修飾核酸を用いた高機能核酸 アプタマーの開発 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 分子複合医薬研究グループ グループ長 宮岸 真 核酸アプタマーとは • ターゲット分子に特異的に結合する核酸分子 • 数pM~と高い親和性が可能 • 抗体では作製できないターゲット(毒物・低抗原性・低分子化合物)に対しても 作製可能 • 加齢性黄斑変性症に対して薬が認可 • SELEX法により、ランダム化された多くの配列から、ターゲット分子に結合す る配列を選別する 30塩基-40塩基のランダム領域 (NNNNN…NNNN N; G or A or T or C) 1018~1023種類の配列から選別 SELEX法の概念図 ATPに対するアプタマー これまで取得された核酸アプタマー ターゲット分子 DNA/RNA/修飾 Kd Reference ATP DNA, RNA 6 uM, 0.7 uM Szostak 1993, 1995 α-Thorombin DNA, RNA 200 nM, 1 nM Bock 1992, White 2001 IgE DNA 23 nM Mendonsa and Bowser 2004 IgG RNA mPrP RNA HCV NS3 RNA Kumar 1997 PSMA 2’-F-modified RNA Wang 2009 gp120 2’-F-modified RNA Khati 2003 800 proteins in Serum Modified DNA Miyakawa 2008 5.6 nM ~pM Nishikawa 2006 Larry Gold 2010 従来技術とその問題点 • 核酸アプタマーを検出技術として実用化され ているものがほとんどない。 → 安定性、特異性に問題がある場合が多い。 • 修飾核酸の使用が限定的である。 → 高機能化に費用、時間が掛かる。 様々な機能性を有する修飾核酸を用いた核酸アプタマー のスクリーニング技術の開発が待ち望まれている。 高機能アプタマーの取得法の開発 1回のセレクションでアプタマーを取得できれば様々な修飾核酸の使用が可能。 従来法 (SELEX法) N=30~50塩基 NNNN…..NNNNN ランダム化合成DNA 高親和性 アプタマー PCRで増幅 N N N 修飾核酸 の使用 一本鎖化 >8サイクル ターゲットに結合 次世代 シークエンサー 解析 ターゲットに結合 PCR:1サイクル 結合していない配列を洗浄 で除く 結合配列を抽出 修飾核酸を使うには2サイクル目からはアミダイドが必要 新法 N N=6-15塩基 N N N 結合配列を抽出 結合していない配列を 洗浄で除く 修飾は最初の合成テンプレートのみで良い • 適用できる修飾核酸: LNA, チオ化、メチル化、アミノ酸修飾、プラスチャージ • 部位特異的に異なる修飾を入れることができる。 • 配列を包括的に解析できる。(スペクトル解析による比較) N N N N N N N 1サイクルでの高親和性アプタマーの取得 多くのアプタマーはステムループ構造(N~16) ループ:19塩基 ループ (Kd=40 nM) ステム Streptavidin アプタマー ループ:16塩基 1サイクルセレクション N=16 Streptavidin ビーズでセレ クション (Kd=59 nM 次世代シークエンス 配列解析 N=16塩基のランダマイズ:4.2 x 1010 16塩基のランダマイズ化アプタマーのセレクションが 一回のサイクルで可能に ⇒ 修飾核酸の適用へ より短いループ配列で同等のKdの アプタマーの取得に成功!! One Step Selection法でのアプタマーの網羅的単離( Streptavidinの例) アプタマーライブラリー N=20 ・Streptavidinをターゲット ・One Step Selection ・次世代シークエンサーによる配列の大量解析 ループ領域、20塩 基をランダム化 • 3つの構造、77配列のアプタマーを 同定することに成功 420=1.09 x 1012 約1兆のライブラリーサイズ モチーフ1 モチーフ2 ACGCACCGATCGCAGGTA ACGCACCGATCGCAGGTA ACGCACCGATCGCAGGGA ACGCACCGGTCGCAGGTT ACGCACCGATCGCAGGGA GCGCACCGGTCGCAGGTT ACGCACCGTTCGCAGGTT ACGCACCGTTCGCAGGTT ACGCCCCGATCGCAGGGT ACGCCCCGATCGCAGGGA AAGCACCGATCGCAGGGA GCGCCCCGATCGCAGGGT GCGCCCCGATCGCAGGGA 34配列 モチーフ3 CCGCTGAATGACGCAACTTC CCGCTGGATGCCGCAATTCC TCGCCGTGTGCCGCAACATC ACGCCAAATGACGCAATGTT CCGCTAAATGCCGCAATTTT TTGCTGGGTGACGCATACCC CCGCTGTGTGCCGCAATCAC CCGCTAACTGCCGCAATGTT TTGCTGGTTGACGCATAACC GCGCCATGTGACGCAACATC ACGCGGGACGACGCAGCCCT TCGCTGGCCGACGCAGGACC