社会 主義経済 の成長 と資源配分 一 経 済成長と資源配分 田 社会主義経済 の成長と資源配分 二三 靖 彦 表 か ら あ き ら か に、 一九 五 〇 年 代 初 期 のた か い消 費 財 生 産 の成 長 率 は 、 一九 五〇 年 代 後 半 に 入 って、 徐 々 に 下降 す る傾 まず 、 キ ャブ ラ ン、 ムー ア ス テイ ン の推 計 に よ る消 費 財 生 産 指 数 から 成 長 率 を 算 出 し た 数 字 を第 1 表 に掲 げ た。 こ の 最近 の ソビ エト の国 民 所 得 、 消 費 、 投 資 の成 長 率 を 算 定 し て み よ う 。 いま 、 キ ャ ムベ ル教 授 の所 説 の実 証 性 を た し か め る た め 、 西 側 の ソビ エト経 済 学 者 の推 計 資 料 と 公 表 統計 の両 方 か ら た後 、最 近 で は、 こ の率 が 低 下 七、 他 方 、 投資 の粗 国民 生 産 物 に占 め る割 合 は、 増 加 し つ つあ る﹂ と。 のよ う に述 べ て い る。 す な わ ち、 ﹁事実 は、 そ の よう な見 解 に反 し て、 一九 五〇 年 代 初 期 の消 費 財 生 産 の成 長 率 が 上 昇 し が資 本 財 生 産 の成 長 を抑 え 、 こ の面 か ら、 国 民 経 済 全 体 の成 長 を抑 制 す る ので はな い か と いう 見 解 に つ い て、 教 授 は 次 ブ レジ ネ フ政 権 をも ふく め て、 国 民 の消 費 財需 要 を 漸 次 、 充 足 し、 消 費 財 を潤 沢 にし てゆ く 方 針 を 之 って い るが 、 これ 最 近 、 ソビ エト経 済 に関 す る か な り広 く ゆき わ た った 見 解 と し て、 フ ル シ チ ョフ政 権 の発 足 以来 、 現 在 の コ スイ ギ ン 先 にあ げ た論 文 で、 キ ャ ムベ ル教 授 は、 ソビ エト経 済 の成 長 鈍 化 を、 よ り広 範 な 国 民 経 済 全 体 の資 源 配分 の観 点 か ら 論 じ て い る。 以 下 、 キ ヤ ベ ル教 授 の所 説 に沿 って、 そ の所 説 の妥 当 か、 否 か を実 証 的 に検 討 し よう 。 士 回 年 成長 率 (%) 140.8 11.4 1954 152.7 8.5 1955 165.8 8.6 1956 179.1 8.0 1957 190.7 6.5 1958 200.7 5.2 1959 217.2 8.2 1960 223.9 3.1 、 ﹂ 7.5 1953 17.6 62 126.4 117.6 1952 ㎝ 1 100.0 1951 年 平均 成 長 率 (%) 1950 社会主義経済の成長と資源配分 消 費 財 生産 指数 /f 一 年 (資 料)共 産 圏 問 題 第8巻 第1号 、丹 羽 春 喜氏 論 文 「ソ連経 済成長の計量経済学的分析 の試み」PP.60-61よ り算 出 第2表 公表練計に よる最近 の消費 の成長(経 常価格で) 108,1 111.1 1962 117.5 120.8 1963 124.1 127。5 xo3崩CTBo a 1963r. * 躍 訓解 聞 (資 料)Hapo朋oe 得 費 1961 消 100.4 100 所 得 136.2 145.0 152.9 164.6 169,1* (171.4) 銘 104,5 97.3 1960 所 一 1959 均率 (%) 数 年成長率 指 (蝉1の 驕 年 消 費 平年 公 表 数字 で は、 一九 五〇 年 以降 の数 字 が え ら れ な か った。 次 に 投資 に つ い ても 、 西側 の推 計 に よ るも の と、 公 表 数 字 に よ る も の の両 方 を 掲 げ た。 71.4 72.i 70.7 71.4 73.4 (72.4) CCCP CTp.503 1963年 に 固 定 フ オ ン ド減 髄 償 却 ノ ル マ が ひ き 上 げ られ た 以 前 の償 却 ノル ル ー ブ ル にな る 。 向 を示 し て いる 。 推 計 資 料 は、 一九 六〇 年 ま で し か 、 え ら れ な い ので 、 一 九 五 九 年 以 後 を、 公 表 数 字 から 算 出 し、 第 2 表 に 示 した 。 