11月機械受注

経済分析レポート
2017 年 1 月 16 日 全 6 頁
Indicators Update
11 月機械受注
前月比▲5.1%。非製造業の減少が全体を押し下げ
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 前田 和馬
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

2016 年 11 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電
力を除く)は、前月比▲5.1%と 2 ヶ月ぶりに減少し、市場コンセンサス(同▲1.7%)
も下回った。製造業は同+9.8%と増加したものの、非製造業(船舶・電力を除く)が
同▲9.4%と減少し、全体を押し下げた。

11 月分のデータに関して、需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+9.8%と 4 ヶ月
ぶりに増加した。製造業の受注動向は、均してみると、横ばい圏で推移していると評価
できよう。非製造業(船舶・電力を除く)は前月比▲9.4%と 2 ヶ月ぶりに減少した。
非製造業の受注動向は、比較的高い水準を保っているものの、このところ一進一退で推
移している。一方、外需は前月比+37.3%と 4 ヶ月連続で増加した。

設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。
依然力強さを欠く内需を背景として、製造業においては企業収益に頭打ち感が見られて
おり、設備投資に対する慎重姿勢は強まりつつある。ただし、タイトな労働需給を背景
とした合理化・省力化投資に加えて、非製造業においては、経常利益が高水準にあるこ
と、交通・物流インフラ整備向けの投資が期待されることなどが、今後の機械受注を下
支えするプラス要素といえよう。
図表 1:機械受注の概況(季節調整済み前月比、%)
2015年 2016年
12月
1月
1.0
15.0
2月
▲9.2
民需(船電を除く)
コンセンサス
DIR予想
▲3.0
41.2 ▲30.6
製造業
4.5
1.0
10.2
非製造業(船電を除く)
▲2.2 ▲29.4
6.3
外需
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
3月
4月
5.5 ▲11.0
5月
▲1.4
19.7 ▲13.3
▲6.4
▲6.9
▲3.9
▲0.3
28.5
▲6.9 ▲14.8
6月
8.3
7月
4.9
8月
▲2.2
9月
▲3.3
10月
4.1
17.7
0.3
2.1
8.6
10.8 ▲11.7
▲4.0
▲1.9
6.8
▲5.0
▲0.9
1.4
▲1.4
4.6
1.9
11月
▲5.1
▲1.7
▲2.8
9.8
▲9.4
37.3
株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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11 月機械受注:非製造業の減少が全体を押し下げ
2016 年 11 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除
く)は、前月比▲5.1%と 2 ヶ月ぶりに減少し、市場コンセンサス(同▲1.7%)も下回った。
製造業は同+9.8%と増加したものの、非製造業(船舶・電力を除く)が同▲9.4%と減少し、
全体を押し下げた。
製造業:4 ヶ月ぶりに増加
11 月分のデータに関して、需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+9.8%と 4 ヶ月ぶりに
増加した。製造業の受注動向は、均してみると、横ばい圏で推移していると評価できよう。
内訳を見ると、
「電気機械」
(前月比+68.0%)のほか、
「非鉄金属」
(同+339.0%)、
「その他
製造業」(同+9.9%)などが前月から増加した。電気機械は、前月の反動から増加したが、均
してみると、足下では横ばい圏で推移している。世界的なスマートフォン需要の低迷などを背
景に、同業種向けの機械需要が減退しているとみられ、先行きも慎重に見ておく必要があるだ
ろう。非鉄金属については、大型受注の影響から大幅増になったと思われる。一方、
「化学工業」
(同▲33.3%)や「石油製品・石炭製品」
(同▲55.8%)、
「金属製品」
(同▲41.8%)などが前月
からの反動の影響等により減少した。
非製造業: 2 ヶ月ぶりの減少。一進一退の推移が続く
非製造業(船舶・電力を除く)は前月比▲9.4%と 2 ヶ月ぶりに減少した。非製造業の受注動
向は、比較的高い水準を保っているものの、このところ一進一退で推移している。
内訳を見ると、
「その他非製造業」
(前月比▲16.1%)、
「運輸業・郵便業」
(同▲12.5%)、
「卸
売業・小売業」
(同▲16.0%)などが前月から減少した。その他非製造業については、前月の反
動から大幅に減少した。運輸業・郵便業については、2 ヶ月連続の大幅減となり、2016 年初か
らの増加傾向に一服感が見られる。一方、前月から増加したのは「金融業・保険業」(同+47.4%)、
