代数学 XC(本郷)レポート問題 2 高木 俊輔(東大数理) [email protected] 以下の問題では,有限群 G の指標といえば,G の複素数体 C 上の有限次元表現の 指標を意味する.問題 1∼3 の中から 1 問以上,問題 4∼8 の中から 2 問以上選び,解 答をレポートにして提出せよ. 問題 1. G を有限群とし,k を体とする. (1) G の k 上の既約表現は有限次元であることを示せ(k は代数閉体とは限ら ないことに注意せよ). (2) k = C とする.G の k 上の既約表現がすべて 1 次元ならば,G はアーベル 群であることを示せ. 問題 2. 有限群 G の共役類の個数を r とする.C[G] の両側イデアルの個数を求 めよ. 問題 3. k を体とし,G を有限群とする. (1) V = k を G の k 上の自明な表現,W = k[G] を正則表現としたとき,G 準 同型 f : V → W をすべて求めよ. (2) k = Z/2Z を位数 2 の有限体とし,G を位数 2 の巡回群とする.このとき, G の k 上の正則表現 W = k[G] は既約表現ではないが,部分表現の直和で 表せないことを示せ(つまり,この場合マシュケの定理は成り立たない). 問題 4. N を有限群 G の正規部分群とし,π : G → G/N を自然な準同型とする. (1) ρ : G/N → GL(V ) が G/N の C 上の既約表現ならば,ρ ◦ π : G → GL(V ) は G の C 上の既約表現であることを示せ. (2) ρ1 , . . . , ρr を G/N の C 上の既約表現の同値類の完全代表系とする.このとき r ∩ N= ker(ρi ◦ π) i=1 が成り立つことを示せ. 問題 5. G を有限群とする. (1) ρ : G → GL(V ) を G の C 上の有限次元表現とし,χ : G → C をその指標 とする.このとき ker ρ = ker χ := {g ∈ G | χ(g) = χ(e)} が成り立つことを示せ. (2) χ1 , . . . , χr を G のすべての既約指標とし,N を G の部分集合とするとき, 次の 2 条件は同値であることを示せ(ヒント:問題 4 を使う) . (a) N は G の正規部分群である. ∩ (b) 有限個の整数 1 ≤ i1 . . . , is ≤ r が存在し,N = sj=1 ker χij と書ける. 問題 6. 以下の手順で,4 次対称群 S4 の正規部分群をすべて求めよ. (1) Klein の四元群 K = {e, (1 2)(3 4), (1 3)(2 4), (1 4)(2 3)} {( ) ( ) ( ) ( )} 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 = , , , 1 2 3 4 2 1 4 3 3 4 1 2 4 3 2 1 は S4 の正規部分群であることを示せ.また S4 /K ∼ = S3 も示せ. (2) (1) を用いて S4 の指標表を求めよ. (3) 問題 5 を用いて S4 の正規部分群をすべて求めよ. 問題 7. ⟨( 0 i i 0 ) ( )⟩ ξ6 0 , ⊂ GL2 (C) 0 ξ65 G= √ とする.ただし,i = −1,ξ6 は 1 の原始 6 乗根である. (1) G の位数が 12 であることを示せ. (2) G の指標表を求めよ. (3) V0 , V1 , . . . , Vr を G の C 上の既約表現の同値類の完全代表系とし(V0 を自 明な表現とする) ,W = C2 を表現 G ,→ GL2 (C) の表現空間とする.このと き,以下の手順でグラフを作成せよ. (a) 各 Vi をグラフの頂点とする. (b) Vi から Vj に mij 本の矢を描く(相異なる 2 本の矢が交らわないように 描くこと) .ただし,mij は W ⊗ Vj における Vi の重複度,つまり, ⊕m ⊕m W ⊗ Vj ∼ = V 0j ⊕ · · · ⊕ V ij ⊕ · · · ⊕ V ⊕mrj 0 i r によって定義される非負整数である. 問題 8. G = ⟨a, b, c | a3 = b3 = c2 = e, ba = ab, ca = a2 c, cb = b2 c⟩ とする. (1) G の位数が 18 であることを示せ(ヒント:ϕ : Z/2Z → Aut(Z/3Z × Z/3Z) を適当に選ぶと,全射準同型 G → (Z/3Z × Z/3Z) ⋊ϕ Z/2Z が得られる) . (2) G の共役類をすべて求めよ. (3) G の指標表を求めよ(ヒント:G の部分群 H = ⟨a, b⟩ の一次元指標から誘 導される G の指標を考えよ).
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