社団法人 人工知能学会 人工知能学会研究会資料 Artificial Intelligence SIG-Challenge-B002-9 JSAI Technical Report Japanese Society for 能動人工耳介 Active artificial pinnae 公文誠, 野田佳孝, 魚住守治 Makoto KUMON, Yoshitaka NODA and Shuji UOZUMI 熊本大学 Kumamoto University [email protected] ノ ッ チの周波数は音源定位にと っ て 重要な特徴量の一つで Abstract あ る と 考え ら え る . こ の原理を 利用し , 2 つ のマ イ ク ロ ホン のみで 構成さ This paper proposes an active artificial pinna that is able to change the form imitating ani- れる バイ ノ ーラ ル聴覚に お いて 音源定位能を ロ ボッ ト で 実現する 試みが報告さ れて いる . 下田ら [Shimoda, 2006] mals do in order to localize the sound source. The shape of the proposed pinna provides direc- 1 は , 十分な 周波数成分を 含む 音信号に 対し , 複数の周波 tivity to the sound source that locates in front of the pinna, and it has an ability to steer the 数帯域での耳介ノ ッ チ 周波数モデルを 用いて 音源方向を direction by the active motion. A kinematic model to control the pinna is also proposed in と で音源に ロ ボッ ト 頭部を 制御する サーボ系を 提案し た . Hörnstein[Hörnstein, 2006]は両耳の耳介周波数特性の差 this paper. In order to clarify the characteristics of the proposed pinna with respect to au- に基づいて , 音源の上下の情報を 得て 頭部を 制御し て いる . Finger[Finger, 2010]は , 両耳間周波数特性差が音源水平方 ditory functions, its directivity and the effect on the frequency response by the deformation 向の関数と な る こ と を 示し , 同一の耳介周波数特性を 持つ were studied with the developed device. と を 示し て いる . こ のよ う な 特性は耳介形状に依存する た 与え る 逆モ デルを 求め , フ ィ ード バッ ク 系を 構成する こ 左右の耳介を 用いて 上下方向の音源定位が可能であ る こ め , 著者ら は耳介形状に ついて , 耳介ノ ッ チを 所望のも の に 近づけ る 方法に ついて 検討し て いる [Kumon, 2009]. はじ めに と こ ろ で , 人間や猫な ど は頭部を 動かすこ と で音源定位 音源の位置や方向を 認識する 音源定位と 呼ばれる 機能は , 能が向上する こ と が知ら れて いる . 例え ば , 猫頭部を 固定 音情報を 利用し て 環境を 認識する 上で基本的な 情報を 与 する と 水平方向の音源定位に お け る 分解能が劣化する こ と が報告さ れて [Populin, 1998]おり , 身体動作を 伴う 能動 え る 重要な 聴覚機能の一つである . 人間や動物の音源定位 では , 特徴量の一部に到来音に対する 身体の伝達特性を 利 的な 音源定位が重要である こ と が示唆さ れる . ロ ボッ ト に 用し て いる と 言われる が , こ のよ う な 特徴量は特に耳に近 い上体の寄与が大き い . 例え ば定位感のある 音再生を 目指 よ る 音源定位において も , 同様に能動的な 作用を 考え る こ と は有用であ る と 考え ら れ, 実際, 佐々 木ら [Sasaki, 2009] すな ど の応用が考え ら れ, こ れら の影響を 頭部伝達関数と は移動ロ ボッ ト によ っ て マ イ ク ロ ホン アレ イ と ロ ボッ ト の し て モデル化する 様々 な 研究が精力的に行われて いる . 