経済分析レポート 2015 年 3 月 11 日 全6頁 Indicators Update 1 月機械受注 前月比減少も持ち直しの動きは継続 エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 久後 翔太郎 [要約] 2015 年 1 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電 力を除く)は、前月比▲1.7%となったものの、市場コンセンサス(同▲4.0%)は上回 った。前月の増加幅に比べると、減少幅は限定的であり、均してみると機械受注は持ち 直しの動きを続けている。 需要者別に受注を見ると、製造業は前月比▲11.3%と 2 ヶ月ぶりに減少した。ただし、 3 ヶ月移動平均値で見ると、2 ヶ月連続で増加しており緩やかな増加傾向をたどってい る。非製造業(船舶・電力を除く)は前月比+3.7%と 3 ヶ月連続で増加した。 内閣府公表の 2015 年 1-3 月期見通しでは、民需(船舶・電力を除く)は前期比+1.5% と、3 四半期連続の増加が見込まれている。この数値は、2015 年 2 月、3 月にそれぞれ 前月比▲2.4%の減少でも達成可能であることから、ハードルは低い。大和総研では 2015 年 1-3 月期についても民需(船舶・電力を除く)は前期比増加となり、持ち直し の動きが明確化すると予想している。 図表 1:機械受注の概況(季節調整済み前月比、%) 2014年 2月 ▲ 4.6 3月 4月 5月 19.1 ▲ 9.1 ▲ 19.5 民需(船電を除く) コンセンサス DIR予想 ▲ 4.6 23.7 ▲ 9.4 ▲ 18.6 製造業 8.5 0.9 ▲ 17.8 非製造業(船電を除く) ▲ 5.1 2.3 3.2 71.3 ▲ 45.9 外需 (注)コンセンサスはBloomberg。 (出所)内閣府統計、Bloombergより大和総研作成 株式会社大和総研 丸の内オフィス 2015年 12月 1月 8.3 ▲ 1.7 ▲ 4.0 ▲ 0.3 6.7 20.3 ▲ 10.8 12.0 ▲ 5.5 ▲ 7.0 24.1 ▲ 11.3 4.0 ▲ 4.3 10.7 1.7 ▲ 7.5 0.5 7.2 3.7 62.8 ▲ 42.6 29.1 ▲ 9.4 ▲ 4.6 ▲ 6.0 ▲ 6.9 24.2 6月 8.8 7月 3.5 8月 4.7 9月 10月 2.9 ▲ 6.4 11月 1.3 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/6 1 月機械受注:前月比減少も持ち直しの動きは継続 2015 年 1 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除 く)は、前月比▲1.7%となったものの、市場コンセンサス(同▲4.0%)は上回った。前月の 増加幅に比べると、減少幅は限定的であり、均してみると機械受注は持ち直しの動きを続けて いる。 製造業:緩やかな増加傾向をたどる 需要者別に受注を見ると、製造業は前月比▲11.3%と 2 ヶ月ぶりに減少した。ただし、3 ヶ月 移動平均値で見ると、2 ヶ月連続で増加しており緩やかな増加傾向をたどっている。業種別に見 ると、その他製造業 (同▲50.5%)、自動車・同付属品(同▲23.3%)、その他輸送用機械(同▲ 39.0%)などの減少が下押し要因となった。その他製造業については、前月に特殊要因により急 増した反動減とみられる。自動車・同付属品、その他輸送用機械に関しては、振れを伴いなが らも横ばい圏での推移を続けている。一方、石油製品・石炭製品(同+513.6%)、鉄鋼業(同+ 26.9%)、情報通信機械(同+7.8%)などは増加した。石油製品・石炭製品は大型案件による上 振れとみられるため、結果はやや割り引いて評価する必要があるだろう。 非製造業:3 ヶ月連続の増加 非製造業(船舶・電力を除く)は前月比+3.7%と 3 ヶ月連続で増加した。内訳をみると、卸 売業・小売業(同+264.3%)、農林漁業(同+116.3%)、情報サービス業(同+9.6%)、建設業(同 +8.4%)などが増加した。卸売業・小売業に関しては船舶の大型案件の受注が発生し、急増し たとみられる。情報サービス業に関しては足下での増加傾向の継続を確認する良好な結果であ り、建設業についてはこのところ弱めの推移となっていたが、持ち直しの兆しが見える。 