微分積分 I 及び演習 高次導関数・テイラーの定理 (2016/5/20) 高次導関数 ○ 定義 (n 次導関数, n 回微分可能) 関数 f (x) を 2 回微分して得られる関数を f (x) の 2 次導関数といい, f ′′ (x) で表す. 一般に f (x) を n 回微分して得られる関数を f (x) の n 次導関数といい, f (n) (x) で表す. また,f (x) 自身を, f (x) の 0 次導関数ともいい, f (0) (x) で表す. f (0) (x) = f (x), f (1) (x) = f ′ (x), f (2) (x) = f ′′ (x), f (3) (x) = f ′′′ (x), ... ★ 重要 (いろいろな関数の n 次導関数) α ̸= 0 かつ n ∈ N とする.次が成り立つ. ( ( n ) n ) (iii) (cos x)(n) = cos x + π (i) (ex )(n) = ex (ii) (sin x)(n) = sin x + π 2 2 n−1 (−1) (n − 1)! (n) (iv) (log(1 + x))(n) = (v) ((1 + x)α ) = α(α − 1) · · · (α − n + 1)(1 + x)α−n (1 + x)n ∵ 証明 (i), (v) は明らかであり,(iii) は講義中に解説する.(ii), (iv) のみ証明する. (ii) n = 1 のときは (sin x)′ = cos x = sin(x + π2 ) より, 確かに (ii) は成り立つ. 次に n = k のとき (ii) が成り立っていると仮定する. つまり (sin x)(k) = sin(x + k2 π) が成り立っていると仮定する. こ の両辺をもう 1 回微分すると, ( )′ ( )′ (sin x)(k+1) = (sin x)(k) = sin(x + k2 π) ( ) = cos(x + k2 π) = sin (x + k2 π) + π2 = sin(x + k+1 2 π). よって n = k + 1 のときも (ii) が成り立つ. したがって, 全ての自然数 n に対して (ii) が成り立つ. (iv) n = 1 のときは (log(1 + x))′ = 1/(1 + x) より, 確かに (iv) は成り立つ. 次に n = k のとき (iv) が成り立っていると仮定する. つまり (log(1 + x))(k) = (−1)k−1 (k − 1)!/(1 + x)k が成り立っている と仮定する. この両辺をもう 1 回微分すると, (log(1 + x)) (k+1) ( = (log(1 + x)) (k) )′ ( = (−1)k−1 (k − 1)! (1 + x)k )′ = (−1)k k! (1 + x)k+1 よって n = k + 1 のときも (iv) が成り立つ. したがって, 全ての自然数 n に対して (iv) が成り立つ. テイラーの定理 ◎ 性質 (テイラーの定理) 関数 f (x) が区間 I で C n 級であるとする. また a ∈ I とする. このとき f (x) は, 次のように表せる. ( ) n−1 ∑ f (k) (a) f (n) a + θ(x − a) k f (x) = (x − a) + Rn (x), Rn (x) = (x − a)n . k! n! k=0 ここで θ は 0 < θ < 1 を満たすある実数を表す. (但し θ は x, n に依存して決まる.) ○ 定義 (有限テイラー ・有限マクローリン展開) n を 0 以上の整数とする. また f (x) を区間 I で C n 級の関数とし, a ∈ I とする. 1 このとき, 関数 f (x) を, 次の右辺のように表したものを, f (x) の x = a の周りでの n 次の有限テイ ラー展開という. f ′ (a) f (n) (a) (x − a) + · · · + (x − a)n + Rn+1 (x). 1! n! とくに,x = 0 の周りでの n 次の有限テイラー展開のことを, n 次の有限マクローリン展開という. f (x) = f (a) + また f (x) の x = a の周りでの n 次の有限テイラー展開において, 多項式の部分を f (x) の x = a の 周りでの n 次のテイラー近似多項式といい, Rn+1 (x) を剰余項という. f ′ (a) f (n) (a) (x − a) + · · · + (x − a)n + Rn+1 (x). 