3月機械受注 - 大和総研

経済分析レポート
2016 年 5 月 19 日
全6頁
Indicators Update
3 月機械受注
機械受注は 2 ヶ月ぶりに増加。民需は緩やかな増加基調にある
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 岡本 佳佑
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

2016 年 3 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電
力を除く)は前月比+5.5%と、市場コンセンサス(同▲2.0%)に反して 2 ヶ月ぶりに
増加した。この結果、1-3 月期の民需は前期比+6.7%と、内閣府が公表していた見通
しである同+6.4%を上回った。

3 月分のデータに関して、需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+19.7%と 2 ヶ月
ぶりに増加した。2 月の受注が大幅減となっていた反動が現れたほか、非鉄金属や造船
業の大幅増が全体の受注額を押し上げた。非製造業(船舶・電力を除く)は前月比▲6.9%
と 4 ヶ月ぶりに減少した。ただし、均してみると、増加基調を辿っている。

設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。
労働需給が引き続きタイトな中、特に外需の影響を受けにくく、業績が安定している非
製造業において、人手不足に対応した合理化・省力化投資が行われることが期待される。
また、熊本地震により毀損した生産設備の復旧・復興を目的とした機械の需要拡大も見
込まれよう。一方、世界経済の停滞や円高・ドル安の進行といった外部環境の悪化が、
製造業を中心とした輸出企業の業績の重石となる公算が大きくなってきた点は気がか
りだ。これまで設備投資を支えてきた“好業績”という前提が崩れれば、設備投資を先
送りする企業が増えてくる可能性が高い。
図表 1:機械受注の概況(季節調整済み前月比、%)
2015年
4月
3.2
5月
6月
7月
8月
2.9 ▲ 6.6 ▲ 3.0 ▲ 2.9
9月
5.9
民需(船電を除く)
コンセンサス
DIR予想
2.5
3.7 ▲ 5.6 ▲ 4.0 ▲ 3.4 ▲ 3.5
製造業
0.4 ▲ 0.4 ▲ 0.9 ▲ 7.3 ▲ 1.7
13.7
非製造業(船電を除く)
▲ 5.3
4.1
7.9
8.5 ▲ 17.1
4.4
外需
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
10月
11月
6.4 ▲ 9.7
12月
1.0
2016年
1月
2月
15.0 ▲ 9.2
3月
5.5
▲ 2.0
3.2
6.2 ▲ 6.6 ▲ 3.0
41.2 ▲ 30.6
19.7
5.2 ▲ 12.7
4.5
1.0
10.2 ▲ 6.9
31.6 ▲ 20.1 ▲ 2.2 ▲ 29.4
6.3
28.5
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する
ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和
証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。
2/6
3 月機械受注:2 ヶ月ぶりに増加。機械受注は緩やかな増加基調にある
2016 年 3 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除
く)は前月比+5.5%と、市場コンセンサス(同▲2.0%)に反して 2 ヶ月ぶりに増加した。こ
の結果、1-3 月期の民需は前期比+6.7%と、内閣府が公表していた見通しである同+6.4%を上
回った。ただし、1-3 月期の結果が見通しを上回ったのは、1 月に鉄鋼において大型受注があっ
たことによる要因も大きいとみられる。1-3 月期の鉄鋼を除く民需の受注額は同+2.2%と試算
(大和総研)され、このところの機械受注は緩やかな増加基調にあると評価できる。
製造業:2 月受注の反動などから 3 月は 2 ヶ月ぶりの大幅増
3 月分のデータに関して、需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+19.7%と 2 ヶ月ぶりに
増加した。2 月の受注が大幅減となっていた反動が現れたほか、非鉄金属や造船業の大幅増が全
体の受注額を押し上げた。
内訳を見ると、「非鉄金属」(前月比+270.4%)や「造船業」(同+89.7%)、「はん用・生産
用機械」
(同+17.8%)、
「その他製造業」
(同+19.4%)などがプラスに寄与した。非鉄金属は
前月から大幅増となっており、大型受注があったとみられる。造船業については 2 ヶ月ぶりの
大幅増となったが、足下の世界経済が停滞していることを考慮すると、一時的な受注の増加で
あった可能性が高いとみられる。はん用・生産用機械は 2 ヶ月連続で増加しており、緩やかな
増加基調に転じている。一方、
「電気機械」
(前月比▲19.1%)や「その他輸送用機器」
(同▲21.5%)
、
「パルプ・紙・紙加工品」