こ の表 か ら し て、 一九 六 〇 年 代 前 半 に 入 って消 費 財 生 産 の成 長 は 、 一九 五 〇 年 代 後 半 に く ら べ て急 激 に増 大 し た と は思 わ れ な い。 所 得 に 占 め る 、 消 費 の割 合 も 、 七 十一 七 十 一 ニパ ー セ ント 二四 マ に よる と1963の 国 民 所 得 は 括 孤 内 の1714億 を 前 後 し て い る0 な お、 第 3表 にみ る よう に、 ポ ウ エル推 計 によ れ ぽ 、 一九 五 〇 年 代 前 半 にく ら べ、・後 半 は、 若 干 (十 一 ・ 一パ ー セ ン トか ら、 十 二 ・八パーセントに)成 長 率 の増 加 が み られ る。 他 方 、 公 表 統 計 か ら、 え ら れ た 数 字 で は、 一九 五 九 年 以 前 の 数 字 が え ら れ 第1表 キ ャ ブラ ン漏 ムー ア ス テイ ン推 計 に よ る消 費 の成 長 年 115.5 5.4 1953 127.3 10。2 1954 144.6 13.6 1955 168,4 16。5 1956 1953 16,0 1957 217.2 11.2 1958 239.1 10.1 1959 266,0 11.3 1960 296.3 11.4 112.6 1962 40.1 117.9 η姐 卿 繋 38,3 (24.6) CCCP 42.2 (資 料)投 資 の 数 字 は 、Hapo胆oe 資 得 26.2 1961 (171.4) 1963 56 24.4 161.1* τ ∼ 25.0 164.6 107.9 xo3髄cTBo 25,3 152.9 124。1 25。0 100 36.7 ー ー 1952 145。0 34.0 1960 12.8 109.6 11.1 1∞.0 1951 136。2 1959 *所 得は 第16表参 照 cTp.451 s1963r. 9。6 1950 役 所 所 得 ・ 醐輩 醗 投'資 指 数 年(蝉1し) り算 定 掲 丹 羽 論文 PP.60-61よ (資 料)前 年成 ( 長率 %) 投資の指数 策4表 、公 表 統 計 に よ る最:近の投 資 の成 長(経 常 価 格で). な い ので、 成 長 率 の傾 向 は 判 ら な い。,ま た 推計 と く ら べ て、 一 .九 五 九年 以降 の成 長 率 が 低 い の は、 果 し て ど こ に 原 因 が、あ る か、 あ き ら か でな い。 投資 の所 得 に占 め る シ エア ー は 二 十 五 パ ー セ ン ト前 後 の数 値 を 保 って い る。 . 投 資 に つ い て は、 更 に そ れ が 、 各 産 業 部 門 に、 ど れ だ け の 規 模 で配 分 せ られ る か と いう 投 資 配 分 の問 題 が あ り、 これ ど 併 せ て、 各 部 門 の投 資 効 率 の問 題 を 考 慮 す る必 要 が あ る が 、 キ ャ 社会主義経済 の成長と資源配分 二五 7 る。 そ の 一つ は、 対 外 援 助 の項 目 であ る。 これ は 、 現 在 のと ころ、 G N P の○ ・五 パ ー セ ント程 度 で あ り 、 ソビ エト経 次 に、 キ ャ ムベ ル教 授 は 、 国 民所 得 の中 の消 費 、 投 資 支 出 以 外 の資 源 配 分 を要 請 す る 他 の項 目 に つい て も 論 及 し て い 部分 が 増 大 し た こ と によ って、 最 近 の経 済 成 長 率 化 が 鈍 化 し た と いう 見 解 は当 ら な いよ う に思 わ れ る。 ムベ ル教 授 の論 文 で は 、 これ に全 然 ふ れ て いな い。 と も あ れ キ ャ ムベ ル教 授 の言 う と お り 、 所 得 の中 消 費 に向 け ら れ る 第3表 ポ ウ ェ ル推 計 に よ る投 資 の成 長 社会主義経済 の成長と資源配分 銘 1 一 の年率) 易均長% 貿平成( の長 ) 易成 % 貿年率( 率 ) ㈹ 出 % ÷ 輸 ( ㈲ 一 α8 1 32 ㎝ 鍋 鋤 a6 34 肪 銘 劔 B 1961 cTp.6683:り 5。