RNA の配列情報を DNA に変換し、その DNA の配列を読むことにより、もとの RNA の配列を決定 する手法。次世代シークエンサーによる高速シーケンスを用いてこの配列決定を行うことによ り、遺伝子の発現状況を網羅的に解析する。今回の研究材料であるハイゴケのようなゲノム情 報が不明な生物においても遺伝子発現情報を得ることができる。 (注5)Botrytis cinerea 貴腐ワインにおいてブドウの糖度を高めるカビとして知られるが、幅広い植物に寄生する植物 病原菌。果実や花の灰色かび病を初め、斑点病、立枯病などを引き起こす。 9.添付資料: 図1.ハイゴケとイネのモミラクトン生合成経路 ジテルペン系のファイトアレキシンであるモミラクトンは、GGDP という炭素数 20 のテルペ ン分子から、2段階の化学反応を経てピマラジエンに変換されたのちさらに数段階の酸化反応 により生産される。 上段のイネでは2つの酵素遺伝子により GGDP からの2段階の環化反応が進 むが、ハイゴケでは HpDTC1 の1つの酵素によって、2段階の反応が触媒される。 図2.さまざまなストレスにより誘導をうける HpDTC1 遺伝子 ハイゴケにおいてモミラクトン生産の鍵となる初発の環化反応をになう HpDTC1 の遺伝子発現 は、塩化銅やキトサンなどのエリシター処理だけでなく、病原菌である B. cinerea 菌の感染に よっても誘導される。また、植物ホルモンのジャスモン酸では誘導を受けないが、その前駆体 である OPDA による誘導を示す。HpDTC1 の遺伝子発現誘導に合わせて、モミラクトンの生産も 高まる。
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