証券化リサーチノート(Vol.138)住宅金融支援機構MBS月

証券化リサーチノート 第 138 号
2016 年 11 月 15 日
連絡先: 調査部長 江川 由紀雄
[email protected]
(03) 6880-6035
住宅金融支援機構 MBS 月次第 115 回債
発行額は 1962 億円、8 か月ぶりに 2 千億円割れ
住宅金融支援機構 MBS 月次第 115 回債の発行額は 1962 億円に決定した。発行額としては
108 回債から 114 回債まで 7 回連続で 2 千億円を超えた水準に比較すれば小さく見えるが、こ
れでも、機構 MBS 月次債としては史上 16 番目の規模となる。裏付資産の 100%が 2016 年 10
月に貸出実行されたローンである。借換えローンが 29.0%を占めるが、占有率としてはこれまで
の最高値である 113 回債の裏付資産の 44.5%対比、大きく低下してきている。借換えローンの
占有率低下は、【フラット 35】の貸出金利水準にも影響を受けているものと思われる。最低値でみ
て、【フラット 35】の貸出金利は、21 年以上 35 年以下融資率 9 割以下の区分で、8 月は
0.900%であったものが、9 月に 1.020%、10 月に 1.060%へと、やや上昇した。機構 MBS の
裏付資産の当初 WAC にも上昇傾向が見られる。
【フラット 35】の貸出金利は、前月の機構 MBS の発行条件および新発 10 年国債の流通利回り
などを参考に決定されていると推測されるところ、8 月対比 10 月までの上昇は、10 年国債の利
回りの上昇が大きく影響しているものと思われる。もっとも、ここ数か月の【フラット 35】を含む住宅
ローン貸出金利の水準は、昨年までは見られなかった低水準で推移してきていることから、借り換
え動向については引き続き注視したい。
信用補完率は 20.8%と、114回債対比、0.6%低い水準となった。
弊社予想期限前返済率は、2016 年 11 月 7 日(評価日)基準で、PSJ 8.33%、WAL は 8.76
年となった。評価日時点での流通市場における 114 回債のイールドカーブスプレッド(YCS) 1を基
準とすると、クーポン予測値は 0.346%(予測値①)、同 IRR 2を基準とすると、0.341%(予測値
②)、114 回債条件決定時の YCS 3を基準とすると 0.340%(予測値③)となる。予測値に対する
弊社 OAS は、それぞれ、29.1 bp、28.6 bp、28.5 bp となる。
1日本証券業協会に設置されている
PSJ 予測統計値運営協議会による用法に準ずる。
2日本証券業協会による PSJ 平均値、日本証券業協会による売買参考統計値を用いて、PSJ キャッ
シュフローモデルにより弊社が算出した IRR(内部収益率)。
3
PSJ 予測統計値平均値、価格 100 円を前提として PSJ キャッシュフローモデルにより弊社が算
出した YCS。
1
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 1 裏付けとなる信託債権概要
第 115 回月次債
第 114 回月次債
(単位)
当初融資額総額
247,844,540,000
321,969,820,000
円
当初融資額平均
27,621,146
27,782,364
円
融資残高合計
247,844,379,252
321,870,893,467
円
融資残高平均
27,621,128
27,773,828
円
融資件数(債務者ベース)
8,973
11,589
人
融資債権数(金利別債権ベース)
8,973
11,589
債権
平均当初融資期間
30.2
29.9
年
平均残存期間
30.2
29.9
年
平均経過期間
0
0
平均当初融資率
91.36
91.70
%
平均当初返済負担率
21.63
21.35
%
6,438,314
6,575,057
円
平均金利
0.84
0.79
%
債務者平均年齢(申込時)
40.7
40.9
歳
加重平均金利
0.82
0.77
%
加重平均残存年数
31.2
30.8
年
加重平均当初融資期間
31.2
30.8
年
0
0
ヶ月
平均経過期間(借換)
70
68
ヶ月
平均当初 LTV(借換)
89.19
90.17
%
平均当初返済負担率(借換)
18.71
18.62
%
64
63
平均年収(申込時)
加重平均経過期間
加重平均経過期間(借換)
ヶ月
2
ヶ月
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
図表 2 予測クーポン
新生モ デルC F( 新生モ デルPSJ予測値)
8.33%
8.76
PSJ予測値
W AL
予測クーポン
予測値① 評価日のセカンダリーマー
ケット水準を基準(YCS:日証協価格)
0.346%
予測値② 評価日のセカンダリーマー
ケット水準を基準(IRR:日証協価格)
0.341%
予測値③ 前回債の条件決定を基準
(YCS)
0.340%
国債利回り
( W I)
-0.050%
PS Jモ デルC F( PSJ予測統計値平
均値)
8.75%
8.55
ローンチスプレッ ド
Z- Spr e ad
OAS
YCS
40
29.1
29.1
31.3
39
28.6
28.6
30.8
39
28.5
28.5
30.7
評価日(11/7)のセカンダリーマーケットでの114回債のYCS水準
評価日(11/7)のセカンダリーマーケットでの114回債のIRR水準
114回債条件決定日の114回債のYCS水準
出所: 新生証券
2
証券化リサーチノート
図表 3 ヒストリカル YCS (bp)
新生証券株式会社 調査部
JGB ベース
日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均
出所: 新生証券
3
図表 4 図表 4 ヒストリカル IRR (%)
日証協 PSJ・売買参考統計値(平均) PSJ モデル CF :各回号の残高加重平均
出所: 新生証券
3
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 5 発行額推移
6000
5000
4000
億円
3000
2000
1000
0
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
発行月
2009年度(機構月次:23~34回債)
2010年度(機構月次:35~46回債)
2011年度(機構月次:47回債~58回債)
2012年度(機構月次:59回債~70回債)
2013年度(機構月次:71回債~82回債)
2014度(機構月次:83回債~94回債)
2015度(機構月次:95回債~106回債)
2016度(機構月次:107回債~)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
4
図表 6 信用補完率および信用補完率に影響する主な属性
