証券化リサーチノート 第 131 号 2016 年 5 月 18 日 連絡先: 調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035 住宅金融支援機構 MBS 月次第 109 回債 発行額は 2303 億円―前回に続き 2000 億円を超える大型起債 住宅金融支援機構 MBS 月次第 109 回債の発行額は 2303 億円と前回(108 回債)に続き、 2000 億円を超える大型起債となる。裏付資産の 86%は 2016 年 4 月に実行された住宅ローン であるが、3 月実行分が 14%含まれている。このことから、前回(108 回)債の裏付資産として住 宅ローン債権を信託設定する際に、3 月実行分の一部が繰り延べられていたことが明らかである。 また、申込受理年月としては、55%が 2016 年 1 月以前であり、2016 年 1 月 29 日の申込分を もって打ち切った【フラット 35】S の金利引き下げ幅拡充(当初一定期間 0.3%引き下げ→0.6% 引き下げ)の対象になるものが依然として多く含まれると推定できる。いっぽうで、金利引き下げ 幅拡充措置終了後の受付分も多い。ここ数か月の国債流通利回りの低下(10 年ゾーンではマイ ナス圏で安定化)を受けて、【フラット 35】の貸出金利が低下したことから、金利引き下げ幅拡充 措置終了後も全期間固定金利型の住宅ローンである【フラット 35】は強い需要を集めていること が窺い知れる。 裏付資産の加重平均金利(WAC)は 0.86%と史上最低水準に近く、最終加重平均最終金利 は 1.22%と史上最低水準を更新した。裏付資産の属性面では、当初平均 LTV が 90.6%と、 2010 年 3 月発行の第 34 回債の裏付資産以来、約 6 年ぶりに 90%を超えた。 弊社予想期限前返済率は、2016 年 5 月 10 日(評価日)基準で、PSJ 8.42%、WAL は 8.63 年となった。評価日時点での流通市場における 108 回債のイールドカーブスプレッド(YCS) 1を基 準とすると、クーポン予測値は 0.345%(予測値①)、同 IRR 2を基準とすると、0.350%(予測値 ②)、108 回債条件決定時の YCS 3を基準とすると 0.339%(予測値③)となる。予測値に対する 弊社 OAS は、それぞれ、35.4 bp、35.9 bp、34.8 bp となる。今回債も、前回債同様、新発 10 年国債の流通利回りが恒常的にマイナス圏で推移している環境下での条件決定となろう。 1日本証券業協会に設置されている PSJ 予測統計値運営協議会による用法に準ずる。 2日本証券業協会による PSJ 平均値、日本証券業協会による売買参考統計値を用いて、PSJ キャッ シュフローモデルにより弊社が算出した IRR(内部収益率)。 3 PSJ 予測統計値平均値、価格 100 円を前提として PSJ キャッシュフローモデルにより弊社が算 出した YCS。 1 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 1 裏付けとなる信託債権概要 第 109 回月次債 第 108 回月次債 286,995,760,000 当初融資額総額 27,182,777 当初融資額平均 286,992,064,265 融資残高合計 27,182,427 融資残高平均 310,199,560,000 円 28,416,962 円 310,171,934,111 円 28,414,431 円 10,916 人 10,916 債権 10,558 融資件数(債務者ベース) 10,558 融資債権数(金利別債権ベース) 29.7 平均当初融資期間 29.7 平均残存期間 0 平均経過期間 21.71 平均当初返済負担率 6,431,569 平均年収(申込時) 0.88 平均金利 6,590,732 円 0.83 % 40.4 歳 0.82 % 31.4 年 31.4 年 0 加重平均経過期間 69 平均経過期間(借換) 87.37 平均当初 LTV(借換) 19.24 平均当初返済負担率(借換) 64 加重平均経過期間(借換) ヶ月 % 30.7 加重平均当初融資期間 年 22.19 30.7 加重平均残存年数 30.5 % 0.86 加重平均金利 年 88.22 40.8 債務者平均年齢(申込時) 30.5 0 90.58 平均当初融資率 (単位) 0 ヶ月 70 ヶ月 86.46 % 19.69 % 65 2 ヶ月 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 図表 2 予測クーポン 新生モ デルC F( 新生モ デルPSJ予測値) 8.42% 8.63 PSJ予測値 W AL 予測クーポン 予測値① 評価日のセカンダリーマー ケット水準を基準(YCS) 0.345% 予測値② 評価日のセカンダリーマー ケット水準を基準(IRR) 0.350% 予測値③ 前回債の条件決定を基準 (YCS) 0.339% 国債利回り ( 第3 4 2 回1 0 年利 付国債) -0.100% PS Jモ デルC F( PSJ予測統計値平 均値) 8.88% 8.42 ローンチスプレッ ド Z- Spr e ad OAS YCS 45 35.4 35.4 37.6 45 35.9 35.9 38.1 44 34.8 34.8 37.0 評価日(5/10)のセカンダリーマーケットでの108回債のYCS水準 評価日(5/10)のセカンダリーマーケットでの108回債のIRR水準 108回債条件決定日の108回債のYCS水準 出所: 新生証券 2 証券化リサーチノート 図表 3 ヒストリカル YCS (bp) 新生証券株式会社 調査部 JGB ベース 日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均 出所: 新生証券 3 図表 4 図表 4 ヒストリカル IRR (%) 日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均 出所: 新生証券 3 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 5 発行額推移 6000 5000 4000 億円 3000 2000 1000 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 発行月 2009年度(機構月次:23~34回債) 2010年度(機構月次:35~46回債) 2011年度(機構月次:47回債~58回債) 2012年度(機構月次:59回債~70回債) 2013年度(機構月次:71回債~82回債) 2014度(機構月次:83回債~94回債) 