耳 介は頭部伝達関数に寄与する 身体器官の一つであり , 前方 移動に よ る 三角測量を 基礎と し た 音源定位手法を 提案し て いる . 戸嶋ら [Toshima, 2006]は能動的な ダミ ーヘッ ド 方向への指向性を 高める と と も に , 音源方向に対する 方向 によ っ て , テレ オペレ ーショ ン におけ る 操作者の定位能向 依存性フ ィ ルタ と し て の働き があ る . 人間の場合, 耳介の 上に 成功し て いる . 影響は周波数領域に お いて ノ ッ チ 周波数が音源の上下方 向の関数と な っ て いる こ と が知ら れて いる [ Shaw, 1968]. し かし な がら , こ のよ う な 身体動作は , エゴ ノ イ ズと 呼 ばれる ロ ボッ ト 自身の駆動に伴う 騒音や , 身体動作によ る 耳が二つに限ら れる 場合, 両耳間時間差のよ う に両耳間の マ イ ク の配位変化に 伴う 集音環境の大き な 変化を 生じ る 音信号の差に基づく 特徴量では , 両耳から 等距離にある 正 な ど , 特有の難し さ を 生む 可能性も あ る . そ こ で , 本研究 中面内の音源を 区別する こ と が出来な いこ と が多く , 耳介 では頭部の一部だけ が動作する こ と で , エゴノ イ ズの影響 47 を 抑制し , 音響特性の変動を 限定的に する こ と を 考え る . 具体的に は猫や犬の耳介のよ う に 前方に 指向性のあ る 形 [dB] −40 状を 考え , 頭部は動かずにこ の耳介の形状のみが変化する 機構を 考察し た . 指向性に よ っ て , 対象音信号を 選択的に 得る こ と が出来る 一方, 耳介を 対象音方向に向ける こ と で , −80 様々 な 方向の到来音の受聴も 可能に な る と 期待さ れる の NC NB −120 で , 動き のな い耳介に 比べて 優位性があ る と 考え ら れる . 10k し かし , 形状変化に伴う 周波数特性の変化は複雑にな る 可 能性が予想さ れる . 原理上は数値的にこ の特性を 求める こ 20k [Hz] Figure 1: 耳介ノ ッ チ の例 (Shimoda ら に よ る [Shimoda, 2006]) と が可能である が , 耳介形状の正確な データ を 得る こ と や 耳介表面での反射を 厳密に モデル化する こ と は難し いた 周波数応答 (左図) およ びロ ボッ ト 用耳介 (右図) め , 現実的に は実際の装置に 基づく 検証が必要であ る . こ のよ う な 観点から , 本稿では , 能動的に 形状を 変化可能な 動物の耳介 耳介を 実際に制作し , 計測によ っ て その特性を 明かにする 2.2 こ と を 目的と する . 人間の耳介は耳介筋の発達が限定的な ので , 通常はほと ん ど 動かせな いが , 他の多く の動物は耳介の向き を 随意的に 本稿の構成は以下の通り である . 第 2 節で耳介ノ ッ チに 動かすこ と が出来, 選択的な 集音効果を 得て いる と 言われ よ る 音源定位に ついて 説明し , そ の後, 実際に 制作し た 能 て いる . こ れら の動物の耳介そ のも のは皮膚と 軟骨等か 動人工耳介の構造およ び機構を 考察する (第 3 節). ま た , ら 成り , 耳介の運動は頭部の複数の耳介筋が複合的に作用 聴覚に お け る 耳介の特性と し て 周波数特性と 指向性を 調 する こ と で生じ る . 猫の場合, 頭部およ び首から の筋肉に よ っ て [Ellsworth, 1902] ほぼ 180 度に わた っ て 耳介の向 べた ので , こ れを 第 4 節で説明し , 提案耳介の性質を 明ら かに し , 最後に ま と めを 述べる (第 5 節). 2 2.1 き を 変え る こ と が可能で , その形状から 開口部方向に指向 性がある [Rice, 1992]. 動物が音源定位に際し , 耳介の向き 耳介 を 変え て いる こ と が Populin[Populin, 1998] に よ っ て 報 告さ れて いる . 耳介ノ ッ チ そこ で , こ のよ う な 耳介を ロ ボッ ト で実現する こ と を 考 耳介は古く から 「 集音器」 と し て 前方から の到来音に 対 し て 指向性を 与え る 器官と し て 認識さ れて き た [Batteau, え , 以下ではそ の設計と 動作, 特性に ついて 考え る . 