証券化リサーチノート 第 133 号

証券化リサーチノート 第 133 号
2016 年 7 月 20 日
連絡先: 調査部長 江川 由紀雄
[email protected]
(03) 6880-6035
住宅金融支援機構 MBS 月次第 111 回債
4か月連続の 2000 億円超える大型起債
住宅金融支援機構 MBS 月次第 111 回債の発行額は 2029 億円と 108 回債以降4回連続の
2000 億円を超える大型起債となる。裏付資産の 100%が 2016 年 6 月に実行された住宅ロー
ンである。申込受理年月としては、34%が 2016 年 1 月以前であり、2016 年 1 月 29 日の申込
分をもって打ち切った【フラット 35】S の金利引き下げ幅拡充(当初一定期間 0.3%引き下げ→
0.6%引き下げ)の対象になるものが依然として多く含まれると推定できる。打ち切り後も【フラット
35】S の当初一定期間の金利引き下げ措置は、0.3%幅で続いている。借り換えローンが多く含
まれる(裏付資産の 39.9%)ことも特徴となっている。平均 LTV が 92.6%と高いにもかかわらず、
当初返済負担率は 21.3%と低めなのは、借り換えローンが多く含まれる影響と思われる。
裏付資産の加重平均金利(WAC)は 0.86%、最終加重平均最終金利は 1.12%となっている。
市場関係者の間でプライシングの際に参考にされる PSJ 予測統計値平均値(主幹事候補 11 社
による予測値の平均)が 9.16%となり、2009 年 3 月発行の機構 MBS 月次 23 回債以降初めて
9%を上回る水準となった。市場関係者が高めの償還速度を予想していた 2009 年を振り返ると、
【フラット 35】S の当初金利引き下げ幅が 0.3%と小さいうえ、金利引き下げ対象も全体の 40%程
度であり、当初から高めの金利が適用されるローンが多かった(MBS 23 回債の裏付資産につい
ては、当初 WAC は 2.97%)。今般 PSJ 予測統計値が上昇した要因としては、円金利のイールド
カーブのフラット化に伴うフォワード金利の低下が影響しているのであろう。
弊社予想期限前返済率は、2016 年 7 月 6 日(評価日)基準で、PSJ 9.16%、WAL は 8.24 年
となった。評価日時点での流通市場における 110 回債のイールドカーブスプレッド(YCS) 1を基準
とすると、クーポン予測値は 0.15%(予測値①)、同 IRR 2を基準とすると、0.147%(予測値②)、
110 回債条件決定時の YCS 3を基準とすると 0.142%(予測値③)となる。予測値に対する弊社
OAS は、それぞれ、34.4 bp、34.1 bp、33.6 bp となる。前回債は初の 0.2%台の利率となった
が、いよいよ 0.1%台に突入する可能性がある。
1日本証券業協会に設置されている
PSJ 予測統計値運営協議会による用法に準ずる。
2日本証券業協会による PSJ 平均値、日本証券業協会による売買参考統計値を用いて、PSJ キャッ
シュフローモデルにより弊社が算出した IRR(内部収益率)。
3
PSJ 予測統計値平均値、価格 100 円を前提として PSJ キャッシュフローモデルにより弊社が算
出した YCS。
1
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 1 裏付けとなる信託債権概要
第 111 回月次債
第 110 回月次債
(単位)
当初融資額総額
255,692,460,000
282,327,440,000
円
当初融資額平均
26,235,631
26,687,536
円
融資残高合計
255,692,293,646
282,260,686,054
円
融資残高平均
26,235,614
26,681,226
円
融資件数(債務者ベース)
9,746
10,579
人
融資債権数(金利別債権ベース)
9,746
10,579
債権
平均当初融資期間
29.5
29.2
年
平均残存期間
29.5
29.2
年
平均経過期間
0
0
平均当初融資率
92.60
92.81
%
平均当初返済負担率
21.34
21.31
%
6,262,858
6,430,184
円
平均金利
0.88
0.85
%
債務者平均年齢(申込時)
40.8
40.8
歳
加重平均金利
0.86
0.84
%
加重平均残存年数
30.5
30.1
年
加重平均当初融資期間
30.5
30.1
年
0
0
ヶ月
平均経過期間(借換)
68
68
ヶ月
平均当初 LTV(借換)
91.21
90.74
%
平均当初返済負担率(借換)
19.10
19.32
%
64
64
平均年収(申込時)
加重平均経過期間
加重平均経過期間(借換)
ヶ月
2
ヶ月
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
図表 2 予測クーポン
新生モ デルC F( 新生モ デルPSJ予測値)
9.16%
8.24
PSJ予測値
W AL
予測クーポン
予測値① 評価日のセカンダリーマー
ケット水準を基準(YCS)
0.150%
予測値② 評価日のセカンダリーマー
ケット水準を基準(IRR)
0.147%
予測値③ 前回債の条件決定を基準
(YCS)
0.142%
国債利回り
( 第3 4 3 回1 0 年利
付国債)
-0.279%
PS Jモ デルC F( PSJ予測統計値平
均値)
9.16%
8.24
ローンチスプレッ ド
Z- Spr e ad
OAS
YCS
43
34.6
34.4
37.2
43
34.3
34.1
36.9
42
33.7
33.6
36.4
評価日(7/6)のセカンダリーマーケットでの110回債のYCS水準
評価日(7/6)のセカンダリーマーケットでの110回債のIRR水準
110回債条件決定日の110回債のYCS水準
出所: 新生証券
2
証券化リサーチノート
図表 3 ヒストリカル YCS (bp)
新生証券株式会社 調査部
JGB ベース
日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均
出所: 新生証券
3
図表 4 図表 4 ヒストリカル IRR (%)
日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均
出所: 新生証券
3
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 5 発行額推移
6000
5000
4000
億円
3000
2000
1000
0
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
発行月
2009年度(機構月次:23~34回債)
2010年度(機構月次:35~46回債)
2011年度(機構月次:47回債~58回債)
2012年度(機構月次:59回債~70回債)
2013年度(機構月次:71回債~82回債)
2014度(機構月次:83回債~94回債)
2015度(機構月次:95回債~106回債)
2016度(機構月次:107回債~)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
