株式市場見通し(17 年 1 月 13 日)

2017 年 1 月 13 日
第 87 号
株式市場見通し(17 年 1 月 13 日)
大和住銀投信投資顧問
部長
経済調査部
門司 総一郎
昨日のドナルド・トランプ次期米大統領の 11 日の記者会見は経済政策への言及がほとんどなかった
のみならず、質疑応答では一部の記者と口論するという前代未聞の事態となりました。そうしたトラ
ンプ氏にあきれたのか、足元の株式市場は調整色を強めつつあります。今回は株式市場の見通しにつ
いて考えてみました。
日経平均の推移( 日次、円)
ドル円レー ト の推移( 日次)
20000
120
19000
115
18000
110
17000
105
16000
16年10月
16年11月
16年12月
100
16年10月
17年1月
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
16年11月
16年12月
17年1月
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成、1ドルあたりの円で表示
まずトランプ氏の影響について考えてみます。大統領選前は「トランプ氏が勝利すれば大変なこと
になる」といわれていましたが、大統領選後は逆に「トランプ氏の政策は米景気にプラス」の声が強
まり、円安・株高が進みました。いわゆる「トランプ・ラリー」です。
しかし、市場が期待する減税やインフラ投資については、いつまで経っても内容が公表されません。
記者会見でもほとんど言及はありませんでした。一方、トランプ氏が強調したのは自動車メーカーへ
のツイッター口撃によるメキシコへの工場移転阻止や中国などとの貿易不均衡是正。内容不明の国境
税に薬品の価格決定方式の見直しなど、株式市場にマイナスと思われるものばかりです。
ここに至って株式市場でもようやく「トランプ氏は思ったほどフレンドリーではない」との見方が
出始めたようですが、それでもまだ 1 月 20 日の大統領就任式前後で減税やインフラ投資に関する発表
を期待している向きは多いようです。
しかし、その可能性は低いと思われます。そこで発表できるものがあるのなら、既に言及している
と思いますし、なによりトランプ氏にマクロ経済への関心があるようには見えません。それよりもツ
イッターで個々の企業や国(政府)をチクチクいじめる方が性に合っているように見えます。就任式で
も何も出ず、一気に期待が剥げ落ちる可能性が高いでしょう。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
2016 年 1 月 13 日
その場合、株式市場は一段と下落することになります。もしこれまでの株高が全部トランプ氏への
期待感によるものならば、全て剥げ落ちてしまうことになりかねませんが、その心配はないと見てい
ます。なぜなら株高の主因はトランプ氏への期待ではなく、景気や企業業績の改善だからです。
例えば景気ですが、景気の先行指標と見なされる製造業の企業景況感指数は、日米ともに昨年春か
ら夏にかけて底打ちし、上昇に転じました。グラフは添付していませんが、ユーロ圏や英国も同様で
す。足元でも企業景況感指数の上昇は続いており、先進国の経済は依然好調といえます。
米国の企業景況感指数( 月次、製造業)
日本の企業景況感指数( 月次、製造業)
60
60
58
55
56
54
50
52
50
2014年
2015年
2016年
出所:ブルームバーグ、MakItより大和住銀投信投資顧問作成
45
2014年
2015年
2016年
出所:ブルームバーグ、MakItより大和住銀投信投資顧問作成
企業業績も好調です。トムソン・ロイターが集計したアナリスト平均の業績見通しに基づけば、昨
年第 4 四半期の S&P500 採用企業の 1 株当たり利益は前年比 5.8%増、第 3 四半期の 4.3%増から加速す
る見込みです(ちなみに今年の第 1 四半期は 13.6%増の見通し)。
また東洋経済の個別企業の業績見通しを大和証券が集計したデータによれば東証第 1 部上場企業の
経常利益は 2016 年度が前年比 5%減、17 年度が 10%増ですが、内外景気の好調や足元の円安などを考慮
すれば上方修正が見込めるでしょう。
このように好調な内外の景気や企業業績が株式市場を押し上げたことが、トランプ・ラリーの実態
です。もちろんトランプ氏への期待感で上昇した部分もあるので、その分は調整せざるを得ませんが、
それだけであれば大きなものにはならないと見ています。
以上を踏まえて、就任式にかけてはトランプ氏への期待感が更に剥落することにより株価が下落す
る余地はあるものの、就任式前後でそうした調整は一段落。その後は景気や業績の改善が評価され、
株式市場は上昇すると予想しています。
以上
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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