7 入ルル 聡 詔 舗3 9 46 田 砿 銘 億 ブ◎ 輸 10 一 ( a 1963 c叩.501 CCCP 14.0 1957 113,4 1958 127.7 1959 136.2 1960 145.0 1961 152.9 1962 164,6 出 ルル ㎝ 認 39 a9 如 50 製 63 65 億 ブ⑬ CCCP xo3a負c田30 6.4 106.3 算出 xo3aAcrso H:apo汎Hoe 4.0 95.4 1956 cTp.548 (資料)HapoAHoe 21.6 1955 逆算 * 1955、56、57の 国 民 所 得 数 字 は 上掲 書CTP.5013:り 書* 第16表 脚 註 参 照 (c)÷㈹ ㈹ 輸 10 鞠 ( 甥)( 年 169。1*零 1963 国民所得 6.3 3.8 (3.8) (%) 14.2 2.9 3.1 3.1 3.1 3.4 3.5 3.4 3.5 3.8 (3.7) (171.4) 輸入率 外 国 貿 易額 15.1 二六 O 資 源 配 分 に対 す る他 の重 要 な 要 請 項 目 で あ る 軍 事 支 出 の経 さ れ る。 済 成 長 に及 ぼ す 効 果 は、 今 後 ま す ます 大 き く な る こと が 予 想 り、 現 政 権 も こ の方 針 を う け つ い で い る か ら、 こ の面 か ら経 たが、 フ ル シ チ ョウ 政権 に入 って積 極 的 に貿 易 拡 大 政 策 を と て いる。 ス タ ー リ ン の政 権 下 で は、 自 給 自 足 経 済 を 原 則 と し 年 代 後 半 と も に、 十 パ ー セ ン ト以 上 の か な り た か い値 を示 し 減 が あ るが 、 年 平 均 成 長 率 は、 一九 五〇 年 代 後 半 、 一九 六〇 増 大 す る傾 向 にあ り、 貿 易 の年 成 長 率 は、 年 によ り か. なり増 の発 展 傾 向 を示 し た。 こ の表 に よ る と、 輸 出 、 輸 入率 と も に 察 す る必 要 が あ る 。 そ の た め、 い ま、 第 5 表 に、 貿 易 の最 近 い。 た だ対 外 援 助 の問 題 は、 ソ ビ エト の外 国 貿 易 と併 せ て考 外 援 助 の項 目 が、 そ の後 、 大 幅 に 増 加 し た と いう 徴 候 は な 宙 開発 計 画i を 圧 迫 す る程 、 大 き な規 模 でな か った。 ま た 対 源 に対す る 他 の要 請 項 目- 消 費 及 び 投 資 支 出 、 軍 事 支 出 、 宇 年 ま で、 GN P のC ・五 パ !セ ン ト にも 達 し な い 数 字 で、 資 済 に資 源 の純 流 出 を 強 い るも の で な いと述 べ て い る。 ハ り た し か に、 過 去 に お い て、 ソビ エト の対 外援 助 額 の国 民 所 に対 得 し 占 め る 割 合 は 、 私 自 身 の研 究 に よ. れ ぽ 、 一九 五 八 第5表 ソ ビエ ト貿 易 の成長 と輸 出、 輸入 性 向 、 済 に及 ぼ す衝 撃 は、 そ の実 情 が 依 然 秘 密 のヴ ェー ル に つ つ まれ て お る た め 、 そ れ を 適 確 に把 握 す る こと が 、 き わ め て困 難 であ る。 J ・ゴ !デ ア の推 計 に よる と 、 ﹁ 一九 五 〇 年 代 の初 期 にあ って は ソビ エト の 国 民所 得 の 一五 乃 至 二 五 パ ! セ ント を 吸 収 し、 一九 五 六年 以 後 は八 乃 至 一五 パ ー セ ン ト を吸 収 し つ つあ る ﹂ と のべ 、 ま た ﹁ 一九 六 〇 年 の GN P に対 す ( 3) る国 防 要 請 は だ い た い 一〇 パ ー セ ント の線 に あ る と 思 う ﹂ と のべ て い るが 参 考 にな る であ ろう 。 こ の軍 事 支 出 に つ い て は、 キ ャ ムベ ル教 授 は、 先 の 論文 の中 で、 近 代兵 器 体 系 の費 用 が 予 想 さ れ た以 上 に成 長 への重 圧 と な って い る こと を述 べて い るが 、 これ は、 核 兵 器 を 中 心 とす る新 し い兵 器 体 系 が 、 通 常 兵 器体 系 と こと な って、 平 時 の生 産 財 生 産 から の転 換 の困 難 をも た ら し、 国 民 経 済 に大 き な 負 担 と な り つ つあ る こと を裏 書 き す る も の であ る。 ま た 軍 事 支 出 の経 済 成 長 に 及 ぼ す 効 果 と 関 連 し、 宇 宙 開 発 に要 す る 費 用 負 担 も 、 将 来 一層 国 民 経 済 に対 す る 重 圧 と な ってく る も のと 考 え ら れ る。 