1! n! {z } | {z } f (x) = f (a) + | f (x) の x = a の周りでの n 次のテイラー近似多項式 剰余項 ☆ 注意 ∑ f (x) の x = a の周りでの n 次の有限テイラー展開は, を使って, 次のように表すこともできる. n ∑ f (k) (a) f (x) = (x − a)k + Rn+1 (x). k! k=0 ★ 重要 (いろいろな関数の有限マクローリン展開) α ̸= 0 かつ m ∈ N とする.次のように有限マクローリン展開できる.ここで,θ ∈ (0, 1) である. (i) ex = n−1 ∑ k=0 (iii) cos x = xk eθx n + x k! n! n−1 ∑ k=0 (ii) sin x = n−1 ∑ k=1 (−1)k−1 2k−1 (−1)n−1 cos(θx) 2n−1 x + x (2k − 1)! (2n − 1)! (−1)k 2k (−1)n cos(θx) 2n x + x (2k)! (2n)! (iv) log(1 + x) = n−1 ∑ k=1 (−1)k−1 k (−1)n−1 n x + x k n(1 + θx)n ( ) ( ) n−1 ∑ α α α k (v) (1 + x) = x + (1 + θx)α−n xn k n k=0 ここで, ( α 0 ) ( = 1, α n ) = α(α − 1) · · · (α − n + 1) . n! ∵ 証明 (i), (v) は容易に導出できるので省略する.(iii) は講義中に解説する.(ii), (iv) のみを証明する. (ii) f (x) = sin x とおく.上述の n 次導関数より,f (l) (x) = sin(x + lπ/2) であるので, { (−1)k−1 (l = 2k − 1 のとき), l f (l) (0) = sin π = 2 0 (l = 2k のとき). これより f (x) = sin x にテイラーの定理を使用すれば, 次のようになることが分かる. sin x = 2n−2 ∑ l=0 = n−1 ∑ k=1 = n−1 ∑ k=1 = n−1 ∑ k=1 f (l) (0) l f (2n−1) (θx) 2n−1 x + x l! (2n − 1)! f (2k−1) (0) 2k−1 f (2n−1) (θx) 2n−1 x + x (2k − 1)! (2n − 1)! f (2k−1) (0) 2k−1 sin(θx + (2n − 1)π/2) 2n−1 x + x (2k − 1)! (2n − 1)! (−1)k−1 2k−1 (−1)n−1 cos(θx) 2n−1 x + x . (2k − 1)! (2n − 1)! 2 (iv) f (x) = log(1 + x) とおく.上述の n 次導関数より,f (k) (x) = (−1)k−1 (k − 1)!/ (1 + x)k である ので, f (k) (0) = (−1)k−1 (k − 1)!. これより f (x) = log(1 + x) にテイラーの定理を使用すれば, 次のようになることが分かる. log(1 + x) = n−1 ∑ k=0 = n−1 ∑ k=1 = n−1 ∑ k=1 f (k) (0) k f (n) (θx) n x + x k! n! (−1)k−1 (k − 1)! k (−1)n−1 (n − 1)! n x + x k! n!(1 + θx)n (−1)k−1 l (−1)n−1 n x + x . n n(1 + θx)n ○ 定義 (テイラー展開・マクローリン展開) f (x) を区間 I で C ∞ 級の関数とし, a ∈ I とする. また, 各 n (n = 0, 1, 2, . . .) に対して Rn+1 (x) を, 関数 f (x) の x = a の周りでの n 次の有限テイラー展開における剰余項とする. n ∑ f (k) (a) (x − a)k . Rn+1 (x) = f (x) − k! k=0 ここで, ある区間 I の x に対して lim Rn+1 (x) = 0 が成り立つとする. このとき, 関数 f (x) は x = a n→∞ の周りでテイラー展開可能であるといい,次のようにかく. ∞ ∑ f (n) (a) f (x) = (x − a)n (x ∈ I). n! n=0 この級数を, 関数 f (x) の x = a の周りでのテイラー展開という. とくに,x = 0 の周りでのテイラー 展開をマクローリン展開という. 3
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