(同▲51.6%)、「情報通信機械」(同▲10.5%)の 4 業種が下落した。
電気機械については 3 ヶ月連続で減少しており、受注の減少傾向が鮮明化している。世界的な
スマートフォン需要の低迷などを背景に、同業種向けの機械需要が減退していることなどが背
景にあると推測される。その他輸送用機械は 2 ヶ月連続の減少となっており、昨年半ば以降、
受注は減少傾向にある。
非製造業:4 ヶ月ぶりに減少。ただし、均してみると増加基調
非製造業(船舶・電力を除く)は前月比▲6.9%と 4 ヶ月ぶりに減少した。ただし、非製造業
の受注を均してみると、増加基調を辿っている。
内訳を見ると、
「金融業・保険業」(前月比▲27.7%)や「運輸業・郵便業」(同▲20.5%)、
「情
報サービス業」(同▲19.0%)などが全体を下押しした。金融業・保険業は 2 ヶ月連続の減少で
あるが、受注は均せば横ばい圏で推移している。運輸業・郵便業については、国内景気の減速
などを背景として昨年末以降、頭打ち傾向がみられる。一方、
「その他非製造業」
(同+18.3%)、
「卸売業・小売業」(同+9.9%)、「不動産業」(同+51.8%)などが増加した。不動産業は昨年
末頃から増加基調に転じているが、足下ではマイナス金利の導入によって業界が活気づき始め
ていることなどが機械の受注増につながっている可能性がある。
3/6
図表 2:需要者別機械受注(季節調整値)
(億円)
(億円)
6,000
5,500
5,500
5,000
5,000
4,500
4,500
4-6月期
見通し
4,000
4,000
4-6月期見通し
3,500
3,500
3,000
3,000
2,500
2,000
2,500
05
06
07
08
09
製造業
10
11
12
13
14
15
1234567891011 21234567891011 2123456
16
(年)
14
15
16
(月)
(年)
非製造業(船舶、電力を除く)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
外需:航空機、鉄道車両等が増加し、2 ヶ月連続で増加
外需は前月比+28.5%と 2 ヶ月連続で増加した。海外向けに航空機、鉄道車両等が増加した
ことが大幅増の主因であった模様である。ただし、足下の世界経済は年初の頃と比較してやや
落ち着きを取り戻した感があるものの、昨年まで好調に推移してきた米国経済が減速し始める
など、新たな不安要素も浮上してきている。先行きの外需については緩やかに持ち直していく
と想定しているが、短期的には引き続き慎重にみておきたい。
図表 3:一般機械の輸出と機械受注の外需
(億円)
18,000
図表 4:一般機械の輸出金額(主要国・地域)
(億円)
3,500
中国
16,000
一般機械の輸出
3,000
米国
14,000
2,500
12,000
10,000
2,000
8,000
1,500
6,000
4,000
2,000
機械受注(外需)
ASEAN
1,000
EU
機械受注(外需、3ヶ月移動平均)
500
0
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
(注)季節調整は外需は内閣府、一般機械輸出は大和総研。
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
04
05
06
07
08
09
(注)季節調整は大和総研。
(出所)財務省統計より大和総研作成
10
11
12
13
14
15 16
(年)
4/6
先行きの機械受注は横ばい圏で推移する展開を予想
内閣府が公表した 4-6 月期見通しは、民需(船舶・電力を除く)が前期比▲3.5%となってお
り、前期比で増加した 1-3 月期から一転して減少すると見込まれている。
設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。労
働需給が引き続きタイトな中、特に外需の影響を受けにくく、業績が安定している非製造業に
おいて、人手不足に対応した合理化・省力化投資が行われることが期待される。また、熊本地
震により毀損した生産設備の復旧・復興を目的とした機械の需要拡大も見込まれよう。一方、
世界経済の停滞や円高・ドル安の進行といった外部環境の悪化が、製造業を中心とした輸出企
業の業績の重石となる公算が大きくなってきた点は気がかりだ。これまで設備投資を支えてき
た“好業績”という前提が崩れれば、設備投資を先送りする企業が増えてくる可能性が高い。
図表 5:機械受注の民需と名目設備投資(季節調整値)
(億円)
(年率・兆円)
11,000
85
10,000
4-6月期見通し
80
9,000
75
8,000
70
7,000
65
6,000
60
5,000
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
民需(船電を除く、1四半期先行)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
名目設備投資(SNAベース、右軸)
55
(年)
5/6
概 況
民需(船舶・電力を除く、季節調整済み前月比)
船舶を除く合計(季節調整値)
(兆円)
30
(兆円)
3.0