以 上 、・資 源 配 分 に対 す る 消 費 、 投 資 、 対 外 援 助 、軍 事 支 出 、宇 宙 開 発 計 画 が 経 済 成 長 に与 え る 衝 撃 に つい て考 察 し た。 これ ら 資 源 配 分 に関 し、 競 合 関係 にあ る各 項 目 の要 請 を 完 全 に み たす こと は、 い か に富 め る 国 の経 済 と い えど も 不 可 能 であ る 。 ソビ エト経 済 も 勿 論 そ の例 外 で は な い。 し た が って、 こ の資 源 配 分 の問 題 を 解 決 す る た め に、 資 源 配 分 の優 先 順 位 を 合 理 的 に解 決 し、 更 に、 各 項 目 に与 え た資 源 の下 に、 資 源 を最 適 に利 用 す る経 済 的 、 合 理 釣 な 方 法 を見 出 さ なく て は な ら な い。 し か し な が ら 、 従 来 中 央 集 権 的 な ソビ エト経 済 の下 で は 、 資 源 配 分 の適 正 な方 法、 資 源 の合 理 的 利 用 の 経済 計 算 の方 法 が 欠 け て お り 、 き わ め て恣 意 的 な 判 断 に委 ね ら れ てお り 、 客観 的 、 合 理 的 に こ の問 題 を解 決 す る方 法 を 入 れ る 余 地 が 乏 し か った。 し か し、 最 近 に到 って、 先 に のべ た 資 源 配 分 の要 請 項 目 が 経 済 に ます ます 重 大 な費 用 負 担 と な って か か ってき て お り、 合 理 的 な 経 済 計 算 の方 法 の欠 除 に よ る、 資 源 の誤 った 配 分 、.適 正 でな い利 用 によ る 浪 費 が 深 刻 に な る に つれ 、 適 正 な資 源 配 分 、 そ の合 理 的 使 用 の方 法 を 樹 立 す る 必要 が焦 眉 の急 と な る に到 った。 これ に つい て、 リ ニア ー ・プ ログ ラ ム の創 案 者 であ る レオ ニッド ・カ ント ロヴ イ ッチ は、 彼 の著 書 の中 で、 この 間 の事情 を 次 の よう に 社会主義経済 の成長と資源配 分 二七 社 会主義経済の成長と資源配分 ﹁ 二八 語 って い る。 ﹁も っぱ ら 突 貫 作 業 一点 張 ゆ の 無 計 画 によ る生 産 量 の 工 場 損 失 は か って 可能 産 出 量 の 約 二 十 五 パ ー セ ント に お よ ぶ と評 価 さ れ た 。 より 完 全 な計 画技 術 と 経 済 計 寡 方 法 を適 用 す る結 果 と し て 上記 の損 失 の全 体 の除 去 によ り 、 生 産 の全 段階 にわ た る現 在 あ る だ け の生 産 能 力 の最 適 使 用 に拠 って 短 期 間 に三 十﹂ 五 十 パ ー セ ント も の最 終 生 産 物 (国民所 得 ) の産 出 を 増 大 す る こと が 可 能 であ ろう 。 そ の よう な 方 法 論 を 研 究 し、 導 入す る 問題 が非 常 に重 要 で、 焦 眉 の急 を要 ハ る す る の は、 こ の理 由 に よ る﹂ と。 経 済 的 に合 理 的 な 計 算 技 術 ハ 経済 計 算 方 法 を欠 く結 果 と し て、 そ れ が 資 源 の誤 った配 分 と 利 用 に み ち びき 、 ひ い て経 済 成 長 を 阻 害 す る 重 大 な要 因 と な って い る こ と はあ き ら か であ る。 合 理 的 な計 算 技 術 、経 済 計 算 の欠 除 が 、ど の よう に、 資 源 の誤 った 配 分 と利 用 に み ち び く かを 、 上 記 、 カ ン ト ロヴ イ ッチ は、 そ の著 書 の中 で、 種 々 の 場合 と 異 な る条 件 の下 で の事 情 を 詳 細 に説 明 し て いを が、 こ こ で はそ の内 容 に 言及 す る に は紙 幅 が 許 さ れ な い の で、 そ の点 を 指 摘 す る にと ど め. る。, 二 直接的資 源配分と価格体系 最 近 の ソビ エト経 済 の成 長 率 の鈍 化 傾 向 は、 本質 的 に は合 理的 な 計 算 技 術 と 経 済計 算 方 法 の欠 除 を 原 因 とす る資 源 の 誤 った 配分 に依 って い る こ と を さき に指 摘 し た。 