2016 年 4 ⽉ 25 ⽇作成 第 64 号 株式需給のここに注⽬-外国⼈売り⼀巡から上昇へ 大和住銀投信投資顧問 経済調査部 部長 門司 総一郎 4 月第 2 週、第 3 週と日本株は急速に値を戻しましたが、その理由の 1 つに外国人売りの一巡による 株式需給の好転があります。今回の「市場のここに注目!」は外国人売りについて考えます。 東京証券取引所や大阪取引所の統計によれば、今年に入って 3 月まで外国人は現物・先物合わせて 5.5 兆円の日本株を売り越しました。これが需給面における年初からの日本株下落要因です。ただし現 物と先物の間で売りのタイミングに若干の違いがあります。現物では 1 月から 3 月まで毎月 1 兆円を 超える日本株を売り越しました。一方、先物では 1 月こそ売り越したものの 2 月は 7218 億円の買い越 し、3 月も小幅の売り越しに止まっています。 外国人買越額( 月次、兆円) 3 2 1 0 ‐1 先物 ‐2 ‐3 12年1月 12年7月 13年1月 現物 13年7月 14年1月 14年7月 15年1月 15年7月 16年1月 出所:東京証券取引所、大阪取引所 外国人の現物取引は年金やソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)など長期的な投資家の動き、先物は ヘッジファンドなど短期筋の動きを反映する傾向があります。この前提に立てば 2 月以降日本株を押 し下げたのは長期的な投資家の売りで、同じ外国人でもヘッジファンドなどは 2 月以降既に買い戻し に転じていたと思われます。 一方、長期投資の外国人による日本株売りについても、既に一巡した可能性を示すデータがありま す。米証券会社 BofA メリルリンチが毎月 10 日前後に世界の機関投資家に実施しているアンケート調 査(「ファンドマネージャー調査」)です。 ファンドマネージャー調査には、投資家がそのグローバル株式ポートフォリオの中で、日本株・米 国株・ユーロ圏株などについての現在のスタンスが「オーバーウェイト」か「アンダーウェイト」か を問う設問があります。4 月は日本株オーバーウェイトとの回答が全体の 26%、アンダーウェイトが 30%。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 1 市場のここに注⽬! 2016 年 4 ⽉ 25 ⽇ 両者の差をとった「ネットバランス」はマイナス 4%でした。昨年 12 月時点のネットバランスはプラス 37%だったので、そこからわずか 4 ヵ月で、多くのグローバル投資家が日本株の比率を落としたことに なります。 グロー バル投資家の日本株へのスタンス( 月次) グロー バル投資家の日本株へのスタンス( 月次、ネット バラ ンス) 80% 60% ↑オーバーウェイト優位 オーバーウェイト 60% 40% アンダーウェイト 20% 40% 0% ‐20% 20% ‐40% 0% 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 アンダーウェイト優位 ‐60% 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 出所:BofAメリルリンチ証券、日本株をオーバー/アンダーウェイトと回答した投資家の比率 出所:BofAメリルリンチ証券 ネットバランスのマイナスは第二次安倍晋三内閣が発足した 2012 年 12 月以来のことですが、ここ まで一気に比率を落とし、グローバル投資家全体として日本株アンダーウェイトが多数となった点を 考えると、長期投資家も含めて日本株売りは一巡したと見てよいでしょう。実際、4 月に入ってから外 国人は買いに転じています。第 2 週まで現物で 4176 億円、先物で 270 億円の買い越しです。 現在の日本の株式市場で主な買い手になっているのは日銀(ETF 購入)や上場企業(自社株買い)です が、これらによって買い上げられた株式は市場に出てきません。そのため外国人が買いに回ると売り 手不在になりやすい状況です。最近の日本株の急上昇にはこうした需給の改善が大きく寄与している と見ています。 株価が一段と上昇すれば個人の利益確定売りや年金のリバランス売りが出てくることになりますが、 それまでは売り手不在の状況が続きそうです。需給面からはまだまだ日本株の上昇が期待できると考 えています。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 2
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