12月機械受注

経済分析レポート
2015 年 2 月 12 日
全6頁
Indicators Update
12 月機械受注
このところの減速懸念を払しょくする強い結果
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 久後 翔太郎
[要約]

2014 年 12 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を
除く)は、前月比+8.3%となり、市場コンセンサス(同+2.3%)を上回る結果となった。
このところ機械受注はやや減速感が見られていたが、増加傾向が続いていることを確認
させる強い結果であった。

需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+24.1%と 3 ヶ月ぶりに増加した。非製造業(船
舶・電力を除く)は前月比+7.2%と 2 ヶ月連続で増加した。過去 2 ヶ月間の弱さに照らす
と、必ずしも強い結果とは言えないが、増加傾向へ復する兆しが見える内容であった。

内閣府より公表された 2015 年 1-3 月期見通しでは、民需(船舶・電力を除く)は前期
比+1.5%と、3 四半期連続の増加が見込まれている。この数値は、2015 年 1 月から 3
月にそれぞれ前月比▲2.0%の減少でも達成可能であることから、ハードルは低い。民
需(船舶・電力を除く)は 2014 年 10-12 月期にもたつきがみられたものの、現状緩や
かながら増加傾向にあることを考慮すると、企業の見通しはやや控えめであると言える。
後述するように、設備投資は増加に向かう地合いが整っていることから、大和総研では
2015 年 1-3 月期の民需(船舶・電力を除く)は内閣府見通しを上回る伸び率となり、
増勢が一段と強まると予想している。
図表 1:機械受注の概況(季節調整済み前月比、%)
2014年
1月
2月
8.1 ▲ 4.6
3月
4月
19.1 ▲ 9.1
民需(船電を除く)
コンセンサス
DIR予想
4.9 ▲ 4.6
23.7 ▲ 9.4
製造業
6.1 ▲ 5.1
8.5
0.9
非製造業(船電を除く)
3.7
2.3
3.2
71.3
外需
(注)コンセンサスはBloomberg。
(出所)内閣府統計、Bloombergより大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
5月
▲ 19.5
▲ 18.6
▲ 17.8
▲ 45.9
6月
8.8
7月
3.5
8月
4.7
9月
10月
2.9 ▲ 6.4
11月
1.3
12月
8.3
2.3
3.5
6.7
20.3 ▲ 10.8
12.0 ▲ 5.5 ▲ 7.0
24.1
4.0 ▲ 4.3
10.7
1.7 ▲ 7.5
0.5
7.2
62.8 ▲ 42.6
29.1 ▲ 9.4 ▲ 4.6 ▲ 6.0 ▲ 6.9
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2/6
12 月機械受注:このところの減速懸念を払しょくする強い結果
2014 年 12 月の機械受注統計によると、国内設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除
く)は、前月比+8.3%となり、市場コンセンサス(同+2.3%)を上回る結果となった。この
ところ機械受注はやや減速感が見られていたが、増加傾向が続いていることを確認させる強い
結果であった。
製造業:3 ヶ月ぶりの増加
需要者別に受注を見ると、製造業は前月比+24.1%と 3 ヶ月ぶりに増加した。業種別に見る
と、その他製造業(同+114.0%)、その他輸送用機械(同+50.1%)、自動車・同付属品(同+
18.9%)、一般機械(同+5.2%)、パルプ・紙・紙加工品(同+219.6%)などの増加が全体を押し
上げた。その他製造業については、過去と比較しても極めて高い水準にあり、大型案件による
増加とみられるため、やや割り引いて評価する必要があるだろう。パルプ・紙・紙加工品も同
様に高い伸び率となったが、これは前月の水準が極めて低かったことによる。また、一般機械
に関しては引き続き増加傾向が続いている。
非製造業:増加傾向へ復する兆し
非製造業(船舶・電力を除く)は前月比+7.2%と 2 ヶ月連続で増加した。過去 2 ヶ月間の弱
さに照らすと、必ずしも強い結果とは言えないが、増加傾向へ復する兆しが見える内容であっ
た。内訳をみると、その他非製造業(同+15.8%)、金融業・保険業(同+52.4%)、運輸業・郵
便業(同+30.1%)などの増加が押し上げ要因となった。このところ弱めの動きとなっていた、