1967]. こ れに 加え , 耳介表面が複雑な 凹凸形状を 持つた 3 め , 耳への入射音が反射や回折する こ と で , 耳介は複雑な 本稿では , 動物にな ら っ て 方向と 形状を 変化可能な 耳介を 周波数特性を 持つフ ィ ルタ と し て 作用する こ と が知ら れて 能動人工耳介 提案する . こ こ で , 耳介がマ イ ク ロ ホン を 覆う よ う に 設置 おり , 音源位置推定に 効果があ る と 指摘さ れて いる . 特に さ れる こ と から , 耳介そのも のの駆動機構は静穏性の高い 耳介の周波数特性に は音源の方向に 応じ て ゲイ ン が鋭く 必要があ る た め , 耳介そ のも のは受動的な 機構と し , ワ イ 低減する 周波数帯が存在し , こ の特徴は耳介ノ ッ チ (Pinna ヤ で耳介を 牽引する 方式と する . こ れに よ り , 騒音源と な Notch) と 呼ばれて いる . 人間の耳介の場合, およ そ 4kHz よ り 高い周波数帯域で耳介ノ ッ チ認めら れて いる [Butler, 1984]. 実際に , Shaw[Shaw, 1968]ら は人間の耳介に お け る モータ と マ イ ク ロ ホン を 十分に 離れた 配置と する こ と が出来る . 構造 る 周波数特性を 測定し , 耳介ノ ッ チの周波数が音源方向の 3.1 関数になっ て いる こ と , こ の周波数を 計測する こ と が出来 実際に 制作し た 能動耳介の外観と そ の概略を Fig.2 に 示 れば , 音源方向を 求める こ と が出来る 可能性がある こ と を す . 皮膚に 相当する 部分はシリ コ ン ゴ ム で製作し , 開口部 示し た . 耳介ノ ッ チの生じ る メ カ ニズム に ついて , LopezPoveda[Lopez-Poveda, 1996] は回折と 反射を 考慮し て , 簡 に ア ク リ ルの骨材が三角形の形状を 成すよ う 埋め込ま れ 単な 一次反射の音波の加え 合わせに よ る 物理モデルを 提 ぞれには駆動用ワ イ ヤ が結び付け ら れ, こ れら のワ イ ヤ は 案し , 簡略化さ れた 形状の耳介モデルに おいて , 耳介ノ ッ 耳介の前方の取り 付け 穴 (図中 A 点) を 経て , プーリ を 介 チ の周波数がモデルに よ る も のと 良く 一致する こ と を 示 し て 耳介下部に設置さ れたモータ で駆動さ れる . シリ コ ン し て いる . ロ ボッ ト で耳介ノ ッ チの利用を 目的と し た研究 に [Hörnstein, 2006]や [Shimoda, 2006]があ る . 一例と し ゴム に弾性がある ため , モータ はワ イ ヤ を 牽引する 方向に て Fig.1 に Shimoda ら [Shimoda, 2006]の用いた耳介での イ ヤ を 牽引し た 際, 最大の変位を 得る 時に 約 1kgf の力で 周波数応答の例を 示す . 前方に 引く 必要があ っ た (Fig.2 最上段右図). シリ コ ン ゴ て おり , 耳介形状を 支持し て いる . 上部の骨材の左右そ れ のみ駆動力を 発揮すれば十分である . 予備実験において ワ 48 PC Control Signal Motor Driver SH-2 Motor Host Auditory Signal Mic. µcontroller Power Photo Frame Figure 3: Control system Silicon Rubber Z Frame Z B P Body A Mic. P Pin R A R′ O O Motor S Q X ′ Q S′ Sketch of the proposed pinna (a)Origin (θ, φ) = (0, 0) 90mm Front 35mm 75mm Front view Y Y φ X θ (b) Definition of (θ, φ) Figure 4: Kinematic model Mic. る も のと する . 耳介の姿勢を Z 軸ま わり の回転角 θ と Y 95mm Side view 軸に平行で耳介開口部を 通る X − Y 平面内の軸ま わり の 角度 φ で表わすこ と と する (Fif.4(b)). 