経済分析レポート 2016 年 12 月 12 日 全 6 頁 Indicators Update 10 月機械受注 前月比+4.1%。高水準な非製造業の受注増が全体をけん引。 エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 前田 和馬 エコノミスト 小林 俊介 [要約] 2016 年 10 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電 力を除く)は、前月比+4.1%と 3 ヶ月ぶりに増加し、市場コンセンサス(同+1.1%) も上回った。製造業は同▲1.4%と減少したものの、非製造業(船舶・電力を除く)が +4.6%と増加し、全体を押し上げた。 需要者別に受注を見ると、製造業は前月比▲1.4%と 3 ヶ月連続で減少した。このとこ ろの製造業の受注は、弱い動きが続いている。非製造業(船舶・電力を除く)は前月比 +4.6%と 3 ヶ月ぶりに増加した。非製造業の受注動向は比較的高い水準を保っており、 堅調な推移をしていると評価できる。一方、外需は前月比+1.9%と 3 ヶ月連続で増加 した。 設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。 依然力強さを欠く内需を背景として、製造業においては企業収益に頭打ち感が見られて おり、設備投資に対する慎重姿勢は強まりつつある。ただし、タイトな労働需給を背景 とした合理化・省力化投資に加えて、非製造業においては、経常利益が高水準にあるこ と、交通・物流インフラ整備向けの投資が期待されることなどが、今後の機械受注を下 支えするプラス要素といえよう。 図表 1:機械受注の概況(季節調整済み前月比、%) 2015年 11月 ▲9.7 12月 1.0 2016年 1月 15.0 2月 ▲9.2 民需(船電を除く) コンセンサス DIR予想 ▲6.6 ▲3.0 41.2 ▲30.6 製造業 4.5 1.0 10.2 非製造業(船電を除く) ▲12.7 ▲20.1 ▲2.2 ▲29.4 6.3 外需 (注)コンセンサスはBloomberg。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 3月 4月 5.5 ▲11.0 5月 ▲1.4 19.7 ▲13.3 ▲6.4 ▲6.9 ▲3.9 ▲0.3 28.5 ▲6.9 ▲14.8 6月 8.3 7月 4.9 8月 ▲2.2 9月 ▲3.3 17.7 0.3 2.1 8.6 10.8 ▲11.7 ▲4.0 ▲1.9 6.8 ▲5.0 ▲0.9 1.4 10月 4.1 1.1 1.0 ▲1.4 4.6 1.9 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/6 10 月機械受注:高水準な非製造業の受注増が全体をけん引 2016 年 10 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除 く)は、前月比+4.1%と 3 ヶ月ぶりに増加し、市場コンセンサス(同+1.1%)も上回った。 製造業は同▲1.4%と減少したものの、非製造業(船舶・電力を除く)が+4.6%と増加し、全 体を押し上げた。 製造業:3 ヶ月連続で減少。このところは弱い動き 10 月分のデータに関して、需要者別に受注を見ると、製造業は前月比▲1.4%と 3 ヶ月連続で 減少した。このところの製造業の受注は、弱い動きが続いている。 内訳を見ると、 「電気機械」 (前月比▲26.2%)のほか、 「非鉄金属」 (同▲69.6%)、 「はん用・ 生産用機械」 (同▲11.2%)などが前月から減少した。電気機械は、足元では横ばい圏で推移し ていたが、今月は大幅減となった。世界的なスマートフォン需要の低迷などを背景に、同業種 向けの機械需要が減退していることから、先行きも慎重に見ておく必要があるだろう。非鉄金 属については、前月の大幅増による反動から、減少に転じたものとみられる。一方、 「化学工業」 (同+57.3%)や「石油製品・石炭製品」(同+333.0%)、「金属製品」(同+59.2%)などが前 月から増加した。 非製造業: 3 ヶ月ぶりの増加で、高水準の受注を維持 非製造業(船舶・電力を除く)は前月比+4.6%と 3 ヶ月ぶりに増加した。このところ、非製 造業の受注動向は比較的高い水準を保っており、堅調な推移をしていると評価できる。 内訳を見ると、「その他非製造業」(前月比+56.0%)、「農林漁業」(同+26.7%)、「通信業」 (同+13.4%)などが前月から増加した。その他非製造業については、前月の反動から大幅に増 加した。一方、前月から減少したのは「運輸業・郵便業」(同▲38.2%)、 「卸売業・小売業」(同 ▲28.8%)、 「金融業・保険業」(同▲17.5%)などである。運輸業・郵便業は、3 ヶ月ぶりの減少 となり、これまでの増加基調に一服感がみられる。 3/6 図表 2:需要者別機械受注(季節調整値) (億円) (億円) 6,000 5,500 5,500 5,000 5,000 4,500 4,500 4,000 4,000 3,500 3,500 3,000 3,000 2,500 10-12月期 見通し 10-12月期見通し 2,000 2,500 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 製造業 12345678910 11212345678910 11212345678910 112 14 (年) 15 16 (月) (年) 非製造業(船舶、電力を除く) (注)太線は3ヶ月移動平均線。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 外需: 3 ヶ月連続の増加 外需は前月比+1.9%と 3 ヶ月連続で増加した。足元の外需は堅調に推移している。内閣府に よれば、航空機、原動機等で減少したものの、電子・通信機械、産業機械等で増加した。 11 月に実施された米国の大統領選挙で共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利した後、金 融市場では円安・株高が進行しており、短期的には円安が輸出金額を下支えするであろう。一 方、中長期的には、内向き志向の政策を掲げる同氏の政策運営によって、世界経済の不透明感 が強まる可能性がある。先行きの外需は、メインシナリオとして緩やかに持ち直していくと想 定しているが、引き続き慎重に見ておきたい。 図表 3:一般機械の輸出と機械受注の外需 図表 4:一般機械の輸出金額(主要国・地域) (億円) (億円) 3,500 3,500 (億円) 18,000 16,000 一般機械の輸出 中国 中国 米国 米国 3,000 3,000 14,000 2,500 2,500 12,000 10,000 2,000 2,000 8,000 1,500 1,500 6,000 4,000 2,000 機械受注(外需) 1,000 1,000 ASEAN ASEAN 機械受注(外需、3ヶ月移動平均) 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)輸出金額の季節調整は大和総研。 (出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成 EU EU 500 500 04 05 05 06 06 07 07 08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14 14 15 15 16 16 04 (年) (注)季節調整は大和総研。 (出所)財務省統計より大和総研作成 4/6 先行きの機械受注は横ばい圏の推移を予想 設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。依 然力強さを欠く内需を背景として、製造業においては企業収益に頭打ち感が見られており、設 備投資に対する慎重姿勢は強まりつつある。ただし、タイトな労働需給を背景とした合理化・ 省力化投資に加えて、非製造業においては、経常利益が高水準にあること、交通・物流インフ ラ整備向けの投資が期待されることなどが、今後の機械受注を下支えするプラス要素といえよ う。 図表 5:機械受注の民需と名目設備投資(季節調整値) (億円) 11,000 (年率・兆円) 85 10,000 80 9,000 75 8,000 70 7,000 65 10-12月期見通し 6,000 5,000 60 55 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) 民需(船電を除く、1四半期先行) (注)太線は3ヶ月移動平均線。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 名目設備投資(SNAベース、右軸) 5/6 概 況 民需(船舶・電力を除く、季節調整済み前月比) 船舶を除く合計(季節調整値) (兆円) 30 (兆円) 3.0 (%) 20 受注額:左軸 前月比 15 28 2.5 26 10 2.0 5 24 1.5 0 22 販売額:左軸 -5 20 1.0 18 -10 受注残高:右軸 0.5 -15 16 3ヶ月移動平均前月比 0.0 -20 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 14 06 16 80 実質設備投資 (GDP):右軸 実質民需(3ヶ月移動平均):左軸 0.9 0.8 0.7 実質民需:左軸 06 07 08 09 10 10 11 12 13 14 15 16 民需(船舶・電力除く)の達成率と実質設備投資 (年率・兆円) (兆円) 1.1 0.5 09 (年) 実質機械受注と実質設備投資(季節調整値) 0.6 08 (年) (出所)内閣府統計より大和総研作成 1.0 07 11 13 12 14 15 16 (前年比、%) 30 (%) 120 78 115 76 110 74 105 72 100 70 95 68 90 66 85 64 80 62 75 60 70 民需の見通し達成率(半年先行):左軸 20 10 0 -10 実質設備投資 (GDP):右軸 -20 -30 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (年) (注)実質民需は、船舶・電力を除くベースで、企業物価指数(日本銀行)の国内資本財によって実質化。 (出所)内閣府、日本銀行統計より大和総研作成 機械受注(季節調整値)と工作機械受注 機械受注(季節調整値)と設備判断DI (兆円) (%pt) 1.3 -10 民需(船舶・電力を除く) :左軸 先行き ↑設備の不足感 1.2 90 -5 1.1 0 1.0 5 80 民需(船舶・電力を除く) :右軸 1.1 60 1.0 0.9 40 0.8 15 30 0.7 20 ↓設備の過剰感 日銀短観の設備判断DI 右軸、軸反転 20 0.5 25 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 10 0.6 工作機械受注(内需):左軸 0 0.5 0.4 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 16 (注)設備判断DIの段差は、統計の基準変更に伴うもの。 (出所)内閣府、日本銀行、日本工作機械工業会統計より大和総研作成 1.2 70 50 0.8 0.6 1.3 10 0.9 0.7 (兆円) 1.4 (十億円) 100 (年) (年) 6/6 機種別と製造業・非製造業の動向 機種別・大分類の受注額(季節調整値) 機種別・大分類の受注額【内需】(季節調整値) (兆円) 1.0 (兆円) 0.7 電子・通信機械 0.9 電子・通信機械 0.6 原動機・重電機 0.8 0.5 0.7 0.6 産業機械 原動機・重電機 産業機械 0.4 0.5 0.3 0.4 0.3 工作機械 0.2 0.2 輸送機械 0.1 0.1 輸送機械 工作機械 0.0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 0.0 06 (年) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 機種別・大分類の受注額【外需】(季節調整値) 機種別・主な中分類の受注額(季節調整値) (兆円) 0.5 (兆円) 0.6 産業機械 0.5 電子・通信機械 0.4 電子計算機 0.4 輸送機械 0.3 通信機 0.3 0.2 0.2 0.1 0.1 原動機・重電機 工作機械 0.0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 16 7 機械受注(3ヶ月移動平均、 1四半期先行):左軸 0.5 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) 6 (兆円) 0.7 (兆円) 11 機械受注(3ヶ月移動平均、 1四半期先行):左軸 0.6 0.4 4 0.3 3 8 7 0.4 0.1 設備投資(法人企業統計、全規模) :右軸 2 1 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成 10 9 5 0.5 0.2 16 機械受注と設備投資【非製造業(船舶・電力除く)】(季節調整値) (兆円) 0.7 06 (年) 機械受注と設備投資【製造業】(季節調整値) (兆円) 0.6 建設機械 半導体製造装置 0.0 0.3 6 設備投資(法人企業統計、全規模) :右軸 0.2 5 4 3 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
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