4
図表 6 信用補完率および信用補完率に影響する主な属性
100%
35%
90%
30%
80%
25%
70%
60%
20%
50%
15%
40%
30%
10%
20%
5%
10%
0%
0%
信用補完率(右軸)
平均当初融資率
融資率90%超の割合
返済負担率30%超(右軸)
平均当初返済負担率(右軸)
年収300万円以下の割合(右軸)
公務員・会社員以外の比率(右軸)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
4
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 7 信用補完率と格付会社が想定するデフォルト率等
40%
0.8%
35%
0.7%
0.6%
30%
0.5%
25%
0.4%
20%
0.3%
15%
0.2%
10%
0.1%
5%
0.0%
0%
-0.1%
機構月次債 回号
信用補完率(左軸)
S&P想定累積貸倒率
R%Iストレスシナリオ累積デフォルト率
エクセススプレッド目安(右軸) = [加重平均金利:当初] - [クーポン]
出所: 格付会社(R&I および S&P)公表情報を基に新生証券作成
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図表 8 融資率(LTV)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~70%
~75%
~80%
~85%
~90%
~95%
~100%
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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新生証券株式会社 調査部
図表 9 返済負担率(DTI)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~5%
~10%
~15%
~20%
~25%
~30%
over 30%
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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図表 10 平均当初 LTV および平均当初返済負担率(DTI)
95%
23.5%
23.0%
90%
22.5%
85%
22.0%
80%
21.5%
75%
21.0%
70%
20.5%
平均当初LTV
平均当初返済負担率
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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新生証券株式会社 調査部
図表 11 年収分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~3M JPYen
~5M JPYen
~10M JPYen
over 10M JPYen
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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図表 12 地域分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
北海道
東北
北関東
南関東
東京
東海
近畿
四国
中国
九州
南九州
北陸
出所:住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 13 融資種別分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
マイホーム
マンション
建売
都市居住再生
中古住宅
借換
マイホーム=マイホーム + 買取証券化支援建設 / マンション=マンション+優良分譲等+買取証券化支援購入(共同建) / 建売=建売住宅 + 買取証券化支援購入(共同
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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図表 14 裏付債権の金利(WAC)と MBS クーポン
140
2.3%
120
2.1%
100
1.9%
80
1.7%
60
1.5%
40
1.3%
20
1.1%
0
0.9%
-20
0.7%
-40
0.5%
機構月次債 回号
MBS参照国債金利(bps)
MBS ローンチスプレッド(bps)
加重平均金利(右軸)
加重平均最終金利(右軸)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
本稿はストラクチャードファイナンス部・玉城晃子よる協力を得て作成した。
(調査部長 江川 由紀雄)
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名称
:新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号
所在地
:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号
日本橋室町野村ビル
Tel : 03-6880-6000(代表)
加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
資本金
:87.5 億円
主な事業 :金融商品取引業
設立年月 :平成 12 年 12 月
本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社
はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである
ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、
特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取
引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について
は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及
び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその
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信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま
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合があります。
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