TTGCCCGATGACGCATATCG 27配列 CGCATAATTGGGTTAT CGCGTAATTGGGTTAC CGCATGATTGGGTCAT CGCGTGATTGGGTCAC CGCATTATTGGGTAAT CGCGATATTGGGTATC CGCAAACATCGGTTTT CGCAAACATCGGTTTT CGCAAACATCGGTTTT CGCGTGATTAGGTCAC CGCGGAATTGGGTTCC 11配列 One Step Selection法によるアプタマーの網羅的単離(Thrombinの例) アプタマーライブラリー N=19 ・Thrombinをターゲット ・One Step Selection ・次世代シークエンサーによる配列の大量解析 ループ領域、19塩 基をランダム化 419=2.7 x 1011 約0.3兆のライブラリーサイズ • 13の構造、78配列のアプタマーを同 定することに成功 上位92配列中、78配列がG-qurtetモチーフを持つポジテイブ配列 LNAを含むライブラリーからのアプタマーの単離 Streptavidineアプタマーの構造からLNAを含むライブラリーを設計 LNA-St20-1 GUGGAGAGGUTCTUACANNNNNaccNNNNNNNggt NNTGTGAGAGCCTCTCCGC 知られている Streptavidineアプタマー のモチーフとは異なる!! • Streptavidinをターゲット Count 566 217 167 118 78 72 65 62 Seqeunce CGCGTACCTATTGCTGGTAA CGCGTACCTATAGCTGGTAA CGCGTACCTATGGCTGGTAA ATATAACCCCATCACGGTAA ACTCAACCACTTCTCGGTCA GACGAACCCTCTTTTGGTAG CCTCCACCCATCTCTGGTAA TGACGACCCTCTATTGGTAC • One Step Selection ・次世代シークエンサーによる 配列の大量解析 DNA-st20-1 5 7 4 6 DNA 2 1 5 YData LNA 3 4 3 2 1 0 0 100 200 300 X Data 400 500 0 0 100 200 300 X Data Kd=38.9 nM Kd=118.5 nM 400 500 まとめ • 1ステップでのスクリーニングで、修飾核酸を用いた アプタマーを取得する系を確立した。 • ターゲットとして、受容体、低分子化合物、糖などを 用いてスクリーニングして、アプタマーを得ることが できる。 • 修飾核酸の検討、2’F、2’-o-methyl、メチル化 etc. 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来は修飾核酸の使用が限られていたが、 一回セレクションと次世代シークエンサーによ る大量解析により、修飾核酸を有するアプタ マーの取得が可能となった。 • 本技術の適用により、これまでよりコンパクト で(~30塩基)、高機能な核酸アプタマーの開 発が期待できる。 想定される用途 • 抗体を得ることができないターゲットに対する プローブの取得。診断、酵素の阻害、染色等 • 受容体をターゲットとした場合には、ドラッグ デリバリー、創薬としての使用も期待できる。 実用化に向けた課題 • 現在、DNAアプタマーの取得に関しては、開発済み。 しかし、どのような修飾核酸を使ったライブラリーを 用いるのが有効化については開発途上。 • 今後、様々な修飾核酸を用いたライブラリーの実験 データを取得し、どのような修飾核酸を使ったら有 効であるか明らかにする。 • 実用化に向けて、Kd値をサブnMまで向上できるよ うな最適化技術を確立する必要もあり。 企業への期待 • 特定のターゲットに対する核酸アプタマーが欲しい という企業の方との共同研究 • 抗体ができないようなターゲットに対する核酸アプタ マーの取得 • 核酸アプタマーを使ったデリバリー法、創薬の開発 研究 • 核酸医薬品の先進的研究 本技術に関する知的財産権 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :マイクロベシクルに対する核酸アプタマー : PCT/JP2014/081954 :産総研 :宮岸 真、村上 和由、山崎 和彦、池本 光志 現在、複数のアプタマーについて出願を検討中。 産学連携の経歴 • 2015年- ベンチャーと共同研究実施 • 2015年- 大手製薬会社と共同研究実施 • 2016年- 大手試薬会社と共同研究実施(予定) • 2016年- 科研費挑戦的萌芽研究に採択 「シンプル且つ高機能なDNA/RNAキメラ型核酸アプタマーの技術基盤の構築」 現在、外資診断薬企業とも交渉中。 お問い合わせ先 宮岸 研究室 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生命工学領域研究戦略部 イノベーションコーディネータ 新間 陽一 TEL 029-862 - 6032 FAX 029-862 - 6048 e-mail [email protected]
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