勿 論 、 気 候 の不 順 に よ る 農 業 の不 振 が 、 結 果 と し て、 経 済 成 長 の鈍 化 ・を も た ら し た こと は否 定 でき な い に し ても 、 そ れ は本 質 的 な 原 因 で は な い。 先 にみ た よう に、 工 業 部 門 にも 、 成 長 率 の . 鈍 化傾 向 は 歴 然 と み ら わ れ て お り、 ま た ソビ. エト農 業 にか ぎ ら ず 、 東 欧 共 産 国諸 国 の農 業 の場 合 を ふく め て 、 労 働 、 技 術 の条 件 に つ い て等 し け れ ば、 農 業 が 私 有 私 営 形 態 か ら 、 国有 集 団 農 場 形 態 に移 行 す る こと に よ って、 農 業生 産力 が 低 下 す る こと は、 一般 的 な 現 象 の よう であ る。 例 え ば、 ポ ーラ ンド の場 合 に つ いて いえ ば 、 一九 四 九 年 か ら 一九 五 五 年 の 六 カ年 計 画 に、 農 業集 団 化 政策 の強 行 は 、農 業生 産 を 低 下 さ せ 、そ れ が 工 業投 資 を抑 制 す る 結 果 を招 い て い る。そ の結 果 、 集 団 化 政 策 の中 止、 農 産物 の低 価 格 に よ る強 制 調達 の廃 止 、 農 地 の私 有 私 営 の容 認 と共 に、 農 業 生 産 力 は この 期 間 回 復 らり に向 か って い る。 ソビ エト農 業 のみ な らず 、 東 欧 共 産 圏 農 業 の不 振 、 停 滞 は、 集 団 農 場 政 策 、 さ ら に従 来 の農 産 物 価 格 の 不 当 な 低 さ 、 農 産 物 強 制 調達 、 農 業 投資 の工 業 投 資 に比 べ て相 対的 な 低 さ に、 よ って いる と 考 え ら れ る。 ソビ エト で は、 最 近 いく つか の経 済 上 の改 革 が 提 案 さ れ 、 実 験 さ れ つ つあ る。 上 記 、 カ ント ロヴ ィ ッチ、 ノポジ ロフ によ る り ニ,ヤー ・プ ログ ラ ミ ング の方 法 に基 づ く 、 最 適 計 画 編 成 の経済 計 算 方 法 、 投 資 基 準 論 、 リ ー ベ ル マ ン、 ト ラ ベ ズ ニ コ フ、ネ ム チ ノ フ の利 潤 導 入論 が これ で あ る。 これ らが 果 し て 、現 在 の中 央 集 権 的 計 画 経 済 体 制 を 維 持 し た ま ま で、 実 現 可 能 な のか ど う か、 そ れ ら 経 済 の効 率 化 の た め の諸 提 案 が 実 際 に導 入 さ れ た 場 合 、 現 在 の経 済 体 制 は い か な る変 容 を 象 る のか、 よ り 分 権 化 さ れ た ﹁市 場 社 会 主 義 ﹂ ( ζp。芽卑 ω。99一 尻ヨ) と よ ぼ れ る 体 制 に移 行 す る のか、 現 段階 で は、 そ の帰 趨 は さ だ か で はな い。 と こ ろ で、 市 場 経済 にお い て は、 資 源 配 分 の機 能 を 果 す のは 、 価 格 体系 で あ り 、 価 格 体 系 にも とづ き 、 ﹁均 等 利 益 の ヘ ア 法 則 ﹂ に よ って資 源 の配 分 が 可 能 と な る 。 他 方 、 ソビ エト経 済 のよ う な 中 央 集 権 的 計 画 経 済 に お い て は、 原 則 と し て、 上 か ら の命 令 によ って 、 物 動 計 画 を 中 心 と し て直 接 的 に資 源 の配 分 が 行 な わ れ る 。勿 論 、 ソビ エト 経済 にも 価 格 体 系 は存 き す る が 、 現 行 の価 格 体系 が 十 分 に資 源 配 分 の機 能 を果 し て いる と は言 いが た い。 経 済 の発 展 に つれ て、 経 済 構 造 が 複 雑 化 し、. 従 来 の中 央 集 権 的 意 思 決 定 機 構 、 資 源 配 分 の機 能 を 欠 いた 価 格 体 系 で は 、 経済 の諸 変 化 に適 応 し て、 適 時 に、 計 画当 事 者 の意 思 を 下 部 機 構 に伝 達 す る こと は、 お よそ 不 可 能 であ る。 