2017 年 2 月 16 日 第 92 号 企業業績のここに注目-円高を克服した好決算 大和住銀投信投資顧問 経済調査部 部長 門司 総一郎 2016 年度 10-12 月の決算発表はほぼ終了しました。2015 年 10-12 月期に比べて円高だったにもかか わらず増益で、好決算だったと考えています。今回はこの 10-12 月の決算について考えます。 TOPIX採用企業の10-12月決算(前年同期比) 社数 売上 ア ナリスト ・コ ンセンサスに基づくTOPIX採用企業の今期業績予測 経常利益 当期利益 社数 売上 経常利益 当期利益 全産業 1642 -2.4% 8.8% 18.0% 全産業 962 -2.3% -0.3% 7.7% 製造業 767 -3.4% 6.0% 17.9% 製造業 505 -4.1% 0.8% 6.8% 非製造業 875 -1.5% 11.6% 18.0% 非製造業 457 0.2% -0.6% 8.5% 出所:岡三証券、12年1-3月期から連続してデータが利用可能で 決算発表済みの2月及び3月決算企業が対象、2月13日現在 出所:岡三証券12-3月決算で今期の売上、経常利益などの会社計画及び Quickコンセンサス予想が利用可能な企業が対象、2月13日現在、前年比 岡三証券の集計によれば、2 月 13 日までに決算が発表された東証第 1 部上場企業の 10-12 月決算は、 前年同期比で売上が 2.4%減、経常利益が 8.8%増、当期利益が 18.0%増となりました。経常増益は 6 四 半期ぶりです。 経常利益を業種別に見ると、石油・石炭が前年同期の赤字から黒字に転換。その他、パルプ・紙、 非鉄、卸売(主として商社)などが 30%を超える増益となっています。 他方、輸送用機器、電器、電気・ガスなどが減益ですが、電器の減益はソニーや東芝など一部の企 業が足を引っ張ったためで、これらを除けばむしろ好調です。そのソニーも映画部門の減損で大幅減 益となったものの、この損失は前向きな損失と受け取られて悪材料とならず、逆にエレクトロニクス 部門の回復が好感され、決算発表後の株価は急伸しました。 好決算を受けて、証券会社のアナリストは業績見通しを上方修正しつつあります。現在アナリスト 平均の 2016 年度の見通しは売上が 2.3%減、経常利益が 0.3%減、当期利益が 7.7%増です。決算発表が 始まる前の時点で、今期の経常利益は 5%減と見込まれてたので、5 ポイント程度上方修正されたこと になります。 冒頭申し上げたように、2016 年 10-12 月は、15 年の同時期と比べて円高です。2015 年 10-12 月の平 均ドル円レートは 121 円、これに対して 16 年は 109 円、決して小さくない円高です。にもかかわらず 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 1 市場のここに注目! 2017 年 2 月 16 日 増益になった理由は 4 つあります。 ドル円レー ト の推移 130 125 120 115 110 105 100 95 15年1月 15年4月 15年7月 15年10月 16年1月 16年4月 16年7月 16年10月 17年1月 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成、ドル円レートは1ドル当たりの円で表示 最初の 2 つは石油価格の回復と新興国経済の持ち直しです。商社や石油・石炭、海運などの業績を 押し上げることになりました。 3 番目はスマホの高機能化やそれに伴うデータ送信量の増大です。スマホの高機能化による電子部品 への需要拡大から村田製作所など電子部品メーカーが恩恵を受けた他、データ通信量の増大により、 NTT などの業績も押し上げられました。 4 番目は個々の企業の努力による収益力向上です。これが今回の決算のポイントと考えています。減 収増益になっていることから分かるように、日本企業の売上高利益率は上昇しています。岡三証券に よれば、東証第 1 部上場企業の売上高経常利益率は 2015 年 10-12 月が 7.7%、16 年が 8.6%です。この 売上高経常利益の上昇だけで経常利益が 12%押し上げられたことになります。 これは個々の企業の努力によるものです。例えば日立は物流や金融など本業と関係が薄い子会社を 切り離したことにより、10-12 月期は連結では 10%減収ながらも増益。三井化学も地道に続けてきた不 採算商品の削減効果により今期は 10%減収ながらも最高益更新の見通しです。キャノンの好決算には東 芝メディカルの買収など、ここ数年進めてきた M&A が寄与しています。 日本の株式市場では「企業業績は為替次第」との強い思い込みがありますが、そんなことはありま せん。当コラムでは「為替の効果は過大評価されている」と再三主張してきましたが、今回の決算は この主張を裏付けるものと考えています。「為替に一喜一憂するだけでなく、企業の収益力の変化に もっと注目すべき」これが今回の最大の決算のポイントです。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 2
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