耳介頂点の参照点 Size of the pinna (front and side view) を P と 表し , θ = φ = 0 の時の P の座標を (r, 0, a)T と Figure 2: Active artificial pinna: photo and sketch 記述する . 姿勢 (θ, φ) の時 P の座標は r r r P = Rz (θ) RY (φ) 0 − 0 + 0 a 0 0 −a cos θ sin φ + r cos θ = a sin φ sin θ − r sin θ (1) ム は耳介を 固定する 板にピ ン 止めさ れて おり , 耳介後端の 固定点 (図中 B 点) を 中心に耳介を 固定する 板が水平面内 で受動回転する 構造に な っ て いる . ワ イ ヤ は適当に減速さ れたステッ ピ ン グモータ (オリ エ ン タ ルモータ 社) から のト ルク で駆動さ れ, モータ の駆動 a cos φ 信号はド ラ イ バから 指令パルス信号と し て 与え る . モータ の回転角は二相パルス 信号を 制御用プロ セッ サ (SH7145) であ る . こ こ で RZ , RY はそ れぞれ Z 軸と Y 軸ま わり でカ ウ ン ト する こ と で求める . マ イ ク ロ ホン から の音信 の回転変換を 表す . 号と 制御用プロ セ ッ サから の信号はホス ト と する 計算機 さ て , (θ, φ) = (0, 0) に お け る 点 Q の 座 標 を (r, d, 0)T と する と , Z 軸ま わり の回転に よ っ て (r cos θ + (PC) で処理さ れ, 制御用プロ セ ッ サへ指令パルス 値へと d sin θ, −r sin θ + d cos θ, 0)T へと 移さ れる . P Q の長さ は √ a2 + d2 で , QR の長さ を b と する と , R の座標は フ ィ ード バッ ク さ れる 構成と する (Fig.3). 3.2 運動学モ デル R 提案する 耳介はワ イ ヤ 長を 制御する こ と で , 水平回転およ び前後方向の 2 自由度の運動が可能である . こ こ では耳介 の参照点を 耳介頂点に取り , ワ イ ヤ 長と 参照点間の運動学 的関係を 導く . 今, 原点が Fig.2 の B 点に 対応し , X 軸を 前方, Z 軸を b = OQ + √ QP 2 a + d2 r cos θ sin θ − cos θ sin φ bd √ d − = − sin θ cos θ sin θ sin φ a2 +d2 0 0 cos φ − √aab 2 +d2 と なる . 上方に 取る 右手系と し て Fig.4(a) に 示す座標系を 考え る . S から R へのベク ト ルを l と する と 耳介の下端固定部を Q, Q′ , 耳介と ワ イ ヤ の取り 付け 点を R, R′ と し , ワ イ ヤ は S, S ′ を 通っ て モータ に 接続し て い l2 = (sin φ, cos θ, sin θ, sin φ sin θ, sin φ cos θ)c + c0 (2) 49 と 書け る . こ こ で c, c0 は定数ベク ト ルと 定数を 表す . R′ について も 同様に (2) に相当する 関係を 得る こ と が出来る φ の 21.5 度, 0 度, −14.1 度, −37.7 度 に 対応) を 測定し , そ れぞれの姿勢に お いて TSP 応答を 9 回計測し て いる . ので , l, l′ の長さ が与え ら れた 時, こ のモデルから 得ら れ 信号は 44100Hz でサン プリ ン グし 増幅し た も のを 収録し る 関係を 連立し て φ, θ を 求める . 実際に は非線形方程式 て いる ため , 特性はアン プ等の特性を 含んだも のになっ て になる ため数値的に求める こ と になる が , |θ| ≪ 1, |φ| ≪ 1 いる . が成立すれば (2) は θ, φ について 一次になる ので , l, l′ の 1m 二つを 観測する こ と で姿勢の近似値を 得る こ と が出来る . ま た l の長さ (|l| と 表す ), θ, φ が与え ら れた 時 ! φ d 1 T d |l| = J (θ, φ) , dt 2|l| dt θ (3) Speaker Mic. の関係が得ら れる . こ れは φ, θ の運動を 与え た 時に , ワ Figure 5: Impulse response measurement イ ヤ 長を ど のよ う に 変化さ せれば良いかを 与え る 逆運動 学モデルと な っ て いる . こ こ で 4.1.2 J(θ, φ) = cos φ 0 0 − sin θ 0 cos θ cos φ sin θ sin φ cos θ cos φ cos θ − sin φ sin θ ! 