し たが って、 中 央 集 権 的計 画 経 済 体 制 に伴 う こ の 欠 陥 を 除 却 す る た め に、 フ ルシ チ ョウ 政 権 樹 立 以 来 、 ソ ビ 工手 経 済 は、 経 済 活 動 の底 辺 にあ る 企 業 の意 思 決 定 を 重 んず 社 会主義経済 の成長と資源配分 二九 ﹁社会主義経済 の成長と資源 配分 - 三〇 る地 方分 権 化 の方 向 にす す み つ つあ った。 し か し 、 価 格 体 系 は依 然、 財 の稀 少 性 を反 映 し て形 成 さ れ て て お ら ず、 き わ め て恣 意 的 に作 成 さ れ て お り 、資 源 配 分 機 能 を も って い る と は い いが た い。 従 って 転こ の よう な価 格 体 系 にも とづ いて、 利 潤 原 則 によ り 、 投 資 基 準 を も う け ても 、 期 待 す る 程 の効 果 を え ら れ る かど う か 疑 わ し い。 最 近、 ソ連 の数 学 老 レオ ニッド ・カ ン ト ロヴ イ ッ チが提 案 し た、 リ ー ニヤ ・プ ログ ラ ミ ング の手 法 によ る 最 適 経 済 計 . 画 編 成 の方 法 、 そ し てそ の中 心概 念 を な す ﹁客 観 評 価 ﹂ は、 ソビ エト の当 面 し て い る資 源 配 分 の問 題 を 現 行 の価 格 体 系 が 適 正 に解 決 しえ ず 、 莫 大 な浪 費 を 生 ず る こと に着 眼 し、 そ の宿 弊 を 一掃 す る た め の提 案 であ る。 そ の中 心 概 念 であ る ﹁客 観 評 価 ﹂ は、 リ ニャ i ・プ ログ ラ ミ ング に おけ る-﹁潜 在 価 格 ﹂ (ω冨住。≦ ℃噌凶 8)と よ ぼ れ る概 念 と 同 一で あ り 、 企 業 ( 9) が 、 稀 小 な 投 入要 素 に、 企 業 に帰 属 す る価 値 を 支払 った 後 に は、 企 業 利 潤 が 零 と な る よう な価 格 で あ り 、 ﹁限 界 生 産 物 ﹂ ( 一0) あ る い は ﹁機 会 費 用 ﹂ と よ ぶ も. の の測 定 値 と考 え ら れ る も の で、 マ ル ク ス経 済 学 で普 通 考 え ら れ て い る ﹁労 働 価値 ﹂ と は異 質 のも の で あ る。 これ が ソビ エト の多 く の経 済 学者 か ら 烈 し い批 難 を あ び る 原 因 と な った。 し か し、 そ れ に も 拘 ら ず、.カ ソ ト ロヴ イ ッ チ の提 案 は、 ソビ エト経 済 学 界 に着 実 に根 を お ろ し つ つあ る のが 現 状 であ る。 資 源 配 分 の適 正 な方 法 を 論 理 的 に徹 底 し て 追 求 し てゆ け ぽ、 カ ソ ト ロヴ イ ッ チ提 案 の よう な 方 法 に帰 せざ る を え な い の で あ る 。 カ ソ ト ロヴ イ ッチ提 案 に つ い て は 、す で に拙 訳 が 刊 行 さ れ 、そ れ を め ぐ る ソビ エト 経済 学 界 に おけ る 論 争 に つ い ても 、 ロリ 別 の論 文 で紹 介 し た の で、こ こ で は、 あ ら た め て 論 じ な い。 た だ、 カ ント ロヴ イ ッチ提 案 の影 響 は、 ア カデ 、 ミック な学 にり 界 のみ な ら ず 、 計 画 編 成 担 当 の政 府 部 局 にま でそ の影 響 が 及 び つ つあ る こと は、 価 格 形 成 の将 来 の方 向 を 暗 示 す る も の と し て、 注 目 し て い い。 三 結 芸∠L 面嗣 ソビ エト経 済 の最 近 の成 長率 鈍 化 の傾 向 に関 す る キ ャ ムベ 川教 授 の展 開 にそ って 、 これ に コメ ン トを 与 え な が ら 、 成 長率 鈍 化 が 現 行 の資 源 配 分 の欠 陥 に帰 せ ら れ る こ と、 更 にそ の欠 陥 は、 一つは中 央 集 権 的 計 画 経 済 体 制 に、 他 は 、 現 行 の財 の稀 少 性 を 反 映 しな い価 格 体 系 に在 る こと を 指 摘 し た。 勿 論 こ の両 者 は、 密 接 な 関 係 を も って お り 、 中 央 集 権 的 計 画経 済 体 制 の下 で、 物 動 計 画 を 中 心 と し て適 正 な資 源 配 分 が 可 能 であ れ ぽ 、 資 源 配 分 機 能 を 十 分 も た な い現 行 の価 格 体 系 で事 足 り る 訳 であ り 、 む し ろ、 そ の方 が 計 画 当 事 者 と し て意 のま ま に経 済 を 動 かす こと が でき 望 ま し い ので あ る。 