次回用

物理学演習 III(量子力学)
No. 4
2016. 5. 10.
[1] 【LS 結合相互作用】
軌道角運動量演算子 L とスピン演算子 S の固有状態をそれぞれ |l, m⟩、|1/2, ±1/2⟩ と
表すとき
L2 |l, m⟩ = l(l + 1)h̄2 |l, m⟩ ,
⟩
⟩
1
3 2 1 1
2 1
S ,±
= h̄ , ±
,
2 2
4
2 2
Lz |l, m⟩ = mh̄ |l, m⟩ ,
⟩
⟩
1 1
1 1 1
Sz , ±
= ± h̄ , ±
,
2 2
2 2 2
が満たされる。一方で、全角運動量演算子 J = L + S の固有状態 | J, M ⟩⟩ は
J 2 | J, M ⟩⟩ = J(J + 1)h̄2 | J, M ⟩⟩ ,
Jz | J, M ⟩⟩ = M h̄ | J, M ⟩⟩ ,
を満たす。
(1) 軌道角運動量演算子 L とスピン演算子 S の固有状態 |l, m⟩, |1/2, ±1/2⟩ を合成し
て全角運動量演算子 J の固有状態 | l ± 1/2, m + 1/2 ⟩⟩ を作り、以下の式に出て
(±)
(±)
くる係数 cl,m , dl,m を求めなさい。
⟩⟩
⟩
⟩
1 1
1 1
(+)
(+)
l + 1, m + 1
= cl,m |l, m⟩ , +
+ dl,m |l, m + 1⟩ , −
,
2
2
2 2
2 2
⟩⟩
⟩
⟩
1 1
1 1
(−)
(−)
l − 1, m + 1
,+
,−
=
c
|l,
m⟩
+
d
|l,
m
+
1⟩
l,m
l,m
2 2
2 2 ,
2
2
(2) この物理系のハミルトニアン
H0 =
1 2
L + ξL · S
2I
に対して、固有エネルギーと固有状態を求めなさい。
[2] 【スピン結合系】
z 軸方向に一様な磁場 B 0 = (0, 0, B0 ) 中に置かれた 2 つのスピン 1/2 を持つ粒子 A, B
からなる結合系を考える。それぞれのスピンは磁場中でハミルトニアン
H0 = −γB 0 · S =
h̄ω0
σ3
2
に従う。ただし、Si = h̄2 σi である。また、2 粒子間の相互作用ハミルトニアンを
Hint =
3
h̄ωAB ∑
σi ⊗ σi
4
i=1
とすると、全ハミルトニアンは
H = H0A ⊗ I + I ⊗ H0B + Hint
=
3
h̄ω0A
h̄ω0B
h̄ωAB ∑
σ3 ⊗ I +
I ⊗ σ3 +
σi ⊗ σi
2
2
4
i=1
と表される。また、I は恒等演算子を表す。
(1) 角運動量演算子 J 2 , Jz に対して粒子 A, B のスピン固有状態をそれぞれ
|j = 1/2, m = 1/2⟩ ≡ |↑⟩ ,
|j = 1/2, m = −1/2⟩ ≡ |↓⟩
と表すとき、ハミルトニアン H を基底
|↑⟩ ⊗ |↑⟩ , |↑⟩ ⊗ |↓⟩ , |↓⟩ ⊗ |↑⟩ , |↓⟩ ⊗ |↓⟩
を用いて行列表示しなさい。
(2) エネルギー固有値を求めなさい。また、対応する固有状態を粒子 A, B のスピン
固有状態で表しなさい。
[3] 【磁場中のスピンの運動】
z 軸方向に一様な磁場 B 0 = (0, 0, B0 ) 中に置かれたスピン 1/2 粒子系のハミルトニ
アン
H = −γB 0 · S = −γB0 Sz = ω0 Sz
を考える。ここで γ は磁気回転比、ω0 は Larmor 周波数と呼ばれる。
(1) 初期状態 |ψ(0)⟩ を
θ
θ
|↑⟩ + sin |↓⟩
2
2
としたときに、ハミルトニアン H のもとで Schrödinger 方程式を解いて |ψ(t)⟩ を
求めなさい。
|ψ(0)⟩ = cos
(2) Sx , Sy の期待値を求めることで、|ψ(t)⟩ が周波数 ω0 を持つ歳差運動を表してい
ることを示しなさい。この現象は、Larmor 歳差運動と呼ばれる。