「建設業」(同+10.5%)、
「通信業」(同+4.4%)の 3 業種であり、増加した業種は限定的であっ
た。
3/6
図表 2:需要者別機械受注(季節調整値)
(億円)
(億円)
6,000
5,500
5,500
5,000
5,000
4,500
4,500
4,000
4,000
3,500
3,500
3,000
3,000
2,500
10-12月期
見通し
10-12月期見通し
2,000
2,500
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
製造業
12345678910
11212345678910
11212345678910
112
14
(年)
15
16
(月)
(年)
非製造業(船舶、電力を除く)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
外需: 4 ヶ月連続の増加
外需は前月比+37.3%と 4 ヶ月連続で増加した。原動機、鉄道車両を筆頭にすべての機種で
増加したこと、11 月の為替相場が大幅に円安に振れたこと等が、大幅増に繋がった模様である。
足下の外需は堅調に推移していると評価できる。
11 月に実施された米国の大統領選挙で共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利した後、金
融市場では円安・株高が進行しており、短期的には円安が輸出金額を下支えするであろう。一
方、足下の為替市場では円高方向への動きが見られることに加えて、中長期的には、内向き志
向の政策を掲げる同氏の政策運営によって、世界経済の不透明感が強まる可能性がある。先行
きの外需は、メインシナリオとして緩やかに持ち直していくと想定しているが、引き続き慎重
に見ておきたい。
図表 3:一般機械の輸出と機械受注の外需
図表 4:一般機械の輸出金額(主要国・地域)
(億円)
(億円)
3,500
3,500
(億円)
18,000
16,000
一般機械の輸出
中国
中国
米国
米国
3,000
3,000
14,000
2,500
2,500
12,000
10,000
2,000
2,000
8,000
1,500
1,500
6,000
4,000
2,000
機械受注(外需)
1,000
1,000
ASEAN
ASEAN
機械受注(外需、3ヶ月移動平均)
EU
EU
500
500
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
(注)輸出金額の季節調整は大和総研。
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
04 05
05 06
06 07
07 08
08 09
09 10
10 11
11 12
12 13
13 14
14 15
15 16
16
04
(年)
(注)季節調整は大和総研。
(出所)財務省統計より大和総研作成
4/6
先行きの機械受注は横ばい圏の推移を予想
内閣府が公表した 10-12 月期見通しでは、民需(船舶・電力を除く)は前期比▲5.9%と、前
四半期から減少すると見込まれている。10 月、11 月の結果を踏まえると、10-12 月期見通しは、
12 月の受注が前月比▲11.0%以上であれば達成されるため、見通し達成の確度は高いと考える。
設備投資の先行指標である機械受注は先行き、横ばい圏で推移する展開を予想している。依
然力強さを欠く内需を背景として、製造業においては企業収益に頭打ち感が見られており、設
備投資に対する慎重姿勢は強まりつつある。ただし、タイトな労働需給を背景とした合理化・
省力化投資に加えて、非製造業においては、経常利益が高水準にあること、交通・物流インフ
ラ整備向けの投資が期待されることなどが、今後の機械受注を下支えするプラス要素といえよ
う。
図表 5:機械受注の民需と名目設備投資(季節調整値)
(億円)
11,000
(年率・兆円)
95
10,000
90
85
9,000
80
8,000
75
7,000
70
10-12月期見通し
6,000
5,000
65
60
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年)
民需(船電を除く、1四半期先行)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
名目設備投資(SNAベース、右軸)
5/6
概 況
民需(船舶・電力を除く、季節調整済み前月比)
船舶を除く合計(季節調整値)
(兆円)
30
(兆円)
3.0
(%)
20
受注額:左軸
前月比
15
28
2.5
26
10
2.0
5
24
1.5
0
22
販売額:左軸
-5
20
1.0
18
-10
受注残高:右軸
0.5
-15
16
3ヶ月移動平均前月比
0.0
-20
06
07
09
08
10
11
12
13
14
15
14
06
16
80
実質設備投資
(GDP):右軸
実質民需(3ヶ月移動平均):左軸
0.9
0.8
0.7
0.5
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
11
12
13
14
15
16
(前年比、%)
30
(%)
120
78