100%
35%
90%
30%
80%
25%
70%
60%
20%
50%
15%
40%
30%
10%
20%
5%
10%
0%
0%
信用補完率(右軸)
平均当初融資率
融資率90%超の割合
返済負担率30%超(右軸)
平均当初返済負担率(右軸)
年収300万円以下の割合(右軸)
公務員・会社員以外の比率(右軸)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
4
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 7 信用補完率と格付会社が想定するデフォルト率等
40%
0.8%
35%
0.7%
0.6%
30%
0.5%
25%
0.4%
20%
0.3%
15%
0.2%
10%
0.1%
5%
0.0%
0%
-0.1%
機構月次債 回号
信用補完率(左軸)
S&P想定累積貸倒率
R%Iストレスシナリオ累積デフォルト率
エクセススプレッド目安(右軸) = [加重平均金利:当初] - [クーポン]
出所: 格付会社(R&I および S&P)公表情報を基に新生証券作成
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図表 8 融資率(LTV)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~70%
~75%
~80%
~85%
~90%
~95%
~100%
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
5
証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 9 返済負担率(DTI)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~5%
~10%
~15%
~20%
~25%
~30%
over 30%
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
6
図表 10 平均当初 LTV および平均当初返済負担率(DTI)
95%
23.5%
23.0%
90%
22.5%
85%
22.0%
21.5%
80%
21.0%
75%
20.5%
70%
20.0%
平均当初LTV
平均当初返済負担率
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 11 年収分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
~3M JPYen
~5M JPYen
~10M JPYen
over 10M JPYen
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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図表 12 地域分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
北海道
東北
北関東
南関東
東京
東海
近畿
四国
中国
九州
南九州
北陸
出所:住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
図表 13 融資種別分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
機構月次債 回号
マイホーム
マンション
建売
都市居住再生
中古住宅
借換
マイホーム=マイホーム + 買取証券化支援建設 / マンション=マンション+優良分譲等+買取証券化支援購入(共同建) / 建売=建売住宅 + 買取証券化支援購入(共同
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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図表 14 裏付債権の金利(WAC)と MBS クーポン
140
2.3%
120
2.1%
100
1.9%
80
1.7%
60
1.5%
40
1.3%
20
1.1%
0
0.9%
-20
0.7%
-40
0.5%
機構月次債 回号
MBS参照国債金利(bps)
MBS ローンチスプレッド(bps)
加重平均金利(右軸)
加重平均最終金利(右軸)
出所: 住宅金融支援機構公表情報を基に新生証券作成
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証券化リサーチノート
新生証券株式会社 調査部
本稿はストラクチャードファイナンス部・玉城晃子よる協力を得て作成した。
(調査部長 江川 由紀雄)
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名称
:新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号
所在地
:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号
日本橋室町野村ビル
Tel : 03-6880-6000(代表)
加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
資本金
:87.5 億円
主な事業 :金融商品取引業
設立年月 :平成 12 年 12 月
本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社
はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである
ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、
特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取
引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について
は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及
び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその
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信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま
たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場
合があります。
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