その他非製造業や金融業・保険業に底打ちの動きがみられる。また、運輸業・郵便業に関して
は 2014 年後半以降、増加傾向が明確となっている。
図表 2:需要者別機械受注(季節調整値)
(億円)
(億円)
6,000
18,000
5,500
16,000
5,000
14,000
4,500
12,000
4,000
10,000
1-3月期
見通し
3,500
1-3月期見通し
(外需)
8,000
3,000
6,000
2,500
4,000
1-3月期見通し
(民需(船電除く))
2,000
2,000
09
10
11
12
13
14
09
15
10
11
12
13
14
(年)
製造業
非製造業(船舶、電力を除く)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
15
(年)
外需
民需(船舶、電力を除く)
3/6
外需:減少傾向が鮮明となるも徐々に底入れに向かう公算
外需は前月比▲6.9%と 4 ヶ月連続で減少した。2014 年 4-6 月期に大幅に増加した反動もあり、
足下では減少傾向が鮮明となっている。先行きは欧州、中国経済の減速を主因に不透明感が強
まっていることには警戒が必要であるが、堅調な景気拡大の続く米国向けが下支えするとみて
いる。実際、内閣府の見通しによると 2015 年 1-3 月期には前期比+4.0%と 3 四半期ぶりの増
加を見込んでおり、徐々に底入れに向かう公算である。
図表 3:一般機械の輸出と機械受注の外需
(億円)
18,000
図表 4:一般機械の輸出金額(主要国・地域)
(億円)
3,500
中国
16,000
一般機械の輸出
3,000
米国
14,000
2,500
12,000
10,000
2,000
8,000
1,500
6,000
4,000
2,000
機械受注(外需)
ASEAN
1,000
EU
機械受注(外需、3ヶ月移動平均)
500
0
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
(注)季節調整は外需は内閣府、一般機械輸出は大和総研。
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(年)
(注)季節調整は大和総研。
(出所)財務省統計より大和総研作成
2015 年 1-3 月期は内閣府見通しを上回る伸び率を期待
内閣府より公表された 2015 年 1-3 月期見通しでは、民需(船舶・電力を除く)は前期比+1.5%
と、3 四半期連続の増加が見込まれている。この数値は、2015 年 1 月から 3 月にそれぞれ前月
比▲2.0%の減少でも達成可能であることから、ハードルは低い。民需(船舶・電力を除く)は
2014 年 10-12 月期にもたつきがみられたものの、現状緩やかながら増加傾向にあることを考慮
すると、企業の見通しはやや控えめであると言える。後述するように、設備投資は増加に向か
う地合いが整っていることから、大和総研では 2015 年 1-3 月期の民需(船舶・電力を除く)は
内閣府見通しを上回る伸び率となり、増勢が一段と強まると予想している。
GDP 統計の設備投資は 7-9 月期には前期比減少となり、消費税率引き上げ後の成長のけん引役
として期待されていた設備投資の弱さが内需低迷の一因となった。しかし、先行指標である機
械受注は均せば上向きの動きとなっていることに加えて、日銀短観などの設備投資計画調査で
も、企業の設備投資に対する積極的な姿勢が示されている。さらに、原油価格の下落が企業収
益の改善に寄与することも設備投資の増加を支援する材料となるだろう。これらの理由から、
GDP ベースの設備投資は 2014 年 10-12 月期に増加に転じ、その後も設備投資の増加基調が明確
化する見込みである。
4/6
図表 5:機械受注の民需と名目設備投資
(億円)
(年率・兆円)
80
11,000
10,000
1-3月期見通し
75
9,000
70
8,000
65
7,000
60
6,000
5,000
55
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年)
民需(船電を除く、1四半期先行)
(注)太線は3ヶ月移動平均線。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
名目設備投資(SNAベース、右軸)
5/6
概 況
民需(船舶・電力を除く、季節調整済み前月比)
船舶を除く合計(季節調整値)
(兆円)
3.0
(%)
20
(兆円)
30
受注額:左軸
前月比
15
28
2.5
10
26
2.0
5
24
0
1.5
22
-5
販売額:左軸
20
1.0
-10
18
3ヶ月移動平均前月比