フ ル シ チ ョウ 政 権 の下 で は、 国 民 経 済 会 議 (O。臣 巷×9 0出×) が 一九 五 七年 に創 設 さ れ 、 経 済 体 制 は 、 過 度 の中 央 集 権 化 か ら 地方 分 権 化 にあ ら た め ら れ た。 し か し価 格 体 系 に つ いて は、 資 源 配 分 機 能 を も つよ う に、 抜 本 的 な 改 革 が な さ れ た訳 で は な く 、 従 来 の価 格 体 系 が ほ と んど 変 る こ と な く 維 持 さ れ た。 し か し、 コスイ ギ ン、 ブ レジ ネ フ現 政 権 の下 で は、 本 年 九 月 二 十 八 日 タ ス通 信 によ れ ば 、 コ スイ ギ ン首 相 は、 今 迄 実 験 段階 にあ った リ ーベ ル マ ン等 の利 潤 方 式 の 正式 採 用 を 提 案 し て いる。 そ し て、 経 済 的 刺 戟 のた め の新 方 式 へ転 換 し て ゆ く た め に は、 価 格 形 成 方 法 の改 善 が 必 要 だ と し て、 新 価 格 を 一九 六 七- 六 八年 に導 入 す る こ と を示 し て いる 。 他 方 、 国 民 経 済 会 議 を 廃 止 し て、 ふ た たび 、 工 業 関 係 の ( 13) 各 省 を 設 け 、権 力 の集 中 化 方 向 にす す む こと を 示 唆 し て いる。 現 在 ま で の情 報 で 知 る かぎ り で は 、利 潤 方式 の採 用、 新 価 -格 体系 の形 式 と い い、 む し ろ権 力 の分 散 を 示 唆 し て いる よ う で あ る 。 こ の点 か ら推 察 す れ ぽ 、 現 段階 で は経 済 体 制 も 価 格 体 系 も 共 に分 権 化 す る 方 向 で はな く 、前 者 を 集 権 化 し 、後 者 を 分 権 化 す る方 向 にす す み つつあ る よ う に思 わ れ る。 こ こ さ て 、 さ ま の キ ャ ンベ ル論 文 は、 結 論 的 に次 の よう に述 べ て いる ﹁成 長 過 程 を慣 例 化 し、 資 源 を 動 か し、 そ れ を蓄 積 に ﹁権 力 機 構 の強 化 と経 済 的 効 率 化 ﹂ の二 律 背 反 に対 す る現 政 校 の妥 協 策 を み る の であ る。 す る た め 配 分 す る能 力 を も った命 令 経済 (O。ヨ碧 自 国8ぎ ヨ曳)は 、成 長 の問 題 が変 化 す る に つれ 、 徐 々 に効 率 的 で なく な り つ つあ る 。 ソビ エト の成 長機 構 は、 そ れが 最 初 確 立 さ れ て以 来 、 そ の 基 本 的 性 格 を変 え て いな い。 下 部 機 関 、 職 務 の 社会主義経済 の成長と資源配 分 、 一 三 社会主義経済 の成長と資源配分 三二 配 置 や 責 任 制 等 々 に変 化 を 伴 う ほ と ん ど 連 続 的 と いう べき 再 編 成 が 生 じ た。 し か し 基 本 的 な 体 制 上 の 原 則一 意 思 決 定 の 集 権 制 、 水 平 的 よ り も 垂 直 的 な伝 達 、 価 値 指 標 よ りも 物 量指 標 にも と つ く 管 理 一 は変 ら な か った。 し か ← な が ら 、 成 長 を も た ら し た成 功 が 、 環 境 を変 え た 。 恐 竜 に おけ る と 同様 、 あ る環 境 に適 応 す る適 応 性 が 、 新 し い環 境 で は ハンデ キ ャ ップ と な る﹂ と 。 こ こで 、 キ ャ ムベ ル教 授 は 、 第 一に過 去 、 な ん回 も の 管 理機 構 上 の改 革 にも 拘 らず 、 基 本 的 な 性 格 は変 って いな いと いう こと 、第 二 に、 成 長 を 可能 に し た中 央 集 権 的 計 画 経 済 体 制 が 、 成 長 に よ って変 容 し た 環 境 に、 適 応 し 、 兄な く な った こと を指 摘 し て い る の であ る。 