2016 年 10 月 12 日 第 77 号 株式市場見通し(16 年 10 月 12 日) 大和住銀投信投資顧問 部長 経済調査部 門司 総一郎 足元の日本株は好調です。日経平均は昨日 17000 円を回復しました。今回の「市場のここに注目!」 は足元の日本株上昇の理由と今後の見通しについて考えます。 日経平均の推移( 日次、2016年、円) 20000 19000 18000 17000 16000 15000 14000 1月 2月 3月 4月 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成 5月 6月 7月 8月 9月 10月 株価上昇の理由は世界経済の回復期待、原油高、及び金利低下リスク後退の 3 つです。米供給管理 協会(ISM)が発表する総合景況指数は米国経済の動向を示すものとして注目度が高い経済指標です。9 月はこの指数が製造業、非製造業共に予想を上回って上昇したことから、日本では海運、電器、輸送 用機器など世界経済への感応度が高い業種の株価が上昇しました。これが世界経済の回復期待が日本 株上昇の背景の 1 つと考える理由です。 10月3-11日の騰落率上位/下位10業種 上位業種 騰落率 米ISM製造業/非製造業総合景況指数( 月次) 下位業種 65 騰落率 1 海運 9.60% 1 不動産 -2.12% 2 鉱業 9.48% 2 繊維 -1.32% 60 3 保険 6.97% 3 建設 -0.81% 4 ゴム 5.68% 4 電気・ガス 5 電機 5.46% 5 小売 -0.73% 55 -0.31% 6 精密 4.97% 6 その他金融 -0.24% 7 石油・石炭 4.75% 7 サービス 0.18% 8 輸送用機器 4.63% 8 空運 9 機械 4.08% 9 陸運 0.30% 0.35% 45 10 金属 4.04% 10 食品 0.94% 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成、東証の33業種分類による 製造業 非製造業 50 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成 2 番目の原油高ですが、原油価格の指標の 1 つである米国のウェスト・テキサス・インターミディエ イトの先物価格(直近限月)はロシアが石油輸出国機構(OPEC)の減産に加わるとの観測から 1 バレル= 50 ドルを回復、これを受けて鉱業、石油・石炭などの株価が上昇しました。日本株全体に影響してい るわけではありませんが、原油高も株高の背景の 1 つとしました。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 1 市場のここに注目! 2016 年 10 月 12 日 原油先物価格の推移( WTI,日次、ドル/バレル) 日本の超長期国債利回り( 日次、2016年) 55 1.50% 50 1.25% 20年債 45 1.00% 30年債 40 0.75% 35 0.50% 30 0.25% 25 0.00% 20 1月1日 3月1日 5月1日 7月1日 -0.25% 1月1日 9月1日 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成 3月1日 5月1日 7月1日 9月1日 出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成 3 番目は金利低下リスクの後退です。騰落率 3 位には保険、また表にはありませんが、証券(3.9%上 昇)も 11 位と、金融株も最近健闘しています。この金融株の上昇は金利低下リスクの後退を好感した ものです。 低金利が業績に与える影響が懸念され、金融株は低迷を続けていました。しかし、異次元緩和の総 括的検証で日本銀行の黒田東彦総裁が低金利の副作用を認めたことから、一段の金利低下懸念が後退、 金融株は買い戻されています。 以上の分析を踏まえて、最近の日本株上昇の背景は世界経済の回復期待、原油高、及び一段の金利 低下リスク後退の 3 つと見ています。 最後に今後の見通しです。まず世界経済については、日欧や新興国など米国以外でも経済指標の改 善が見られることから、今後も回復は続くと予想しています。また原油価格は 1 月の安値から既に倍 になっているため、これ以上の上昇は難しいと思われますが、それでもロシアを含む主要産油国の間 で減産合意がまとまれば、当分は 1 ドル=40-50 ドルでの推移が続くことになるでしょう。その場合、 昨年から今年初めにかけてのように原油安が日本株の波乱要因になるリスクは低下します。 金融機関の収益などへの悪影響を回避するため、日銀はマイナス金利の深掘りを含む、市中金利を 低下させる措置に慎重になると思います。一方、20 年物、30 年物の国債利回りは足元 0.4-0.5%まで回 復しましたが、米国の金融政策次第では更なる上昇もあり得ます。そうなれば金融株にとっては好材 料です。 これまでの日本株の反発は政策への期待感によるものであり、ファンダメンタルズの裏付けがなか ったため、一時的なものに止まりました。しかし、今回の上昇は世界経済や金融株の収益力回復など ファンダメンタルズの改善を伴ったものです。そのため、いままでの上昇と異なり、来年にかけて持 続的な上昇が期待できるものと見ています。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 2
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