図表 2:需要者別機械受注(季節調整値) (億円) (億円) 6,000 18,000 5,500 16,000 5,000 14,000 4,500 12,000 4,000 10,000 1-3月期 見通し 3,500 1-3月期見通し (外需) 8,000 3,000 6,000 2,500 4,000 1-3月期見通し (民需(船電除く)) 2,000 2,000 09 10 11 12 13 14 09 15 10 11 12 13 14 (年) 製造業 非製造業(船舶、電力を除く) (注)太線は3ヶ月移動平均線。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 15 (年) 外需 民需(船舶、電力を除く) 3/6 外需:5 ヶ月ぶりの増加で下げ止まりの兆しが見える 外需は前月比+24.2%と 5 ヶ月ぶりに増加した。このところ、減少傾向が鮮明となっていた が、下げ止まりの兆しが見える。先行きは中国経済の減速には留意が必要であるが、米国経済 の回復が外需を下支えするとみている。 図表 3:一般機械の輸出と機械受注の外需 (億円) 18,000 図表 4:一般機械の輸出金額(主要国・地域) (億円) 3,500 中国 16,000 一般機械の輸出 3,000 米国 14,000 2,500 12,000 10,000 2,000 8,000 1,500 6,000 4,000 2,000 機械受注(外需) ASEAN 1,000 EU 機械受注(外需、3ヶ月移動平均) 500 0 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)季節調整は外需は内閣府、一般機械輸出は大和総研。 (出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)季節調整は大和総研。 (出所)財務省統計より大和総研作成 2015 年 1-3 月期は内閣府見通しを上回る伸び率を期待 内閣府公表の 2015 年 1-3 月期見通しでは、民需(船舶・電力を除く)は前期比+1.5%と、3 四半期連続の増加が見込まれている。この数値は、2015 年 2 月、3 月にそれぞれ前月比▲2.4% の減少でも達成可能であることから、ハードルは低い。大和総研では 2015 年 1-3 月期について も民需(船舶・電力を除く)は前期比増加となり、持ち直しの動きが明確化すると予想してい る。 GDP 統計の実質設備投資は 2014 年 10-12 月期には前期比減少となり、消費税率引き上げ後の 成長のけん引役として期待されていた設備投資の停滞が確認された。しかし、足下で設備投資 の一致指標である資本財出荷は増加傾向にある。先行指標である機械受注は均せば上向きの動 きとなっていることに加えて、日銀短観などの設備投資計画調査でも、企業の設備投資に対す る積極的な姿勢が示されている。さらに、原油価格の下落が企業収益の改善に寄与することも 設備投資の増加を支援する材料となるだろう。これらの理由から、GDP ベースの設備投資は徐々 に増加基調に転じる見込みである。 4/6 図表 5:機械受注の民需と名目設備投資 (億円) (年率・兆円) 11,000 80 10,000 1-3月期見通し 75 9,000 70 8,000 65 7,000 60 6,000 5,000 55 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) 民需(船電を除く、1四半期先行) (注)太線は3ヶ月移動平均線。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 名目設備投資(SNAベース、右軸) 5/6 概 況 民需(船舶・電力を除く、季節調整済み前月比) 船舶を除く合計(季節調整値) (兆円) 3.0 (%) 20 (兆円) 30 受注額:左軸 前月比 15 28 2.5 10 26 2.0 5 24 0 1.5 22 -5 販売額:左軸 20 1.0 -10 18 3ヶ月移動平均前月比 -15 受注残高:右軸 0.5 16 -20 0.0 -25 06 07 08 09 10 11 12 13 14 14 06 15 80 実質設備投資 (GDP):右軸 実質民需(3ヶ月移動平均):左軸 0.9 0.8 0.7 実質民需:左軸 06 07 08 09 10 10 11 12 13 14 15 