今 度 の コス イギ ンの 経済 改 革 の報 告 は 、従 来 の ﹁価 値 指 標 よ り も物 量 的 指 標 にも とつ く 管 理﹂ か ら ﹁物 量指 標 よ り も 価値 指 標 にも とつ く 管 理 ﹂ の方 向 へ向 いて いる よ う であ るが 、 国 民 経 済 会 議 の廃 止 、 工 業 各 省 設 置 の提 案 は、 ﹁意 思 決 定 の集 権 化 、 水 平 的 よ り も 垂 直 的 な 伝達 ﹂ の強 化 の方 向 に動 き つ つあ る よ う にみ え る 。 過 去 にお いてく り か え さ れ た管 理 機 構 の改 革 と同 様 、 今 回 の改 革 も ﹁権 力機 構 の強 化 と 経 済 の効 率 化 ﹂﹂ の 二律 背 反 の宿 命 を 担 って い る 。そ し て そ れ を、 ヵ●≦ ●O鋤§ ℃げ①F 、 . 日言 句oω学≦ 碧 済 力 の比較 ﹂ ω。幕 け 国 。p お 罐 も ・挙 や § 讐㍗ 嵩 9 6罐 ・ ﹁社 会 主 義 経 済 と 資 源 配 分 ﹂ d葺 巴 。。翼 ・・葛 ①・。・ 邦 訳 ﹁続 経 ωε 巳 Φω・冒 ζ 。・ ・ 。h 幕 切o畠 噂8 切. .目Φ㎝O 拙 訳 (上 ) J ・P ・ ハル ト ﹁ソ 連 の資 源 配 分 政 策 に お け る 戦 略 的 選 択 ﹂ 十 八 頂 一 二 十 七 頁 国§ 巳 。 o§ 目 窪 Φ・ o。曇 0 8 § ゴ 。h けゴ① ω。く凶 9 国8 き ヨ 団、 . ℃ω。く§ ・い か に具 体 的 に委 協 調 整 し てゆ く か が ソビ エト の計 画 当 事 者 の解 決 し な け れ ぽ な ら な い当 面 す る最 大 の課 題 で あ る。 (1 ) (2 ) .拙 著 ﹁ソ 連 経 済 の 成 長 と 低 開 発 国 援 助 ﹂ 八 十 七 頁 (3 ) 、 、 9 § 邑 8 。h ω。幕 島 8 ぎ 慧 。℃。幕 ・遷 し 。三 国8 ぎ ヨ 一Φω 。h 幕 (4 ) 自.中 臣 出目8 0昌 メ 、 . O円o口o匿 常 o雷 陣 ℃四〇謂o,目 雷 国畠 西日 oりo 国o目o暮 ωo切9国自 三 頁 (5 ) ψ 箋 ・崔 器 ℃日 富 ● r . (6) ζ﹄ 曾 藁 ・旦 O。岩 国§ ぞ 国8 ぎ 葺 。 ω透 § ωし o①㎝ 署 .刈㊤⊥ 5 ゆ・章 。言 § 。ヨ凶 。↓ぎ q 卿 。冨 ・誉 器 ≧ 巴再 話 憂 ・ヒ ℃8 σ QB ヨ ヨ ぎ σ Q 昏 国ooコoヨ 一 〇 ﹀づ巴 団ωδ ① ・。 噂。喜 る ・。α ・δ ∋喜 ぎ ωo<一 9 国oo8 ヨ ざ ω 碧 o琶 ロ 区 署 9 0<一 } . ω 勺﹃o℃σ結 す α・も ℃・ ㊤§ ' 著 者 は・ ﹁双 幻①≦ ①箋 Zρ 切 及 び 拙 稿 、 ﹁カ ン ト ロ 邦 訳 ﹁線 型 計 画 と 経 済 分 析 ﹂ 一七 、 三 八 頁 、 ま § (7 ) 國・bdo巳 a 昌σ Q'国oo昌oヨ 幽 o > づ9ζ 忽 ω 、Oゴ四讐 興 ρ 日げ¢ 勺﹃ぎ o甘 ♂ oh 国 ρ二巴 ︾ α<£o暮 鋤σ q但 bO﹂ 紹 1 お け (8 ) ] ≦ .bdo﹃昌ω一①ぎ "ま 罷 りoび鋤"8 ﹃ δ 螂↓げo ωo≦ ①け 勺ユOo ω賓ω8 ヨ ● (9) ≦ 弘 (10 ) Uo蹴 ヨ ①P oっ鋤言 口①一8 P ωo一 〇≦鰯いぎ ①緯 対 計 画 ﹂ の解 説 で ωプ巴 o≦ ℃二 〇〇の概 念 を 明 快 に 説 明 し て い る 。 (11 ) 鴫●嶋 。。り三 〇P . . ↓汀 Φ① O二目 ①暮 た 届・し﹂・0廿Φ昌Φ﹁団 卿 勺・O・Ω 碧 ぎ ぎ 仲①﹃・ぎ α鐸ω窪 気 団ooコoヨ 甘 ◎。讐お ㎝P コ y置 刈i コ O 、 , 三三 (把 ) 目旨m目o題・8 ×8 轟 o冒 0 20・ρ 一〇罐 嚇噂P 8 1 ω◎。 で 全 ソ ・ゴ スプ ラ ン の価 格 局 内 の 要 職 に あ 6 A ・ コー ミ ソ は ﹁客 観 評 価 ﹂ を 価 格 形 ヴ ィ ッ チ 提 案 と ソ ビ エト 経 済 に お け る 三 つ の潮 流 ﹂ 共 産 圏 問 題 、 第 九 巻 第 九 号 、 (13 ) 朝 日 新 聞 、 昭 和 四 十 年 九 月 二 十 九 日. 成 の た め の実 際 的 通 用 の 見 地 か ら 論 じ て い る 。 ,. 社会主義経済 の成長と資源配分
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