, r ∈ R
が存在することを示せ.
√
√
(2) ユークリッドの互除法を用いて,7 + 11 −1 と 1 + 18 −1 の最大公約数を
求めよ.
)
(
√
√
7 + 11√−1 5 +√10 −1
の R における単因子形を求めよ.
(3)
1 + 18 −1 15 −1
問題 6. A を単項イデアル整域とし,f, g を A の非零元とする.A は単項イデアル
整域なので,(f ) + (g) = (h) となる h ∈ A が存在する.このとき,次が成り立つこ
とを示せ.
(1) HomA (A/(f ), A/(g)) ∼
= A/(h)
(2) A/(f ) ⊗A A/(g) ∼
= A/(h)
問題 7. k = Z/2Z を位数 2 の有限体とし,Mm×n (k) を k の元を成分とする m × n
行列全体とする.また Em を m 次単位行列とする.(p, q) 成分のみ 1 で,残りの成
分はすべて 0 であるような m × n 行列を Ep,q と書く.そして Fp,q ∈ Mm×n (k) を
Fp,q = Ep,q + Ep−1,q + Ep+1,q + Ep,q−1 + Ep,q+1
と定義する.ただし,存在しない項は無視して考える.例えば,
F2,1 = E2,1 + E1,1 + E3,1 + E2,2
である.Fp,q (1 ≤ p ≤ m, 1 ≤ q ≤ n) の張る k ベクトル部分空間を N ⊂ Mm×n (k)
とおく.
(1) k 線形写像 Φ : Mm×n (k) → Mm×n (k) を Φ(X) = Jm X + XAn と定義する.
ただし,An は任意の i = 1, . . . , n − 1 について (i, i + 1) 及び (i + 1, i) 成分
が 1 で,残りの成分が 0 であるような n 次正方行列とする.m 次正方行列
Am も同様に定義し,Jm = Em + Am とする.このとき,
dimk Mm×n (k)/N = dimk ker Φ
を示せ.
(2) V = k n , W = k m とおき,φX : V → W を X ∈ Mm×n (k) が定義する k 線
形写像とする(つまり v ∈ V に対し φX (v) = Xv ).さらに,v ∈ V に対し
t · v := An v, w ∈ W に対し t · w := Jm w と定義することによって,V, W を
k[t] 加群と見なす.このとき,
ker Φ → Homk[t] (V, W ) X 7→ φX
は k 同型であることを示せ.
(3) (1),(2) と問題 6 (1) を用いて,m = 3, n = 4 のときの dimk Mm×n (k)/N を
計算せよ.
(4) 12 個の電球が 3 × 4 の行列状に配置されているとする.各電球は on か off
いずれかの状態にある(よってそのパターンは全部で 212 通りある).ある
電球を押すと,その電球自身と(もしあれば)その電球の上下左右の電球の
on, off が入れ替わり,それ以外の電球はそのままである.例えば,左下図で
(2, 2) 成分に当たる電球を押すと,右下図のようになる.
◦ • ◦ •
◦ ◦ ◦ •
◦ • • ◦ −→ • ◦ ◦ ◦
• ◦ ◦ ◦
• • ◦ ◦
電球を押して移り合うような 2 つのパターンは同値であるとみなしたとき,
212 通りのパターンはいくつの同値類に分かれるか?