次に 水平方向の特性と し て 指向性に ついて 調べた . こ こ ではワ イ ヤ を 自然な 状態に し (頂点 P が開口部下端か c ら 後方 3cm に 位置, φ = 21.5 度), 先の実験と 同様, 音源 を 耳介前方 1m に 設置し た . 耳介を 回転台に 載せ, マ イ ク であ る . ロ ホン を 中心と し て 耳介そのも のを 回転さ せる こ と で , 音 以上 (2) お よ び (3) に よ っ て 耳介と ワ イ ヤ 長さ の間の 源と の相対的な 水平方向を 変化さ せた . 計測にあたっ て は 運動学モデルが得ら れた . 11.25 度刻みで 360 度全方向から の特性を 測定し た . なお , 特性 4 指向性 音源方向毎のゲイ ン 特性に よ っ て 指向性を 考え る こ と と し た . こ の実験でも , 前述の実験と 同様, TSP 信号を 駆動 前節ま でで説明し た耳介について , 聴覚上の特性を 調べる . 信号と し , 耳介前方に設置し たマ イ ク ロ ホン と 耳介で収録 こ こ では , 耳介の大き な 効用である 耳介ノ ッ チと 集音効果 し た 信号の間の特性に よ っ て 耳介の特性と し た . に 相当する 性質を 調べる こ と と し た . な お , 耳介ノ ッ チは 音源の上下方向に 対する 関数と し て 周波数特性を 考え る Speaker こ と が多いが , 本稿では対象と する 耳介の形状変化に注目 し て いる ので , 前節の φ の変化に 伴う 影響を 考え る . 他 θ 方の自由度 θ に ついて は姿勢を 一定に 保っ た ま ま 水平面 内での指向性について 調べ , 耳介の集音効果について 着目 Mic. し た. 4.1 4.1.1 Figure 6: Directivity measurement 測定方法 周波数特性 4.2 周波数特性の測定は以下の手順で行っ た . TSP[Suzuki, 1992]信号を 駆動信号と し , Fig.5 に示すよ う に耳介のマ イ 4.2.1 ク ロ ホン と 耳介近傍のマ イ ク ロ ホン でこ れら の信号を 受 測定結果 周波数応答 Fig.7 に 測定さ れた 耳介の周波数応答を 示し た . ゲイ ン 聴し た . な お , TSP 信号を 受聴し た信号は十分な 周波数成 特性を 見る と , φ に依ら ず 1kHz 付近のな だら かな ピ ーク 分を 含むと 考え ら れる ので , 耳介での信号と 耳介近傍での と 2.5kHz から 3kHz に かけ て のノ ッ チが安定し て 見ら れ 信号の間の特性を ク ロ ス ス ペク ト ル法で求めた も のを 耳 る . 一方 5kHz よ り 高い周波数帯域では , 耳介変形の影響 介の周波数特性と 考え た . こ れは収録環境の特性を 除去 を 受け て ゲイ ン 特性が変化し て いる こ と が分かる . 位相に する こ と を 期待し たも ので , 具体的な 計算は MATLAB の ついて は , 高周波数帯域 (数 kHz 以上) ではっ き り と し た tfesimate に よ り 4096 点毎のオーバーラ ッ プを 伴う 8192 構造が見ら れ, φ の変化の影響と 見ら れる 変化があ る . 点の FFT で行っ た . 4.2.2 実験ではス ピ ーカ と 耳介間は 1m, 耳介近傍のマ イ ク は 指向性 耳介開口部 20cm 前方に 設置し た . 耳介は 頂点 P が開口 Fig.8 に 耳介が回転し た 際のゲイ ン 特性を 示す . 