民需(船舶・電力除く)の達成率と実質設備投資 (年率・兆円) (兆円) 1.1 0.5 09 (年) 実質機械受注と実質設備投資(季節調整値) 0.6 08 (年) (出所)内閣府統計より大和総研作成 1.0 07 11 12 13 14 15 (前年比、%) 30 (%) 120 78 115 76 110 74 105 72 100 70 95 68 90 66 85 64 80 62 75 60 70 民需の見通し達成率(半年先行):左軸 20 10 0 -10 実質設備投資 (GDP):右軸 -20 -30 00 02 04 06 08 10 12 14 (年) (年) (注)実質民需は、船舶・電力を除くベースで、企業物価指数(日本銀行)の国内資本財によって実質化。 (出所)内閣府、日本銀行統計より大和総研作成 機械受注(季節調整値)と設備判断DI (兆円) 機械受注(季節調整値)と工作機械受注 (%pt) 1.3 -10 民需(船舶・電力を除く) :左軸 先行き ↑設備の不足感 1.2 (兆円) 1.4 (十億円) 100 90 -5 1.1 80 1.2 70 1.1 60 1.0 50 0.9 10 40 0.8 15 30 0.7 0 1.0 5 0.9 0.8 0.7 1.3 民需(船舶・電力を除く) :右軸 0.6 20 0.6 20 日銀短観の設備判断DI 右軸、軸反転 ↓設備の過剰感 0.5 25 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 10 (年) 0.5 0.4 0 90 14 (注)設備判断DIの段差は、統計の基準変更に伴うもの。 (出所)内閣府、日本銀行、日本工作機械工業会統計より大和総研作成 工作機械受注(内需):左軸 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 (年) 6/6 機種別と製造業・非製造業の動向 機種別・大分類の受注額(季節調整値) 機種別・大分類の受注額【内需】(季節調整値) (兆円) 1.0 (兆円) 0.7 電子・通信機械 0.9 電子・通信機械 0.6 原動機・重電機 0.8 0.5 0.7 0.6 産業機械 原動機・重電機 産業機械 0.4 0.5 0.3 0.4 0.3 工作機械 0.2 0.2 輸送機械 0.1 0.1 輸送機械 工作機械 0.0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 15 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 (年) 機種別・大分類の受注額【外需】(季節調整値) 機種別・主な中分類の受注額(季節調整値) (兆円) 0.5 (兆円) 0.6 産業機械 0.5 電子・通信機械 0.4 0.4 輸送機械 電子計算機 0.3 0.3 通信機 0.2 0.2 0.1 0.1 原動機・重電機 建設機械 工作機械 0.0 06 07 08 半導体製造装置 09 10 11 12 13 14 15 (注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。 (出所)内閣府統計より大和総研作成 機械受注と設備投資【製造業】(季節調整値) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (兆円) 0.7 7 機械受注(3ヶ月移動平均、 1四半期先行):左軸 6 0.5 (兆円) 0.7 (兆円) 11 機械受注(3ヶ月移動平均、 1四半期先行):左軸 0.6 8 0.5 0.4 4 0.3 3 7 0.4 設備投資(法人企業統計、全規模) :右軸 0.1 90 92 94 96 98 00 02 04 (出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成 06 08 10 12 2 1 14 (年) 10 9 5 0.2 15 (年) 機械受注と設備投資【非製造業(船舶・電力除く)】(季節調整値) (兆円) 0.6 0.0 (年) 0.3 6 設備投資(法人企業統計、全規模) :右軸 5 4 3 0.2 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 (年)
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