(%)
20
受注額:左軸
前月比
15
28
2.5
26
10
2.0
5
24
1.5
0
22
販売額:左軸
-5
20
1.0
18
-10
受注残高:右軸
0.5
-15
0.0
-20
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
14
06
16
80
実質設備投資
(GDP):右軸
実質民需(3ヶ月移動平均):左軸
0.9
0.8
0.7
実質民需:左軸
06
07
08
09
10
09
10
11
12
13
14
15
16
民需(船舶・電力除く)の達成率と実質設備投資
(年率・兆円)
(兆円)
1.1
0.6
08
(年)
実質機械受注と実質設備投資(季節調整値)
1.0
07
(年)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
0.5
16
3ヶ月移動平均前月比
11
12
13
14
15
16
(前年比、%)
30
(%)
120
78
115
76
110
74
105
72
100
70
95
68
90
66
85
64
80
62
75
60
70
民需の見通し達成率(半年先行):左軸
20
10
0
-10
実質設備投資
(GDP):右軸
-20
-30
00
02
04
06
08
10
12
14
16
(年)
(年)
(注)実質民需は、船舶・電力を除くベースで、企業物価指数(日本銀行)の国内資本財によって実質化。
(出所)内閣府、日本銀行統計より大和総研作成
機械受注(季節調整値)と工作機械受注
機械受注(季節調整値)と設備判断DI
(兆円)
(%pt)
1.3
-10
民需(船舶・電力を除く)
:左軸
先行き
↑設備の不足感
1.2
90
-5
1.1
80
民需(船舶・電力を除く)
:右軸
1.1
1.0
50
0.9
10
40
0.8
15
30
0.7
5
0.9
0.8
20
日銀短観の設備判断DI
右軸、軸反転
↓設備の過剰感
20
0.5
25
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
10
0.6
工作機械受注(内需):左軸
0.5
0.4
0
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
16
(注)設備判断DIの段差は、統計の基準変更に伴うもの。
(出所)内閣府、日本銀行、日本工作機械工業会統計より大和総研作成
1.2
60
1.0
0.6
1.3
70
0
0.7
(兆円)
1.4
(十億円)
100
(年)
(年)
6/6
機種別と製造業・非製造業の動向
機種別・大分類の受注額(季節調整値)
機種別・大分類の受注額【内需】(季節調整値)
(兆円)
1.0
(兆円)
0.7
電子・通信機械
0.9
電子・通信機械
0.6
原動機・重電機
0.8
0.5
0.7
0.6
産業機械
産業機械
0.4
原動機・重電機
0.5
0.3
0.4
0.3
工作機械
0.2
0.2
輸送機械
0.1
0.1
輸送機械
工作機械
0.0
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
0
16
06
(年)
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
機種別・大分類の受注額【外需】(季節調整値)
機種別・主な中分類の受注額(季節調整値)
(兆円)
0.5
(兆円)
0.6
産業機械
0.5
電子・通信機械
0.4
電子計算機
0.4
輸送機械
0.3
通信機
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
原動機・重電機
工作機械
0.0
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(兆円)
7
0.7
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
6
(年)
(兆円)
0.7
(兆円)
11
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
0.6
8
0.5
0.4
4
0.3
3
7
0.4
2
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
0.1
90
92
94
96
98
00
02
04
06
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
08
10
12
14
1
16 (年)
10
9
5
0.5
0.2
16
機械受注と設備投資【非製造業(船舶・電力除く)】(季節調整値)
機械受注と設備投資【製造業】(季節調整値)
(兆円)
0.6
06
(年)
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
建設機械
半導体製造装置
0.0
0.3
6
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
5
4
3
0.2
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(年)