図は横 部下端から 後方 3cm, 真上, 前方 2cm, 同 5cm の 4 通り ( 軸に 耳介の方向, 縦軸に 周波数を 示し た も ので , 0 度が耳 50 5 Phase [rad] Gain [dB] 50 0 −50 2 10 3 10 Frequency [Hz] 0 −5 2 10 4 10 3 10 Frequency [Hz] 4 10 (a) φ = 21.5deg : Gain(left) and phase(right) 5 Phase [rad] Gain [dB] 50 0 −50 2 10 3 10 Frequency [Hz] 0 −5 2 10 4 10 3 10 Frequency [Hz] 4 10 (b) φ = 0deg : Gain(left) and phase(right) 5 Phase [rad] Gain [dB] 50 0 −50 2 10 3 10 Frequency [Hz] 0 −5 2 10 4 10 3 10 Frequency [Hz] 4 10 (c) φ = −14.1deg : Gain(left) and phase(right) 5 Phase [rad] Gain [dB] 50 0 −50 2 10 3 10 Frequency [Hz] 0 −5 2 10 4 10 3 10 Frequency [Hz] 4 10 (d) φ = −37.7deg : Gain(left) and phase(right) Figure 7: Frequency response of the proposed pinna 波域で耳介が機能し て いな いこ と が想定さ れる . こ れは , 介正面方向にスピ ーカ が位置する 場合に対応し , 反時計ま わり を 正と し て いる . 前方に対し て ある 程度の指向性を 示 変形を 優先する ために耳介の薄く し た結果, 対応する 周波 し て おり , 8kHz を 越え る 高周波数帯域ではっ き り と し た 数帯域の音波が透過し て いる 可能性があ る . 特性が確認さ れる . し かし , 8kHz 以下では指向性は認め ら れず , 1kHz 付近のピ ーク では音源の方向に 依ら ず一様 5 な ゲイ ン 特性と な っ て いた . 4.3 おわり に 本稿では , 能動的音信号の受聴を 目指し , ワ イ ヤ 駆動に よ 考察 り 形状を 変え る , 指向性が可変の耳介を 提案し , そ の基本 こ れら の測定結果から , 指向性や形状変化への依存性と 的な 特性を 実験によ っ て 調査し , 耳介の変形を 導く 簡単な いっ た特性は主に 数 kHz よ り 高い周波数帯域で見ら れた . 運動学モデルを 導いた . 得ら れた 特性は , 前方に 対し て あ 周波数特性では φ の正負での特性変化があ る 程度見ら れ る 程度の指向性を 有する も のであっ たが , 耳介の変形に伴 たと 言え る が , こ れは φ = 21.5 度の時, P 点がマ イ ク ロ ホ う 周波数特性の変化は高周波数帯域に限定的であっ た . こ ン よ り も 後方にあり , マ イ ク ロ ホン が剥き 出し に近い状態 の理由と し て 、 耳介が薄く 、 低周波帯域では十分な反射が に な っ て いた のに 対し , そ れよ り も 小さ な φ ではマ イ ク 得ら れて いない可能性が考え ら れる 。 今後、 耳介の厚さ を ロ ホン が耳介壁面に 覆われる 状態に な っ て いた た めと 考 変え る 、 あ る いは異っ た 素材を 用いる な ど が必要と な る 。 え ら れる . ま た , 1kHz 付近に増幅特性があり , 方向や耳介 形状に関係せず存在する こ と が判っ た . こ れは耳介の効果 ま た , 受聴し た 音信号に 対する 応答, 例え ば音圧情報を 手掛り に音源方向を 探査する [Bernard, 2010]な ど , 耳介を ではあ る が , 音源定位の観点から はあ ま り 望ま し く な い . 運動学モデルに基づいた耳介の駆動制御を 行う . 本稿で調 所望の特性が高周波数帯域に制限さ れる のは , 波長の関 べて いな いが , 音源の上下に対する 耳介の影響も 検討する 係である 程度仕方がな いが , 指向性に関する 結果から 低周 必要があ る 。 51 Figure 8: Directivity 参考文献 [Kumon, 2009] 公文誠, 石飛光章: 境界要素法を 用いた音 響解析によ る 耳介形状の検討, 人工知能学会 SIG チャ [Shaw, 1968] Shaw, E.A.G. and Teranishi, R.: Sound レ ン ジ研究会, 14–19,(2009). pressure generated in an external-ear replica and real human ears by a nearby point source, J. of [Rice, 1992] J.J. 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