株式市場 通し(16 年 7 22 )

2016 年 7 ⽉ 22 ⽇
第 72 号
株式市場⾒通し(16 年 7 ⽉ 22 ⽇)
大和住銀投信投資顧問 経済調査部
部長 門司 総一郎
今年に入って日経平均は年初から 2 月まで下落。その後も 15000-17500 円のボックス圏で推移する
など、さえない動きを続けてきました。しかし 7 月に入って動意付き、昨日は 6 月 8 日以来の高値と
なる 16810 円まで上昇しました。
今回の上昇は一時的なものでなく、日経平均はボックス圏の上限を超えて上昇すると予想していま
す。今回の「市場のここに注目!」はそう考える理由について説明しますが、3 つあります。最初に世
界経済の回復、2 番目は機関投資家による株式組入れの引上げ、そして 3 番目は意外かもしれませんが、
日本銀行の金融緩和や政府の経済対策が大きなものにならないことです。
日経平均の推移( 日次、円)
製造業企業景況感指数( 月次、先進国)
20000
54
19000
52
18000
17000
50
16000
48
15000
14000
16年1月
日本
米国
ユーロ圏
英国
46
16年3月
出所:ブルームバーグ
16年5月
16年7月
15年12月
16年2月
16年4月
16年6月
出所:ブルームバーグ、MarkIt
まず世界経済ですが、景気の先行指標として注目される製造業の企業景況感指数(PMI)の動きを見て
みます。PMI は足元の業況に関する企業へのアンケート調査の結果を指数化したもので、指数が上昇す
れば企業の業況が改善、低下すれば悪化していることを示します。主要先進国の PMI はいずれも年初
から低下しましたが、5 月から 6 月にかけ底入れした形となっており、足元の景気が持ち直しつつある
ことを示しています。
先進国以上に PMI がしっかりしているのが新興国です。BRICs の PMI は、ブラジルを除けば、そもそ
も年前半低下していませんし、中国を除けば直近上昇しています。その中国も 4-6 月の GDP が予想を
上回るなど、他の指標には明るいものが増えています。今年の初めまでは「新興国発の世界経済悪化」
との懸念が常に付きまとっていましたが、最近ではそうした懸念は薄らいでいるようです。
新興国の景気回復は、通貨の安定により金融緩和が可能になったことや、原油価格が上昇したこと
などによるものですが、このように先進国、新興国の両方において景気が改善しつつあることが、日
本を含む世界の株式市場の上昇持続を見込む第 1 の理由です。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注⽬!
2016 年 7 ⽉ 22 ⽇
製造業企業景況感指数( 月次、B R ICs )
機関投資家の株式に対す るポジ シ ョ ン( 回答に占め る比率)
52.5
120%
100%
50.0
80%
47.5
↑株式強気
ネットバランス
オーバーウェイト
アンダーウェイト
↓株式弱気
60%
40%
45.0
20%
42.5
ブラジル
インド
ロシア
中国
0%
40.0
15年12月
16年2月
16年4月
出所:ブルームバーグ、MarkIt
16年6月
-20%
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
出所:BofAメリルリンチ
次は機関投資家の株式組み入れ引上げです。米国の証券会社 BofA メリルリンチが毎月各国の機関投
資家を対象に実施しているアンケート調査「ファンドマネージャー調査」には債券や現金、商品など
と比較して現在株式のポジションは「オーバーウェイト」(以下「オーバー」)か、「「アンダーウェ
イト」(同「アンダー」)かを問う項目があります。上図の「ネットバランス」(以下「ネット」)は「オ
ーバー」、「アンダー」と回答した投資家の比率の差をとったもので、上に行くほど株式「オーバー」
の投資家が多いことになります。
「ネット」は昨年 12 月の 41%から今年 7 月の 0%まで大きく低下しました。これは 2012 年 7 月以来
の低水準であり、機関投資家が全体として株式に対して慎重になったことを示しています。慎重にな
った理由として挙げられるのはまず新興国経済への懸念、次に先進国経済への懸念、最近では英国の
国民投票などが挙げられます。
しかし、前述のように新興国経済への不安は薄らいでおり、先進国の景気も持ち直しつつあります。
英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱もかなり落ち着いた今の状況を考えると、機関投資家はここから
過度に株式に慎重なポジションを修正するため、株式の組み入れを高めると思われます。その場合、
日本株も買われることになりますが、これが日本株の上昇持続を見込む 2 番目の理由です。
3 番目の理由は意外に思われる方が多いかもしれません。「金融緩和と財政出動こそ株高の条件」と
考える方が普通だからです。
しかし、金融緩和も財政出動も今の株式市場にはほとんど力がありません。1 月 29 日の日銀による
マイナス金利導入の際には当日と翌日こそ日経平均は上昇しましたが、そこから 2 月 12 日の安値まで
急落することとなりました。また安倍晋三首相が消費増税延期を正式表明した 6 月 1 日以降も日経平
均は下落しています。今年に入って金融緩和や財政政策は株価を押し上げることができていません。
本来金融緩和や財政出動が株価を押し上げるのは、その後の景気の回復を織り込んでのことでした。
しかし、アベノミクスが始まった当初は金融緩和や財政出動が景気に好影響を与えましたが、それか
ら 3 年が経過してもデフレ脱却を実現できてないことから、
そうした政策への期待感は低下しました。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注⽬!
2016 年 7 ⽉ 22 ⽇
今では追加緩和を予想するエコノミストもその効果は疑問視するような状況です。これが政策が株
式市場に与える影響が小さくなっている理由です。
安倍政権の金融政策や財政政策への批判的な見方も強まっています。本日の日本経済新聞の「政治
が揺らす世界経済」と題する 1 面の特集記事は、政府がまとめる経済対策について「中身は公共事業
をはじめ財政に頼った短期的な刺激策ばかり」と批判的にコメントしています。
この経済対策は規模 20 兆円といわれ、赤字国債増発の可能性も指摘されていました。またそれをフ
ァイナンスするための日銀の国債購入拡大も取り沙汰されていましたが、もしそうなれば日本政府は
信頼を失って、1 月のマイナス金利導入時以上に日本株が売られる可能性もあると見ていました。
しかし、本日の日経によれば財政出動の真水部分は 3 兆円程度のこと、最低限の財政規律は守られ
たと考えています。またヘリコプターマネーについても黒田東彦総裁が明確に否定したと報じられて
います。こうした筋悪の景気対策や金融緩和策の可能性が低下したことが、持続的な日本株の上昇を
見込む 3 つ目の理由です。年後半の日本株は上昇基調を維持すると予想しています。
前述の日経記事は「遠回りにみえても、成長力を底上げする構造改革こそ、政治が安定している日
本に課された課題である」と結んでいますが、全くその通りだと思います。これが実現することが、
より長期にわたる日本株の上昇の条件でしょう。
以上
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す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
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