Title アンモニア中毒の実験病理学的研究

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アンモニア中毒の実験病理学的研究 - 肝脳変性疾患猪瀬
型の病理成因によせて( Abstract_要旨 )
石井, 翼
Kyoto University (京都大学)
1963-12-24
http://hdl.handle.net/2433/211162
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏)
井
石
いし
翼
たす く
い
学 位 の 種 類
医
学 位 記 番 号
医
学位授与の 日付
昭 和 38 年 12 月 24 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第
研究科 ・ 専
医
攻
博
学
第 129 号
博
学
士
研
究
科
内
1 項 該 当
科
系
専
学 位 論文題 目
ア ンモ ニ ア 中毒 の 実 験 病 理 学 的 研 究
論 文 調査委員
(主 査)
教 授 村 上
仁
論
内
攻
一 肝 脳 変 性 疾 患 猪 瀬 型 の 病 理 成 因 に よ せ て-
文
教 授
容
の
岡 本 耕 造
要
教 授
早 石
修
旨
肝脳変性疾患猪瀬型の病理成 因は, 現在 まで門脈大循環短絡 とそれに よる高 ア ンモ ニア血症 が主題 とな
っている。 しか し, 猪瀬型の脳 の多彩 な組織病理学的変化 とア ンモ ニア との関係 につ いては, 未だ実証的
研究 に乏 しい と思われ る。 著者 は この 目的で実験を行 なった。 すなわ ち犬で , 燐酸 ア ンモ ニューム塩溶液 ,
重炭酸 ア ンモ ニーユム塩溶液の点滴静注を繰返 して行 ない, 若干の症状を観察す る とともに, その脳お よ
び身体臓器を組織学的に しらべた。 症状 としては , 痩撃 な どの他に, 舌をつ きだ してなめ る, 噛吐 , 排
便 , 四肢の歩行様運動 な どが観察 された。 これ らはア ンモ ニアが大脳辺縁系 に作用す るために起 きた症状
であると考 えられた。
脳病変を得 るためには, ア ンモ ニューム塩溶液 の点滴 中に, 痩撃 にまで至 らせ る ことが必要であった。
脳病変 としては, 視床お よび膝状体 に左右対称的に特有の軟化巣が , 6 例 にみ られた。 す なわ ち, 限局佳
の脱髄 , 謬細胞 と血管 の増生 , それに もかかわ らず , 神経細胞 は比較的 よ く保存 され ているな どの特徴を
備 えてお り, 肝脳疾患や , ウェル ニツケ脳炎に も見 られ る, いわゆ る pseudoenceph alitisch es G ew ebss-
yndrom
に
一
致す るものであった。
1 例では, 大脳皮質に仮層性 に この種 の病変がみ られた。 この例で
は, 他に小脳核 の軟化巣 , 黒質の壊死巣 がみ られた。 別の例では内包の粗大海綿状態お よび小脳核 の軽度
の海綿状態が各 1 例み られた。 す なわち, 本実験 にお いて, 肝脳疾患 の脳所見 の うち, いゆわ る W ilson
要素 (血管増殖巣 , 海綿状態 , 軟化巣) に類似の所見がえ られたのである。 この ことはアンモ ニアが , 脳
病理所見 の発現機構 において, 重要 な役割を演 じてい ることを示す もの と思われ る。
しか し, いわゆ る仮性硬化要素 , す なわち A 17Jh eim er Il型惨細胞の ごとき, 謬細胞 の異型化 は, 本実
験では認め られなか った。 この ことは, この種 の異型化の発現には時間因子が関係 している とともに, 肝
脳疾患の代謝障害が複雑であって, ア ンモ ニアだけで は説明で きない ことを推定 させ るものである。
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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
肝脳変性疾患猪瀬型の病理成 因 として現在 もっ とも重要視 されているものの一つ に高 ア ンモ ニア血症が
あるが , 猪瀬型の組織病理学的変化 とアンモ ニア との関係につ いての実験的研究 はまだほ とん ど存在 しな
い。
石井 は この点につ いての実験的研究 を こころみ , ある程度の成果を得た。 すなわ ち彼 は犬 に燐酸 アンモ
ニウム塩溶液 , 重炭酸 アンモ ニウム溶液 の点滴静注を行 ない, その際の臨床症状を観察す る とともに, そ
の脳お よび身体臓器を組織学的に研索 した。
その結果 , 本実験 にお いて, 肝脳疾患の脳所見の うち, いわゆ る W ilson 要素 (す なわち血管増殖巣 ,
海綿状態 , 軟化 巣等) に類似す る所見が得 られた。 この ことはアンモ ニアが猪瀬塑肝脳疾患の脳病埋所見
の発現機構 において重要 な役割を演 じている ことを示す もの と思われ る。 この ように本研究 は学術上重要
な貢献をな した もの と考 え られ医学 博士の学位論文 として価値 あるもの と認定す る。
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