-15
受注残高:右軸
0.5
16
-20
0.0
-25
06
07
08
09
10
11
12
13
14
14
06
15
80
実質設備投資
(GDP):右軸
実質民需(3ヶ月移動平均):左軸
0.9
0.8
0.7
実質民需:左軸
06
07
08
09
10
10
11
12
13
14
15
民需(船舶・電力除く)の達成率と実質設備投資
(年率・兆円)
(兆円)
1.1
0.5
09
(年)
実質機械受注と実質設備投資(季節調整値)
0.6
08
(年)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
1.0
07
11
12
13
14
15
(前年比、%)
30
(%)
120
78
115
76
110
74
105
72
100
70
95
68
90
66
85
64
80
62
75
60
70
民需の見通し達成率(半年先行):左軸
20
10
0
-10
実質設備投資
(GDP):右軸
-20
-30
00
02
04
06
08
10
12
14
(年)
(年)
(注)実質民需は、船舶・電力を除くベースで、企業物価指数(日本銀行)の国内資本財によって実質化。
(出所)内閣府、日本銀行統計より大和総研作成
機械受注(季節調整値)と設備判断DI
(兆円)
機械受注(季節調整値)と工作機械受注
(%pt)
1.3
-10
民需(船舶・電力を除く)
:左軸
先行き
↑設備の不足感
1.2
(十億円)
100
(兆円)
1.4
90
-5
1.1
80
1.2
70
1.1
60
1.0
50
0.9
10
40
0.8
15
30
0.7
0
1.0
5
0.9
0.8
0.7
1.3
民需(船舶・電力を除く)
:右軸
20
0.6
20
日銀短観の設備判断DI
右軸、軸反転
↓設備の過剰感
0.5
25
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
10
(年)
0.5
0.4
0
90
14
(注)設備判断DIの段差は、統計の基準変更に伴うもの。
(出所)内閣府、日本銀行、日本工作機械工業会統計より大和総研作成
0.6
工作機械受注(内需):左軸
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(年)
6/6
機種別と製造業・非製造業の動向
機種別・大分類の受注額(季節調整値)
機種別・大分類の受注額【内需】(季節調整値)
(兆円)
1.0
(兆円)
0.7
電子・通信機械
0.9
電子・通信機械
0.6
原動機・重電機
0.8
0.5
0.7
0.6
産業機械
原動機・重電機
産業機械
0.4
0.5
0.3
0.4
0.3
工作機械
0.2
0.2
輸送機械
0.1
0.1
輸送機械
工作機械
0.0
06
07
08
09
10
11
12
13
0
14
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(年)
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
(年)
機種別・大分類の受注額【外需】(季節調整値)
機種別・主な中分類の受注額(季節調整値)
(兆円)
0.5
(兆円)
0.6
産業機械
0.5
電子・通信機械
0.4
0.4
輸送機械
電子計算機
0.3
0.3
通信機
0.2
0.2
0.1
0.1
原動機・重電機
建設機械
工作機械
0.0
06
07
半導体製造装置
08
09
10
11
12
13
0.0
14
06
(注)3ヶ月移動平均値で、季節調整は大和総研。
(出所)内閣府統計より大和総研作成
機械受注と設備投資【製造業】(季節調整値)
7
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
0.6
08
09
10
11
12
13
14
(年)
機械受注と設備投資【非製造業(船舶・電力除く)】(季節調整値)
(兆円)
(兆円)
0.7
07
(年)
6
(兆円)
0.7
(兆円)
11
機械受注(3ヶ月移動平均、
1四半期先行):左軸
0.6
9
5
0.5
8
0.5
0.4
4
0.3
3
7
0.4
0.2
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
0.1
90
92
94
96
98
00
02
04
(出所)内閣府、財務省統計より大和総研作成
06
08
10
12
2
1
14 (年)
10
0.3
6
設備投資(法人企業統計、全規模)
:右軸
5
4
3
0.2
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年)