2015度(機構月次:95回債~106回債) 2016度(機構月次:107回債~) 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 4 図表 6 信用補完率および信用補完率に影響する主な属性 100% 35% 90% 30% 80% 25% 70% 60% 20% 50% 15% 40% 30% 10% 20% 5% 10% 0% 0% 信用補完率(右軸) 平均当初融資率 融資率90%超の割合 返済負担率30%超(右軸) 平均当初返済負担率(右軸) 年収300万円以下の割合(右軸) 公務員・会社員以外の比率(右軸) 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 4 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 7 信用補完率と格付会社が想定するデフォルト率等 40% 0.8% 35% 0.7% 0.6% 30% 0.5% 25% 0.4% 20% 0.3% 15% 0.2% 10% 0.1% 5% 0.0% 0% -0.1% 機構月次債 回号 信用補完率(左軸) S&P想定累積貸倒率 R%Iストレスシナリオ累積デフォルト率 エクセススプレッド目安(右軸) = [加重平均金利:当初] - [クーポン] 出所: 格付会社(R&I および S&P)公表情報を基に新生証券作成 5 図表 8 融資率(LTV) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~70% ~75% ~80% ~85% ~90% ~95% ~100% 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 5 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 9 返済負担率(DTI) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~5% ~10% ~15% ~20% ~25% ~30% over 30% 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 6 図表 10 平均当初 LTV および平均当初返済負担率(DTI) 23.5% 95% 23.0% 90% 22.5% 85% 22.0% 80% 21.5% 75% 21.0% 70% 20.5% 平均当初LTV 平均当初返済負担率 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 6 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 11 年収分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 ~3M JPYen ~5M JPYen ~10M JPYen over 10M JPYen 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 7 図表 12 地域分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 北海道 東北 北関東 南関東 東京 東海 近畿 四国 中国 九州 南九州 北陸 出所:住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 7 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 図表 13 融資種別分布 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 機構月次債 回号 マイホーム マンション 建売 都市居住再生 中古住宅 借換 マイホーム=マイホーム + 買取証券化支援建設 / マンション=マンション+優良分譲等+買取証券化支援購入(共同建) / 建売=建売住宅 + 買取証券化支援購入(共同 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 8 図表 14 裏付債権の金利(WAC)と MBS クーポン 140 2.3% 120 2.1% 1.9% 100 1.7% 80 1.5% 60 1.3% 40 1.1% 20 0.9% 0 0.7% -20 0.5% 機構月次債 回号 MBS参照国債金利(bps) MBS ローンチスプレッド(bps) 加重平均金利(右軸) 加重平均最終金利(右軸) 出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成 8 証券化リサーチノート 新生証券株式会社 調査部 本稿はストラクチャードファイナンス部・玉城晃子よる協力を得て作成した。 (調査部長 江川 由紀雄) 9 名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業 設立年月 :平成 12 年 12 月 本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社 はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、 特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取 引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及 び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその 関連会社は、本書で取り扱われている有価証券またはその派生証券を自己勘定で保有し、または自己勘定で取引する ことがあります。弊社は、法律で許容される範囲において、本書の発表前に、そこに含まれる情報に基づいて取引を行う ことがあります。弊社は本書の内容に依拠して読者が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。本書は 限られた読者のために提供されたものであり、弊社の書面による了解なしに複製することはできません。 信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場 合があります。 9 著作権表示 © 2016 Shinsei Securities Co., Ltd. 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