115
76
110
74
105
72
100
70
95
68
90
66
85
64
80
62
75
60
70
実質民需:左軸
06
10
民需(船舶・電力除く)の達成率と実質設備投資
(年率・兆円)
0.6
09
(年)
実質機械受注と実質設備投資(季節調整値)
1.0
08
(年)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
(兆円)
1.1
07
民需の見通し達成率(半年先行):左軸
20
10
0
-10
実質設備投資
(GDP):右軸
-20
-30
00
02
04
06
08
10
12
14
16
(年)
(年)
(注)実質民需は、船舶・電力を除くベースで、企業物価指数(日本銀行)の国内資本財によって実質化。
(出所)内閣府、日本銀行統計より大和総研作成
機械受注(季節調整値)と工作機械受注
機械受注(季節調整値)と設備判断DI
(兆円)
(%pt)
1.3
-10
民需(船舶・電力を除く)
:左軸
先行き
↑設備の不足感
1.2
90
-5
1.1
0
1.0
5
80
民需(船舶・電力を除く)
:右軸
1.1
60
1.0
0.9
40
0.8
15
30
0.7
20
↓設備の過剰感
日銀短観の設備判断DI
右軸、軸反転
20
0.5
25
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
10
0.6
工作機械受注(内需):左軸
0
0.5
0.4
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
16
(注)設備判断DIの段差は、統計の基準変更に伴うもの。
(出所)内閣府、日本銀行、日本工作機械工業会統計より大和総研作成
1.2
70
50
0.8
0.6
1.3
10
0.9
0.7
(兆円)
1.4
(十億円)
100
(年)
(年)
6/6
機種別と製造業・非製造業の動向
機種別・大分類の受注額(季節調整値)
機種別・大分類の受注額【内需】(季節調整値)
(兆円)
1.0
(兆円)
0.7
電子・通信機械
0.9
電子・通信機械
0.6
原動機・重電機
0.8
0.5
0.7
0.6
産業機械
原動機・重電機
産業機械
0.4
0.5
0.3
0.4
0.3
工作機械
0.2
0.2
輸送機械
0.1
0.1
輸送機械
工作機械
0.0
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
0.0
06
(年)
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
機種別・主な中分類の受注額(季節調整値)
機種別・大分類の受注額【外需】(季節調整値)
(兆円)
0.5
(兆円)
0.6
産業機械
0.5
電子・通信機械
0.4
電子計算機
0.4
輸送機械
0.3
通信機
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
原動機・重電機
工作機械
0.0
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
16
7
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
0.5
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
6
(兆円)
0.7
(兆円)
11
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
0.6
0.4
4
0.3
3
8
7
0.4
0.1
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
2
1
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
10
9
5
0.5
0.2
16
機械受注と設備投資【非製造業(船舶・電力除く)】(季節調整値)
(兆円)
0.7
06
(年)
機械受注と設備投資【製造業】(季節調整値)
(兆円)
0.6
建設機械
半導体製造装置
0.0
0.3
6
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
0.2
5
4
3
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(年)
大和証券㈱のお客様へ
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 取引コースや商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、上場有価証券等書面、契約締結前交
付書面、目論見書、等をよくお読みください。
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ものもあります。
商号等 :大和証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 108 号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会